2022/10/31 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「こちら飛鷹――本部、及び第一、第二班応答願います――…駄目かぁ。」

無線機の故障…ではないだろう。何せ周囲の街並みの空気や姿が違う。
全体的に薄暗く、瘴気とも言える禍々しく毒々しい空気が街全体を覆っているような。

今日は最近少々活発化してきた、違反部活の取締りにバックアップとして同行していた筈だ。
それが、常世渋谷にある分署に立ち寄って、その足で現場に向かおうとした矢先に”これ”だ。

(――裏常世渋谷…だっけ。何時かの怪異騒動…【朧車】の討伐以来かな?)

あの時も、ほぼ自分は後方支援役で最前線でドンパチをしていた訳ではなく。
そもそも、少年は異能の関係で最前線は少々マズいのだ。

「…敵味方無差別に”巻き込む”からなぁ。」

しかも常時発動型で、オン/オフすら出来ない難儀な異能だ。
今この時も能力は発動こそしていないが、ずっと付いて回っている。
『嗤う死神』は周囲を嘲笑い、巻き込まれる人たちを嘲笑い、少年自身を嘲笑う。

「…兎も角、脱出して早く合流しないと…もう作戦始まってるだろうなぁ。」

無線機がそこまで高性能ではないのか、少なくとも位相がズレているであろうこちらとあっちのやり取りは無理そうだ。
小型無線機を懐に仕舞い込みながら、よいしょ、と傍らに置いていた銀色のガンケースを担ぐ。

飛鷹与一 > 「…闇雲に歩き回ってもしょうがないけど、大人しく救助を待つにしても…。」

何時、【怪異】の類に襲撃されるか分かったものではない。
どのみち、瘴気漂うこの空間に人間が長居するものではないのは確かで。
腰の後ろに差した一振りの短刀の柄を軽くコンコンと指先で叩く。
三本足の烏が彫金された鞘を持つそれは、特注品の特殊な短刀だ。
流石に、一流の刀剣や霊刀、妖刀の類に比べたら見劣りはしてしまうかもしれない。
それでも、幾つかの特殊能力を備えており、特に怪異への限定的ではあるが特効効果もある。

(…これのお陰で、普通の人よりは長い時間は活動出来るだろうけど…参ったなぁ。)

作戦をすっぽかす形になってしまったのもそうだし、無事に脱出できるかも分からない。
ちょっとした遭難だ――違う位相空間への遭難、というのも笑えないが。

ご案内:「裏常世渋谷」にアリシアさんが現れました。
アリシア >  
「ding dong ding dong」

小さな歌声が聞こえるだろうか。
ウィッチローブを着た少女から聞こえる歌だ。

「鶫は歌う、鶫は泣く、鶫は笑う」

コツ、コツと硬質な音を立てているのは、
些か気の抜けたカボチャの意匠の靴。
少女は歌いながら“彼”の近くを通り過ぎる。

「鶫を歌ってはならない、鶫に泣いてはならない」
「鶫を───笑ってはならない」

それはソナーだ。
人も、怪異も。
その声に気付けば出てくるはずだから。

飛鷹与一 > 「……!?」

反射的に、ガンケースを下ろして愛用の狙撃銃を取り出そうとするが、直ぐに思い直す。
怪異か、人か、はたまた別の――…

「……けど、聞いた事の無い歌だなぁ…。」

自分が音楽にあまり詳しく無いだけ、なのかもしれないけれど。
いや、それよりもこの場所でこんな鼻歌はそれこそ怪異に目を付けられかねないが。

(…余程、腕っ節に自信がある人なのか―ーいや、もしかして”わざと”歌っている?)

