2021/11/19 のログ
ご案内:「常世渋谷 底下通り」に藤白 真夜さんが現れました。
藤白 真夜 >  
 体力が足りない。
 より正確には、私の中を巡る命が。

 補充する方法はいくらでもあって、今までもそれをやっていた“はず”だった。
 “それ”は私にとってすごく嫌で、厭で。不思議なほどに記憶も虚ろなくらいに。
 けど、このところはサボってしまっているし、出来ない都合もあった。
 でも、理由はそれだけでも無いのかもしれない。
 落第街の闘争が及ぼす霊的影響、“物流”的な滞り。久々の燃焼によるダメージ……。
 いろんなことが重なった結果、貧血を起こしていた。

(今はもう大分楽になったんですけど、ね。
 心配とか、かけないようにちゃんとしておかないと。
 ……なるべく、マトモな方法が、良いな……)

 私に必要なのは、生命そのもの。
 だから、通常の治療や回復魔術は効果が無い。

 古来、魔力は生命力と繋がっているとされた。 
 魔術基盤や理論の発展によってそれらは覆されたけれど、似通っていることに違いは無く。
 つまり、私のカラダは魔力を詰め込めばある程度はなんとかなる……はずだった。
 ――つまるところ。

(お買い物リスト、おっけー……!)

 底下通りにある怪しげな露天やお店で、お買い物に来ているのでした……!
 
 理由はちゃんとあって、多少は呪いや曰くが無いと私のカラダと適合しないこと。
 正規のお店に並ぶものは、“正しい”物が多くて、どうにも相性が悪いのです。

藤白 真夜 >  
 最も望ましいのは、魔力を湛えた宝石、魔石の類。
 時を経た石の中に籠められる魔力はとても純粋で、“透明感”がある。
 けれど、結局のところ鉱物でもあった。
 魔力を汲み上げて使う分には全く問題無かったとしても、今回は使いみちが特殊。
 私のカラダという有機物に無機物の宝石魔石の類を溶け込ませるには、属性的な親和性が必要になる。
 たとえば、柘榴石やルビーのような。中でも――

(――お買物リスト一番、ピジョンブラッドのルビー)

 ぽつぽつとメモ帳を片手に、暗がりの通りを歩く。大分おっかなびっくり。
 ……普段、こういうところ来ないので……。
 そして、あたりのお店を見て回るうちに、察する。

(……そんなの絶対置いてないです、ここ……!)

 あたりに並ぶマジックアイテムや素材は、大分……かなり、怪しげ、こう、神秘的――違います、荒削りな。
 真緑色に輝く謎のとげとげした石とか、なんだか20面くらいありそうな不思議にカットされた真っ黒で光を反射しない魔石(?)とか。

 つまるところ。

(わ、わかんない……)

 こういう闇市と言ってすらいい場所に来るには、目利きが圧倒的に足りていないのでした。

藤白 真夜 >  
 これひょっとして魔石だとかそういうのでもなんでもなく、ただの遊び道具なのでは……?
 なんて思って露店の品揃えを覗き込んでいると、声をかけられる。

「……えっ。あ、いえ、いえ……そ、その、お買い物で。
 あ、は、はいぃ~……」

 勿論、受け答えはしどろもどろ。お買い物中に店員さんにお話されるの苦手なタイプなのもあるのですが。
 やっぱりこういう場所では私のようなのはちょっと浮いているらしく、心配されたり、はたまた値引きを持ちかけられること多々。

(……浮いてるのは解ってるつもりなんですけど、……ここらへんはぎりぎり、なんとかなるんじゃないかな……?)

 なんて、楽観視していたり。
 事実、思っていたより底下通りは賑わっていた。
 つい先日、終わった闘争の影響もあったのかも、しれなかったけれど。

 商魂逞しく営む人々を見ると、ほんの少し……嬉しくなる。
 私が知る吉もなく、憐れみなどでもなく。
 ただ生きていこうという活力が、感じられたから。

「……よしっ」

 口元に小さく笑顔を浮かべ、歩を進める。

 

藤白 真夜 >  
 私のカラダは、生物的な要素をあまり受け取らない。
 最も求めているのは、当然――。
 
 だから、生物的な要素で命を補おうとすると、かなり大変だった。
 竜の血――まで行くとやりすぎかもしれなかったし、元から素材としての価値も高いし望み薄。

(……常世島には竜が居る、だなんて聞いたけれど。
 そもそも、ここのひとたちどこから素材を持ってくるんだろう……)

 市場に並ぶ、なんかこう、正体不明の、肉。
 そっちは私の目当てではないので足を進めると、なんか謎の生物のしっぽ(1メートルくらい)、虹色に発光するクラゲ、閉じられたクーラーボックス(中から悍ましくて宇宙的な響きが聞こえてくる)とか、……。なんか海産物の割合多くないですか……?

