2021/12/11 のログ
『調香師』 > コーヒーの配分を、詳細に告げる。『欲しい香り』に至るまでの道のりを店員に伝える
事細かな注文にも嫌な顔なく真摯に答えてくれる店員さん、ありがとうございます

受け取った袋をバスケットに入れて。貴女の方に向き直る
笑み、また車椅子の横へ

「そうだね、私も喫茶店が良いかな
 食べたいものがあるの。シナモンのかかったリンゴのお菓子
 最近そんなお話をして。食べてみたいなって思ってたから」

確かに『心』はあるのだろう。望みもあるのだろう
したい事の邪魔をしないように。口に出し、やってみる程度に
思い出は確かに彼女を彩ってくれるように

黛 薫 >  
「シナモン、リンゴ……アップルパイってシナモン
 入ってたっけ?いぁ、リンゴにかかってんのとは
 違ぅか?そーゆーお菓子、なんて言ぅんだろ?」

雑談に興じつつ、隣に並ぶ貴女にまた手を伸ばす。
拙い動作で手を繋ぎ、喫茶店に向けて移動する。

「あーしも話したぃコト、知りたぃコト、沢山
 あんのよな。でも、心の準備が要る話だったり
 嫌な想ぃさせたらどーしよって考えたりする。

 だからあーたの話も聞ぃたりして……間合い?
 測ってたりする。でもあーたにだって言ぃたく
 ねーコトあんだろーし。あーしが初めて3つ
 スタンプ貯めたときの会話とかそーだったし。
 だったら引き出そーとすんのはダメかもで」

慣れないなりに、自分の内心をそのまま言葉に
乗せてみる。考えれば考えるほど、貴女のこと
ばかりを慮って、逆にきちんと話せなくなって
いるような気がしたから。

「覚えてる?あーたは、あーしがあーたのコトを
 求めてるかって聞ぃて。あーたの望みを聞ぃて。
 あーしはその場じゃ答えられずに保留して」

「だから、あーしが言わなきゃあーたは応えて
 くれなぃ……いぁ、違ぅか。応ぇられなぃ?
 そーゆーコトなのかなって思ったりもして。
 だったらあのときの話、もっかいあーしから
 言った方がイィのかな、とか」

『調香師』 > 「そうだね。待ってる
 私の事を欲しがってくれるのか、その答え

 そして私からは切り出せないよね
 だって私は決めていて、あなたがどうしてくれるのか
 その心を待つ事が私に出来る事だもん」

指を絡めようとした手を、自らで戒め
来た時と同じように、指先の柄らが欠けた相手の手を包む様に握る
急かしたくない、『会話』を求めたのは貴女で、私もそれは望んでいる

「私も、あなたとお話したい事があるんだよね。正確には、探りたい事?
 お客様の内の一人に、あなたの事を知ってる人が来たからね

 私もあの人の事、知らなきゃいけないんだ。香り、作らないといけないんだ」

黛 薫 >  
「……あーしが迷ってたのは主にソレなのよな。
 フィールの話、あーしから切り出したら嫌な
 キモチになんねーかなって思ってたんだわ」

力はなく、動きは拙く、繋ぐだけで精一杯の手。
それを何度も探るように動かし、失敗しながら
試行を繰り返して指を絡める。貴女が自分から
出来ないなら、先んじて応えよう。

「あーしはあーたに向けるキモチを『好き』って
 決めた。あーしがそーゆーの分かんな過ぎて、
 正しぃか自信なくても、そーだって決めた。

 で。前回あーたを求められるかって聞かれて、
 即答出来なかったのはフィールが居たから。
 あーたとフィールに向けるキモチは違う形で、
 でも大切なのは一緒で。だから、フィールに
 向けるキモチも……『好き』ってコトにした。
 自信がなぃなりにあーしが決めた」

喫茶店に向かう道すがら紡ぐ言葉は、今までと
比較すれば迷いが少ない。きっと何度も考えて、
貴女に話すために整理してきたから。

「その上で、フィールとしっかり話してきた。
 あーしがあーたを求めるための憂ぃになる
 迷ぃとか悩みとか、話し合って……ああいぁ、
 殆ど聞ぃてもらぅばっかになっちまったけぉ。
 とにかく、全部吐き出してきた」

寒空の下、白く染まった吐息は僅かに震えていた。
寒さではなく、緊張で。何度も反芻した決意。

「あーしはあーたを求めるって決めた。
 受け入れる心の準備も、済ませてきた。
 保留した問いを肯定出来るように……
 あのとき答えられなかった理由を全部、
 ちゃんと解決してきた」

