2020/10/24 のログ
ご案内:「常世渋谷 ハロウィンストリート」に神樹椎苗さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 ハロウィンストリート」にレオさんが現れました。
神樹椎苗 >  
 今年も実施されたハロウィンイベント。
 その催しに、椎苗もやる事があったため参加した。
 ついでに、一応恋人という事になるのだろう青年を連れて、一緒に仮装をして。

「はあ――随分とごった返してやがりますね。
 初日から騒ぎ通すつもりですか、こいつら」

 あまりの賑わいっぷりに、ヒトの多さに眩暈がする。
 本当なら過剰に騒がしいところは苦手なのだが。
 ちらり、と隣を見て、ふう、と息を吐いた。

「ほら、一応、デートなんですから。
 少しくらいシャキッとしてリードしたらどうなんですか」

 と、青年の腕に抱きつくようにしながら、青年を見上げる。
 そう、椎苗の目的は別にあるが、デートも兼ねているのだ。
 まあ、はたから見れば兄と妹のようにしか見えない組み合わせだが。
 

レオ >  
「わぁー……」

周りを見て、少し声を漏らしたのは少女の連れの青年。
常世渋谷は歓楽街の一部だが、その中でもデパートやファッションビル・専門店・飲食店などが立ち並ぶ…つまるところ、遊ぶにはもってこいのエリアである。
常世におけるハロウィンの期間である今は、それこそ毎日が仮装パーティの様相を成しており、普段より一層多くの人があふれかえっている。

「あ、いやぁ……パトロールで来たりはするけど、ハロウィンだからかいつもより人の数が凄いなって…あはは
 すみません、デートの経験って、あまりなくて…」

シャキっとリードしたら?という少女の声に、苦笑しながら返事をする。
実際、こうやって人と遊びに外へ出かけるというのは…いつぶりだろう。
普段は買い出しと修行、あと仕事位で…本当に”遊び”で出かけるというのは少ないから。
こういう場所にプライベートで、何より…”仮装して”来るというのは、ちょっと小恥ずかしい。

「あの……僕の恰好、変じゃないですよね?」

そう言いながら、近くにあったガラスに反射する自分の恰好を見る。
比較的普段と変わらぬシャツ姿に、普段はつけないサスペンダー。
首元は緩くネクタイが巻かれており、ボタンは一個外してある。
頭につけられた獣耳。
腰からはモサモサと、剛毛気味の尻尾。
肘まで届く、獣毛の手袋は、指先に獣のような爪がつけられている。

お店の人が言うには、ワーウルフ風。
かなり昔に一時期流行った、ドワーフウサギに恋するハイイロオオカミの漫画をモチーフにした衣装らしい。

「(…ちょっと恥ずかしい)」

普段なら、とてもじゃないが街中では着れない…コスプレという奴だ。
ハロウィンだからこその衣装。
当然、目の前の少女――――神樹椎苗も、同じようにコスプレをしている。
そちらの方も、ちらっと見るだろう。

神樹椎苗 >  
「経験がないなら、そこは男子の逞しい想像力の見せどころじゃねーですか。
 ほら、お前は恋人とどんなデートをして何をしたいんですか。
 妄想したことだって一度や二度はあるでしょう」

 なんて、にやにやと笑いながら、赤い頭巾の下から見上げる。
 赤い頭巾とマント――フード付きのマントというべきだろうか。
 その下には少女らしいエプロンスカート。

「変じゃねーですよ、面白いですが。
 にしても、狼男と赤ずきんの組み合わせは、中々マニアックに思いますが」

 椎苗のコンセプトは赤ずきん。
 貸衣装屋で、二人で揃えようと店員に任せた結果、このチョイスだった。

「ふむ。
 狼に食べられてしまえ、って意味ですかね」

 「食べますか?」と、腕を抱いて、手袋の上から手を重ねながら。
 青年に少しだけ意味ありげな視線を送ってみる。
 

レオ >  
「僕、貴方に一度振られてますけれど…」

恋人とのデート。
そう言われると、実際の所今の関係性に疑問符を浮かべる。
「異性としてまだ見えない」というような返事をされているのだから、当然と言えば当然なのだが。

「食べませんよ…
 でも可愛いですよ、椎苗さん。」

苦笑しながらそう言う。
赤ずきんなら、確かに狼は赤ずきんを食べてしまうけど。
そうするとおばあさんにお腹を開かれて石を詰められてしまう。
僕の場合は……沙羅先輩とか園刃先輩あたりだろうか。

