2022/11/19 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に藤白 真夜さんが現れました。
■藤白 真夜 >
「ん~……。
どーしよっかなー」
夕暮れ時の常世渋谷。
ぽつぽつと健全な人間の姿が減り、夜の街としての姿が少しずつあらわになっていく時間帯。
街には夜型の人間や遊びの帰りといった風体の者が多い中、制服姿でオープンカフェのテラスに座りながら物憂げに唸っていた。
咥えたままのストローに戯れに吸い付くと、肌色のミルクティーが応えてくれる。
だが、喉が潤う気はしなかった。
(……真夜の調子が悪い。ソレは良いの。悶え苦しんでるとこ見るのも愉しい。
でも──)
ストローを咥えたまま手元のスマホに目を落とす。
表示されているのは、簡単なまとめサイト。
ここ最近の噂やニュースが、噂やガセも問わず流れていくような、雑な場所。
『落第街、炎上』
──いつものヤツ。
『“破壊者”の死傷者はのべ■■■人に登り──』
──これも面倒くさい……。
『“EE”の元メンバーが一般男性と交際!?』
──「なワケないじゃん。俺相手見たけど、メッシュしか目立ってなかったぞ。つりあってねーよ、俺のがマシ」
──「ドルオタってすぐ発狂するよね。こんなとこ見てるヤツのがつりあってないし」
──「いえ、事実として有り得ません。あの糸目、ロリコンなので」
(……いや人の性癖は放っておきなさいよ……)
文字通りにトイレの落書きのような書き込みが集まるそこを、読み飛ばした。
間違いない。こんなことになっていることを、私は知らなかった。
ここのところしばらくの記憶が、すっぽりと抜け落ちている。
……心当たりは山ほどあったけれど。
■藤白 真夜 >
「あの程度で死にすぎたのかなぁ……」
つまるところ、調子が悪かった。
私も、“真夜”も。
真夜の作ってくれた手作り怨念でなんとか息は吹きかえしたものの、私も未だ本調子とはとても言えない。
表は精神をやられ、裏は空腹に飢えていた。
「でもな~……」
かといって、今落第街やそこらに補給ついでに遊びに行けるかというと、これもまた難しい。
情報収集代わりに目を通した記事を思い返す。
曰く、“時代の破壊者”。
(……まあ、あの街でなんかが暴れてるのは今更日常茶飯事だからどうでもいいけど。
こいつは結構──、ま、変わんないか)
聞くところによると、常世の裏も表も問わず暴れまわっているらしい。
その動機は少し気になったけれど……今は遭遇したくないという気持ちのほうが強い。
今派手に死ぬとまたあの不味いてづくり怨念料理をブチこまれることになるから。
「……むしろ、こっちのほうね……」
次の記事に目を写した。
このところ、妙な噂が出回っている。
男女二人に関する、あれこれ。
それは都市伝説のようなものかと思えば、生々しい下らない下卑た話であったりした。
私怨によるただの個人攻撃。
そう、結論づけるのも簡単だった。
けれど──、
どこか、作為的なものがある。
そう、感じた。
当然、ただの勘。
しかし、きっかけでも見つかれば見えてくるものがある。
……それは、噂の根本になったというある書き込み。
「……監視対象……?」
その単語だった。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に佐々木勇さんが現れました。
■佐々木勇 > ……血の、匂い。
あの、黒いセーラー服の子?
私の、愛刀カグツチ・コピーが熱を発している……?
