2020/08/11 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 夏である。
夏休みなのである。
休日と言えば常世渋谷に繰り出したいのである。

コーヒーショップで買い求めたコーヒー片手に街歩き。
今日は服のサマーセール目当てだったはずだが、気付けば普段使いにピッタリの角皿を購入していた。
怖い。買い物怖い。

そんなわけで、足取り軽くご機嫌――

ではあるのだが、さすがに日中の炎天下。
ビルの日陰に立ち止まって、小休憩。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に園刃 華霧さんが現れました。
園刃 華霧 >  
なんだか最近湧いて出てきたんだかなんだか知らないけれど、
妙なところがあると聞いた。
まあ、面白そうだと思ってろくな前情報もなしにつっこんでみたのだが……

「……うッワ、場違い感ッパないナぁ……」

立ち並ぶ、なんというか……こう、女子っぽい店。
ファッションだ、ネイルだ、アクセサリーだ、なんだかんだ。
かろうじて、スイーツって辺りくらいは自分の圏内に引っかかるんだけど……

「いヤ、無理。マジで、無理。」

思わずボヤいた。
其の上、とても暑い。
赤い制服なせいか、尚更暑い気がする。

なつはあつい
あつはなつい

何言ってるのかわからなくなってきた。

「ァー……どっカできゅーけー……しナい、と……死ぬ、ナ……
 マジで……」

どうしよう。
此処で干からびで死にました、とかなったらとんだ笑いものだ。
省吾くんとかに顔向けも出来ない。

きょろきょろとまさにお上りさん状態であちこち見回す。
あ、そうか。
日陰、日陰だよ!

思わず手近で行けそうな日陰に飛び込んだ。

「……ンぁ?」

そこには先客の姿。
そして、以前に見た記憶のある……それは……

「……ヨッキー?」

思わず、間抜けな声を上げる。

ヨキ > よく冷えたコーヒーがうまい。
汗ばみつつも、日陰はやはり心地よい。

日陰で休憩したい人間は他にもちらりほらり。
都会らしい距離を取りつつ、待ち合わせ、スマホ、水分補給と各々の時間を過ごしている。

そこで新たにやって来た少女の顔に、ふと目を留めて――

「ソノバ君?」

こちらも思わず、声を上げた。

「――おお! これは偶然だ。
あはッ、思ったよりも早く会えたな」

“また会えると思わなかった”ではなく、“思ったよりも早かった”と。
快活な笑顔で華霧を見下ろす。

園刃 華霧 >  
ほんのしばらくぶりにあった其の相手は。その教師は。
“思ったよりも早かった”ときた。
“また会えると思わなかった”じゃなくて、だ。

……まったく、ほんと敵わんなあ。
思わず、頬をかいて少し視線をそらしてしまう。


「いヤ……アタシも…… 会うつモりじゃ居たけド。
 まさか、こンな偶然ばったり、とは思わんカったヨ。」

なんとも言えない微妙な表情。
笑っているような、照れているような。

「そッカ。ヨッキーも夏休みか。
 そりゃソうか。そうダよナぁ……」

そしてようやく落ちてついて相手の様子を見れば、コーヒー片手のリラックス状態。
ああ、そういえば。夏休みってやつだった。
かくいう自分も今日は非番でオヤスミ。
でも私服なんて持ち合わせもないし、いつもの着たきりスズメの制服だ。

「……ンー……ヨッキー。
 時間もらッテもいイ? こノ間の"報告"しようカなってサ」

少し考えてから、口にした。

ヨキ > 「よかった。ヨキもな、あの後ずっと気にしておったのだよ。
ふふ、巡り合わせだな」

恥ずかしげもなく口にする。
先日の報告と聞けば、快く頷いて。

「もちろん良いとも。
買い物は終わったし、ぶらついて帰ろうと思っていたところなのだ。

そうだな、カフェでも入ろうか。
今にも暑くて死にそうな顔をしてる」

飲み掛けのコーヒーをぐっと飲み干して、手近なゴミ箱にきちんと分別して入れる。

「そこの坂を少し下ったところに、レトロで静かな店があってね。
話すには丁度いいだろう」

言って、華霧を促す。
案内するのは、古き良き純喫茶を模したカフェ。
細い路地に面しているとあって、客足は控えめだ。
知る人ぞ知る店、といったところ。

園刃 華霧 >  
素直に案内されてついて行った先。
レトロ、という言葉も存在もろくに知らないが、とにかくなんとなく古い感じの喫茶店。
中に入ってみれば、内部は全体的に茶。
建物もテーブルも椅子も、全て木製で重厚感のあるものだった。