自ら怪異を引き寄せている、という可能性も。警戒は最低限怠らず、滑るような足取りで鼻歌の主の方へと移動する。

やがて、前方に一人の少女の姿が薄暗い空模様の空間に浮かび上がるように見えてきた。

アリシア >  
「……人間か」

コツ、コツ。足音はどこまでいっても硬質。
でも、声は柔らかく。

「裏に迷い込んだか? すぐに助ける、その服は風紀委員か……?」
「裏に討伐に来たのでなければ、すぐに戻ったほうがいい」
「人の身で異界に馴染むのは良くないことだ」

両手を広げる。何も持っていないことを証明した。
とはいっても、異能者や魔術師が溢れるこの世界で。
そんなことが何の安全保証にもならないことも知っている。

「目眩などは大丈夫か? この世界は長居できる環境ではない」

飛鷹与一 > 「…えぇ、風紀委員会所属の者です。どうやら、偶発的に”こっち側”に迷い込んでしまったみたいでして。」

硬質な靴音、反して柔らかな声に敵意や悪意は少なくとも少年が感じた限りでは全く無い。
最低限の警戒心だけは残し、ゆっくりと息を吐き出してガンケースを握り締めていた手を少し緩めた。

「俺は違反部活の鎮圧の応援として駆り出されてたんですよ。
それで、常世渋谷にある風紀の分署に寄って、そこから現場に向かおうとしたら…ここに居たみたいで。」

風紀である事、偶発的に迷い込んだ事、少なくとも能動的にこちらに来た訳ではない事。
彼女の問い掛けに、頷き応答を返しながらこちらの迷い込んだ経緯も簡潔に告げておく。

(…見た感じ、武器の類は無し――で、安心は出来ないんだけど。)

少女の見た目は可憐だが、何か、こう、目に見えないオーラ?『強者』の空気を感じる。
それなりに、風紀で修羅場を潜って来たからこそ身に付いた経験側みたいなものだ。
そもそも、素手だからといって異能や魔術という手段もあれば、不意に武器を取り出す可能性もある。

「えぇ、まだこの空間に迷い込んで30分も経過していないので。こことあっちは時間の流れそのものが違うと思うので体感的に、ではありますが。」

一先ず、こちらを気遣ってくれているのは嘘では無いと思うので素直に質問に答えよう。

「…おっ、と。すいません自己紹介遅れました。改めて、風紀委員会所属の、3年生飛鷹与一といいます。貴女は?」

アリシア >  
「風紀委員所属、飛鷹与一。その………」

視線が彷徨った。
どうにも慣れない日本の言葉ゆえに。

「私は一年生だ…」
「先輩相手に敬語が上手くないことを許してほしい……」

ウサギが刻まれた懐中時計を見る。

「なら、大丈夫だろう。歩けるならそのままついてきてほしい」

暗がりから飛びかかってきた、ジャックオーランタンに獣の牙がついたような怪異を消し飛ばして。

「ここは危険だからな」
「歩きながら話そう、飛鷹せんぱい」

飛鷹与一 > 「……ん?」

彼女の視線が少々彷徨うように逸らされた。
何か、失礼な対応や言動をしてしまったかな?と、内心で思い返す。
警戒していたのは大目に見て欲しい所だとして、失礼な言動などは取っていない…と、思いたいけれど。

「え?あ、ハイ1年生…じゃあ、後輩さんかな。敬語については俺は気にしないよ。
その代わり、俺の方も敬語は抜かせて貰っていいかな?」

と、笑顔でそう言葉を返す。お互い普通に喋る方が楽でいいだろう、という判断、。
彼女が懐中時計…ウサギが刻まれた可愛らしいもの――で、時間を確認しているのを見つつ。

「…了解、まだ全然歩けるからお言葉に甘えるとするよ。…あ、いや、でもその口振りだと…。
君は、しょっちゅうこっち側に来たりしてるのかな?出口の類に心当たりがあるみたいだけど…。」

瞬間、暗がりから飛び出して来た怪異を一瞬で消し飛ばす様子に目を丸くして。
同時に、少年の右手が閃けば右腰のホルスターから銃を抜き放ち、背後から迫っていた別の怪異の眉間を撃ち抜いた。
…念の為、怪異にも通じる特殊弾頭を込めたマガジンに入れ替えておいて正解だった。

