2020/12/20 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に鞘師華奈さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に群千鳥 睡蓮さんが現れました。
鞘師華奈 > 世間はすっかりクリスマスムード…常世島の流行の発信地・最先端でもあるこの常世渋谷も例外では無い。
最近、仕事の方やら何やらで少し多忙気味であったが、息抜きも兼ねて”彼女”に声を掛けてみた。

「…悪いね、睡蓮。急な提案で…年末年始も近いから君も予定とか色々あるとは思うんだけどさ。」

少し、苦笑気味に謝りながらクリスマスの飾り付けやら電飾が店先や道のあちこちに溢れた街を二人して歩く。
すっかりと寒くなってきたが、最近は私服のレパートリーも多少は増えてきた。
…まぁ、そういうセンスはいまいち、なので度々実は彼女に見立てて貰ったりもしていたのだけど。

(まぁ、一番の問題は特にプランを考えてなかった事なんだけどね…。)

息抜きしたい→睡蓮を誘おう→取り敢えず常世渋谷に行こう!という安直に過ぎる思いつきだ。
元々、綿密に計画を立てて動くのはあまり得意じゃないというのもあるのだけど。
クリスマスシーズンなのと、場所が場所だから人の姿も数多い。喧騒は苦手だが…。

「…ほんと、普段以上に人が多いね。やっぱり友人同士やカップル達が多いみたいだけど。」

それとなく職業柄、往来の人の流れに目を配りながらも矢張り、というべきか…まぁ、そうなるなぁ、と。

群千鳥 睡蓮 >  
「ちょーどよかったよ。久々に表っかわ歩きたかったし。
 年末年始は実家帰るからさ。事前にちゃんと会っておかないと寂しいだろ」

スーツで待ち合わせに来られた夏が随分前に感じるこの頃。
笑いながらも息は白く、寒風に煽られて頬は赤い。
手袋持ってくれば良かったかな、と冷やされる手を缶コーヒーで温めながら道を歩く。

「っはは。いやー、すっかりクリスマスだね。
 ウチは忙しいよ。ケーキの予約だなんだって、普段以上にやることが増えてるから。
 ――そういう意味でも、すこし息抜きはしたかったから、有り難いけど」

街のお菓子やさん、という部活動は、この時期になると忙殺に等しい。
バレンタインやホワイトデーにも繁忙が控えていて、勉学との兼ね合いもある。
そして彼女と過ごす時間は大抵、"裏がわ"の探訪だ。いまいち、進捗があるとはいい難い状況でもある。

「クリスマス、毎年楽しみだったな。ケーキもプレゼントも」

特段、特別に意識した風もなく――ある意味では隙を見せる姿勢で、
常世島のクリスマスシーズンを、レンズごしに興味深そうに見渡している。

鞘師華奈 > 「そういえば節目とかには実家に帰ってるんだっけ。まぁ、でもそうだね…ご家族は大事にしないとね。」

自分が既に両親や親類が誰も居ない、というのもあり、少しだけ目を細めつつも緩く頷きながらそう口にする。
両親を亡くしてもう8年…一抹の寂しさはあれど、悲しいかな…人は慣れる生き物なのだ。

「ああ、そういえば洋菓子店でバイトしてるんだっけ?まだ私は立ち寄った事は無いけど。」

確か口コミとかでも噂になっていた筈だ。一度くらいは店に顔を出してみるのもいいか…。
いや、出来れば睡蓮がシフトに入っている時がいいなぁ、とか思いつつ。
あれから、ちょくちょく”裏側”を相棒でもある睡蓮と一緒に探索しているが…確かに成果は芳しくない。
でも、こういうのは気長にじっくり取り組むしかない。前のめりになってもしょうがない。
そういう意味では、彼女と出会った頃の少し焦りにも似た前のめりな姿勢は多少は改善された、のかもしれない。

「…ケーキは少し早いけど帰りにでも買っていくかい?どのみち、今日は食材買い込んで私の部屋で軽くパーティでも、とか思ってたしさ。」

勿論、調理は私が担当だ。睡蓮は美味しく食べてくれたら個人的には十分満足である。
クリスマスにはまだ早いが、お互い中々時間も取れなくなってきているので、今の内にやっておきたいのだ。

(しかし、プレゼントか……私とした事が、睡蓮に何かこっそり用意しておけばよかった…!)