「ハー……」

静かな音楽が、邪魔にならない程度に流れている店内。
思わず、キョロキョロと見回してしまう。
いや、こんなところまた場違いでは?
と、つい思ってしまう。

「……ま、人も少ナいし。
 静かで、いっか。」

いつものしつけの悪さは何処へやら。
思わず神妙に椅子に座り込んでしまった。
なんというか、肩身が狭いというか。
どう振る舞ったものか、見当がつかない。

ヨキ > 通されたのは、窓際の二人用テーブル。
建物の屋根で程よく遮られた光が明るく、空調が利いた店内はとても涼しい。

二人分の水とおしぼりを供された後、メニューを開きながら話を続ける。

「表には他にも『美味しいカフェ』は沢山あるがね。
そちらは何とも賑やかだから、真面目な話には勿体ないと思って。
せっかく、君の大事な話が聞けるんだもの」

大事な、と言いつつも、語調は軽やか。
強張る華霧に反して、何とも寛いだ調子。

「今日は『お疲れ様』の記念だ、ご馳走するよ。
好きなものを頼んで」

メニューに並んだ品は、こだわりが感じられつつもオーソドックスなもの。
コーヒーに紅茶、涼やかなクリームソーダ。
洋食にケーキ、プリンアラモードと、さまざまな種類が揃っている。

少し考えたのち、紅茶とチーズケーキのセットにしようかな、と笑う。

園刃 華霧 >  
「ンー……なるホど、ナぁ。
 って、ウは。そんな大シた話じゃナいよ、ヨッキー?」

『大事な話』なんて言われてしまった。
いやいや、そんなだいそれたもんじゃない、と思わず手をふる。
本当に、ただただこっ恥ずかしいだけの、馬鹿な話。

それでも、そこに"導いた"目の前のこの相手には。
伝えておかねばならない、そう想ったから。それだけの話なのに。

「ァー……うー……ンじゃ、えと……」

借りてきた猫のよう、という言葉がある。
今、まさにそんな感じの状態だった。
いつもであれば、遠慮なく山のような注文を出しただろう。

けれど、今は思案する。
なにを……なにが、相応しいのか

「『オムライス』……」

注文したのはたった一つだった。

「……デ。えと。
 どうシよっか。アレから、を話せバいい?」

注文を終えれば、なんとなく上目遣いに相手を見て聞いた。

ヨキ > 「やあ、あまりハードルを上げてしまっては、君が話しづらいな。
ふふ、済まん済まん」

急かすこともなく、華霧がメニューを選ぶ様子をのんびりと見守る。
そして彼女が選んだのは――

「…………」

目を伏せて、微笑む。
忘れもしない。

「判った」

短く答えて、店員を呼ぶ。

そうして、注文を終えたのち。
店員が下がってゆくと、華霧に向き直って。

「そうだな。あれからどうなったか、知りたい。
順序立ててなくたって構わない。君が話したいように話して」

水で喉を潤し、にこりと笑い掛ける。

園刃 華霧 >  
「ァー……うン。ありがト……
 あレから、色々あっテさ。」

特に何もコメントを差し挟むこともなく、注文は成された。
自分も特にそこにコメントをすることはなく……
次の話をすすめる。

「アん時さ……ヨッキーは
『今、もう一度会えるなら。いちばん会いたい人は、誰だい』
 そう、聞いたヨな。」

自分でも思い出しながら、少しずつ口にする。
あの時の会話は、昨日のように思い出すことができる。
できてしまう。
思い出せば、ものすごく恥ずかしくもあるのだけれど。

