2021/02/28 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」に幣 美奈穂さんが現れました。
■幣 美奈穂 >
とっとことことこ。
迷う様子もなく、歩く美奈穂です。
隣は預かっている超大型犬種のブロッサムちゃんです。
少し心配そうな顔で時々美奈穂を見上げるので、
「さらさらになりましたわねぇ」と頭や背中を撫でます。
預かっている間、毎日お風呂に一緒に入って、念入りにブラッシングしているのです。
そんな美奈穂、日曜のお昼間に何処へ向かおうとしているのか・・。
は、異邦人街のバザーを目指しているのです。
風紀委員のお車などで一緒に行かないと、行ける自信はちょっぴりないのですが。
折角の日曜日です。
美奈穂は冒険として、学生街の自宅から異邦人街を目指したのです。
■幣 美奈穂 >
「大丈夫?、もうすぐ着くと思いますの!」
基本、土日は委員会の仕事がない美奈穂です。
お役目の際には異なるのですが。
『そっちは違うのじゃないかな?』なんて思っているブロッサム。
でも大人しく横についてきて、護衛をするのは。
かなり美奈穂成分に汚染されたのかもしれません。
昨日も食事の後、腹を出して昼寝までしてしまったブロッサムです。
「ほら、もうすぐ・・あれ?」
美奈穂、振り返ります。
なんか膜みたいなのをくぐった感覚。
一緒についてきたブロッサムの体毛がぶわっと膨らみます。
――異界に入り込んだのです。
ただ、違うのは。
美奈穂は相も変わらずほのほのしているに対して、
ブロッサムは警戒し頭がクリアになっていく感覚を覚えているところでしょうか。
「ちょっと違ったようです・・」
しょんもりしたお顔を見せる美奈穂に、
流石にこの呑気な護衛対象も警戒したり不安になったりしたのだろう・・。
と思えた瞬間がありました。
「まっすぐ進めば、判るところに出るかもしれませんね!」
まだ昼を少し回ったぐらいです。
日が暮れるまでまだ随分時間がありますし。
気にせず進もうとする美奈穂です。
ブロッサム、流石にと裾を咥えて足を止めさせようとします。
「いいですか、ブロッサムちゃん。
わたくしはもうオトナですから、迷『子』にはなってないのですよ?
わたくしが居れば大丈夫です!」
自分より体重がよっぽどある超大型犬種レオンベルガーのブロッサム。色々と生体強化されているのですが、それでも感じられるここに居る存在は自分よりも強い。
けど、そんなブロッサムを妹扱いする美奈穂です。
たんにお姉さんぶりたいだけなのかもしれません。
何かが強い存在が近づいてくる・・守らねば、と尻尾を膨らませて。
何とか幼子を守ろうと前に出ようとした・・のですが。
現れる前、ビルの影にいる時点で『ギャァ!?』と何者かの悲鳴。
そしてしゅるしゅると遠ざかっていく気配がします。
声でやっと気づいた美奈穂。
ブロッサムと顔を合わせます。
ただ、考えている事は別。
『何が起こったのだ?』というブロッサムに対して。
美奈穂は「誰か転んだのかも!」、そう、自分がよく転ぶからです。
■幣 美奈穂 >
1人と一匹で、声がしたビルの裏を、角から覗いてみます。
いえ、一匹は危険だからと抑えようとしたのですが。
怪我してたら絆創膏あげなくては!
そんな感じで覗いてみますと・・。
――誰もいません。
不思議です。
実は、美奈穂の無意識の結界に触れたのです。
物質よりも非物質、力ないものより力あるものに。
そして邪や穢れという存在にはよく効く結界。
邪精霊のような存在には天敵です。
「どこいかれたのかしら?