内心でぐぬぬ、と己の至らなさに唸りつつも表面上は平静そのままである。
いや、今からでも遅くは無い。何かプレゼントを用意するべきだろう。
それとなく横を歩く睡蓮を眺める……どうせなら実用的な物がいいか、それともお洒落を取るべきか…悩む!

群千鳥 睡蓮 >  
「――色々落ち着いたらうち来てみる?休みの時とか。
 ずーっとここだったから、内地のほうは知らないんでしょ?
 いまはまだ、あんたの家族もちっちゃいし、いろいろ落ち着いてないだろうから、また今度になるけど」

子猫の成長はめざましく、日に日に大きくなっていく。
なれども風土や気候にと、動物は敏感だ。
うちにいる黒猫のほうが異質なのだ――あれはそもそも同居人、教師というカテゴリ。

「お鍋。 ……は、流石にクリスマスっぽくないよなー。
 そーだなあ、作ってくれるならー……」

葉っぱものが安いから、最近は具材を買えて鍋ばかり食べている。
囲むのに適した食事なので、同居人ができてからはなおのこと顕著になる。
そもそもの性根が食事においては雑で量志向なところもあり、
なにかないものか、獲物を探す猛禽のように視線を向けて。

「ローストビーフ? ……七面鳥、フライドチキン。
 付け合せにポテト。ああ、ピザもいいなあ。お祝いっぽい。
 この前カフェで食べてたけど、やっぱりチーズはいいわ」

手間のかかるかつ味の濃いものをリクエスト。
鶏肉料理は華奈の顔を見た瞬間に思い至った。他意はない。
あとは、と何か探しているところで再び見ると、観察されていた。

「なに、どしたの?」

不思議そうに目を丸く。プレゼント――自分は考えてもいなかった。
もらう側だったからだ。

鞘師華奈 > 「ああ、島生まれ島育ちだからね…本土の方には一度も行った事はないけど…。
あーティガもまだ小さいしね。頼めば寮の管理人さんが一時的に預かってくれるとは言ってるけど。
でもまぁ、いずれ睡蓮のご家族にはお会いしてみたいかな。どういう人達なのかは正直凄い気になる。」

自分が里親として引き取った仔猫はすくすく成長しているが、まだまだ目が離せない。
あと、睡蓮が部屋に遊びに来た時は何故か私より彼女の膝の上に乗って甘えようとするのが解せない。

「まぁ、クリスマスに鍋も面白いけど、ここは豪勢に行くのもありかなって。
予算は十分にあるし、睡蓮が何か食べたいのがあれば出来る限り作るけど…。」

あ、睡蓮の目が獲物を狙う猛禽のように。挙げられた食べ物は確かにクリスマスシーズンらしいけど。

「えーと、ローストビーフに七面鳥、フライドチキンにポテト…あーパンも買ってチーズフォンデュとかいいかもね。
ピザ…は、流石にどっかで買った方が早いか。うーん、ローストビーフと七面鳥は仕込とか手間が…何か時短テクニック使おうかな。」

真顔で考え込む。彼女が挙げた物を本気で作るつもりなのか、大真面目に検討中である。
流石に全部は厳しいので、一部は普通に店で買っていくつもりだけれど。
あと、鶏肉料理が多いのは気のせい?しかも何か私の顔をちらっと見ていたような…まぁいいか。

「ん?ああ、まだ早いけどクリスマスプレゼントってやつ。睡蓮に何かプレゼントしたいなーって、考えてた。」

一瞬、誤魔化そうとしたが結局は正直に答える。
睡蓮は勘が良いし観察力もある。誤魔化しても何か気付きそうだから、いっそ正直に話した方がいい。

(まぁ、私が単純に睡蓮にはあまり隠し事はしたくない、っていう個人的な気持ちなんだけどね)

少なくとも、仕事のあれこれは別としてプライベートではそうしたいのだ。

群千鳥 睡蓮 >  
「あたしからしたら、自慢の家族だけど……会ってみればわかる?かな?
 華奈のこともよく話しててさ、感触は悪くない感じするけど」

それは末娘の視点であって、他人の目から見たらどうなのだろうか。
この島に来る切っ掛けの、失敗の思い出が蘇る。
きっと、違ったように見えるのだろう――とは思う。
どうなんだろうね、と考えるように唇を指先で撫でた。思考が別世界にとびかける。

「新鮮な肉なら、中が多少生でもいけるんじゃ……?
 ほら、お肉のお刺身みたいに。よし、高いの買おう!
 いろいろ手伝うから、それならたくさん作れるし?
 ピザはさすがにぐるぐる生地伸ばすのだと時間かかるから、売ってる生地買ってさー」