「……で、その……あの時、いッタの。聞こエてたカ、はわかンないけド。
 その……レイチェルちゃんに、あの後、割とすグに会った。
 ……いヤ、出逢った」

そう、あの時、ああ言われて。大丈夫といって別れたくせに。
自分から会う度胸は、自信はなかった。
そんな自分に彼女は"会い"にきた。

「全身、ボロボロんなっテさ。 落第街走りマわッテさ。
 あン時のヨッキーみたいに、必死になッテさ……
 そんナんなって……アタシに、さ」

できるだけ、表情を抑える。
平静に、平静にだ。

「そレなのに、アタシは…… デバイスを盾にシて、話、セまってサ。
 ヨッキーに大丈夫って言ったクセに、情けナいったラ……」

自嘲するように笑った。

ヨキ > テーブルの上で指を組み合わせて置き、華霧の話に耳を傾ける。
穏やかな相槌と共に。

「ああ。……名前は判らずとも、君が強く会いたがっていたことはよく判った。
レイチェル君、と言うのだな。

……そうか。
その彼女は、君に会いに来てくれた、のだな」

華霧の自嘲に、小さく二三頷いて。

「――あれは、命にも関わるような日々だった。

そこで、君を丸ごと引っ繰り返すような話になったのだから。
咄嗟に思わぬ行動を取ってしまうことも、さもありなん、だ」

目線はずっと、柔らかに正面の華霧を見守っている。

「続けて?」

園刃 華霧 >  
「うン」

素直に返事を返す。
そう、ここからだ。

「レイチェルちゃんハ、言った。
 『――オレとお前の間違いを、正す為に来た』って」

そう。
お互いにすれ違って、お互いに誤ってしまった。
その、間違いを。

「ヨッキーはさ、『少しくらい、言い合いになったっていい。』ナーんて、言ってタけどサ。
 もー、そっかラひどイの。」

自嘲は恥ずかしがるような笑いに変わる。

「レイチェルちゃんは、『送り出した』のが間違いダって。
 アタシを『止める』なンて『我儘』言えナかったッテさ?
 で、思わズさ。『そんな半端な考えで送り出したの?』って。
 で、そっカら子どもの喧嘩。マ……」

今思い出しても恥ずかしい。

「アタシが、一方的に、アレこれ、言ったンだけど……」

思わず頭をかいた。

「で……まア、うン……
 そレから、ナカナオリ……ね。」

思わず、視線をそらす。

「……『友達』は。
 ……『居心地の良さ』は。
 ……そこニ、あった、ヨ」

ぼそぼそと、口にした。

ヨキ > その後の顛末に、微笑みが少しずつ深まってゆく。
嬉しさに目を細め、はにかんで、唇を噛み締める。

「そうか。子どもの喧嘩、か。ふふ……ふふふ。
そこまでぶつかり合ったのは、恐らく初めてだったろうな?

……素直になれないのは、みな同じ。
相手のためを思うあまり、結果的に誤ってしまう。

『自分のため』と『相手のため』のつり合いが取れてこそ、すとんと納得できるはずなのにな」

くすくすと笑う。

「……よかった。本当によかった。
それを聞けて、ヨキも嬉しくなれる。

おめでとう。それに、お疲れ様。
君は――『見出す』ことが出来たのだな」

ややあって、オムライスと紅茶のセットが運ばれてくる。
それぞれの前に料理が置かれると、食器を手に取って。

「……さあ、『お腹いっぱい』になるといい。
今ならきっと、すごく美味しい」

オムライス。ささやかで、日常的で、それでも叶わなかった夢の料理。
いただきます、と手を合わせる。

園刃 華霧 >  
「うン。そういう喧嘩……初めテ……だっタ。
 泣いタ、のモ……初メて……」

何かのために泣いたことなどなかった。
それはまだ誰にも言っていない話。
気がついたら、素直に言ってしまっていた。

「ンー……そウ、だね。そレは思い知っタ。
 お互い遠慮シて結局、いっちバん大事なとこ逃すとカさァ。
 あかねちんが『オハナシ』を大事にシてタのって、そウいウ意味もアったンかなッテ。
 今はそう想ってル。」

