2021/03/07 のログ
ご案内:「常世渋谷 風紀委員会常世渋谷分署」に藤白 真夜さんが現れました。
藤白 真夜 >  
「よい、しょ……っ。ふ~っ……」
手に持ったダンボールを荷台から降ろして、風紀委員の担当の方に届けて、額の汗を拭って。
……実のところ、体力的なものより、緊張から来る汗だったのですが。

「あっ、は、はい!これで全部です……はい。確かに確認しました。
 はい……、はい。では、後はよろしくおねがいします」

生活委員会からの、落第街への医薬品の搬入のお手伝い、なのでした。
こ、これでも一応、生活委員会の端っこの下っ端なのです……!
かちかちに緊張しながらも、ぺこりと頭を下げて。

(……一応、任務完了かな)

ただ、トラックの助手席にかちかちに固まって、荷物が届くのを見届けただけ。
たったそれだけですが、それすら本来私の仕事ではありませんでした。
祭祀局からのお仕事で常世ハイムに出向くついでに、ならば丁度いいからまかせてしまおうということで、私の出番なのでした。
……祭祀局のお仕事のついでに生活委員会のお仕事とは何事かと怒られそうなのですが……。

(入れるものならば、生活委員会にすっぽり所属、したいんですけどね)

色々な事情で、祭祀局のとある支部に猛烈なお誘いを受けていたり、
でも自分としては、生活委員会で人のお役に立ちたかったり。
相変わらず、迷いに迷っている私にはお似合いかもしれないのですが。

藤白 真夜 >  
「……ふう。……ここが渋谷かぁ~……」

お仕事を終えて、まだ行くところがあるらしいトラックの運転手さんにお礼とお別れを告げれば。
少しだけ落ち着いて、あたりをきょろきょろ、見渡してみます。
……ぎらぎらと輝く、夜の街、なのだとか。
良いところも、悪いところも、あるのだとか。
お嬢ちゃんみたいなのは気をつけてなと送ってくださった運転手さんの言葉に、一応私も理解はしているつもりでした。
落第街ほどでなくとも、治安はあまりよくないのだと。
……どきどき。
さっきから、緊張で胸が高鳴りっぱなしでした。
実のところ、風紀委員の方にも、少し苦手意識があったりして。

(……なんでか、叱られちゃいそうな気がしちゃうんですよね)

悪いことは、していないつもりなのですけれど。

(……、)

医薬品搬入の理由は、落第街で起きた密輸品の取締が原因でした。
渋谷にすら立ち入らないような私には、詳しいことはわかりません。
……ですが。

「……悪いひとをやっつけるのは、いいことに入るのでしょうか」

夜闇の中で燦然と輝く渋谷の町並みを見て、ひとりごと。
私の小さな声は、活発な街のざわめきの中に小さくかき消えて。

藤白 真夜 >  
私なんかが言葉に出すのすら、ためらわなきゃいけない、ことば。
こんなに頑張っている風紀委員の人が悪いわけがなくて。
でも、落第街の人がみんな悪いわけでも、ないはず。

(……誰が悪いんだろう)

私は、悪いことが嫌いでした。
良いことが、好きなのです。

悪い人をやっつけるのが怖くて、良い人を助けよう、と。
そう思って、異能で人を癒やせるように、努力しているつもりで、遅々として進まず。

(生活委員会でも、仕事はこういうのだけ。……誰の役にも、立ててないんです)

考えるとよくわからなくなるようで、少し怖くて。
暗いようで明るく、賑やかなのに何処か後ろめたい。
そんな、私みたいな町並みに目を向けて。

(……たまには、足を運んでみようかな)

苦手だった渋谷に。少しだけ、前向きになって。

藤白 真夜 >  
「いえっ、あ、あのっ!す、すみません、そういうのではなく……!いえ、本当に、あの……!」

その直後、男の方に声をかけられて、ものすごく焦りながら逃げ帰ったり、したんですけれど。

(……も、もう当分渋谷はいいかもしれません……)

ご案内:「常世渋谷 風紀委員会常世渋谷分署」から藤白 真夜さんが去りました。