あっ、でも。
元気だからもういっちゃったのかしら?」
相も変わらず呑気な美奈穂。
何か生きている者が近づいてきた、その生命力を糧にしてやろう・・。
なんて思っていた邪精霊にとっては近づいた瞬間に、
青い火花が散るような強い静電気みたいなものと、聖の気質の毒に存在の一部が侵され、
浄化されかかったのです。
やばいやばい、と逃げていくのでした。
■幣 美奈穂 >
「たぶん、こっちのほう!」
ブロッサムちゃんに判り易いように、進む方向を指さします。
さっき違う方向行こうとしてなかったか?
美奈穂の顔を二度見するブロッサムです。
しかし、空間がおかしいのでしょう。
後を振り返っても元の場所の匂いはしません。
守らねば・・そして帰らねば。
そう使命感に燃えるブロッサムです。
「今度のお料理、生春巻きですけど。
揚げても美味しそうなのですよ?
お米の皮なのでもっちりするらしいです」
歩きながら美奈穂はお料理の話をします。
突然、くいっと道を曲がったりしてます。
迷いがない歩み、まるでこの異界に詳しいような歩みです。
だがブロッサムはこの数日で理解したのです。
絶対、道が判ってない、と。
■幣 美奈穂 >
そうして異界を彷徨う事1時間ほど。
ここ、さっきも通ったよね、とは犬語を解しない美奈穂にはブロッサムは言いません。
ですが、「あっ!」と美奈穂は見つけた人・・人?に駆け寄ろうとします。
危ない!
と前に出ようとしますが、感覚で動く美奈穂、遅いくせに一瞬だけ早いのです。
「レオンプリン様!」
『違うにゃ!』
即座に否定した長靴を履いた二本足で歩く大きな猫です。
中型犬ぐらいあるでしょう。
どうも知り合いらしい、と警戒を緩めたブロッサムです。
『やめろにゃ~』というその猫を撫でまわす美奈穂です。
相手も本当には嫌がってないのでしょう、目を細めてごろごろっと喉が鳴ります。
『どうしたのにゃ?、あっ!、また変な怪物かにゃ!?』
慌てたように周囲を見る猫。
その様子にブロッサムは理解したのです・・あぁ、こいつも被害者だ。
「違いますわ。
ほら、異邦人街でバザーやってますの。
わたくし、行こうと思って・・」
しらんにゃ、そんなのあるのにゃ。
とその二本足で立つ猫、こっちを見ると。
『大きなへんなイヌころにゃ!
吾輩が乗れそうにゃ!』
なぜ、すぐ乗ろうとする。そして幼子は乗せようとする。
――結局、その二本足で立つ猫を背中に乗せて一緒に行くことになる。
どうも、この異界に住み着いているらしい。
住み着いているというか、時々、別の異界から別荘代わりに訪れているらしい。
そんな輩もいるのだな・・とブロッサムには驚きです。
何処をどういう順番で通れば、どこに出る可能性が高い。
とかも色々と知っているらしい。
まあ、その順番を通るよりは、別の場所に出て常世島の交通網を使った方が早い場合も少なくないらしい。
「う~ん・・危険なのとか、ぜんぜんないですわ?」
嘘だ。
姿は見えなかったが、さっきのやつはやばかった。
風紀委員会のビル内を見てみても、やばそうなのは色々いる。
――この幼子の世界は平和なのだな・・とブロッサムはしみじみ思うのだ。
30分ほども歩くと、異邦人街にくるっと出てきます。
先ほどまでは時折、冷汗が流れる気配があったが。
元の世界に戻れたとわかり、ほっとするブロッサムであった。
「あっ、あっちにお洋服売ってます!」
異世界風の服を見つけた美奈穂、とてとてっと近付いていくのに。
溜息を仕掛けてぐっと飲み込み、ついていくブロッサムであった。
――その背中を、ぽんぽんと叩く感触。
背中に乗った二本足で立つ猫が『大変だにゃ』と言った気がした。
ご案内:「裏常世渋谷」から幣 美奈穂さんが去りました。