2020/09/20 のログ
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」にアリスさんが現れました。
アリス >  
私、アリス・アンダーソン!!
今日は常世渋谷で遊んでいたの。
ゲームセンターでVRロボットゲーム『メタリック・ラグナロク』を遊んでいたら遅くなっちゃった。

もう夕方で。
歩き慣れてない常世渋谷で。

気がつけば落第街みたいな景色に来ていた。
ココどこ?
血のように赤い陽が落ちていくボロボロの住居の上でカラスが鳴いている。

アリス >  
滝のような汗が流れる。
おっかしーなー。秋なのに。

振り向いて元来た道を帰ろうとしたら、
怖い人がなんか煙の出るパイプを手に何人かで歩いてて。
歩きタバコかな? 歩きタバコかなぁ。

怖いので目を合わせないように前に向かって早足に歩いた。

腐ったような匂いのする人が路地裏で背中を壁にもたれさせてピクリとも動かない。
なんか呼吸で肩が動いてる様子もないんだけど。
休憩中かな? 休憩中かなぁ。

リブ……リブ…と電子ドラッグの名前っぽい単語を呟きながらフラフラ歩いてる男性がいた。
ライフ・イズ・ビューティフル。通称リブ。
いやいや、リブステーキが食べたいだけよね? 食べたいだけよねぇ。

アリス >  
歩けば歩くほど路地のほうに行く。
なんか狭いな。なんか暗いな。

緊張感が体を強張らせる。
なんとかして元の常世渋谷に戻らなければ。
とりあえず携帯デバイスを開いた。
ナビゲーション、ON!!

私は白地図の上に立っていた。

な、なんで………どうして……………?
いざとなったら異能を使って屋根伝いに逃げるべきか。
でも私の体力でパルクールなんて2分持たない。

なんとかして帰らなきゃ……なんとか…

ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」にニコラスさんが現れました。
ニコラス >  
オッスオラニコラス!
今日は落第街で「見回り」をしていたぞ!!

という訳で落第街からアメコミの蜘蛛男みたいなワイヤー機動でビルの合間を飛び回ってトコシブまで戻ってきた。
路地裏の上あたりでふと下を見れば、人。
いや人ぐらいいるだろうが、何か困っているような雰囲気があった。

「――っと、どうした、困りごとか?」

ワイヤーを駆使して地面に降り、声をかける。
まだ顔が見えていないので誰だかわからないが、見覚えがあるような。

アリス >  
「ふぎゃあ!」

ふと、すとんと背後の辺りに何かが降り立つ音が聞こえてびっくりして変な声が出る。
慌てて飛び退いて、聞き覚えのある声に再度驚いて。

「ニ、ニコラスぅー!!」
「助けて、なんか迷い込んで……変な人が大勢いて…」
「な、なんかこう……落第街みたいな? 常世渋谷にいたのに」

身振り手振りと要領の得ない説明で助けを求める。
地獄にホトケとはこのこと。いや私クリスチャンだけど。

「お願いニコラス、普通に歩ける程度に平和な場所もしくはバスが通ってるところ」
「あるいは両方の条件を満たす場所へ連れてって!」

ニコラス >  
めっちゃ変な声で驚かれた。
聞いたことある声。

「あれ、アリス?」

知り合いだったわ。
フードを外して近付いていく。

「あー、トコシブ……いやまぁここもトコシブっちゃトコシブなんだけど」

落第街に一番近い街とかなんとか。
落第街ではないが、ほぼ落第街とも言っていい場所。
それがここ黒街(ブラックストリート)である。

「あー、じゃあ送るよ。歓楽街まででいいか?」

アリス >  
フードを外すと見間違えようもない友達の姿ぁー!!
やった、蜘蛛の糸!! 私カンダタ!!

「いつでもまぁまぁ元気なアリスちゃんです!!」

自分に対して指差し確認をしながら自己アピール。
ああ、よかった。彼と一緒なら安全!!
あの山の時に感じた信頼感が今、リアルに想起される!!

「え? 常世渋谷なの? ここが?」

顎に手を当てて首を傾げる。
カワイコぶったのに指の関節が『パキ』と鳴って全く可愛くない。

「お願い、ここの人たちなんかこう……こう…!!」

涙目で縋り付いた。隣に立って歩き出す。
夕焼けはビルが飲み込もうとしていた。

ニコラス >  
「まぁまぁ、なんだ……」

まぁ人間なのだ、いつも元気という訳ではないだろう。
けれどその言い回しは相変わらず彼女は彼女だ。
なにいってんだ????

