2021/11/28 のログ
ご案内:「常世渋谷 風紀委員会常世渋谷分署」に追影切人さんが現れました。
追影切人 > 常世渋谷――そこにある風紀委員会の分署。
その一室にて、警備部の制服を纏った、ちょっとガラの悪そうな男が一人。

「…つーか、定期的に『検診』はいいんだがよ。何で研究区とかじゃなくて、ここなんだかなぁ。」

小さくボヤきながら、数人の人物から左目――義眼をチェックされている。
おそらく、中に仕込まれた『機能』の数々を精査しているのだろう、ご苦労なこった。

『…あそこよりはマシじゃないかい?空気的に。むしろ君の立場を考えたら破格じゃないかな?』

精査をしている白衣の人物にそう声を掛けられれば、ジト目で彼を見上げて。

「わーってるよ。『第一級監視対象』として弁えてるっつーの。
ただでさえ監視が厳しいんだから迂闊なこたぁ出来ねぇだろ、そもそも。」

『他の二人』はどうか知らないが、男の場合は義眼を通して常に動向はチェックされている。
その日の移動記録、活動内容、私生活すら殆どプライベートが無いようなものだ。

まるで虜囚じみているが、実際それ相応の立場だから仕方ない。まぁ今更だ。

『…よし、こんなもんだね。後、この後に祭祀局の人達が君の左腕の『ソレ』をチェックするからもう少し我慢しようね。」

「俺は子供かよ!!」

実際まだ未成年だから間違いでもない。思わずそう突っ込みを入れつつも不貞腐れつつ義眼チェックを終える。

追影切人 > 『さて、こんなもんかな。何か違和感とか感じたら直ぐに知らせるようにね。
ただでさえ、君専用に無理矢理機能をぶっ込んでるからデリケートだしねぇ。』

白衣の青年が笑って男の左目の金色の義眼をちょいちょいと指差す。
不貞腐れた表情を崩しつつ、はいはいと面倒そうに右手をヒラヒラ振って。

「…んで、次は祭祀局の連中か。…何だっけ…こくじょう?大層なモンらしいけど。」

自身の左腕に巻かれた黒い包帯みたいなものだ。大量に何か分からん文字が刻まれた呪符も貼り付けられている。
怪異化の抑制と日常生活における封印的な措置らしいが、進行そのものは止められていない。

『ボクはそっちは専門外だから何ともねぇ。まぁ頑張って、追影■■の忘れ形見さん?』

最後に茶目っ気のあるウインク(きもちわるい)を残して部屋を出て行く白衣の男性を見送り。

「…一言余計なんだよなぁ、…つーか、やっぱ名前の部分はアレなんだな。」

自身の保護者的存在”だった”人物。彼女の『名前』はこの世から失われている。
その現実に、やれやれと溜息を零しながら待機を続ける。健康診断みたいだな、これ。


”『君が何時か、――を感じられるようになるといいね。』”


ふと、懐かしい声が蘇る。…墓参りなんか行かなきゃ良かった。

追影切人 > 数分ほど待機していたら、今度は独特の雰囲気の連中が数人部屋に入ってくる。
…一般的な祭祀局の連中とは若干毛色は違うが…まぁ、無理も無いか。

「お勤めごくろーさん。…んで、ちゃっちゃと済ませてくれ。この後に警備の仕事あんだよ。」

警備部の仕事は、嫌々ながらもそれなりに真面目にやっている。
そもそも、行動監視がされているのでサボっても後で説教や追加制裁もされる訳で。
連中に投げ遣りに声を掛けつつ、制服の左袖を捲り上げて、黒い布を晒す。

こいつらはあまり喋らないようで、目配せしたかと思えばこちらの左腕…というより、黒布に触れて何やらぶつぶつと。

(…さっきの連中が科学的でこいつらが呪術的というか魔術的で、何かこっちも調子狂うんだよなぁ。)

男からすればどっちも苦手だが。先ほどから大人しくしているのもそれが大きい。

と、左腕全体が何か見えない力に圧迫――締め付けられているような感覚。
実際に締め付けられてはいないが、おそらく黒布のソレにまた細工みたいな事をしているんだろう。
怪異化が進行すれば、ただでさえギリギリなのに完全に隔離対象か処分対象にされかねないので、大人しく耐えるしかない。