「……そう言ったら、あーたはあの日と変わらず
 あーしの望み、あーたの望み……叶えてくれる?」

『調香師』 > 「『違う形』って言われても。私の方が、きっと知るのは下手だね」

さっきだって、『好き』の在り方で迷っていた
私は相手に何度も、好きなのかなと問いかけてきて
それじゃあ、私は?そんな問いが返ってきたように思う

「私は求めたい」

けど

彼女の歩みは止まり、うつむく
その言葉を今飲み込むには、大きすぎる言葉があった
苦しいながらも答えを出そうとするその表情には、
やけに人間臭く思えるような歪みがあったのだとか

「...私も、誰かに言えたなら良かったのかな
 お菓子があれば、もっと喋れると良いな」

先程『決めている』なんて言った舌の根が乾かぬうちに、
調香師は迷っている事を隠す事なかった

進んでみないと分からない、きっとそうなのだろう
故に、もう一度。喫茶店に向けて進む

『誰か』は今の所『貴女』しか居なかった

黛 薫 >  
「ゆっくりで良ぃよ」

俯き、歩みを止める貴女の隣で黛薫は囁く。
そう、隣。貴女が足を止めてから合わせて
止まったのなら、少し前にいたはずなのに。

貴女を見ていたから。貴女について考えていたから。
貴女が足を止めたとき、一緒に止まれたのだと。

歩みを再開すれば、喫茶店はあっという間。

紅茶に珈琲、ケーキにサンドイッチ。
シナモンのかかったリンゴのコンポートもある。
入口前、今日のお勧めメニューが書き連ねられた
黒板を確認して、黛薫は貴女に視線を戻す。

「求めたぃ、であって。求める、ではなぃか。
 良ぃよ。だってあーしが先に待たせたんだ。
 決めたはずの答ぇが揺らいだって構わなぃ。
 決めたって言ぃながら迷ってたって良ぃ」

「でも、あーしが決めたってコトはもぅ曲げなぃ」

「あーしはあーたを求めるって決めた。
 受け入れて欲しぃって言われたら応ぇる。
 あーたの望みに応ぇたぃって思ってる。
 二言はなぃし、何回だって宣言するよ」

「……前菜には重ぃコト言っちまってるけぉ。
 あーただって整理したいコト、あるだろし。
 温かぃ飲み物飲みながら、ゆっくり話そ」

『調香師』 > 「...ん」

迷っても尚、話せない手は。その距離が遠ざかる事を望まない様に感じられる
とすれば、彼女が欲しいのは『答え』なのだろう

『正解』であるとも限らないけれども、
自分自身が納得できる何かが欲しい。ずっと求めていた


彼女はそうして頷いて。周囲に気を配る様子はやっぱりなくて
2人は喫茶店へと立ち入ったことだろう

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から黛 薫さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から『調香師』さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 喫茶店」に黛 薫さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 喫茶店」に『調香師』さんが現れました。
黛 薫 >  
常世渋谷の喫茶店に、小柄な少女の来客が2名。
一見介助を必要としていそうな車椅子の女の子が
手を引く側なのは珍しいだろうか。

「席、どーする?向かいと隣、どっちがイィ?」

見やすい位置と、触れやすい位置。
貴女はどちらの方がが良いかと問いつつ、
落ち着いて話せる壁際のテーブルに向かう。

『調香師』 > 「隣」

そういう考え方もあるのか。彼女は目を丸くしましたが
いつもの事を考えれば、向き合っている方が話しやすい

「じゃあ、向かいだね」

順当な返答。席に彼女は移動する
そういえば、食べたい物は決めていても飲みたい物は決めていない
メニューを覗き込んで。そこに写真が無いのなら、そのオシャレな字面に暫く呆気に取られていた事か

黛 薫 >  
「りょーかぃ」

壁際の席、通路側には木製の椅子が2つ並んで、
反対側は壁と一体になったソファ形式の椅子。
店員に通路側の椅子を退けてもらい、車椅子を
机にぴったり寄せて貴女を壁側の席へと促す。

さて、黛薫の方もメニュー決めには悩んでいる。

落ち着いて話すなら温かい飲み物が良いだろうと
入店前に深く考えず呟いたのだが……彼女は現在
運動機能全般が不自由である。飲み物を頂くには
ストローがないとかなり不便。

