2021/02/26 のログ
ご案内:「常世渋谷 常夜街」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
「……ああ、御苦労。今回はそう難しい『仕事』でも無かっただろう?」

常世渋谷の夜の顔。
正しく『常夜』の名が相応しい不夜城の一角。
所謂、ラウンジやクラブと称される店。
その価格帯は非常に高価で、学生が訪れるには少々懐が心許なくなってしまうだろう。
それ故、客層の多くは学園内で財を成した部活生。島外の客。若しくは――

「…ああ。報酬は何時もの口座に。では、またな」

ラウンジの奥の一席。
上質なスーツ姿の男と、フォーマルコーデの装いの少年がグラスを傾けていた。
男が少年に手渡した書類を一瞥し、労いの言葉をかければ。
慇懃無礼な態度で頭を下げた男は、一杯だけグラスを空にして――直ぐに、席を立って店を去るのだろう。

「…忙しない男だ。まあ、それが美徳でもあるやも知れぬが」

未だ左腕を吊った儘で少々くつろぎ辛くはあるが。
程良く冷えた果実水のグラスを傾けて、小さく笑って男を見送った。

男は、度々少年が利用している『情報屋』の一人。
と言っても、普段は主に学園の内部について調べさせているので、違反部活への情報操作に利用する事は無い。

そんな男に今回依頼したのは――『落第街の物流調査』
正規ルートからでは決して見えないものではあるが、生活委員会や鉄道委員会の情報と、旧道の交通量。
そして、男が齎したデータを照らし合わせれば…多少、見えて来るものもある。

神代理央 >  
何も、直接落第街に砲弾を叩きこんだり摘発を行うばかりが得策、という訳でも無い。
落第街とて、所詮は外の物資が無ければ成り立たない場所。
あの場所で食料を生産している訳でも無ければ、インフラを整えている訳でも無い。
生活必需品。医療物資。食料等々。それらの多くは『外』からの搬入に頼っている。
であれば――

「…少し締め上げてやるだけで良い。所詮、全てに目を光らせるのは難しい話だからな」

大型トラック。船舶。航空機等々。
大掛かりな輸送を行うものだけに搾れば――それなりに、ルートは見えて来る。
何も、違反物資を全て摘発しようという訳では無い。
ほんの少し、物流を滞らせてやれば良いだけ。

「……力任せに叩き潰したところではあるが、それは世論が許さんからな」

カラン、と音を立てて。
上質な果実水を冷やす氷が揺れた。

神代理央 >  
落第街に通じる全ての道路は封鎖出来ない。
物資の出入りも、完全に封じ込める事は出来ない。
それでも『特務広報部が落第街への物流を取り締まり始めた』と、印象づけさせれば――それで良い。

「…それに、其処に対する違反部活共の反応も、気になるところではあるしな」

空になったグラスを、ガラスの触れ合う音と共にテーブルに置いて。
少年は、ラウンジを後にするのだろう。

ご案内:「常世渋谷 常夜街」から神代理央さんが去りました。