どっちにしても、確実に大変な事になるので、そういうのはまだ…ナシだな。

「どんなデートかぁ……
 一緒にいれるだけで満足だから、なんだか……思いつかないなぁ。
 
 買い物にもよく行きますし、家にはよく来ますし。
 それ以外かぁ……」

目の前の女の子とどういうデートをするか。
普段しないイベントのプラン。
誘われて来たけど、あんまり考えてなかった。

そっか…色々考えておかないとな。

「…あ、この近くに陽月ノ喫茶っていう喫茶店があるんです。
 風紀委員の先輩がとても甘そ…美味しそうなパンケーキを食べてましたね。
 後で行ってみますか?」

とりあえず常世渋谷にある店の事を考えたら、一件椎苗さんが喜びそうな場所を思い出した。
そこなんてどうだろうと提案してみるだろう。

神樹椎苗 >  
「ん、しいはフったつもりはねーですが?」

 首を傾げる。
 どうしてフった事になってるのだろう、と不思議そうな顔をして。

「そうですか、食べませんか。
 ふーむ、割と食べごろな気がしましたが、残念ですね」

 なんて、それほど残念そうでもなさそうに言う。
 いつまでも突っ立っていても仕方ないので、青年の腕を引くようにヒトの流れに合わせて歩き出した。

「それはしいも同じ気持ちですが、欲がねーですね。
 年頃の男子はもっとこう、がっついてるもんじゃねーんですか?
 しいの知ってるやつは、デートよりも先にベッドの上でやりたい放題しやがってましたよ」

 ちなみにその男子は椎苗に『クズやろー』と呼ばれている。

「ふむ、パンケーキ。
 いいですね、一休みするときにでも寄ってみましょう」

 そう言いながらゆっくりとヒトの中を歩きつつ。
 椎苗の視線は、あっちへこっちへ――風景ではなく、周囲のヒトの流れへと向けられている。
 青年と一緒だから表情こそ楽し気だが、視線はどこか真剣で、遊びに来ている、という雰囲気とは少し違うだろう。
 

レオ >  
「…あはは、その人はその……なんというか、まぁ、人それぞれですから

 それに、『惚れさせてみろ』って言ったじゃないですか?
 だからちゃんと『惚れさせる』まではガマンしますよ。」

彼女がいう人が誰かは分からないが、自分はもう少し我慢したい。
じゃないと対等とは言えないし。
なんとなくその人は知っていそうな気もするけど、まぁ人の恋路に無暗にふみこんでいく事じゃないだろう。

「じゃ、とりあえず色々回りましょうか。
 人が多いので、離れないでくださいね?
 ……そういえば、今日はどうしてデートの誘いを?」

ハロウィンだからかな?とも思ったけど、何となく気になって。
色々と他の人とも回るとも言っていたから、後回しになると思っていたから。

神樹椎苗 >  
「なるほど。
 この美少女相手にどこまで我慢できるか、見ものですね。
 ああ、しいはいつでもいいですよ、お前なら」

 などと、さらっと言って。
 言われずとも離れない、とでも言うようにしっかりと腕は組んであった。

「しいはもともと、ハロウィンのイベントには全日参加するつもりですよ。
 お前を誘ったのは、そうですね、一緒に居たかったからですか?」

 言いながら少し考えるように、疑問符付きの答え。
 そして周りを見ながら、ふむ、と目を細める。

「――今すれ違った娘は、あと一週間。
 向こうの少年は二年と三か月。
 あっちのゾンビの男は十二年ですね」

 そう、ヒトに視線を向けながら、より青年に体をくっつけて。
 青年にだけ聞こえるように小さな声で呟く。
 まるで、皆まで言わずともその意味はわかるだろう、と言うように。
 

レオ >  
「そっ…れは……
 ……‥‥
 出来るだけ我慢できるように精進しますね…」

言われた言葉にどきりとしながら。
自分だって年頃の男だから、”そういう”欲求がない訳じゃない。
できるのならしたい。けど、相手の年齢とか、色々な問題があるから。
半分からかわれてるのだろうと思いつつも、それで結局気持ちがあっちこっちに暴れそうになってしまう。

「それは、嬉しいですが……全日参加?
 それはまた、どうし――――…」

そう聞こうとして、少女がぽつりとつぶやいた言葉を聞いて。
その意味は直ぐに分かる。
自分もそっちの方をみれば、大体同じような事を察するから。

「――――椎苗さんは、”どのくらい”分かるんですか?」

”何が”とは言わずに聞いた。
その意味は分かるだろうと思ったから。

神樹椎苗 >  
「年月、日時まではわかります。
 まあ細かい時間までは、日々変動するもんですが。
 数日以上のズレはめったに起きねーですからね」

 どの程度分かるかと言えば、ほぼ正確に捉えられる。
 仮にも、死そのものを司る神に、使徒として選ばれ、仕えているのだ。

「この手のイベントごとには、歪な死が集まりやすいのです。
 本当なら、その歪みを正すのも『黒き神』の役割ですが。
 しいにそこまでの権能はありませんからね」

 視線は細かく、道行く人々を捉えていく。
 椎苗が言うように、周囲の人々の中には、不自然に死の気配が濃い、または薄い者が散見されるだろう。

「ん、あの吸血鬼ですが、本物ですね。
 ――犯罪歴無し、学生証あり、素行もよし。
 アレは放っておいて問題ねーですか」

 そして、不死者を眠らせるのもまた、椎苗の役目の一つ。
 ただ無差別ではなく、死を望むモノや、他の死を歪めるモノが対象だ。
 そこに居ても問題がないのなら、本人が望まない限り手を出す必要はない。