しかし温かい飲み物をストローで飲もうとすると
どうなるかは先日身をもって知ったばかりだ。

「あーたはシナモンとリンゴのお菓子?だっけ。
 それってやっぱお店に来た人に聞ぃたの?」

お互い見やすいように横置きにしたメニューを
覗きながら話題を振ってみる。

『調香師』 > 「聞いたよ。私からだけど。シナモンの香りで思い浮かぶもの
 ベタな組み合わせ、でも好きな物は好きなんだって
 そしたら私も頷いて。そうして食べたくなっちゃうの」

リンゴ、リンゴ、あっぽー。彼女の呟きがメニューをなぞる
多分、これ?コンポーネントを確かに指差していた

さて飲み物の項目を見るに、本当に単純な物しか読めなさそうな
ここでスマホを取り出して、1つ1つ調べるなんてテンポロスにも程があるし

「...ミルク」

そういえば、前のカフェでも彼女はミルクを頼んでいた様な
真相がここで垣間見えたかもしれない。オシャレな文化には弱いのだと
そして素直に読めるような香りの良い物は、大抵お店の中にあるのだと

ちら。貴女の注文の様子を覗き見ている

黛 薫 >  
「ふぅん……シナモンってどんな香りだっけ」

対する此方は名前だけ知っていても香りになかなか
結び付かない。貴女の店を知るまで意識して香りを
感じる経験すらなかったから。

「もしかして、あーたってこーゆーお店のメニュー
 あんま詳しくなぃ?いぁ、人のコト言ぇねーけぉ」

黛薫は黛薫で、お洒落なカフェメニューなんて
さっぱり分からない。しかし貴女が無難な品で
お茶を濁そうとしているのを見ると、こっちは
冒険してみようかな、と思ってしまったり。

「知らなぃメニュー頼んだら、知らなぃ香りの
 開拓とか出来るかも?って今言ぅのはちょぃ
 イジワルか。あーしが変わり種っぽぃ飲み物
 挑戦すればいっか」

考えた末に見つけたのはエッグコーヒーなる飲料。

『調香師』 > 「甘い香りに、香辛料。香りに重さがあるのなら、重たく感じるのかも
 でも軽く使う、柑橘やミントと合わせて爽やかさを足しても受け入れてくれる

 器量の良い香りだとおもう。勿論、お菓子にもピッタリ」

そんな香り、語ってみせた後
意地悪だと撤回した筈の言葉に少しむっとした態度
指先が震え、次の行先を探そうと宙を彷徨おうとしましたが...

あえなく、撃沈。元の定位置。予想がつく結果に落ち着いてしまう

「つまらないって、思うなら言って」

拗ねた子供の様な開き直りも見せてしまった

黛 薫 >  
「シナモンって香辛料なんだ?何か、お菓子とか
 飲み物に使われる印象だったから、香辛料って
 区分がちょっと意外」

香辛料、スパイスは辛くて刺激的な香りという
ありがちな誤解。再度メニューを見つめ直して
シナモンバタートーストという文字を見つけた。
見つけただけで注文するほどは惹かれなかったが

「いぁー?雑談の一環だって無視しても良かった
 言葉を気にして考え直すトコも、考えてみたは
 イィけぉ結局知ってるヤツに落ち着くトコも、
 それで拗ねてるトコも、つまんなぃどころか
 見ててひじょーに面白ぃくらぃだな?」

くすくすと笑いを噛み殺す。ペースを握られると
弱いところも、ある意味似た者同士なのだろうか。

「そーやって冒険した選択肢選べなぃんなら
 あーしが代わりに実験台になるって名目で
 一緒にテーブルを囲む理由付けになるし?
 あーしとしちゃイヤなもんでもねーんだわ」

