2021/10/31 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に藤白 真夜さんが現れました。
■藤白 真夜 >
ハロウィン。
万霊節だとか、死者の日だとか。色々な呼び名があったり、言い伝えがあったり、するみたいですけれど。
夜なのに人が行き交う常世渋谷では、コスプレをしてお祭りをする現状にしか、なってなかったりするのです。
「ハ、ハッピーハロウィンです~……。
お菓子おひとつ、いかがですか~……」
そんなコスプレをした人たちでごった返す中、落ち着かない様子で棒読みでこの機に乗じたお菓子メーカーの手先のようなことをする、わたし。
一見するとただの学生のアルバイトなんですけど、一応ちゃんと目的があったりします。
月初めの頃に起きた幽霊騒動。
それがハロウィンに来ていよいよ何かが起きるのでは、そう考えた祭祀局の、いわゆる潜入警備員のようなことをしているのでした。
「お、おひとつ、いかがでしょうか~……」
……勿論、この手のアルバイトを一度たりとて経験したことが無い私は、緊張しっぱなし。
幽霊より人間と対面することを怖がりながら、かぼそい声で呼び込みをしているのでした。
……頭に刺さった斧のコスプレ道具を、度々ずり落としながら。
■藤白 真夜 >
「あっ、は、はい!どうぞ、こ、こちらオマケのチラシになっていて、……あ、い、要りませんよね。はい~……」
ときたま、お菓子をもらってくれる人は居るものの、微妙にお菓子メーカーの宣伝色の強い提供のしかたで、お菓子籠は中身が全く減っていなかったり。
……何より、本人の恥ずかしそうな声とそわそわした態度が問題かもしれません。
「……はあ」
思わず、ため息。どちらかというと、たまに見に来る人が離れて開放されたことによる、安堵のそれ。
(……別に、うまくできなくても、いいとは思うんですけど。
私がやるべきは、人に害を為すような亡霊が出てこないか見張ること。
……このまま何も起きないなら、それでいい。無駄足が一番の成果なのですから)
とはいえ、身分を誤魔化すためとはいえ、ちゃんと受けたアルバイトもおろそかには出来ない真面目さが出て。
……けれど、コミュニケーション能力低めな私には、声を出すだけでもちょっとしんどいの、です。
「い、いかがですか~……っ。
ハロウィン限定仕様です~……!」
■藤白 真夜 >
(……そもそも。あの幽霊騒ぎ自体が何だったんだろう……。
なんかよくわからないうちに収まっちゃいましたし。今夜も何も起きなさそう……。
本番のハロウィンじゃありませんし、これだけ人が沢山いて幽霊騒ぎ……なんてのも相性悪いものね)
ついに呼び込みを諦めてぼーっとしだす私。いえ喉が、大きな声がでなくなるんです。
それに、一応私の本懐は見張り要員なので……。
……夜なのに、仮装したひと達が歩く道々は、ハロウィン仕様のランタンに照らされて薄明るい。
魔女の格好をした人、動物の耳や毛皮をつけた人たち。
薄暗がりを歩む人外の者たち――と今の状況を説明すれば聞こえはいいかもしれないけど、実際はなにかのアニメのコスプレとか喫茶から出張してきたメイドさんとかもいっぱい居てよくわからないことになっている。
(……これじゃお化けさんも雰囲気出ませんよね)
結局のところ、私たちのやっていることは無駄足に終わりそうだったけれど。
……やっぱり、接客業なんてとんでもないし、人に声をかけるのも嫌いだったけど。
いろんな人たちが……色とりどりの格好で街を練り歩く様は、好きだと言えそうだったから。
「お、おひとついかがですか~……っ」
手元で甘い香りを漂わせるかぼちゃ型クッキーとか、舐めると口の中が真っ赤になる飴玉とかを。
お祭りの喧騒に負けまくってる小さな声でも、ただそこに一部として参加出来ていると思うだけで、ほんの少し頬をほころばせながら。