少女ほどスマートではないが、少年も銃…戦闘の腕前は、風紀の一員だからかそれなりのものはあるらしい。

「…そうみたいだね。”こうなる”のは御免だし、君の意見に大賛成。」

肩を竦めて苦笑いを浮かべつつ、拳銃をホルスターに慣れた手並みで収めてから彼女に続いて歩き出す。

アリシア >  
「あ、ああ……それで頼む飛鷹せんぱい」

敬語について気にしない。なんと心の広い上級生だろう。
こんな人をこんな場所で死なせてはならない。
そう思いを新たにした。

「私は敵対的怪異を殺すことが仕事の一つだからな」
「頻繁にここに足を運んでいる」

眉間を撃ち抜かれた怪異は、犬の頭がカボチャになったような。
奇妙な怪異だった。今までに見ないタイプの。

「いい仕事だ、せんぱい」

そのまま歩きながら話を続ける。

「ハロウィンは“奴ら”が活性化する」
「私もハロウィンで目立たない格好をしながら夜にここに来ることにした」

「そうしたらせんぱいを見つけた、ただの偶然だが…とても良かったように感じる」

飛鷹与一 > 少年にとって、敬語を用いるのは…半ば癖みたいなものなので、そこまで苦ではない。
逆に、後輩が敬語を使う・使わないは個人の自由だから本当に全く気にしていない。
そこは、この後輩少女が喋り易い何時もの口調とかで構わない、というスタンス。

「敵性怪異を殺す――って、また無茶…あ、いや。今さっきの君の手並みを見れば納得だけど…。」

具体的に何をどうしたか、一瞬過ぎて流石に推論すら難しかった。
ただ、武器の類ではなかったように思えるし、魔術…魔力反応もおそらく無かった。
そうなると、異能辺りが矢張り濃厚なのだが、あまりズケズケと聞くのも憚られて。

「一応、俺も風紀の一員だからね。君には及ばないだろうけど、怪異殺しの経験はそこそこはあるし。」

正確には、怪異殺しのバックアップ、だが。何せ少年の異能は地味に厄介な為、最前線で戦う事が出来ない。
必然的に、中・長距離からの射撃や狙撃が少年のメインの戦闘スタイルとなる。
最も、彼自身は自分の適性を把握しているから、それについては不満は無い。
――自分の異能の”つまらない余波”で周りに迷惑を掛けるよりはマシだ。

「ハロウィン…成程、その手の”空気”は霊的存在や怪異にとっては『お祭』だろうし…。」

彼女の格好や、ここに居る理由に納得したように。だが、怪異を狩る彼女の背景については尋ねない。
初対面、というのもあるがあまり無遠慮に相手の領域に足を突っ込むのは少年の流儀に反する。

「…実際俺も助かったよ。一般的な無線機程度じゃ外とは連絡取れないし、あっちも今頃俺を探してると思うけど…。」

そもそも、裏常世渋谷に救援が来たとして、”確実に合流出来る保証は無い”ようなものだから。
そういえば、と。思い出したように彼女へと今度はこちらから言葉を投げ掛ける。

「ごめん、君の名前を聞いてもいいかな?1年生で俺の後輩さんなのは、さっきの君の言葉で理解しているんだけど…。」

アリシア >  
「すまない、名乗り忘れていた」
「私はアリシア・アンダーソンだ、飛鷹せんぱい」

「良い名前だろう? 私はこの名前がとても気に入っているんだ」

ふふん、とドヤ顔をして。
後方を見ると、少し早足になった。

「風紀委員というのは、常世島を守るためなら色んなものと戦うのだな」

後方からは足音。それも巨人のような。
事実、ジャックオーランタンの顔がついた全長3メートルほどの巨人に尾行されている。

「祝祭に活性化するのは人だけでないらしい」
「気づかないフリをして少し早足になろう、せんぱい」

この先に元の世界に戻れる場所がある。
それは間違いないが、どうにも人の気配に怪異が集中してきているようにも思えた。

飛鷹与一 > 「アリシア・アンダーソン…うん、良い響きの名前だ。一先ず、ここを出るまでよろしく、アリシアさん。」

敬語は抜いているが、矢張り性格的なものか後輩の少女にも「さん」付けである。
少々ドヤ顔で己の名前を誇らしげにする少女に、微笑ましく頷きながらも――少年も気付いたか、少し早足に。

「…うん、まぁ警察の代わりみたいなものだからね。学生も多く在籍しているっていう分かり易い違いはあるけど。
まぁ、学園都市だし――…と。」

アリシアの歩調や速さにぴったりと合わせて少年も早足で警戒を全方向に向けながら進む。
後ろから巨人のような重い足音。尾行のつもりのようだが、振動と気配は隠し切れていない。