『調香師』 > 「そんな風に、素直に楽しんでそうな所。うん、そういう所かもしれないんだよ?
 ここ最近、あなたが特に酷い人だって思うんだ~」

溜息と共に指はメニュー表から離れる
待ちの姿勢は、習いたての子供の様に硬く行儀が宜しいようで

「香辛料って区分は私の時代よりずっと新しいけれど
 香りについての情報は、常にきちんとアップデートしないとね」

口調では平常通り、しかし目線の不機嫌さは隠せない
初めに返した言葉の感情がまだ乗っている。貴女へ思う所があると知れば、そこだと分かりやすい位

黛 薫 >  
「んー、楽しぃというか、嬉しぃ?
 他愛もなぃ話って、余裕がなぃと出来ねーし。

 あぁ、でも。そーゆー雑談?って店員だとか、
 願ぃを叶える人形だとか……そーゆー立場とは
 離れた話になるよな。あーたってそーゆーの
 苦手なのかな」

メニューから視線を離して貴女の顔を見つめる。
視線から、声音から分かる不機嫌さ。酷い人と
呼ぶその表現から伝わる気持ち。

「酷ぃ人は、お嫌ぃ?」

じぃっと貴女を見つめたまま、問うてみる。

「あーし、自分のキモチすらちゃんと分かんなぃ。
 いぁ、それはさっきも言ったか。でも、だから、
 あーたには分かんなぃなりに言ぅコトにしたよ。
 分かんなぃって言い訳して自分を煙に巻いたら
 あーたにも伝わらなぃって思ったから。

 あーしはあーたのコトも分かんなぃコトだらけ。
 言ってもらわなぃと分かんなぃんだ、結局は。
 だから教ぇて。知りたぃから。酷ぃって思ぅ
 トコでも、キライな場所でも知りたぃよ」

「あーたは、あーしをどう思ってる?」

『調香師』 > 「酷い人は嫌い。ちょっと酷い事が出来ちゃうから
 酷い人は私達の事、簡単に使っちゃうから」

『どう思っているか』、そこの話は今は伏せて
自身はどんな事でも頼まれればしてしまうお人形

反省も含む言葉であるが、その目線の先に居るのは貴女

「あなたが『物』の様に扱われる語られる
 そんなことは嫌なんだ。だから私はあの人が嫌いなの」

貴女の望む『キライ』ではなく、彼女自身の『キライ』
明確にそう思えるのは、結局あの相手だけだもの
生き残っている相手は、彼女だけだもの

黛 薫 >  
「あーたは『人の為』に在りたいって言ってた。
 受け止めて欲しい、誰かのものになりたぃって
 言ってた。『誰かのもの』は使われる立場で、
 でも簡単に使われたくはなぃ」

貴女の口から語られる言葉、以前語られた言葉。
慎重に積み重ねて、精査して、意味するところを
探っていく。見て、聞いて、触れて、嗅ぐのとは
異なるアプローチだが『知るため』という目的は
一貫している。

「簡単に、手酷く使われて欲しくなぃのはあーた
 自身に限った話じゃなくて、別の誰か……今の
 話に沿うなら、あーしがそう扱われるのもイヤ。

 ……『あの人』っていぅのは、店に来た共通の
 知り合ぃのコトで、合ってる?」

『調香師』 > 「あってるよ。名前は知らないけれど
 知る前に、追い出しちゃったから
 香りを作って欲しいって言ってたのにね

 作りたい、けどあの人の言葉じゃ望んだ香りは作れない
 薫さまと自分はどんな関係なのか、ただ私を惑わす為に簡単に使える人
 私はあなたの物になりたくっても、あの人の物には...」

ここで彼女の言葉が止まったのは。目の前に店員の腕が伸びてきたから
注文していた品がいつの間にか届くころ。また彼女は周囲への意識を損ねていた

「...なりたくない」

立ち去った後に、言葉を続ける
言葉の後にミルクを口に

黛 薫 >  
「フィールってんだ、アイツの名前」

黛薫が注文したのはエッグコーヒーとマドレーヌ。

前者は予備知識なしで、貴女が無難な注文へと
流れていくのを見てお遊び込みで注文した飲み物。
冒険した分、お茶菓子は無難に外れないはずの物を。
手が不自由でも食べやすく溢しにくい品を選んだ。

「あーしも、フィールから話は聞ぃてたんだ。
 あーしとの関係を洗いざらい話したら機嫌を
 損ねたみたぃで追い出されたって言ってた。

 そっか、フィールはあーたの反応を見るために
 あーしの話に比重を置いて。あーたはそれを
 聞ぃて、あーしを『使ってる』って感じたのか。
 だから、あーたはフィールのコトがキライ」

納得したように呟き、自分の前に置かれたカップに
視線を落とす。珈琲の上に淡黄色のクリームが層を
作っている、不思議な見た目の飲み物。冷めるのを
待っているのか、未だ口は付けず。

「フィールのモノになりたくなぃ、ってのは。
 調香する行為自体が『その人の為』であって
 一時的にでも『その人のモノになる』から?

