2020/10/04 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」にレディ・シルヴァーさんが現れました。
■レディ・シルヴァー >
――クァンッ
僅かな駆動音をたて、バイクが加速する。
それに乗るのは、黒の薄いラバースーツを身に着けた少女。
だが、その顔は電子的な揺らぎがあるヘルメットも不透明なので見えない。
速い速度でバイクを滑らせ、道を曲がる。
「――情報ではこのあたりのはず・・・あっちですか」
AI端末から流れてくる情報は、裏常世渋谷に入ってすぐに展開したスパイダイス。
僅か1cm立法な大きさのそれだが、長時間の監視や通信をすることができる。
それにより、ヘルメット内のディスプレイにわかる範囲の裏常世渋谷のマップができる。
見上げた先は――高架の上だ。
スロットルを開けると、少し前輪を浮かせたあとに加速する。
そのまま高架の下を通り抜けるか・・・というところで、僅かに音声指示。
バイクが、瞬間的に上に上がる。
それに合わせて、タイヤが判れ展開して更に空を駆ける。
「――見つけました。今からテストを開始します」
高架よりも高く上がったバイクは、そのまま滑るように効果の上にと降りたのだった。
■レディ・シルヴァー > 降りる直前にタイヤが元に戻る。
僅かに沈み込む車体だが、跳ねる前に制御され、キュッとグリップを得る音を小さくたてると走り出す。目標は、高架上の先を進む朧車。
その間も得られてくる情報で、どの朧車かの情報を得る。
場合によっては、テスト対象外となるからだ。
今回のものは、「イ号」朧車、一番ベーシックな対象だ。
スロットを開き速度をあげ、朧車の後ろに付ける。
内燃機関ではない動力のこのバイクは音が大変に小さく、まだ気づかれていないようである。
速度も通常速度でもまだ十分に余裕がある。
全ての標準兵装はグリーン、異常なし。
リトラクタブル式、目が開くようにフロントの一部が開く。
ヘルメット内部にマーカーが付き、そして合わさるとともにレーザーの発射を念じる。
と、赤いレーザーが閃き、朧車の後部に光が当たる。
と、BOMBを朧車の尻を持ち上げるような爆発。
来る破片をバイクを操作して避ける・・・が、観察してもまだ朧車を倒すまではいっていない。
壊れた後部が高架のアスファルトを削り火花をあげ、車体が左右に揺れるが健在だ。
■レディ・シルヴァー > 「次のテストに移ります」
火器まで出てきて後ろをめくらめっぽうに撃ってくる。
朧車が車体をわざと振り、高架の幅いっぱいに車体の後ろをふりながら、速度を落とす。
ブレーキをキュッとかけてそこから下がれば、バイクを横に振る。
壁ぎりぎりにまでバイクを寄せ・・・オーバーブースト。
瞬間的な加速、身体を倒しバイクに胸を付け乍ら一気に加速する。
フィィィィンッと高い音を少したてながら、僅かな隙に一瞬で朧車の横を走り抜ける。
横を通り抜ける瞬間、こちらが前に出てくるのを考えていなかったのか。後ろを警戒する朧車の横をぬけて少し前に出て、バイクを反転させる――そのまま、フェードバック機能を作動させる。
バイクは正面を朧車の方へ向けながら、後進する。
こちらに気付き、ぎょっとした表情を浮かべた朧車に向かい、基本装備の重機関銃を打ち込む。
そして、更にロケットランチャーを1発。
激しい火花と爆炎があがる。
それを見たまま、時速100㎞を超える速度で後進を続けて観察する。
煙から出てきた朧車の顔は、怒り狂っている。
罅は入り血を流させたが――。
やはり、何の不可思議な力がない武器では、UNKNOWNの存在には効果が薄くなるようだ。
火器を正面に向けてこちらを撃つ朧車、それが近づき・・・少し不思議な感覚が触れた。
AIが警告を発する。
とたんに、またオーバードライブを使う。
瞬時に時速280㎞で後進しだし、少し離れたところで後輪に少しブレーキ。
跳ねあがったバイクを、そのまま離れる方向にノーズを向けて捻り、タイヤを接地させる。
継続していたオーバーブーストにより、速度が時速480㎞に跳ね上がり、一気に朧車との距離を開ける。
火線が届かない位置でオーバーブーストを切り、一定の距離を保つ。
「今のは?」
データ分析されたものが表示される。
どうやら、『無限軌道』と呼ばれる空間に入れられそうになったようだ。
この空間データはいい資料になるだろう。
■レディ・シルヴァー >
このバイクの火力では、朧車を倒すには少し足りないようだ。
確かに、継続して行えば1体なら倒せるだろう。時間はかかるが。
シミュレートすると、約30分ほどかかる。
「最後のテストに入ります」
通信すると、バイクの速度を出し、少し離れていく。
怒り狂う音を立て追いかけてくる朧車との距離が開いていく。
と、バイクを180度ターンさせ停止させる。
前輪をロックして後輪を回し――オーバーブースト。
キュィンッ!と何かを切り裂くような音を立てて、バイクが一瞬で最高速に。
僅かな時間に近づき、火力を前に出して突撃してくる朧車に対して。
バイク一つで――「クラッドイン」と小さく呟く。
バイクが後輪を軸に持ち上がり、身体を覆う。
僅かな時間で装着して、後輪走行から上に、ホバーも掛けて飛ぶ――――。
■レディ・シルヴァー > 朧車の目には、消えたように見えたかもしれない。
高く飛びあがり、身体を捻り下を見る。
そのまま、今度はホバーを逆進。
重力に引かれる以上の速度で、朧車の頭頂部に。
左腕を突きさすようにしてどずんっと降り立つ。
先端が潜る――――と同時に、パイルバンカー。
杭を朧車に打ち込んだ。
ゆっくりと速度を落としていく朧車。
高架の端の壁にぶつかり、火花を上げ・・・そして、突き破る。
落ちていく朧車から再び飛んでいたレディは、即にバイクに戻って、それを見下ろして見送る。
「――対処、確認。継続テストは困難なため、戻ります」
小さな声で連絡。
左腕を見ると、IW-Pで強制的に形は保っているが。二の腕の骨が折れている。
埋め込まれている尺骨の代わりのライフルも曲がっているかもしれないが。それもまたデータになる。
いや、人の骨と言う生活などで変化する硬度ではなく、ライフルにかかったひずみを見れば、より正確な朧車の硬度が測れるかもしれない。
動かない左腕を右手で持ち上げ、グリップに。手は大丈夫なので握ることはできる。痛みは、スティックで痛み止めを局所的に打っておく。
そして、対UNKNOWN兵器のためにと、研究所に戻るのであった。
ご案内:「裏常世渋谷」からレディ・シルヴァーさんが去りました。