2020/08/12 のログ
■園刃 華霧 >
「まッタく……『真理』に『全部』ナんて願おウとシたアタシよか
よっぽド貪欲ダな、ヨッキー」
愉快そうに笑う。
本当にスケールの大きなことで頭が下がる。
『一杯あっても、どうせ使わねぇ』……そういった奴が居たけど、
ヨッキーは全部を抱えていくんだろうなあ。
「揺るぎない"芯"……か。
"空っぽ"なアタシに、芯ができたなら……ソイツは、幸せ、ダな」
照れたように笑う。
まだまだ不安定な気もするけれど……それはこれからの話。
そして――
オムライスを再度口にして……よく咀嚼した。
美味しい。うん、美味しいな……
飲み込む。
「……アタシも、あの時、何人かトゥルーバイツに勧誘した。
した連中は、結局全員、デバイスを起動したらしい。
死亡リストに名前が名前が載っていた。」
大事な話を始める。
もう一つの顛末。
もう一つの後始末。
「そレは、アイツラが本当に望ンで挑んダから……アタシも後悔は、なイ。
けれど……」
思い出す。
一人の少年の姿。
「一人だけ。アタシが勧誘して。でも、ソイツは死にたがってたみたいで。
だから、結局、アタシから否定して。仲間に入れなかった。
……それだけならよかったんだ。でも。
アタシはその時、本当はソイツと"ちゃんと話してなかった"。
上っ面だけで勧誘して、"切り捨てた"。
"失う"ことが、怖かった……アタシが……」
今もまだ続く後悔。
今の悩み。
「だから、もし……と思ってソイツを探したら。たまたま見つけてね。
話をしてみたら……その時、捨てられたように感じたのか、すごく、傷ついていて。
そして……色々なことが、アタシに、よく、似ていた。」
色々なところが、まさに鏡写し。
あちらはすべてを失い。
こちらはすべてが無かった。
だから
「アタシは、アタシの人生、全部ソイツにつっこんででも……
どうにか、してやろうと、思った……
それが、迷惑だろうと……
だから、まあ……そんな感じの話をした。」
未だに、それが正しいのか間違っているのか、わからない。
わからないけれど、自分はそうしようと、思った。
そうしなければ、と思った。
「……ン。そういう、話。
ごめん、なんか何をいいたかったのか、アタシにもよくわかんなくてさ。
ただ、誰かに聞いてほしかった。」
でも、こんな話は友達には聞かせられない。
これは自分の問題だ。
……こういう気遣いが、ダメなのかもしれないけれど。
でも、自分でけじめをつけたくて……
ああ、頭がぐちゃぐちゃする。
■ヨキ > 悪戯めかして、ふふん、とウィンクしてみせる。
それが、ヨキの“芯”。決して変わらないもの。
「芽生えたものは、まだまだ頼りないやも知れん。
これから育ててゆくのだよ、少しずつ。
大らかで居られることは、君の喜びと余裕を増やしてくれる」
笑って――それから、口を結んで。
紅茶を一口飲んでから、ティーカップを置く。
「…………、」
真っ直ぐに、華霧を見る。
「そうか」
ゆったりと、微笑む。包み込むように。
「……その判断が、正しいかどうか。
今はまだ、ヨキにも、君にも、判るはずもない。
もしかすると、一生判らないまま終わるかも知れない。
だがね、一つだけ言えることは――
『続けるしかない』んだ。一度、始めてしまったことは。
もう二度と、“切り捨てる”などということのないように。
続けていくしか、ない」
判じない。断じない。まだ、何も判るはずもない。
それでも、確かなことがある。
「そういう風に、迷ってもいい。悩んでもいいよ。
自信がなくたって、構わない。
そういうときにこそ――他の、周囲の『友達』や『頼れる人』が効いてくるんだ。
君が今こうして、ヨキに吐き出してくれたみたいに。
続けるしかないことには、不安が付き纏う。
だからこそこうして、“分かち合う”んだ」
微笑んで、頷く。
「『ただ誰かに聞いてほしい』――いいんだよ、それで」
■園刃 華霧 >
「……『続けるしかない』」
ぽつり、と言われた言葉を繰り返す。
そうか。
もう二度と、失敗しないように……
そうか。
それだけのことか。
ああ、あの時と同じ。
本当にシンプルで、確かな一言。
「……“分かち合う”」
同じく、繰り返した。
あの時はできなかったこと。
ようやく覚えることができたこと。
少しは、わかってきたのかな……アタシも。
「……そっカ。
それで、いいンだ。
それで……」
笑った。
小さく笑った。
ほんの小さく咲き誇る花のように。
「……うン。ヨッキー。
聞いてくれて、ありがと。
すっきりしタ。」
晴れやかな顔をしていた。
「はハ。分かち合う、カ。
ヨッキーは『友達』、『頼れる人』……どっちカね?」
悪戯っぽく笑ってみせた。
そのどちらも、などと心のなかでは贅沢に思ったりはするが……
そこまでは口にしない。
それから
「……なンか、聞いテもらってバッかダな。
悪い……どう返せバ、いいカな?」
最後に……そう付け足した。
貰ってばかりは気持ち悪い。
それに……これも対話、だ。
■ヨキ > 「そうだよ。
君はもう、笑うことも、泣くことも、喧嘩することも出来る。
失敗したって、やり直すことだって出来る。
あとはもう、『続けるだけ』。
続けていくために――こんな語らいのひとときを過ごすために。
友達の家や、喫茶店や、憩いの場があるんだよ」
友達か、頼れる人か。
そのどちらかと問われれば――
「――ヨキは我侭で、貪欲で、底なしだと言ったろう?