 それとも……あーしがフィールと縁深くて、
 あーしがあーたを受け入れたぃって言ぅと
 フィールとも繋がりが生まれるかも、って
 考ぇちまってるのかな」

こてん、こてんと首を揺らして考える仕草は
気付かないうちに貴女の仕草が移ったのか。

「フィールをキライになったのは、あーしのコト
 軽々に使ってると思ったから。もしも、それが
 あーし以外のヒトに対してだったら、あーたは
 同じようにフィールをキライになったのかな」

『調香師』 > 「知らない人だったら、私は何とも思わないだろうね
 私にとっての『人の為』は、いつでも目の前の人の為
 それ以上を考えるのは、私の出来る事じゃないからね

 あの人、そう...フィールさま」

不服そうだが、知った名前はきちんと復唱

「口にしづらい事もしたとかなんとか
 私にもプライバシーの概念はあるというか、
 人に仕える以上、大事な事はあるんだよ?

 だから思った。あの人は『他人を征服しないとダメな人』なんだって
 そうやって、知り合いを増やしてきたんだろうなって
 社会に溶け込みたいって言ってたけど。それは出来ないって言っちゃった」

言葉にする度に、首が前に傾く項垂れる
相手を責める半分、なんだかそういう対応しちゃった自分への反省半分
口にする度に、気持ちと言う部分がべこんべこんと凹んでくる

「香りは作りたい。だから、そこはいいの
 でもあの人の物にはなりたくない
 今のままだと、私ずっとそう思うの
 薫さまが、あの人から守ってくれる?本当に?」

黛 薫 >  
「あぁ……うん、その表現は、すごく適切」

『他人を征服しないとダメな人』。
きっとそれは性格や好みに留まらず本能レベルで
彼女の根幹に組み込まれている。種族からしても
共存ではなく征服や支配で繁栄するのだし。

「守るって表現が正しぃかは分かんねーけぉ。
 ホントにどーにもならなぃコトじゃなければ
 フィールはあーしの話、聞ぃてくれるから。

 あーたがイヤって言ぅならあーしはちゃんと
 フィールに言い含めるし、何なら調香のとき
 付き添ってもイィよ」

指先で耐熱ガラスのカップに触れて、飲める程度に
冷めたかどうか確認する。視線は貴女に向けたまま。

「目の前の人の為。少なくともフィールの来店時、
 『目の前の人』はフィールだったはず、だよな。
 フィールがキライになっちまったのもあるけぉ、
 あーたはその瞬間目の前にいなかったあーしを
 想って行動してくれたコトになる?」

疑問系の語尾ではあるが、問いかけではない。
貴女が『自分のことをどう想っているか』の
問いに答えなかったから……その延長線にある
『聞きたいこと』はまだ言わずに。

「でも、そっか。あーた自身にせよ目の前にいる
 誰かにせよ、軽々に使われるとあーたにとって
 『酷ぃコト』になるのか。注文前に揶揄ったの、
 あーたを軽く扱ってるって受け取られたのかな。
 それを『酷ぃ人』の行ぃだと思ったならごめん」

『調香師』 > 「だったらよかった。私が嫌いって思っても、ちゃんと言葉は聞き取れてるんだ」

彼女が安堵したのは、そんなズレた場所
きっと自分は正しい判断で、『これ以上進んだら公開する』と考えられたんだなと

「私のお仕事に、あなたに迷惑はかけられないけれど
 何か知りたいって言うなら、今のうちなのかな?

 ちなみにさっきが不機嫌に見えたのなら。きっとただの『ふり』だよ
 うん、だって見えるもん。そうやって、あなたはフィールさんの事も受け入れたんだ
 フィールさんの物になったんだなーって、思っちゃうんだもん」

