2024/05/30 のログ
ご案内:「【ソロール中】メイド喫茶『かふぇらった』」に久能 やえさんが現れました。
■久能 やえ > それは、まだ私が学園に入学して間もない頃でしたーー。
「や、やめてください店長……。
こんなこと……わたし、できません……」
『おや、嫌だと?
なら断ってくれていいんだよ。
ボクも無理やりは趣味じゃないからね。
ボクはただ、君がお金に困っているというから善意で提案しただけだからね』
そういって、わたしの前に出された契約書を持っていこうとする。
私は思わずその腕を掴む。
「ま、待ってください!」
■久能 やえ > 私の行動を読んでいたかのように。
店長は腕を捕まれても驚きどころか愉悦の表情を浮かべた。
『どうしたんだい?
君は嫌なんだろ?
ボクも無理強いはしないと言っただろう。
それで話は終わりじゃないか』
この人は、わかっているのだ。
契約書に書かれた数字。
現在の給料をおよそ三倍にした数字。
一時間働けばおよそ学生が考える好きなものを買えてしまうお給金。
それが、記載されている。
こんなものを見せられては、断れないことを。
「わ、私……は……」
■久能 やえ > 店長は呆れたようなため息をしながらも嗤いながら近づいてくる。
『いいかい、やえ君。
もう一度だけ、提案してあげよう。
でも君がもう一度、無理だ、嫌だ、といったらこの話は終わりだ』
紙が、目の前に再び差し出され。
『ボクは君の給与を三倍にしてあげよう。
その代わりに君はここに記載した条件をのむ。
たったそれだけの話だ。
……さぁ、どうする?』
「…………」
私は、泣きそうな声でーー半分泣いていたかもしれないがーー
「せめて、ここに出勤するときだけに……してください……」
そうお願いした。
■久能 やえ > それを待っていたかのように、楽しげな声が耳に入ってくる。
『ははは!いいとも、やえ君!
流石に私も毎日は可哀想かと思っていたからね!
ではその提案を受け入れよう!
君の一週間のシフトは平日3日と休日1日だったね!
こんなこともあろうかとその契約書も用意してある!
さぁ、サインをしたまえ!』
さっと入れ換えられた紙には三倍の給与と、こちらが提案した条件が記載されている。
この人は、私を追い詰めればそう言うとわかっていたのだ。
『さぁ、さぁ。さぁ!』
店長の顔が迫る。
もう逃げられなかった。
私は、震える手で契約書にサインをして。
■久能 やえ > 『ーーいい子だ、やえ君。
では早速してもらおうかーー』
優しい力で私の肩を撫でてくる。
取り返しのつかない契約をしてしまった。
お金ほしさに、青春を汚すような契約を。
『ーーメイド服通学を』
「私の青春三年間んんんんんんー!!!!」
■久能 やえ > 『いいじゃないか別に。
常世学園は制服自由だろ?
メイド服を制服と思えば同じじゃないか。
むしろメイド服は制服だよ?』
「メイド服で通学する人なんているわけないじゃないですか!
それに私は可愛い制服をきて、優しい先輩や格好いい男子と一緒に遊びにいきたかったのに!!
漫画みたいな青春を期待してたのにー!!」
うぁぁん、と泣き出してしまいました。
制服をきて学園に通う青春を期待していたのに。
可愛い制服で校則ぎりぎりのスカート丈。
仲の良い男女グループでの登下校と買い食い。
夢に見ていたのに。
そこに混じるメイド服の女。
■久能 やえ > 『まっ、頑張ってくれたまえ。
なぁに、うちの宣伝が十分にされてお店大繁盛SNS大バズり店長大炎上したら着なくてすむときがくるだろうから』
「一生こなさそう」
ぽつりと呟く。
もちろん店長には聞こえていない。
『そんなわけで。
ちゃんと明日から宜しく頼むよやえ君。
契約は絶対だからね』
「ふぇぇぇ……店長のばかぁ……おにぃ……あくまぁ……」
そんなわけで。
私のメイド服通学はこの日を境に始まりました。
ご案内:「【ソロール中】メイド喫茶『かふぇらった』」から久能 やえさんが去りました。