『そのどちらも』だよ」
それは奇しくも、華霧が思った通りに。
ヨキ自身の欲望のままに、にやりと笑ってみせる。
「ふふ。お返しなら、もうたくさん貰っているよ。
『友達と仲直りが出来た』。
『人生を懸けてでも、どうにかしたい相手が出来た』。
そういった結果を聞かせてもらうだけで、ヨキは大満足なんだ。
『ヨキの答えを聞き入れてくれること』
『その答えを踏まえて、君が行動してくれること』。
そんなの、他の誰にも手に入らない、ヨキだけの贅沢ではないか」
まるで眩しいものを見るように、目を細める。
「だから――ヨキの前では、そのままの素直な君で居てくれ。
それがヨキからの、頼み事」
■園刃 華霧 >
「あァ……うン。わかッタよ。
わかったサ、ヨッキー。
はハ。そッカ。こういウとこも、ただ飯クったリするダケ、じゃ……
ないンだなぁ……」
いつかのように、目に力が宿っていた。
なんとなく、よくわからない力が湧いてくるようだった。
本当に。あの時の再現のようだ。
「『そのどちらも』……か。マジで貪欲なのネ。
ひひ。なら……『友達』リスト……載せトくナ」
嬉しそうに、嬉しそうに笑う。
最高に素敵な友達じゃないか。
「ふぅン……やっぱリ、ヨッキー変わりモん、なンだナ……
そッカ……そういウのが好きなんダな。」
眩しいものを見るような目。
本当に、この相手は『人間』を楽しんでいる。
成長し、進んでいく人間を。
なら、アタシも進んでいかないと……なのかな。
と、思ったところで――
<素直な君で居てくれ>
「……ゥ……」
ひねくれ者で、あまり行儀の良いとも言えない自分。
人をからかってばかりで、本音をはぐらかす自分。
そんな自分が、この相手だと色々なものをつい、さらけ出してしまう。
それも全て、見越されているんだろうか。
恐ろしく恥ずかしいし……やっぱりちょっと怖い。
けれど
「うー……わカった……よォ……」
照れながら、『素直に』答えた。
■ヨキ > 「ふふ。よくよく考えてみれば、空恐ろしいものだろう?
こんな数えきれないほどの営みが交じり合って、『街』というものが成り立っているのさ」
笑う。
周囲を見れば、さまざまな人びとが、それぞれのペースで和やかに語り合っている。
自分たちの知らない人生を、生きている。
「ありがとう。
良いリストには、どんどん載っていきたいものだね」
変わり者、だなんて評も平然と笑い飛ばす。
まるきり光栄だと言わんばかりに。
「あはは。そうだよ。ヨキはきっと、変わっているのだろうよ。
そうでなくては、この常世学園の教師を続けてなど居られないさ」
ケーキと紅茶を楽しみながら、照れる華霧へにやりと不敵に笑む。
「無論のこと、ヨキが間違っていると思ったときには、反論してくれていい。
それでこそ、よりよい考えが導き出せるだろうから。
――ふふッ。
『教え子』であることも、『友達』であることも。
ずっとずっと、長続きしてくれればいいね」
そうして――ケーキの最後の一口を、ぱくりと頬張った。
「ヨキは君のことを、ずっと見ておるよ。
だから安心して、君の道を進みたまえ。
不安なときや、話し相手が欲しいときには――いつでも振り返ってくれ。
そこには絶対に、ヨキが居るから」
■園刃 華霧 >
「ン……考えテも、みなかッタな」
たかだか島一つ。
それでも無数の人間が居て、無数の人生がある。
その一つ一つが、関わったり、すれ違ったりして、
世界ができあがっていく。
なるほど、確かに恐ろしいかもしれない。
けれど……面白くもある。
そして……
照れに任せて、残ったオムライスを行儀悪くかきこんだ。
もともと大食いなので、これくらいサラッと食べられる。
「ン……そダね。
アタシもサ、ひねくれモンだから……気に入らンかったラ、教師だっテ噛み付くカんな?
