2021/11/01 のログ
藤白 真夜 >  
(う、う~ん……皆さんすごい格好……。
 というか仮にも食べ物の試供品を出してるのに、この格好が不味かったのでは……?)

 頭に刺さったように見える斧つきヘアバンドに、首周りがでろっと赤く見える血塗れのセーラー服。
 とはいえ、他のコスプレの候補がやたらかわいい系のウェイトレス風だったり、アニメ風のちょっとセクシーなやつだったりで、私にはそもそもホラー系しか選択肢が残されていなかっただけなのですが。

(……メイドさんとか、ちょっと憧れないことも、ないんですけど)

 そこに居るだけでコスプレとして成立しているメイド喫茶の方たちを遠巻きに見つめながら、心の内でぽつり。
 誰かに奉仕するためにある在り方に、少しだけ憧れて。

(……私には接客とか絶対無理なんですけどね)

 メイド喫茶のチラシとお菓子を配りながら笑顔を振りまくメイドさん達に、彼我の落差を思い知らされる笑顔の下手な棒読み血まみれセーラー服。

藤白 真夜 >  
 夜も更けてなお霊体の反応も薄く、本営の下した判断は、危険度無し。主要メンバーを除き撤退の指示。
 その間、私としてもろくに警戒するようなことも起きず、ただ弱々しい声をあげて宣伝を続けた結果。
 配れたお菓子の数は、抱けるほどのサイズの籠の二割ほど。……肝心のメーカーのチラシのほうはほとんど減ってなかったりしたのですが。

「……うん。結構、がんばれたほうではないでしょうか……!」

 こと、自分の対人能力に関しては低評価の私からすれば、逆に驚きの結果。
 ……その実態も、ハロウィンの熱気と、結果として本当に血の匂いのするコスプレになっていて物好きな人が寄ってくれただけだったりするんですけど。

 更けていく夜。
 それでもまだ続く、おまつり。
 元々が死者と生者の境が曖昧になる時期だとか、そんなこと気にも止めない夜ふかしの大騒ぎ。
 そんな、人間らしい都合のいい考え方。
 元がなんだろうが、自分達の好きな風に解釈する在り方。
 そんな考え方が、私の目には少し眩しく映るのでした。

「……ハッピーハロウィン、です」

 通りを歩く、そんな人たちを見れば、目を細めて。
 誰に向けたものでもないお祝いの言葉。
 けれど、今日一番想いの籠もった言葉になって、ざわめく街に響くのでしょう。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から藤白 真夜さんが去りました。