自分自身が害された訳ではないと告げる
数多の葛藤を乗り越えた姿も、彼女にとってはなんだか安売りのようにも感じられてしまったのだとか

警戒心はあったけれども、意外と私の前では常に態度が素直だったから
貴女のひねくれ具合を勘違いしたまま今日まで来てしまったとも

黛 薫 >  
とん、とん。カップに触れる指の動きはだんだん
緩慢になっていく。触れたままでも熱く感じない、
落とす心配なく飲めるようになるまであと少し。

「フリってコトは実際には不機嫌じゃなかった?
 それとも不機嫌をアピールしてあーしに知って
 欲しかった、のかな。

 フィールのコトを受け入れた、フィールの物に
 なった。部分的には、うん。正しい。合ってる。

 あーたにとって、それはイヤなコトに当たる?
 その上であーしがあーたを受け入れたぃって、
 そー言ったら、あーたの望みに適わなくなる?」

不器用な手付きでマドレーヌを千切って一口。

『調香師』 > 「行動にそこまで、意味があったのか分からないな
 私は出したかったものを隠さなかっただけだし

 結果分かってもらえたなら、うん
 今回は良かったって事なのかもしれない」

つまり、貴女が物になったという部分でじとっと目線を向けた辺り
そこに向けての感情には相変わらず、という訳だ

「...その答えを出す前に、私聞きたい事あるんだよね
 フィールさまの事。香り、作らないといけないからね
 本人から聞きたくないなら、私は薫さまから聞かないと

 私のお仕事の為に聞かせて欲しいんだよね」

見方を変えれば、弁明の機会でもある
程好く硬さの残ったリンゴをフォークで裂いて、大きな方を口に運ぶ

黛 薫 >  
「相性悪ぃ部分が『在り方』なんだもんなぁ。
 フィールは社会に溶け込みたぃって目標を
 持ってるけぉ、あーたの見立てじゃそれは
 上手くいかなぃと踏んでる、か」

『好き』な人の仲が険悪なまま、解決の見込みが
無くなったら自分はどんな気持ちになるのだろう。
不安が無いとは言わないが、今はそこにかまけて
もっと大切なモノを手放す方が怖い。

「イィよ。聞きたぃコト、聞ぃてくれて構わなぃ」

問いの答えを出す前に、と彼女は言った。
それは自分の言葉次第で『願い』が手の届かない
遠くへ行ってしまうという警句にも感じられた。

だけど、言葉に保身を混ぜる気にはなれなくて。

耐熱ガラスのカップを慎重に持ち上げ、淡黄色の
クリームを少しだけ舐めた。

『調香師』 > 「私が聞くんだね、待ってみようと思ったのがバレちゃったかな。んひひ」

ミルクも口に含み、香りの遷移を味わう
溶かし込んだ甘味にシナモンの風味

「だったらね、聞きたい事
 そのコーヒーって美味しいの?」

今一番気になる所から。つまり冒険の結果から
『難しいお話』はここで終わったと彼女は勝手に思っていた
調香に至る道筋で、聞きたい事は悩みであっても悩ましいお話ではないのだからと

黛 薫 >  
「んー、バレたってほどの確証はなかったけぉ。
 あーしが黙って問ぃを待ったら続かなぃかも?
 とは思った。根拠らしぃ根拠、ねーですが」

不器用な手付きで備え付けのストローを手に取り、
テーブルに押さえつけて押し潰すような手付きで
袋をビリビリに破く。そこからカップに挿すのに
また一苦労。

クリームとコーヒーの層の境界を崩しながら
ストローに口を付けて、しばし考えを纏める。

「……んー、好きな人は好き、だと思ぅ。
 コーヒー部分は、まあフツーにコーヒーよな。
 上の部分は……名前通りこれやっぱ卵なんだわ。

 でも甘くて、ふわふわととろとろの間くらい?
 そんな食感。甘ぃ卵って馴染みなぃと思って
 警戒してたけぉ……プリンとか、あと何だっけ。
 シュークリームとかの中にある生クリームじゃ
 なぃ方の……そぅ、カスタードみたぃな風味。

 だから、クリームとコーヒーの組み合わせって
 感じかな。生クリーム?カプチーノ?的なのは
 想像しやすぃけぉ……でもカスタードよりかは
 卵の風味強めで、慣れるまでは戸惑ぅ感じ」

黛薫としては、難しい話であろうとなかろうと
『誰かのものになりたい』貴女の望みを自分が
叶えるに足るかが1番大切で。答えを貰うまでは
何も終わってはいないのだけれど。

『調香師』 > 「コーヒーの中にプリンを沈めた感じ?」

彼女の想像力は時に悲しい形、おおよそ近似であればそれを答えとしても良いとされている
彼女が料理をした時に、香りに向けての几帳面さが発揮されるかどうか、
その結果は未知数

「でもやっぱり、普段から大変そうだね
 力を入れないと力が出ない、そんな感じ

 普段から、あの人の助けは借りてるのかな?
 もしそうなら、普段どんな風に借りているのか気になるかな
 あの人が人と関わりたいって言うなら、普段の関わり方
 そこから知らなきゃいけないかなって思うんだけど」