「あっちの猫娘に、向こうのラミア。
 あれは本物の狼ですね。
 人間とは時間が随分と違うから、わかりやすいもんです」

 と、周囲を観察しながら、可能な限り記憶していく。
 いつか、『ある神器』に選ばれた使徒が現れれば、歪な死を正す事も出来るだろうから。
 

レオ >  
「…僕より正確だな」

自分のは、死に近く生まれてしまったが故の、いわば”他の人間との死の距離感の違い”から変質して感じるようになったもの。
五感、それに加えた直感が”死”を伝えるというもの。
それを判断するのは自分なので、感じはすれどその感覚がどのように、どのくらいというのは、自分が見誤れば簡単にズレが生じる。

だから、精度は彼女のそれよりも悪いのだろう。
死の神から直接の情報を得るのと、それに近いというだけの人間との差だ。

とはいえ……

「……手伝えること、ありますか?」

精度の差はある。が…性質の違いもある。
自分の死を感じる力が、変質して不死を斬れる力になってるように。
それらの力は元を共にしていたとしても質を違えている場合もある。
実際、自分と彼女のその力がどの程度差異のあるものかは分からないが…

神樹椎苗 >  
「比べるもんじゃねーですよ」

 青年が得た感覚と、神に授かった権能の一部では、結果が似ていても本質が違う。
 そこに精度の差が出るのは仕方のない事だった。

「ん、一緒に居てくれれば十分です。
 元々大したことをするつもりも、手段もありませんし」

 青年とはデートのつもりなのだ。
 それに、今日の本題は恐らく、青年ではどうにもならない。
 ふと、視線が人々の中に留まった。

「――ちょっと待っててください」

 そう言って、青年の手を放して、ヒトの流れを横切っていく。
 そして人々の中で足を止める。
 椎苗が足を止めれば、人々はぶつかりそうになって慌てて避けていく。

 そこに不自然にヒトの切れ間が生まれる。
 椎苗は誰かに向き合うようにして、話しかけていた。
 しかし、そこには誰の姿もない。

 少しすると、椎苗は左手を胸に当てて、何かを小さく囁く。
 祈る様に一度顔を伏せて、顔を上げれば何かを見送る様に空を見上げる。
 そしてまた、ヒトの流れを潜り抜けるように、青年の元に戻ってくるだろう。

「お待たせしました。
 さ、デートを続けましょう」

 そう言って、先ほどまでと変わらずに青年の腕を取る。
 

レオ >  
「―――――」

彼女が”誰か”の下へと向かい、そこで”なにか”をしたのを見守る。
それが”誰”なのか、はっきりと認識する事は出来なかった。
ただ”なにかがいる”という事だけ……気配として、感じる事が出来た。

―――おそらくそれが”死”にまつわるものであるから、だろう。

「……幽霊、ですか?」

そして、推測ではあるがその”誰か”について尋ねる。
それを認識する事は、稀だ。
力が強ければ見える、という訳でもない。
法則というものがそれぞれで違うから。
だから、見える時もあれば、見えない時もある…らしい。

全部師匠からの受け売りで、自分が直接見た事は無かったが。

神樹椎苗 >  
「そうです、所謂それですね。
 もともと、ハロウィンの時期は死者が家族の元へ戻る日と言われた事もあるようです。
 そのせいか、この時期は日本でいうお盆と同じように、迷い出てくる魂が多いのですよ」

 青年に答えつつ、再び視線は人々の間を行きかう。

「特にこういう、人が集まるイベントなんかには、必ずと言っていいほどやってきます。
 そして、冥界から迷い出た魂が、現世を彷徨い続ければ。
 それはいずれ悪霊となり、ヒトに害をなします。

 そういった事が起きないよう、事前にあるべき場所に、安寧を与えてやるのがしいの役目。
 黒き神の使徒として、しいがすべきことなのですよ」

 そう説明する椎苗は、どこか誇らしげなようにも見えるだろう。
 ただ、青年の腕に甘えるように抱きついていなければ、だったが。

「これが今日の、しいにとってのハロウィンです。
 ただ――お前を誘ったのは、やっぱり一緒に居たかったからだと思います。
 ふむー、役目と恋人と、どちらも取ろうとするのは少し欲張りでしたかね」

 なんて、くすくすと笑いながら。
 

レオ >  
「……一人じゃ、大変そうですね」

小さい少女一人がやるには、少し荷が重い神様の代理。
自分しかできない事をやる、というのは……どんな事でも誇りと、重荷を抱く事になる。
自分も、そうだった。

「―――いいんですよ。
 色んな椎苗さんを知りたいって、言いませんでしたっけ?
 