「常世渋谷の黒街って呼ばれてるエリアだな。もうちょっと進むと落第街に入っちまう」

あっちの方、と彼女がさっきまで向かっていた方向を示す。
そのまま進んでいれば、数分と立たず落第街に足を踏み入れていただろう。

「あーわかる。怖かったな」

ちょっと笑って彼女の頭に手を、――伸ばしかけてやめた。
なんか雑誌で女の子に嫌われる勘違い男ムーブ十選の中に頭を撫でるが入っていた気がする。
とりあえず彼女に合わせて歩き出そう。

アリス >  
「いつもは躁じゃないからね」

ダウナー美少女に憧れがないわけではないけど。
ダウナーなテンション維持も美少女キープもできそうにない。

「ぶ、黒街………?」

落第街寸前だった!! こわい!!
あそこでセーラー服の人斬り美少女と戦ったりしたからこわい!!

「え、なんで撫でなかったの……?」

髪を顔の前に持ってきて匂いを嗅ぐ。
ちゃんとシャンプーの匂いがした。
そろそろ髪型を変えたい気がするような、しないような。

「あっち側が落第街なら……こっち!」

と指差した。そう、逆側に行けばいいのであーる。
そして私をニヤニヤしながら見ていた人たちは今は真顔。
安全圏に入りやがった、と舌打ちせんばかり。

ニコラス >  
「躁……?」

鬱の反対だっけ。
いつもは躁じゃない、と言うことはいつもは鬱……?
なんだかよくわからなくなってきた。

「黒街。慣れない街で迷ったらすぐ来た道引き返した方がいいぞ」

迷わないコツはちゃんと方角を覚えておくことだ。
方角さえ覚えておけば多少迷っても何とかなる。

「あーいや、なんか、女の子こういうの嫌がるって前になんかの本で」

まさかそこを突っつかれるとは思わなかった。
引っ込めた手は所在なさげに宙を漂う。
うろうろ。

「うん、そっちは異邦人街な」

歓楽街は彼女が指した方角から九十度ぐらいずれている。
一応周りの男たちへ視線を送り、牽制を。

アリス >  
「ああ、アニメの歌詞ネタだから気にしないで」

好きなのよねー。ジャパニメーション。
好きなのよねー。陽だまりスイッチ。

「方向音痴にありがたすぎるアドバイスね」

後でメモっておきたいけど。
来た道がしょっちゅうわからなくなる。

「!?」

え、女の子って頭撫でられるの嫌なの?
逆説的に私は女の子じゃなかった………?
正気に戻って考えると、乙女ゲーの攻略対象はしょっちゅう頭を撫でてくるけど……?
逆説的に乙女ゲーの主人公は女の子じゃなかった………………?

「あれ」

異邦人街もいいけどバスは歓楽街のほうがよく通るなぁ。
こんな調子だから迷うんだよー私ぃ!!

ニコラス >  
「あぁ、なるほど」

アニメはあんまり詳しくない。
見てみようとは思うのだけれど、如何せん時間を取られ過ぎて。

「あぁー……じゃあこう、地図アプリとか……」

どこに行っても似た様な景色ばかりの森の中で過ごしてきた自身には、方向音痴なんて概念には縁がなかった。
スマホに入っているけど殆ど使った事のない地図アプリを思い出し、別のアドバイスをしてみる。

「あー、えー、じゃあ、撫でていい、のか……?」

撫でていい、なんて聞くのも変な話だけれど。
相変わらず右手はウロウロしている。

「ま、まぁ、慣れてないと、な」

アリス >  
「時間がある時にぶわーっと見て影響を受けて友達に窘められるまでがセット」

この見た目でドがつくオタクなのも私だ。
フフン、と指を振って会話に興じるくらいまで余裕が発生。

「地図アプリを起動したら白地図の上にいたのよねー……」
「まぁ、白地図に入る前に起動しとけって話だけどバッテリーがねー……」

むむむ、と唸って日が大分沈んできた黒街を歩く。
私の容姿は目を引くらしく、やけに視線が刺さる。
それもニコラスが睨みをきかせるまで。やったー頼もしー。

「どうぞ? というか、ジャパンオタク文化に馴染んできたから」
「頭を撫でられる行為に嫌悪する層がいるのナンデ? という気持ち…」

慣れていないと、か。
私はうっかり森の中で迷って死にかけたことがある。
というか死にかけた回数にかけて常世で私の右に出る人はいないだろう。
この回想だけで死にたくなる。