そンときハよろしク。
『オハナシ』って大事だモンな」
ほっぺたにライスの欠片をつけたまま。
がお、と尖った歯を見せつけて、それから笑う。
彼にかみつける日は、さて本当にくるだろうか。
それはそれで楽しみだ。
「まッタく。
『ヨキがついてい』たり、『ヨキが居』たり。
ヨッキーは忙しいね。」
けらけらと笑ってみせた。
ああ、うん。色々とスッキリした。
■ヨキ > 「噛み付いてくれる胆力のある方が、ずっとずっと面白い。
ヨキだって、君にはたくさん噛み付いているようなものさ。
一度噛み付いたら、ずっと付き纏って離れない」
にやりと笑う。
華霧に似た、獣めいて尖った歯並び。
「ふふ。
ヨキはこの島のどこにでも居る。誰の傍にもついてる。
それはそれは、悪霊のようにね。
後悔したって、もう遅いぞ。
人に取り憑いて回るのも、暇ではないのさ」
肩を竦めて、おどけた調子。
晴れ渡った様子の華霧に、最後の紅茶を飲み干して。
「さて、ご馳走様でした、と……。
君も食べ終えたようだし、そろそろ行こうか。
この後、何か用事はあるのかい?」
■園刃 華霧 >
「はははは、そッカ。
アタシ、噛みつカれてタのカ!
納得ダ、ひひ、ひひははは。
悪霊ね。はは、すっごイ、わカる!」
けらけらけらけらと。
楽しそうに笑った。
ああ、なるほど。悪霊に噛みつかれたわけだ。
この不思議さも、この怖さも、この温かさも。
なるほど、バケモノの仕業なら、納得も行く。
面白くてしょうがなかった。
「ン、そダね。時間とらせテごめん、ヨッキー。
で、アー……別に、暇だッタから街を見に来たダけデ。
何かこれスるって用事はないヨ?」
『素直』に答える。
そう。それでたまたまヨッキーに出逢った。
ひょっとしたら、今日の用事は『ヨッキーと会うこと』だったのかもしれない。
■ヨキ > 「はははは。よーく判ったろう?
そうさ、ヨキは長いことこうして、皆に噛み付いて回ってる。
ヨキと仲良く出来る者も、離れていく者も居て当たり前なのさ。
面白かろう? こんな教師、滅多に居らんぞ」
それはそれは、傲岸不遜に。
自信たっぷりに、胸を張ってみせた。
「いいや。君のいい話が聞けたのだから、有意義な時間だったとも。
もし用事がないのなら――君さえよければ、少し散歩をしようか。
暑い中、そのまま帰るのでは味気がない。
涼しいお店を冷やかしながら、ゆっくり帰ろう」
そう言って、席を立つ。
長財布を取り出して、会計へ。
そのあとは、気ままに話しながらに、明るく笑いながらに。
『友達同士』の二人らしく、常世渋谷の街を満喫することだろう。
慣れない街だって大丈夫。
華霧の隣には、どこだって楽しんでしまう『悪霊が憑いている』のだから。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」からヨキさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から園刃 華霧さんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」に黒井結城さんが現れました。
■黒井結城 > 「はぁ~~……。」
僕は思わずため息を吐いてしまいました。
風鈴が涼し気な音を立て、セミの声が鳴り響きます。
周囲の景色は木製の建屋が多く、どれも真新しいです。
道路はどちらかと狭く、電柱はなんと木で出来ています。
通りかかった先の辻ではお姉さんが団扇を配っていました。
ありがたく頂いた僕でしたが、お姉さんは真っ黒です。
肌の色とかではなく、着ている者も併せて全て真っ黒。
影人間と言うものでしょうか?
僕はいつのまにか裏渋谷に来ているのだと実感しました。
噂では聞いていたのですが、こんなに簡単に入れてしまうんですね。
貰った団扇で扇ぐと涼しいです。
ここは表の世界よりも気温が低いのでしょうか。
■黒井結城の影? > 「裏切り者の黒井結城を発見。」
■黒井結城 > 突然、目の前に新たな影人間が立ちふさがります。
見た目は僕と全く同じなのですが、彼も全身真っ黒です。
声も似た声なのですが、感情がありません。
この裏渋谷が引き起こした事象でしょうか?