「了解、いちいち怪異を相手取っていてもしょうがないしね。交戦は最小限にしておきたいよ。」

そう笑いつつも、ふと目を細めて。「待った、アリシアさん」と、少し強めに声を掛けて制止。
少年の目が、いつの間にか黄金に染まり薄っすら輝いている。
何らかの異能を発動している、というのは何となく彼女にも分かるかもしれない。

「――認識照準補正、チャンネルは怪異に設定――接続。」

呟きながら、爛々と輝く黄金瞳が、一見すると何も見えない二人の前方、5メートルちょい先辺りを睨む。

「アリシアさん、俺たちの前方5メートル空間に透過で潜んでる怪異が3体。やれる?」

彼女の実力を疑うとか全くせず、端的にそうオーダーを投げ掛けて。

アリシア >  
「ああ、先導は任せてくれ飛鷹せんぱい」

早足に歩きながら考える。
どうにかして前方に全力疾走できればいいのだが。
私は体力がそれほどあるほうじゃないのが難点だな。

「学生の街で、学生が平和を守っている」
「そのことはとても尊いものだよ」

嘆息して首を左右に振る。

「抹殺するにしても開けた場所では不利だしな」

巨人が思い切り暴れられる場所で真正面から戦うのは難しい。
そして相手が思い切り暴れようと思えば。
既にここはキル・ゾーンなのだ。

その時、せんぱいの瞳が煌々と輝いた。
驚いた、それは。

「あ、ああ」

破壊の手という概念を錬成。
見えざる腕を伸ばして、潜んでいる……確かに、潜んでいた。
怪異を三匹、貫いた。

「驚いたな、不思議な能力を持っている」
「それに学園都市の伝説だよ、金色の瞳を持つ者」

「それは特異たる異能の持ち主である、とね」

後方の気配が一気に近づいてくる。

「走ろう、せんぱい」
「前方の道路中央に祠がある」

「そこに触れたら元の世界だ」

ウィッチローブの裾を摘んで走り出して。

飛鷹与一 > 職業柄か、彼女の動き方の一つ一つをつい観察してしまうのだが…。

(具体的には分からないけど、アリシアさんの能力はかなり強力だとは思う。
けれど、運動能力とかは見た目相応、と考えてもいいのかな…。)

あくまで、後ろから付いていきながら思った推測でしかない。
実際的外れも大いに有り得る。少年の『目』なら彼女の力の一端くらいは解析できる…かもしれないが。

(それは『駄目』だな。彼女自身が語ってくれるならまだしも、”覗き見”は俺の趣味じゃない)

そう、結論付けて彼女に『目』を使う事はしない。代わりに、その能力を怪異の炙り出しに使う。

「外から見たら、やっぱり自警団とかそういう見方もされるのかな――うん、仕留めるならむしろ。」

狭所や閉所にて、相手の動きを制限しつつ一撃で確実に仕留めるのが理想。
ただ、正直言えばそんな戦術を展開するくらいなら、今はさっさと『出口』を目指すべきだ。

少年の黄金の瞳が、認識の”チャンネル”を怪異に設定する。
自分自身、この瞳の力の真価は今だ掴めてはいないが、こういう時は非常に便利だ。
ただ、怪異への決定打は彼女の能力で瞬殺して貰った方が効率的に良い。
索敵・分析・観測を自分が担い、戦闘を彼女に任せる。無論、出来る範囲で射撃の援護はする前提で。

(後方支援ずっとやってるから、このポジションも随分手馴れてきたなぁ。)

そんな事を場違いにも思いながら、彼女の力の一端をまた垣間見て目を丸くする。

「お見事…って、それは大袈裟じゃない?一応、この島に着てから開花した異能ではあるけどさ。
俺自身、2年ちょいの付き合いがある力だけど、未だに正しい使い方が分からないしね。」

苦笑いと共に異能をオフ。緩やかに黄金の輝きが消えて何時もの瞳へと戻る。
黄金の輝きは、その力が発揮されている時にのみ姿を現す。

「了解、後ろの”デカブツ”は無視して一気に行こう…!」

彼女に続いて、少年もガンケースを担ぎながらやや前傾姿勢で走り出す!