 お役目も、普段の様子も……昨日も、今も、明日も。
 欲張る貴方だって、今日知れてよかったって思ってますから。

 だから一緒に…デートしながら、見かけたらやっていきましょっか」

一緒にいたいのは、自分も同じ。
共に分かち合えれば…お役目でも、感じるものも、受け止めれるものも違うのかもしれない。

まだ、自分の中ではそれではないが……それが恋人と、共に生きる者というものなんじゃないだろうか。
そう思う。

「それじゃあ……デート、続けましょっか。
 色々見ていきましょう?
 マシュマロにもおみあげ、買っていってあげたいですね」

くすりと笑って、彼女の歩幅に合わせて歩き出すだろう…

神樹椎苗 >  
「大変とは、思ったことはないですよ。
 それに今日は、お前もいますしね」

 青年の腕に顔を寄せるのは、相応に少女らしい姿。
 役目に伴う重荷なんて、感じさせるようすもない。

「ふふ、中々いいセリフじゃねーですか。
 口説き文句には悪くねーです」

 知りたいと思われて、実際に少しずつ知ってもらえている。
 それが嬉しく感じられ、また、自分も青年の事を知っていきたいと思っている。
 恋人というのがどういう物か、椎苗にはまだわからないが。
 今のこの関係を言うのであれば、それはとても心地よい物だと想えた。

「そうですね、なにか玩具でも買っていってやりましょうか。
 ちゃんとお留守番出来るいい子ですからね」

 そしてまた二人でストリートを歩いていく。
 時折、店の前で止まってみたり、また迷い幽霊を見つけたりとしながら。
 寄り添いあって、周囲から仲睦まじい兄妹を見るような微笑ましい視線を受けつつ。

「――ああ、そこの路地を入っていくとホテル街になってます。
 一休みしますか?」

 などと、兄妹の間じゃ交わさないような言葉が多分に交じっていたが。
 

レオ >  
「本当に思ってる事ですから」

そしてその気持ちを、許してもらえてるから。
だから臆面もなく言える。
こうしているのが、何者よりも心が安らぐ。

この時間がずっと続けばいいのにと、そんな風に思う。
けど、それは叶う事はないから。
せめて今くらい……

この子と一緒にいよう。






「……まだ食べませんって、さっき言いましたよ?」

道中、ホテルに誘われて少し渋い顔をしながら。

この人はこうやって、僕をからかう。
いつか本当に理性がもたなくなったら、どうするのだろうか。
なんて……彼女はそれも踏まえて誘ってるのだろうけども。

「休憩はさっき話した喫茶店でしましょうね、椎苗さん。

 あ、そういえば……
 沙羅先輩、退院したんですよね?
 どうですか? そっちの様子は」

神樹椎苗 >  
「狼のくせに理性的ですね。
 そうですね、喫茶店でパンケーキしましょう。
 ハロウィンですし、限定品もあるかもしれません」

 青年の理性はなかなか頑丈らしい。
 そうなるとまた、余計に崩してやりたくなってしまうのだが。
 しかし、娘の事を話されると、口ごもり、そっと顔をそむけた。

「え、あ、はい。
 普通ですよ、普通です。
 ご飯食べて、一緒に寝ました。
 ええ、以前と変わらずいつも通りです」

 少しだけ早口になっている。
 

レオ >  
「この衣装の元になったオオカミも凄く理性的だったらしいですよ?

 って……え?あ、あぁ…はい。
 そうですか…?」

早口になった彼女を見て少し小首をかしげたが。
何か大変な事があったら相談する気もするし、そうじゃないなら言う通りな気もするけど…
しかしまぁ、大丈夫ならまぁ、いいの…かな?なんて
自分の事で大変になってる等と全く思ってもいない青年であった。

「それじゃあ……甘いもの食べにいきましょっか。
 違うの頼んで、食べ比べとかもいいですね」

くすりと笑って、ハロウィンのお祭り騒ぎの中を共に歩いてゆく。
とても、小さな歩幅で。
彼女を置いていかないように。
自分が、彼女の傍にいられるように―――――――

ご案内:「常世渋谷 ハロウィンストリート」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 ハロウィンストリート」からレオさんが去りました。