寮だと強引かつ雑な料理が多い。
たまに幼年の学生のところに同居人がいるときは、
ホットサンドメーカーで形状を気にせずにざっくり作る。
ちゃんとやろうと思えばできるのだ――とは自負している。だいたい目分量だが。

「あー。 あー」

プレゼント、って言われると、そういえば、と考えて。

「え、くれんの?」

親が子供にわたすもの、という印象だった。
そりゃ確かに年齢でも学年でも上だが、意外な申し出だ。

鞘師華奈 > 「自慢の家族、というなら尚更にお会いしてみたくなるね。
…って、私の事?あー…じゃあ、尚更に失礼の無いようにしないとなぁ。」

例えば、未成年だけど喫煙者とか絶対にイメージ悪いだろうから煙草は我慢するべきだろう。
ちなみに、睡蓮とこうして出歩く時もなるべくは吸わない様にしていたりする。
彼女の仕草に、あー…また考え込んで別世界行きかけてるなぁ、と分かる程度には彼女の事を理解できるようになってきたとは思う。

「んー…実際ローストビーフだって中身は割と生みたいなものだしね。
高いの、となると…後で扶桑百貨店の地下食品売り場とか行くのもいいかも。
あそこ、結構良いお肉とかも扱う店舗あるし…あ、じゃあ睡蓮にも幾つか手伝って貰おうかな。
それで、ピザは…うん、そうしようか。トッピング食材は睡蓮の食べたい物をまた買おう。」

どうやら帰りはちょっとした大荷物になりそうだが、自分の魔術の応用で”収納”すれば多分行けるだろう。
睡蓮の反応に「ん?」と、そちらへと緩く首を傾げてみせて。

「そりゃ、私の好きな人なんだからプレゼントくらいは渡したいと思うさ。
まぁ、実を言うとクリスマスは今まで適当に過ごしてたからさ。
クリスマスプレゼント、っていう発想が抜け落ちてたんだけど…。」

まだ両親が居た頃は幼い自分もプレゼントは親から貰っていた。
けれど、もう親は居ない。だから自分の中ではプレゼントは誰かに贈る物、となっている。

群千鳥 睡蓮 >  
「結構図太い人たちだから気負わなくて大丈夫だよ。
 ただ、ねーちゃん二人はあたし以上にひとにお洒落させるのがすきだから。
 あ、じゃあ鶏はピザに入れない?テリヤキチキン!あれ好き!」

子供舌だ。甘辛いものが好きで、味の濃いものが好き。
タバコの煙も苦手なので、最近はとみに助かっている。
折衷案を取り入れる柔軟性を自慢気に誇示してみせながら、
ローストビーフに胸騒がせつつも、プレゼントの話題には思案顔だ。

「そう言ってくれるのは嬉しい……けど」

あえてと言われると、悩ましいところではある。
好きだから、あげたい。それはごく自然なことなのだろう。
自分が家族からクリスマスプレゼントをもらっていたのは、
ごく一般的な額のお小遣いで過ごしていた時期。

いまも、部活動と――最近は出入りする暇も少なくなったが、
落第街の賭け事で巻き上げた逸般的な額お小遣い。
おねだりするプレゼント、というと、すぐに浮かばない。
だいたい欲しくなるものは、手の届くものだからだ。

「だいたい、ハードカバーの本。全集とか買ってもらってたんだよね」

版には拘らないほうだが、原著の全集で、装丁が豪華なものが本棚に並ぶのが好きだった。
シリーズごとに統一され、一から十まで揃っている。それを順々に手繰るのもたまらない。
現在の寮は二人部屋にうつって拡大されたとはいえ、
たくさん読むならレンタルや、文庫や電子書籍に頼らざるを得なくなる。
実家の自室の本棚はちょっとした自慢で、眺めているだけで気分がよくなる魔法の壁だ。

「……しょうじき、なにもらっても嬉しいと思うけど。
 あれだよ、華奈はどういうものをもらったら嬉しい?」

彼女も、公安委員会で決して少なくない俸給を頂いている筈である。

鞘師華奈 > 「あぁ、お姉さんが二人居る、というのは前にちらっと聞いたような……え?」

お洒落させるのが好き?いや、睡蓮は私が女っぽい格好が大の苦手なの理解してくれているからいいとして。
本気で女の子な格好をさせられそうだ…その時は…例え睡蓮のご家族とは言え断固拒否させて貰おう。
とことん、女の子な格好が苦手なのである…しかも小さい頃からなので筋金入りだ。