頭をかきながら、なんとも言えない笑いを浮かべる。
照れたような、困ったような。

「うン、ありがと……
 アタシも、まだマだ、だけど……
 ひとまずは、うン。『見出』せタ、かナ」

ついで浮かんだのは、はにかむような笑いだった。
これから……そう、これからだ。

「ン、そウ……だ、ネ。
 いただキ、ます。ダ」

オムライスに手を合わせる。
そして、口に運ぶ。

「ン……うマい。はは」

朗らかに笑う。
花が咲いたかのようだった。

「ァ、そレから。
 そノ後もサ。結構、色々あッテさ。
 『……君には、『接続』すべきものが他にあると思う。』って。
 アレも、確かに……そうダってナって」

行儀悪く、スプーンを片手に報告の続き。

ヨキ > 「そうか。――『泣けた』のだね。
君はそうして、素直になれた。
ヨキが願ったことは、みな君自身が成し遂げられたんだ」

“その場限り”の名を持つ少女が。
大事なもののために泣いたこと。
その話は、ヨキを感嘆させるには十二分だった。

「日ノ岡君は――彼女は、常に対話を大事にしていたからね。
ヨキが彼女の先生だってこと、改めてよく判るだろう」

ポットから紅茶を注いで一口。

「そうか、美味いか。よかった。
ヨキも今晩の夕食はオムライスにしようかな。
美味しそうに食べている人には、ついつい釣られる」

初めて目の当たりにした華霧の明るい笑顔に、満足げな表情。
幸せそうにオムライスを食べる様子が、嬉しくて、嬉しくて。
静かに、穏やかにその様子を眺める。

「ああ。
ふふ、君はよくヨキの言葉を覚えていてくれたのだね。嬉しいよ」

それで? と、話の続きを促す。

園刃 華霧 >  
「ヨッキー、どコまで欲張りに願ってタんだヨ……
 まったくサぁ」

思わず困ったように笑う。
本当に、色々見透かされているみたいで怖い。
怖いけれど、安心もする。
本当に不思議だ。

「いヤ、ほんと……本当に、そウだよ。
 あかねちんのセンセーだナ」

ああ、本当に。
どちらも手強くて……とても、心底、信頼できてしまう。

「はハ。ヨッキー、話によれバさ。
 『オムライス』は『めちゃうめぇ』やつで、『世界だって、取れる』らしイよ?
 勝負食だ。」

オムライスを食べたい、と言う目の前の男に笑って応じる。
そう。勝負食。
だから、アタシはこれを選んだんだ。

「ン……流石に何も無し、はなくテね。アレからしバらくサ、留置所に入ってタの。
 そうシたラさー……こレが、想像以上にお客がきてネ?」

数人は、予想していた。
それぞれの理由で来るだろうことを。

でも、それだけではなかった。
まったく予想もしていなかった人物が何人も訪れてきた。

「本当に……アタシは何も見えてナかったンだなあって……想った。
 『友達』は……一杯、イたのに、さ……
 本当に『馬鹿』ナこと、シてた。」

恥ずかしそうにそれを口にする。
ただ、今度は目をそらさない。
自分の過ちは認めないといけない。

「デ……ま、ようやくこの間、釈放されて。今ってワケ。
 ……ァ」

そこまで言って、一個だけ気がかりなことを思い出す。
でも、これは……うん。口にしたものか。

「ヨッキー、さ。一個だけ。一個だけ。
 アタシの、相談……ってイうカ。判断、聞いてもラって、いい?
 合ってるか、間違っテるかとか。そウいうの、なくテもいいンだ。
 たダ、聞いてクれるダケ、でもいい。
 勿論、なンか言ってもラっても、いい。」

他の誰にも言えない。
だからこそ、目の前の……教師に頼んでみた。

ヨキ > 「ははは。ヨキは我侭で、貪欲で、底なしだとも。
『生徒諸君が、みな己に素直に生きられるように』。

……斯様な、大変さばかりの島だもの。
そう願わずにはおれないのだよ」

悪びれもせず、大らかに笑ってみせる。

「ああ。君の友人が――『彼』が、最後に願ったほどの料理、だものな。
これで君は負けない。これからの困難にも……それから、夏バテにも」

冗談めかして付け加え、楽しげに笑う。

「ほう、留置所か。それはまたご苦労だったな。
……君を訪ねた者はみな、それぞれ君を案じていたのだろうよ。心から。

それを気付けたんだ。
君はあの日会った夜から、ぐっと変わった。
さまざまな経験を経て、揺るぎない“芯”が出来たのだよ」

ケーキを口へ運ぶ。
しっとりとした甘みに、思わず顔が緩む。
見るからにスイーツが好きなのだと判る顔。

けれど、華霧からの頼み事には、真面目な顔をして。

「……『判断』? ああ。ヨキでよければ、聞こう。
それこそ、大事な話だろうから」

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に修世 光奈さんが現れました。