それともシャドウゴーストの刺客でしょうか。
どちらにせよ、僕の取るべき手は決まっています。
「……変身!」
■黒井結城の影? > 「……変身。」
ご案内:「裏常世渋谷」から黒井結城さんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」に『常世仮面』さんが現れました。
■『常世仮面』 > 「…やはり。」
常世仮面に変身した僕の前には、もう一人の常世仮面が現れました。
但し、向こうは全身黒ずくめで、戦闘服と言うよりは忍者のシノビ装束と言った格好です。
■黒い常世仮面? > 「シャドウモード、戦闘開始。」
黒い常世仮面は周囲の建物を垂直に駆けあがると、そのまま跳躍。
眼下の常世仮面めがけて黒いクナイを数本投げつける。
■『常世仮面』 > 『トワイライトシールド』
常世仮面は両手のガントレットから光のシールドを発生させることでクナイを防ぐ。
シールドに弾かれたクナイが周囲の建物に突き刺さった。
『トワイライトシュート』
シールドを解除した常世仮面が右手を突き出すと、拳サイズの光のエネルギー弾が黒い常世仮面を狙う。
しかし、黒い常世仮面は攻撃を予測していたのか既にその場には居なかった。
■黒い常世仮面? > 『スローイングスター』
黒い常世仮面は建物の屋根を移動しながら手裏剣を投げつける。
そのまま距離を詰めていき…。
■『常世仮面』 > 『トライライトソード!』
こちらも光の剣を両手に出現させ、手裏剣の山を薙ぎ払う。
「来るなら来い!」
黒い常世仮面が手にシノビ刀を持っていることに気付いた常世仮面は
斬り合いでの勝負を望んだ。
素早い相手が自分から近づいてくるのはチャンスであった。
■黒い常世仮面? > 『シャドウファントム』
黒い常世仮面は突如数体の数体の分身囲まれる。
分身そのものは実態がない物の、それぞれ別々の動きで常世仮面に襲い掛かり、シノビ刀で切り付ける。
■『常世仮面』 > 「くっ!」
すれ違いざまの攻撃は早さを求めている為、一発一発は軽い。
しかし、常世仮面を上回る速さと分身に紛れての攻撃に常世仮面はなす術がなかった。
■『常世仮面』 > (落ち着け。 このまま耐えていればいずれチャンスがやってくる。)
常世仮面は右手に剣、左手にはシールドを展開すると黒い常世仮面の連続攻撃を出来る限り払いつつ
反撃の機会を待つことにした。
数度の攻撃であちらは早くとも一発一発の威力がそれほどではないことに気付いたためである。
とは言え、こちらも決めてに掛ける。
何か相手の足を止めるような攻撃が出来ればいいのだが。
■黒い常世仮面? > 「……。」
黒い常世仮面は分身を使い、常世仮面の意識を正面に集めた上で、
背後から接近を試みる。
音もなく忍び寄り、刀で背後からの刺突を狙うようだ。
■『常世仮面』 > 「…そこだ!」
背後に迫った黒い常世仮面に対し、常世仮面は一瞬で振り返ると剣で一閃。
袈裟斬りにされた影はその場で徐々に消滅していく。
■黒い常世仮面? > 「なぜ分かった。」
消滅間際の影が呟く。
■『常世仮面』 > 「俺が貴様なら同じことを考えたからだ。」
常世仮面は剣の先を向け、静かに答える。
やがて、常世仮面の影は消失する。
…だが。
「な、なんだこれは!?」
常世仮面の身体に消滅したはずの影が付着する。
気づけば、先ほどまで戦っていた黒い装束に変化していた。
「これが新たな姿と言う訳か。」
■『常世仮面』 > 新たな力を手に入れた常世仮面はその後程なくして、表への脱出口を発見する。
ご案内:「裏常世渋谷」から『常世仮面』さんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」に鞘師華奈さんが現れました。
■鞘師華奈 > 「――さて、新米探索者として頑張りたい所だけど、さ」
裏常世渋谷――とある”目的”の為に、この異界の情報やアーティファクトが必要だ。
前回、偶然迷い込んだ時にとある少女に保護され、ここの存在や注意点、そして『久那土会』の事をあれこれと聞いている。
そして、”登録”をしてからあれこれと最低限の準備を整えて、第一回の探索――なのだが。
(前回は暗かったけど今回は”赤い”感じだな…夕暮れ時の常世渋谷、みたいな感じかな)
もっとも、人気は無いし代わりに人ならざる”気配”を点々とあちこちに感じ取れる。
「さて、久那土会の道具の効果を確かめる良い機会でもあるし…。」
呟いて、まずは一本の煙草を取り出す。『祝煙草』…お札を素材に使った紙タバコだ。
結界札仕様のものと、滞在可能時間を少し伸ばすタイプがあるが今回咥えているのは後者。
普通の煙草と同じようにジッポライターで点火しつつ、煙を燻らせながら一歩を踏み出す。
「さて――鬼が出るか蛇が出るか…」
ご案内:「裏常世渋谷」に鞘師華奈さんが現れました。
■鞘師華奈 > 取り敢えず、久那土会から販売されているアイテムはアプリにて現金を専用通貨に換金して幾つか買い込んだが。
「…基本的に使い捨て、または一度限りって感じみたいだね…まさに消耗品、か」
御札煙草を咥えながら、ゆったりとした足取りで紅い常世渋谷を歩く。
もしかしたら、別の探索者や迷い込んだ誰か、久那土会の人間とも会うかもしれない。
(――もしくは、怪異の類とかね)
確か、怪異に名前を知られるとマズいみたいなのをウメから聞いた気がする。
なので、通り名?みたいな別の名前を持っているのだとか。ウメは確か『跳び梅』だったっけ?