薫が好意的に捉えている相手。切り出しから先入観を持たないようにしないといけない

黛 薫 >  
「いぁ、うーーん……それは、大分違ぅかなぁ。

 えっと、まずカプチーノとか、生クリームを
 たっぷり浮かべた珈琲を思い浮かべてみて。
 んでその上のクリームを少しとろっとさせて、
 カスタードに置き換えて……卵の風味も少し
 強めにした感じ。どうだろ、伝わる?」

匂い以外に関してはあまり頓着しないと見える。
香りをベースに喩えられれば伝わったのだろうか。
しかし黛薫は知識ベースで話す方が得意、尚且つ
香りに関する知識は貴女に遠く及ばないのだった。

「日常生活の中で、直接手ぇ出して助けて貰うのは
 実はあんまし無ぃ。助けて貰ぅ癖が付ぃちまぅと
 あーしは多分ずっと上手に動けなぃまんまだから。

 普段の関わり方は……魔術関連の議論をしてる。
 あーしはずっとそっちの分野に興味を持ってて、
 でも悲しぃくらぃに才能が全く無かったのよな。
 そんなに才能なぃヤツ他にいねーよってくらぃ。

 だからフィールは、最初実験台にするつもりで
 あーしに取り入ってきて。未だに魔術に関わる
 話がメイン。つーか、あーしもフィールも魔術
 以外の話になると詳しくなぃコトばっか。

 だから人と関わりたぃって取っ掛かりも魔術しか
 なくて。今はスクロール……って言って伝わる?
 書かれた魔術を1回だけ使える使い捨ての紙、の
 露店を出してる。常世渋谷の底下通りで」

『調香師』 > 「あんまりわかんない。コーヒーに他の物を入れる発想とか
 ミルクはよくやる。砂糖もちょっと」

彼女は正直に白状した。基本的に、好物は単純な物が多いらしい
貴女の返答を聞いて、少々意外そうに首を傾げる。数秒、待ち時間

「確かに、薫さまがあまり頼る姿の想像が出来ないのはそうかも
 だけど、フィールさまって随分と懇意な部分を押し出してたから

 なんていうのかな。当てが外れた?なんだがすっごく強調された?
 ふーーーーーーーーーん、って感じがするよね」

魔術の事はあまり分からない故に、猶更
使い捨ての魔法の紙、なるほどとは思うけれども
魔術で何が可能なのかも想像はつかず

「...あ。魔術の事も聞けばいいのか
 だってわかんないけどあなたは詳しいから」

黛 薫 >  
「……うん、一口あげるから飲んでみて」

この調子では言葉にするより味わってもらった方が
圧倒的に早く確実だと判断。溢さないように慎重に
カップを貴女の方に向けて押した。

「懇意、ってか信頼、好意?そーゆーのって、
 日常的な行動だけに宿る物じゃなぃかんな。

 あーしは才能が無かったから、魔術に関する
 話が出来ても嫉妬と抑鬱が膨らむばっかりで、
 フィールは最初それを利用するつもりだった。

 でも関わるうちに心変わりしたみたぃで……
 最後にはあーしが魔術適正を得られるように
 色々犠牲にして尽力してくれたのよな。

 ぱっと見分かんなぃかもだけぉ、こーやって
 身体動かすのも、今は全部魔術でやってんだ。
 適正を得る為に身体機能の大半捨てちまって。

 それに対する感謝とか、苦労を共にした実感?
 あるから懇意にしてるのは誇張じゃなぃかも」

手を持ち上げて見せる。糸で吊るされたような
不自然な動きは、文字通り『操って』いるから。

「手持ちあるから、見て貰った方が早ぃかな」

四苦八苦しながら鞄の中から1枚の紙を取り出す。
円の中に何らかの規則に従った文字らしきモノが
記されただけの、ただの紙に見える。

それに黛薫が手を置くと、記された文字が淡く
発光して──キラキラと、イルミネーションを
思わせる光がテーブルの上に散った。

『調香師』 > 「才能が無かったから、か。出来ない事を出来る様に
 ...あまり私の考えない事だ」

つまりは、その『可能』性を乗り越えるお手伝いをしてくれた人
話の初めの方では確かにイメージ通りだったけれども、絆される過程
けれどやっぱりどうしても、薫から聞く印象を踏まえると、
フィールに脚色された箇所が浮かび上がってくるものだ

その態度を、私に向けた好意だと捉えることが出来るとしたら、
それは随分と捻くれたように買われていたと思うべき?
いやいやダメダメ、フラットフラット。差し出されたコーヒーで気を調えよう

