2022/10/05 のログ
真詠 響歌 > 先生が言うには望まない能力を持ってしまった人、というのは結構多いらしい。
強い力が欲しかったのに裁縫に特化した力に目覚めてしまった、なんてのは可愛い話。
"見えすぎて"見たくない物が見えたり、触れた物を壊してしまったり。

(スイッチみたいに切り替えれたら、苦労しないんだろうけど)

ずっと強力な磁石みたいになってる人がいたら、きっと大変だと思う。
私が言えた事じゃないけど、まともに出歩くことすらできないだろうし。
制御するための訓練をしたり、補助具を付けて抑えたりするのだろうか。

「制御かー……」

クリームたっぷりのメロンパンにかぶりつく。
出来立て特有の外のサクサク感と、内側の生地のもちもち触感。
月初から買い食いすら我慢できていない私だけど、これでも色々と試してはいた。
私が、というよりも研究者の人たちがというべきかもしれないけど。
毎月の定期検査は少なからず私がこの異能を"制御"できているかどうかのチェックと、
その方法についてのアプローチが試されている。

真詠 響歌 > 私が明確に"歌"に詩を乗せて音にするのが、基本的にはダメな事。
鼻歌はオッケー、お話しするのも問題なし。
ただ、怒鳴ったり強く願ったりするのはダメらしい。

誰かと喧嘩でもして"いなくなっちゃえ"って言おうものなら本当にいなくなってしまう。
異能については他言無用。教職員と一部の風紀委員。
それと研究職の人たちにしか共有されていないから、表向きの私は非能力者になる。

「あむ……噂に違わぬおいしさ……」

ご馳走様。これはトコログ星5つ。
基本的に好きな物にしか評価を付けないから星5のバーゲンセールみたいな評価欄がログに残ってしまう。

「んー、寒くなってきたしそろそろ帰ろっと」

包み紙をキッチンカーの横にあったゴミ箱に捨てて、学生街の方に向かって帰途につく。
途中、聴き損ねたストリートミュージックへの執着なのか一度だけ振り返ってしまったけれど、
夜の更けてシャッターの降り始めた街は静かなものだった。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から真詠 響歌さんが去りました。