ちなみに、女の登録名は『猛禽(ラプター)』。一応、意味はあるにはある。
「しかし、色々”持ち出して”来たけど…どれだけ有効なんだろうね。」
一見すると女は何時ものスーツ姿だが、隠蔽偽装魔術により誤魔化しているだけ。
実際はあちこちに武器や銃火器、あと最近初心者用の精霊魔術の本を元に”魔石”を作って携行している。
「…使えそうな魔術や技能は取り敢えず出来る限り覚えておかないといけないし」
一つ一つは大した事が無くても、積み重ねや組み合わせ次第では馬鹿に出来ないものがある筈だ。
■鞘師華奈 > 先程から歩き続けているが、こちらを”窺う”視線や気配みたいなものは感じる。
…が、仕掛けてくる様子は無い。拍子抜け、という訳ではないが少々意外ではある。
「――様子を窺う、というより…”観察”されてる感じがするのだけど」
短くなってきた煙草を一瞥し、すぐさま2本目へと切り替える。ライターで火を点けて2本目の煙草の紫煙を燻らせながら、歩き続ける。
―――…と、声が聞こえた。呟くような、ぼそぼそとした声。
■怪異? > 「■■と繋がった■■が――何故、この地を彷徨い歩いている――?」
■鞘師華奈 > 「―――誰が何だって?」
一部がよく聞き取れなかった。まるでそこだけノイズが走ったかのようで。
足を止めて振り返る。ぼんやりと夕暮れじみた町並みに浮かぶ幾つもの影法師――これは、逢魔ヶ時というやつだろうか?
攻撃の意志は今のところは感じられないが、明らかに数が多い――正直、怪異相手の戦闘経験はやや頼りない。
(――最初からまともにやり合う気はないし、さっさと逃げたい所だけど…それに、何か気になる事を口にしてた気がするし)
私がここを探索するのが気に食わないのだろうか?いや、そういうのとは違うニュアンスに思えた。
流石に情報が少な過ぎて何とも言えない。そもそもアレらが怪異とも断言は出来ない。
■鞘師華奈 > 何秒か、何十秒か――実際は数分くらいだったかもしれないし、もっと長かったかもしれない。
赤い瞳で無数の影法師と睨み合い――と、今度は急にぐらり、と眩暈がしてきた。
思わずこめかみを片手で押さえつつ、小さく舌打ち…何かの攻撃、というより。
単純にこの異界の空気に呑まれかけているのだと漠然と把握できた。
様子見の探索とはいえ、初っ端がこれでは先が思い遣られるが――。
一枚のお札を懐から取り出す。『久那土札』…燃やすと強制的に”表”に帰還できるお札だ。それなりに高級品なので1枚しか買っていないが。
ジッポライターでそのお札を素早く燃やす――と、そのまま女は表の世界へと戻り始めて――
■怪異? > 「忌まわしき■■よ――魂が惜しくば安易にこの地を踏まぬ事だ」
■鞘師華奈 > 最後に、そんな呟きじみた声が聞こえた気がした――そして、矢張り一部は聞き取れなかった。
表に帰還すれば、思ったより長く滞在していたのかどっと疲れが押し寄せてくる。
異界の空気もそうだが、まだまだ慣れていないのだろう。次はもっと長く本格的に探索しようと思いつつ、ややふらついた足取りでその場を後にしようか。
ご案内:「裏常世渋谷」から鞘師華奈さんが去りました。