2022/09/25 のログ
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に川添春香さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に紅龍さんが現れました。
川添春香 >  
最近、妙に裏で顔が売れている。
というにも、矛盾の機械魔パラドックスとの交戦、
さらには突如現れる人を喰らう怪物と何度も戦っているから。

正直、有名になりたいから戦っているわけじゃない。
ただ……人を守りたい。それだけなんだけど。

パパはどうして不良をしていたんだろう。

黒街、ハンバーガーショップの二階で。
白身魚のフライが挟まったハンバーガー、
ポテトのSサイズ、黒いソーダ水のMサイズとセットで頼んで。

隠れて裏の情報が集積するというこの店で私はパラドックスの“情報”を探しているという人を待っていた。

紅龍 >  
 違反部活『病原狩人《アンチボディ》』として動き出して――早速、その出鼻をくじくように喧嘩を売ってきた奴がいた。
 怪我をした奴らから聞き取った内容じゃ、どうやら一人の妙な装備のヤツって事だったが。
 足跡を追っていくと、一人の学生に突き当たった。

「――川添春香、ねえ。
 普通の学生にしちゃ、随分と頑張ってるみてえだが」

 コンタクトを取って見た物の。
 さて、実際に来てもらえるものか。

 あまり期待せずに店に入ると、奥の席に一人の娘。
 どう声を掛けたものかと少し考えたが――。

「――おう、嬢ちゃん、相席失礼するぜ」

 裏の人間じゃない相手に、余計な小細工をするのも不本意だ。

「ああ、クリームソーダとクランチチョコサンデー、ついでにデラックスパンケーキのプレーンで」

 様子を見に来た店員に注文をして、目の前の嬢ちゃんへ向けて、名刺を差し出す。
 テーブルの真ん中に『用心棒 紅龍』とだけ書かれた味気ない名刺が置かれた。
 

川添春香 >  
対面に座ったのは、非日常を溶かしたようなグレーのジャケットの。
背の高い男性。

「あなたが………」

あまりにも場数を踏んだ、という空気を感じる男は。
アマイモノを頼みまくっていた。

「甘いもの、好きなんですか……?」

名刺を受け取り、彼の顔と交互に見比べる。

「こうりゅうさんですか? ホンロンさんですか?」

ポテトを一つ取って食べた。
カリカリしてて、平和ボケしてて、温かくて安穏とした味がした。

「知っているかも知れませんが…私、川添春香です」

紅龍 >  
 
「――しー」

 名乗った嬢ちゃんに、人差し指を立てる。

「こういう所で、あんまり名乗るもんじゃねえよ。
 誰に聞かれてるか分かったもんじゃねえからな」

 まあ、今この店にいるのは半数がうちの部員だ。
 妙なやつがいればすぐに叩きだすが。

「ホンでいい。
 あまいのは、嫌いじゃない。
 妹が好きでな、オレもつられて食うようになってよ」

 けけけ、と笑って、嬢ちゃんの前に分厚い茶封筒を差し出した。

「こういう取引なんざ、慣れてねえだろ。
 先に渡しておくぜ――と、失礼するよ」

 懐から『タバコ』を取り出して、火をつける。
 普通のタバコとは違う、香草が淡く香り、少なからず緊張をほぐす手伝いをしてくれるだろう。
 

川添春香 >  
「えっ」

なんと。黒街を甘く見ていた。
こういう場所で名乗るのは良くない……それを心に刻んだ。
口元を手で押さえてコクコクと頷いた。

「わ、わかりました……」

妹の話を笑ってするその人は。
確かな裏の人であっても、悪い人ではないように見えた。

緊張がほぐれる香り。
周囲を見渡すと、店内であっても誰も咎めない。
なるほど、タバコであってタバコではない。

「……例のアレですが…」
「未来から来た存在、ではないかと思っています」

「此れがこの時代の常世学園か………あいつの言葉です」

茶封筒を何気なく開いてギョッとなる。

「……額を間違えておられたりしませぬ…?」

話の続きをする前に確認、確認大事。

紅龍 >  
 
「くく、素直でいい子だ。
 おじさんが悪い人だったらどうすんだよ」

 まったく、こっちの世界がまるで似合わない嬢ちゃんだ。
 しかし――その嬢ちゃんがなんでまた、あれだけヤバイ奴らとやりあってんだか。

「未来から来た、ねえ。
 そりゃあ、うちの部員の装備じゃ歯が立たねえか」

 とすりゃ、正攻法でやりあうのは得策じゃない。
 こっちから顔を出すのは愚策でしかねえな。
 とはいえ、巡回を続けてるとまた同じことにもなりかねないか――

「ん、あぁ、そうか、なれてないか」

 テーブルに置かれたクリームソーダを呑み、大皿に鎮座するパンケーキを切り分け、小皿に乗せて嬢ちゃんに渡した。

「そいつは、命の値段だ。
 お前さんは自分のイノチを張って情報を手に入れた。
 それを買うなら、対価に敬意を乗せるのは当然だ。
 だから胸を張って受け取りな、それはお前さんが体を張った報酬だ」
 
 