さて、テリヤキチキン…と、くればソースは甘辛いのが矢張り合うだろう。
彼女と何度も食事を共にして気付いたが、睡蓮は味が濃いのを好んでいるようだ。
どうやらピザの具に関しては決まりらしい。煙草はまぁ、我慢、我慢だ。

「書物かぁ。古書の類とかでもいいなら今度探して贈るけど…ふむ。」

もう一度睡蓮をじっと見つめる。まず、私はお洒落に疎いからそういうプレゼントは自信が無い。
食べ物…は、この後のパーティもあるからそこも除外しておくべきだろう。
と、なると選択としては私の性格も考えると…実用的な物、となってしまう。

(とはいえ、実用的…ねぇ?……うん?)

浮かんだのは二つほど。ただ、どちらも色気がないというか貰っても嬉しいかは分からない。
書物――古書の類は、今度プレゼントするのは己の中では確定として。

視線を睡蓮から周囲の店に向ける…うん、どちらの店もある。なら、今ささっと行った方がいいか?
と、睡蓮への贈り物に彼女なりの目処を付けた所で、意識をそちらへと戻した。

「…え?私かい?うーーん、睡蓮から貰える物って時点で私としては十分にプレゼントなんだけどね。
…あーでも、我儘を言うなら”これ”みたいに形に残る物がいいかな?って。」

と、首に巻いている黒革のチョーカーを軽く引張ってみせる。基本、プライベートでは欠かさず付けている大事な物だ。

群千鳥 睡蓮 >  
「古書……ちょっと……いや、ヤバい本とかだと困っちゃうけど」

もらえれば嬉しいのだろうが、先日も禁書庫で"眠り姫"になってしまうところだった。
希少価値には拘らないが、たとえば昔の本――不世出のものとなれば内容は気になる。
実際、裏渋の『書店エリア』には、それを期待しているところもあった。
概ね、本とはそうした魔力が込められているものだ。
魂ともいうべきか、そうして少し考えると、そうだ、と顔をあげて。

「じゃ、食材買う前に本屋に寄ってこ。
 華奈が読みたいと思ったもの、贈ってくれたら楽しいかな。
 あるいは、読んで面白かったと思うものとか。
 だいたい色々読みはするけど、案外開拓してないジャンルがあるかもだし」

もらって嬉しいし、相手のことも知れるし。
行くあてにひとつの道筋を示した。

「形に残るもの……」

自分の首も軽く撫でる。ハイネックに隠されているチョーカーがそこにはあった。
白い溜め息をついて考え込んだ。

「置物かな」

少し思考が迷路になる。
服をあげてもいいが――よく選んであげている。
高めのコート、なんてなると、少し重たい気もするし。
あえて、となると、少し迷った挙げ句、普段贈らないようなものになるのは自然の成り行きだった。

鞘師華奈 > 「…まぁ、私は本の目利きとか疎いから、やばい本をうっかり掘り出す可能性もゼロではないけどさ…。」

読書は人並みに、というレベルで蒐集家でも乱読家でも何でもない一般人と同程度。
そもそも、彼女のお眼鏡に叶う本…なるべくやばくない、という条件も加えると地味に難しそうな気がする。
と、睡蓮の提案に瞬きを一つ。自分が読みたい本…うーん、と考え込んで。

「…一応、最近少し目を通すようになったジャンルはあるんだけどさ。
こう、マイナーな伝承というかいわゆる民話とかそういう類のやつ。
特に異世界の民話とかこっちと全然違う文化体系とかだから結構面白いとは思う。
あと、私自身が”それ”だからってのもあるけど、”死者蘇生”とか”黄泉帰り”の類の民話伝承とか読んでるかな。」

メジャーな伝承や神話より、どちらかといえばマイナーな…一部しか知らないような民話とか割と好みかもしれない。
言うならば――”忘れられ埋もれてしまった”、あるいはそうなりかけている物語が好きなのだろう、多分。

「置物?あまり嵩張らないなら全然問題無いけど…まぁ、結局さ。
……睡蓮が隣に居てくれたらそれだけで割と満足な所もあるんだ、私は。
勿論、睡蓮の”夢”を邪魔するつもりは全く無いんだけどね。」

教師――それも”外”の、となると島を出るのは勿論必定。
自分はその時どうするのか、どうしたいのか?まだ明確な答えは出ていない。
島に残るのか――それとも、彼女に付いて外――内地へと旅立つのか。まだ分からないけど。