ちらり、と左腕を見れば黒布全体に赤い文字のようなものがびっしり浮かび上がっているし、何やら気配がやばい。
この布そのものが呪物らしく、どういう経緯かは知らないが自分に使われる事になったと聞いたが。
ちなみに、水などは弾くようなので風呂とかシャワーは問題ないらしい。何だその地味に便利な特性。

追影切人 > 『…”これ”を身に付けていて、何も影響が無いとは…どれだけ化物なんだ。』

連中の一人がそんな呟きを零すが、化物扱いとは心外な。ただの人間だが。
そもそも、影響も何も肉体的苦痛がある訳でもなし、精神に影響があるとしても、そういう類もあまり通じない。

結果的に何も異常は無い。常に巻き続けていないといけないのが面倒ではあるが。

(化物呼ばわりはまぁ、兎も角…そっちもどうせ俺を実験台にして呪物の効果の検証してるんだろーがよ。)

先ほどの白衣の男性と、また方向性は違うが根っこの部分はこいつらも同じか、と。
あくまで、こいつらが毛色が違うだけで祭祀局の連中が全員こんな調子な訳ではない。
ただ、こいつらみたいなのは苦手だ――好きになれる訳もないのだが。

気が付けば、どうやら処置は終わっていたようで、制服の袖を戻して一息。

『…引き続きそれは身に付けておくように。外したら…まぁ、言うまでもないだろう。』

「ああ、怪異化の進行と因子の暴走がどうのだっけか?そもそも外す機会がそんなにねーよ。」

監視対象として、落第街方面への移動は禁じられているし、身近にドンパチがある訳でもない。
ぞろぞろと退室を始める連中を冷めた目で眺めつつ。

「――良かったな、特級な代物の実験台が出来てよ?」

そんな皮肉とも悪態とも付かぬ一言を投げ掛けて。

追影切人 > 去り際に、最後の一人に凄い目で睨まれたが図星だっただろうか?まぁ、いいか。

「あー…この後は警備の仕事して…終わったら一杯やりてぇなぁ。」

まぁ、行動監視されているので後で説教とか以下略。それも承知の上だが。
直ぐに動く気分にもなれず、気だるそうに安物のパイプ椅子に座ったまま軽く伸びをする。

何時処分されるかも分からぬ飼い殺しの身。自業自得の末の結果が今の俺。
それに不満は…まぁ、言っても悔いても仕方のない事だ。
監視対象なんて、自分達だけではない…等級の違いはあれど、何人も居るのは聞いている。

(…身内に爆弾抱えてるよーなもんだが。)

それでもその程度で揺るがないのが風紀委員や他の委員会だ。
そもそも、監視対象個々別々に相応の処置や待遇がされているのだから、暴走の危険性は抑えているのだろう。

自分達みたいなのをさっさと処分するか鉄砲玉にして共倒れさせる話もあると聞いた。
まぁ、そりゃそうだ――最近斬ってないから、それが出来るなら別に構わないのだけど。

追影切人 > 一番落ち着かないのが、手元に刃物が無い事だ。まぁ刃物に拘りはあまり無いのだが。
刃物、というより斬る事が好きなので、たまーに禁断症状が出そうになる。

「…せめて木刀とか竹刀でもいいから持たせてくんねーかなぁ。」

と、思いはするが自身のアレさを理解している風紀委員会がそれを普段から持たせる筈も無く。
結果的に警備部の仕事の時も含めて男は素手である。警棒はあるが自分だけ支給されていない。

「…っと、やべ。そろそろ現場行かないと主任の雷が落ちる。」

ふと部屋にあった時計を眺めればそろそろ勤務時間だと思い至り。
椅子から立ち上がれば、そのまま部屋を出て分署を後にするのだった。

結果的に現場には間に合ったが、主任から笑顔でプレッシャーを掛けられていたのは余談である。

ご案内:「常世渋谷 風紀委員会常世渋谷分署」から追影切人さんが去りました。