ニコラス >  
「時間、なぁ」

あんまりない。
学校行ってタイムセール行って、森に籠ってしかも最近は落第街を回っている。
なかなかまとまった時間は取れない。

「なんか落第街周りに特化した地図アプリとかもあったと思うぞ」

勿論非公式?なアプリなのでご利用は自己責任みたいなアレだけれど。
用がないなら近付かないのが一番ではある。

「あ、はい。では失礼して……」

ぽむ、と右手を彼女の頭に乗せた。
そのままもふもふとゆっくり撫でる。
なんだこれ。
なんだこれ。

アリス >  
「あんまり時間ない感じ?」
「アニメを見ろとは言わないけど、立ち止まる時間も大切よ」
「心が亡くなると書いて忙しい……なんだか物悲しいわね…」

漢字ネタで会話を試みる真聖イギリスじんが私、アリス・アンダーソン!
でも、友達が忙しそうにしてたら心配するのも偽らざる本心。
ニコラスも色々大変なのねー。

「昨日プランセス・ドゥ・マヌカンRe:packageってソシャゲ入れたから容量いっぱいだわ…」

消せ。ログインボーナスだけもらっているアプリを。
消そう……ガチャだけ引いてるアプリを…

頭に手が載せられると。相手の顔を見上げて。

「ニコラス、手が大きいのね?」

と、ヘンな感想を言ったりした。
なんだか人が普通の、ザ・常世島って感じの普通ピープルになってきた。
もうすぐ黒街から抜けられる…のかしら。

ニコラス >  
「取ろうと思えば取れるけど、って感じかなぁ」

森に籠るのもここの生活では必須ではないし、落第街の方なんて自分がやる必要もない。
ないのだが、やらないのはなんと言うか、気持ちが悪い。
とりあえずは帰ったら何か見てみようかとは思った。

「なにそのソシャゲ……」

なんと言うかタイトル全部盛りみたいな印象。
ちなみにソシャゲはやらない男である。
何が楽しいのかわからないし、ガチャを引く習慣も周回する時間もない。

「へぁっ!? そ、そうか? 普通じゃないか?」

変な声が出た。
男ならばこんなものだろう。
がさがさゴツゴツした男の手って感じの手。
満足したので頭から手を離した。

アリス >  
「じゃあ、今度一緒に遊ぶ時間を作ってよ」
「お礼もしたいしね?」

あー、緊張したーと頭の後ろに手を回して気楽に歩く。
こんなピンチに頼れる友達に会えるなんて。
私はとても幸運と言える。

「知らないの? 最近リリースされたマネキンのお姫様シリーズ最新作」

フランス語はよくわからないけどそう言うらしい。
フランス語は難しい……と日本語で考えているイギリスじんも私だ。

「なにそのリアクション……?」
「働き者の手ねー、ハンドクリームは塗ったほうがいいわー」

勝手に人の手の講評までする。
そして夜の歓楽街が見えてきた。
カラスが私という獲物を惜しむように去りゆく背にカーと鳴いた。

「ここまで来たらわかるわ、ありがとうニコラス!」
「今度、絶対お礼をさせてね? それじゃバス停こっちだから!」

友達と手を振って別れる。
黒街よ、悪徳の街よ。さらば!!

ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」からアリスさんが去りました。
ニコラス >  
「あぁ、勿論。楽しみにしとく」

いくら時間がないとは言え、友達と遊ぶ時間を潰してまでやることでもない。
むしろそれは最優先で確保するつもり。

「ソシャゲ、やらないからなぁ。それこそ時間もないし」

どちらかと言えば買い切りゲーム、特に据え置き型のゲームの方が好きだ。
ゲームは時間に追われることもなく、どっしり腰を据えてやる派である。

「い、いやぁ。ハンドクリーム、なぁ。弓とかナイフとかの扱いにちょっと違和感出るんだよな……」

出来るだけ手は素手のままにしておきたい。
滑ったり取り落としたり、感覚が狂うのはちょっと怖い。

「あぁ、気を付けて帰れよー」

歓楽街まで戻ってくればとりあえず安心だろう。
手を振る彼女にこちらも手を振り返し、彼女の姿が見えなくなればこちらも家へと戻ろう。
ちょっと劇場版アニメかなにか、借りて帰ろうかなと思いつつ。

ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」からニコラスさんが去りました。