群千鳥 睡蓮 >  
「あーっ、いいね!興味あるかも。
 異界の民話、外じゃ抑えづらいところだしなー……あ、ってことは。
 原著だと辞書も要るか。うん、楽しそう。
 テーマに絞って読むって、なんか論文書こうとしてるみたいだ。
 じゃあそのあたり、いい感じのを見繕って欲しい。
 そーゆーのの取り扱いが多いところはこの近くだとどこだっけな……」

内地でさえ枚挙にいとまがない民話の数々。
それが巨木の枝葉のように幾つもある世界ひとつひとつの文化の葉脈が、
書物に綴じられている――となると、俄然テンションが上がってきた。
あるいはその傾向から、彼女の内面、彼女自身も知らない秘密を割り出せるかもしれない

「それならあたしが行くトコに引っ張ってくことになるけど」

苦笑した。
その時、また違った夢を彼女が持っているかもしれない。
あるいは、自分がここに残らなければいけない理由も――ひとつはある。
ラ・ソレイユに残り続けている理由もある。
その時になってみなければわからない未来だが、設計図くらいは書いておいたほうがいいのか。

「あんたが早めに島から発つ可能性もあるしな。
 そのときのためにも、うちの家族に気に入られておいたほうがいいんじゃない?
 部屋あいてるから、下宿くらいはさせてくれるかもよ」

先に卒業するのは彼女のほうだ。
その時のためにも、なにか持っておいてもらったほうがいいだろう。
寒風と人々の喧騒のなか、ジングルベルやらはやりのクリスマスソングを聴いて。

「クリスマスソングで好きなもの……の、オルゴールとか」

今日この日の思い出にもなるし、と。
持ち運びも便利だ。もしひととき離れることになったとしても。
なにか渡せるものはあったほうがいい。彼女の部屋に飾られている写真のように。

鞘師華奈 > 「うーん、常世渋谷近郊だと私も流石に分からないかな。
ただ、睡蓮もとっくに知ってそうだけど、書物と言えばやっぱり【古書店街「瀛洲」】じゃないかな?あそこは色んな書物が揃ってるだろうし。
それこそ、異界の民話の本とか他にも面白そうな書物は沢山あると思うんだよね。」

そういう”掘り出し物”を探す、というのは少しワクワクする気分はある。
ただ、古書店街は学生街方面だから、帰りに食材調達も考えると、この近辺でまずは探すのもあり、か。
案外、隠れたいい書店が見付かるかもしれないし。常世渋谷も、これはこれで隠れた名店や穴場が多い場所だから可能性は十分にある。

「うーーん、正直その時になってみないと分からないけど、島の外の世界を知っておきたい気持ちはあるんだよ。
勿論、ネットや書物越しに外の世界はある程度は知ってるけどさ。やっぱり自分の目で見ないと実感がね。」

井の中の蛙、大海を知らずという言葉もある。とはいえ、自分は彼女より先に卒業する身だ。
少なくとも、睡蓮が”道”を定めたその時に、自分の”道”も定めておきたい所ではある。

「まぁ、確かにそうなんだけどね…でも、無理に気に入られようとするより、自然体の私を見て判断して欲しいかな。
睡蓮のご家族なら、人を見る目はしっかりしているだろうから心配はしてないけど。」

と、笑いつつもオルゴール…に、ついてはほほぅと頷いて。

「クリスマスソングは私はオーソドックスに「きよしこの夜」とか好きかなぁ。
ちなみに、私は個人的に睡蓮に贈ろうと思いついていたのは、システム手帳と万年筆のセット。
もしかしたらあまり使わないかもしれないけど、あったら便利かもだしさ。」

「あと、”それ”だね」と指差したのは彼女が掛けている伊達眼鏡。
折角だから、ちょっとリッチな伊達眼鏡もプレゼントしようかなぁ、と思っていた。
完全にネタ晴らししているが、案外こういうのが自分たちらしいかもしれない。

群千鳥 睡蓮 >  
「忙しい一日になりそうな感じ」

ぐっと伸びをしながらも、楽しげに笑う。
回るところが多いのはいいことだ。
たった半年では、ほんのひとかけらしかこの島に触れることはできていない。
自分ばかり楽しいのではなく、傍にいれば満足――
ということだし、喜んでいてくれればいいのだけれど。