……まあ、いいか。
早く、家系ラーメンを食べに行こう……
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から佐々木勇さんが去りました。
■藤白 真夜 >
「……けほ、こほっ」
咳き込んだ。
別に、血を吐いたりするわけでもなく。
ただ──“厭ななにか”が通りすがったような感覚。
(……多いんだよね~、こういうの。
この島、やたらと悪性存在に強いのが。
別に今は悪いことしてないんだけどなぁ)
一瞬感じた熱に辺りを見回したけれど、……まあいいや。
熱いの苦手だし。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に佐々木勇さんが現れました。
■佐々木勇 > やはり。
「家系超×10激辛ラーメンは、素晴らしい……」
そう、私は焔の霊刀「カグツチ」の持ち主。
「すなわち、身体が熱くなればなるほど……」
私の「焔」は、強くなる、内焼機関のような、この身体。
――しかし――
その、私の「焔」を感じる力が、何か。
――誰かの、命の焔が、弱くなっている?――
すぐ近く、確かに感じるが。
――まあ、今回は――
ここに来たばかりだ、ここの礼儀作法も知らない。
――そう、食べたら元気になって、そして――
寝る、休むのが、自然と言える。
――おやすみ、どこかの誰か――
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から佐々木勇さんが去りました。
■藤白 真夜 >
一瞬の戸惑いを振り切り、もう一度脳裡の思索に立ち返る。
(ただの個人攻撃や嫉妬ならこんな言い回しをする必要が無い。
アイツらはデキてるだのロリコンだの罵倒するほうが余っ程解りやすい。
だから、その線は捨てれる。
……じゃあ、何……?)
今や噂は薄く広く拡散し、よくわからなくなっていた。
でも、もし。
……これが、個人攻撃ではないとしたら?
(何よ監視対象って。頭使うの私の担当じゃないんだけど。
私も昔は首輪がついてたけど今は放任ってカンジだし、この街じゃそう珍しくもないかな……。
……“目をつけられる”。
脅しみたい……──?)
なにかがひっかかる。
“目をつけられる”……? ……“何”に?
(……いや、それは当たり前の話。やっぱりバカね私……。
監視には、する側とされる側が居る……!
それを踏まえれば、これは──)
都市伝説めいて噂される存在。
もし、それが実在すれば?
──この島なら、なんらおかしくない。私だって違反部活で似たような出自をしたのだから。
巨大な裏組織がカバーストーリーを作って表舞台に上がっているというのはよくある話だ。実在しうるからこそ、都市伝説にも成り得るのだから。
「脅しというより、……暴露……?
失敗をなじる、糾弾のような……。
個人ではなく……『お前達は尻尾を出したぞ』という意味での、組織への攻撃……?」
……正直、正鵠を射た感覚は無い。元から私は頭脳労働には向いてないのだ。面倒くさいし。
でも、もっと面倒くさいことになるのを避けるだけのバランス感覚は持っているつもりだった。
でないと殺人鬼、やってられないんだよね。
仮に、大きな組織となにかがやりあってる余波や牽制が、あの噂を流したヤツの目的だとしたら?
この島で暗躍する連中の場所はだいたい落第街って決まってる。
そんな組織同士がやりあってるところに目をつけられると、ただでさえ面倒くさい“補給”が更に面倒くさくなる。
「……めんどくさぁ~……」
テラスのテーブルに体重をかけながら、ぐったりと力ない声をもらした。
そう。
考えると、大概面倒くさいことになるのだ。
なんであるかも無いかもわからないことなんかに気を配りながら■■をやらなきゃいけないんだっていう──
■藤白 真夜 >
そんな最中、また“なにか”がよぎった。
交わることはなく、しかし行き違い様に私は面をあげた。
「よし、考えるのやーめよ」
気の所為ではなく重たいカラダを引きずって、立ち上がる。
全く、その通りね。元気になるためには──
「ヤッて食って寝るに限るっ。
ふふふっ、わかりやすぅ~い!」
天から降ってきた──いや、よぎったアイディアに、感謝したい気持ちだった。
それは、一番解りやすい解決法だ。
……組織の暗躍。
破壊者の横行。
そんなものを気にするより先に、やることがあるのであった。
向かう先は、落第街。
あそこの命は安いとされているらしい。
──全く、勘違いも甚だしいってハナシ。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から藤白 真夜さんが去りました。