 ダメかもしれません。
 ユニコーンの血とか、セイレーンの涙とか、そういうのを期待して、来てたんです……。

 しょんぼりしつつ歩く私の手にあるメモ帳。
 お買い物リスト二番にも、ぺいっ、とバツマークをつけて。

藤白 真夜 >  
『 
   ――■ならなんでも良いなんて話じゃないからね♡ 
                            』

藤白 真夜 >  
 なにかがおちる音を聞いた気がする。
 けれど、きっと気のせい。

「う~ん……やっぱり、ダメだったかなぁ。
 あとは……」

 歩きながら、手元のメモ帳に目を落とす。
 お買い物リスト、最後のみっつめ。

(――魔術的要素)

 生命力と魔力は、やはり似ている。
 治癒魔術は、怪我や病気そのものを癒やすもの。
 そうではなく、“命”そのものを属性とした魔術要素があれば、私にも恩恵があるかもしれなかった。
 けど、これは一番むずかしい。
 呪われてかつ命を主題とする魔術だなんて、想像もつかなかった。
 私が求めているのは、結局私のカラダ自身が求めているものだから、目利きは効かなくとも、直感出来る。
 コレなら足りる、という確信。
 だからこそ、こういう場所に来て自分の足で見ていたのだけれど。

(う、う~ん……っ。
 すごい、炎に属する魔術なのはわかるけど、術式がアドリブと改変だらけで全然わからない……!)

 ……魔術のスクロールを売っているお店を覗いて見ても、ちんぷんかんぷんなのです。
 私の、机上論的な……在る種、良い子のお勉強の仕方は、ここでは全く通用せず。
 魔術の式の上でのみ働くそれには、直感も効かないはず。
 ……お手上げです。

ご案内:「常世渋谷 底下通り」に黛 薫さんが現れました。
藤白 真夜 >  
(炎を敷いて、……わざと断線させてる……?
 なんでこんな解りにくくしてるんだろう……。
 対抗呪文対策……?にするには、失敗の仕方が分かりやすすぎだしこれじゃ成立しないんじゃ……)

 ぶつぶつ。
 魔術的スクロールの並べられたお店の前でひとり考え込む私。
 ついに、物静かな店主さんから それ煙幕 と答え合わせならぬ助け舟を出されてしまいました。

「な、なるほど……!わざと術式を失敗させてそこから展開してるんですね……!べ、勉強になりましたっ」

 驚きに目を輝かせながら、ぺこぺこと申し訳無さそうに頭を何度も下げる、わたし。
 ローブに身を包んだ店主さんは終始無言で手を出していて。その意味にようやく気づいた私は、

「あっ、は、はい!買わせていただきます……!」

 なんて、ちゃっかり買わされてしまったり、しているのでした。

「……すごいなあ~……」

 でも、お財布の紐がちょっと緩んだくらい。私の顔は新しい発見に楽しげに綻んで。

黛 薫 >  
常世渋谷、底下通り。落第街ほどの治安の悪さは
ないものの、この世界の勝手を知らない/馴染めない
よく言えば自由な、悪く言えば傍若無人な異邦人が
占める割合の多さから独特な空気感を醸す街。

特徴のひとつは無認可の屋台、及び店舗の多さ。
風紀や公安による手入れが無い訳では無いのだが
あまりにも数が多く、また大半に悪気がないため
半ば諦めるような形で見過ごされているのが実情。

(つまり『ワケアリ』が入り込む余地がある、と)

人目を避けつつ通りを散策する彼女はその下見に
訪れていた。別に自分で露店を開くつもりは無いが
とある人物の助けになれば良いな、程度の気持ち。
多分その人物が直接出向けば自分なんかより余程
『上手くやる』のだろうけれど。

客引きに声をかけられないように、半端な距離を
空けて露店を眺める傍ら、見覚えのある人影が
見えた気がして足を止めた。

藤白 真夜 >  
「……?……??」

 足を止めては疑問符を顔いっぱいに浮かべて、考え込む私。
 机の上と論文でしか魔術を知らない私には、そこは難解な応用問題だらけの問題集のよう。
 つまり、面白いけど、難しい。

「う~ん、う~ん……」

 当初の目的も忘れかけ、楽しいよりも難しいが勝ってきたころ、難問という現実から目を逸らすように顔を上げれば。
 視線の先に、特徴的なパーカーが見えた。

「……あれ?
 薫さん、ですか……?」

 まだ、量産品を着てる別人かもしれなかったから、少しだけ控えめに。
 けど、あの小動物感のあるパーカー姿は、確かに記憶にある。
 問いかけるように小首を傾げて。
 そして、喜色を浮かべて視線を投げかける。
 ――私が思ってるだけかもしれない――恩人との思わぬ再開に。
 

黛 薫 >  
遠目に様子を伺っていた少女は、問い掛けるように
首を傾げた貴女の仕草に応えるように軽く手を振る。
それからするりと器用に人混みの中を抜けて会話が
出来る距離まで歩みを進めた。

「よ、お久っす。何か珍しぃトコで会ぃましたね」

パーカーの袖から覗く手は相変わらず傷だらけ。
代わりに前回よりも血色は幾分良くなっている。

しかし、それ以上に大きく変化しているのは
見に纏う『薫り』。今までも一部の霊や怪異を
惹きつける力はあったが、今と比べて例えれば
それはクロッシュで蓋をされたご馳走のような
芳香だった。

今はその蓋が取り払われたかのようで以前より
ダイレクトに『誘惑』する薫りが感じられる。
とはいえ、本人もその危険性は自覚していると
見えて同時に相殺するような嫌厭術式の気配も
感じられる。

それに加えて、以前は付けていなかったはずの
香水の匂い。透き通った南国の水底の砂の色を
思わせる香りの中にひとひらの花弁を忍ばせた
イメージの芳香が感じられる。

つまり……『誘う』ような香りを『嫌う』効果で
強引に相殺した上に、また別の良い香りがあって。
軽く混乱しそうな空気を纏っている。