「まだまだ時間はあるし、考えたら?
 そのうち、ここでやりたいことが見つかるかもしれないし。
 逆に、ここではできないことも。
 すくなくとも傍にいる間は、あんたがどう変わるのかも見てられるし」

楽しい時間ばっかりに溺れていてもいけないのだろうけど。
先々のことだけ考えると、足元が疎かになる。
なんていうのは、少し老人の価値観かなあ、なんていうのは、
すでに道を定めてしまった自分の、優越感にもならない達観かもしれない。

「つかうと使うよ―。字を書くのも好きだしさ。
 電子よりは肉筆のが好きなんだ。手帳がどんどん埋まってく感覚。
 あれこれもおねだりするのは――ああ、これ?」

じゃあ、と眼鏡を外して、彼女のほうに差し出した。

「新しいのくれるんだ?」

尊敬する人の真似をしてかけ始めたものだが。
裸眼の黄金を晒して目を細めた。くれるものはもらおう。
それだけのものを返そう、という感覚は生まれる。
まだ色気に足りないものだが、そもそも人生経験自体が足りない。
来年のクリスマスはもう少しばかり器用になっていることだろう。

鞘師華奈 > 「いいんじゃない?こういうのが私達らしいと思うよ。」

隣でぐっと伸びをして楽しげに笑う睡蓮にこちらも微笑を返して。
まだまだ、この島で生まれ育った自分ですら知らない場所、知らない事は沢山ある。
それに、お世辞にもまだ色々と”安定”しているとは言い難い。
睡蓮にはまた色々と世話を掛けてしまいそうだが、自分も彼女の助けになりたいと常々思うのだ。

「――そうだね。まだ私は”自分の事”で精一杯な状態だし。明確に”夢”…自分の道を見つけるのはそれが一段落してから、かなぁ。」

自分が何故また生きてこうしていられるのかを、そこをはっきりさせておきたい。
勿論、見て見ぬフリも出来たがそうしない。すでに睡蓮にもそういう決意表明は済ませている。

そう、楽しい時間ばかりではない…向き合うべき現実と真実が、まだ遠いが確かにある。
既に定めている睡蓮には、自分の隣でそれを見届けて欲しいのだ――私の物語を。

「決まりだね、どうせならそこそこ良いのにしようか。んー…私が選んでもいいんだけど、睡蓮は好みとかある?
こう、レンズの形とかフレームの色とか素材とかさ?」

もし特に希望がないなら、こちらで決めてしまうが。そこはプレゼント相手のご希望に添いたいもので。
生憎と色気も無いプレゼントだが、そこはまた来年の課題みたいなものか。

「よし、じゃあまずは伊達眼鏡と…うん、ついでにシステム手帳と万年筆も纏めてプレゼントしちゃおう。…と、言う訳で行こう睡蓮。」

こちらから彼女の手を取って歩いていく。急ぐ事でも無いけれど、正直言えば凄くこの時間が楽しい。
子供っぽい気持ちかもしれないが、実際まだ自分は子供なのだから…だから。

今はこうして、年の瀬も近い冬の街中を、二人で巡って過ごすのだ。

群千鳥 睡蓮 >  
「焦って転んじゃ元も子もないしね」

見たところ、すぐに死んでしまうというようなエラーは見られない。
とはいえ、あの炎や彼女のなかに潜むモノは謎ばかり。
おいそれと使わせないほうがいいのか、あるいは使わせて置かなければならないものなのか。
解き明かさなければならない謎は、書物の海でカジキを釣れるかどうかの勝負から進めてはいない。

「あたしならなにかけても似合うし。
 これがあたしのセンスなんだから、次は華奈が選んでくれるのがスジじゃないかな。
 形に残るものなら、そのひとの気配があるほうがいいし――っと」

手を取られた。
少しだけ微笑ましい。こういうことは初めてではない。
相手が家族か、彼女かどうかの違いだ。
どうにも年上らしく引っ張っていってくれるようなものだから、
後ろから彼女が転んでしまわないように見つめながらついていく。

「オルゴールとか買ったことないからね。職人さんのお店も探さないとだ」

ネットで調べてもいいのだけれど、直に歩いてみるほうが楽しい。
異界の行き来がもう少し気楽であれば、そちらの文化を肌に感じに行ったのかも。
広い世界に思いを馳せつつも、愉快な日常のなかに紛れていく。

「師も走るってのはこのことかなー」

休みの日も忙しいけれど、まあそれも悪くはない。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から鞘師華奈さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から群千鳥 睡蓮さんが去りました。