川添春香 >  
「あなたが悪人とは思えませんね……」
「直感です、私の直感は外したことはあっても後悔をしたことはないので」

ここで直感がはずれないと言い切れたらかっこいいのかも知れない。
でも異能がちょっと強いだけの女の子には無理だ。

「現代でも機械技術で変身するだけなら可能です」
「数年前に落第街で戦っていたアーマードヒーロー『イレイス』とか……」

「ただ」

蛇腹状に折り畳まれたストローの袋に結露を一滴垂らす。
ぐねぐねと身を捩るように紙の袋は蠢いた。

「精度、パワー、基本性能。どれを取ってもこの時代ではプロメテウスの火でしょう」
「あの“ベルト”……クォンタムドライバーと電子音声が鳴っていました」

「時代の破壊を標榜している背の高い魔人です、くれぐれも気をつけてください」

小皿に切り分けられたパンケーキ。
これは彼にとって私の意思を問う一切れ。
これを食べたなら、私は報酬について一切を飲み下すことになる。

「私の言葉を疑わないことだけでもすごいことなのですが…」

苦笑いして、フォークでパンケーキを食べた。
甘くてしっかりとした味わいがした。

紅龍 >  
 
「はは、悪い人だよ、おじさんは。
 殺しの専門家だからな」

 肩を竦める。
 とてもいい娘だ。
 自分の直感に、後悔が無いと言える精神性はとても気分がいい。

「ああ、軍でもパワードスーツの開発と並行して研究されている。
 うちも、一応、先端技術で武装してるんだけどな」

 時代が違うとなれば、根本から性能が違う。
 使う人間の技術が高くとも、基本性能の差を覆すのは容易じゃない。
 『クォンタムドライバー』、部員が聞いたのと一致するな。

「時代の破壊――目的は無差別な破壊行為ってとこか。
 隠す気がねえって事は、それを単独でやり遂げるだけの自信があるんだろうな」

 自信と、その裏付けになるだけの技術力か。
 魔人――魔人ねえ。
 オレ達が狩るべき相手なのか、どうか。

「疑わないだけの裏付けがある。
 それに、呼び出されて素直に来てくれるような、報酬も見積もりしてないような嬢ちゃんが、誤認はあっても嘘を吐く事はねえだろ。
 くく、初心でいいね、是非ともそのままで居てほしいと思うよ」

 パンケーキを適当に切り分けて、テーブルの中央に置く。
 自分の皿に載せた分を喰っていたら、すぐに聳えるようなサンデーが出てくる。
 思ったよりボリュームがでけえな。
 まあ、食べるんだが。
 

川添春香 >  
「殺しの………」

なんだか複雑な気分。ハンバーガーをもふ、と食べる。
この時代も白身魚の味はとても美味しい。

「……つまり、武装している仲間がパラドックスに攻撃されて」
「そのためにあなたは情報を集めていると」

ホンさんがお人好し? かどうかはわからないけど。
苦労人……であることに間違いはない。

「あいつは……享楽目的のただの破壊者ではなく」
「信念を持って破壊をしていると私は感じました」

どんな信念か。それはわからない。
ただ、パラドックスにも時代を遡行して破壊したい何かがあるのかも知れない。

「裏付け……」

つまり、ホンさんには私があちこちで人助けに奔走していることもお見通しなわけで。

「二つ、わかったことがあります」
「あなたが若い子に対してそういうからかい方をするヒトであるということ」

「そしてからかいながらも一個の人格として敬意を払っていることですかね」

初心と言われた当てつけを返して。
茶封筒をバッグに大事に入れた。
う、この茶封筒持った時のずっしり感が半端ない。

紅龍 >  
 
「――つまるところ、そういう事でね。
 売られた喧嘩を買うかは迷う所だが。
 何もしないわけにもいかねえからよ」

 手に負える相手かはともかく。
 情報は少しでも多いに越したことはない。
 まあ少なくとも、オレは一度当たって置いた方がいいだろう。
 ちっとは警戒してもらわねえと、部員たちが良いようにされたら困るからな。

「信念ね、事情は誰にしもあるもんだが。
 それがこの時代を壊すって発想にどうつながるのか、さっぱりわかんねえな」

 そこに関しちゃお手上げだ。
 肩を竦めてハンズアップ。
 わかったのは、嬢ちゃんがその『パラドックス』と相討てるだけ強いって事と、その上でもって『パラドックス』はこの時代を壊すと豪語してるって事か。
 こまったね、スケールがデカい話だ。

「若もんは好きでね、つい期待したくなる。
 ただ、今度裏を歩くときはうちの連中を使いな。
 本命と当たる前に疲れちまったら、仕方ねえだろ」

 人助け、大いに結構。
 だが、それなら十分以上の勝算を持って挑んでもらいたいところだ。
 ま、ナンパを追っ払うくらいの仕事はしてやれるしな。

「帰るなら、うちの連中に送らせる。
 ここから無事に帰すまでが、オレ達の仕事だ」

 オレが顎で指示すれば、店に居た客の半数以上が一斉に立ち上がり、退店していく。
 店を出れば、うちの女連中が嬢ちゃんをエスコートする事だろう。
 

川添春香 >  
「売られた喧嘩……」

つまり、彼が口にしているのは。
男伊達の問題なのかも知れない。
パパがよく口にしていた言葉だ。

「私にもわからないし、理解できません」
「どんな理由があっても……逃げる一般人の背中を撃つことの肯定にはならない」

眉を八の字にして少し冷めたハンバーガーを食べる。
ポテトもしなしな、でも割りと美味しい。

「……ありがとうございます」

多少、顔が売れたから。
やっぱり不逞の輩は出てくる。
負けなくても、消耗なんかしたくはない。

立ち上がる周囲の人たち。
店にいた人の半分以上がこの人の仲間……!

「なんだか、スケールが大きい人に関わっちゃったな…」

苦笑して。

その日はホンさんの言う“女連中”の人にエスコートされて自室に戻った。
報酬は生活費に、そして人の流れは私の力になってくれるだろう。

でも、どれだけ束ねたら。
この拳はアイツに届く……

ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」から川添春香さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」から紅龍さんが去りました。