差し出された形をそのままに、いとも容易くカップを傾けて口へと

「思ったより、コーヒー」

クリームを割って、滑り込んできたのだった
ほんの僅か、溶けた甘さは読みやすい程度のまろやかさへと移っていたものの

香りから味わっていた所で、目の前が煌めく
散らばる光をほーん、と。呆けた表情で見つめて

「なるほど?」

首を傾けた。現物を見ても、『感情が動く』といったリアクションは無く

黛 薫 >  
「出来るようにしたかった、なりたかった。
 そーゆー言ぃ方も決して間違ぃじゃねーけぉ。
 あーしの場合、それ以外の道を選べなかった、
 って言った方が正しぃのかもしんなぃ。

 研鑽の過程は苦しぃコトばっかで、諦めれば
 得られたはずのモノは全部取り零して、前に
 進めてるって実感もない。なのに止めるって
 選択が出来なくて、止めるために死のうかと
 思ったりもした。でも、それも出来なくて」

「だから、求め続けるコトしか出来なかった。
 求める以外出来ないように生まれてたのかも」

その『願い』を諦める選択肢自体がなかった。
ひとつの目的の為に使い潰される歯車のように。

「食べ物を冷やす冷蔵庫、温める電子レンジ。
 機械にも色々あるみたぃに、魔術も組み方で
 役割を変える。部品じゃなくて『知識』を
 組み立てて、目的に辿り着くのが『魔術』」

とん、とカップの縁に手を伸ばし、指で叩く。
ほぼ冷めきっていた珈琲が僅かな温もりを取り戻す。

「だから、魔術を扱う者にとって『知識』は命。
 あーしとフィールはそれを共有してっから……
 深い仲ってのは、正しいよ」

「……それとも、も少し直接的な触れ合いの話。
 身体的な関わりの方が分かりやすぃ?」

『調香師』 > 「それがあなたの、『一番』だった話?」

仄かに熱を得たカップの中身よりも、そちらの話に意識が傾く
いずれ察するならば、『貴女が口にする言葉に』であると理解もし得るもだろうが

「今は違う。体は動かなくなったけど、あなたはそのナニカは使えるんだよね
 一番欲しくて苦しかったものを得られたから。楽しむ事が出来るのかな

 そこまでの道を引っ張ってくれたから。フィールさまとは深い仲...」

『知識』で繋がると言った時。既に興味を抱く事は独りでには無い
その取捨選択が、貴女にとっての淡白な反応を生み出している

黛 薫 >  
「そ。それがあーしの『1番』だった話」

貴女は行動より言葉に強く興味を示す。

黛薫もそれを悟ったのか、行使した魔術について
触れるのはやめた。挙げた腕も、糸が切れたかの
ように力なく膝の上で動かなくなる。

「その過程でフィールはあーしを好きになったって
 言ってる。あーしが言ぅような、曖昧でカタチの
 定まらない『好き』じゃなくて、あーしに恋して、
 愛してる、って。

 あーしはそれに『恩があるから』って理由で
 応ぇんのは違ぅと思った。でも拒否するのも
 嫌だった。フィールはもし拒絶してくれたら
 諦めるって言ったから……拒否したら何にも
 返せずにいなくなっちまぅと思った」

「……何か、あーしの話ばっかりになってんな。
 ちゃんと香りを作る助けになってんのかな」

『調香師』 > 「まぁ、あなたの事ばかりでも
 元々私達はそうしたかったんだし」

彼女は溜めて、形の上では考えて
私より人形みたいな、貴女にカップを返そうか

「あなたの『好き』って、受け入れるものなのかな
 形にならなかった物でも、求められたら受け入れちゃう
 あなたの酷い所って言った部分。そして恋して愛して
 とすると。フィールさんと私に向けての『好き』が違うなら

 ...私に向けての好きという物は、それとは違う。なるほど?」

言語化可能な余地が生まれる。それが納得できるかどうか
表情を覗き見る。しゃくしゃくと、小さなリンゴを口に含みながら

黛 薫 >  
「……あーたの思ぅ『酷ぃところ』はそこ、か。
 拒否できないところ。受け入れてしまうところ。

 その口で言ぅな、って思われるかもだけぉ。
 あーしもそぅ思ったから、あーたに酷いコト
 したんだよ。最初のスタンプ集めたときに」

自分の悪いところを棚に上げて要求した『願い』。
『受け入れてしまう』貴女に打ち込もうとした楔。
それは、結局叶いはしなかったけれど。

「訂正するなら、双方向の『好き』が必ずしも
 一緒のカタチではなぃってところになるかな。
 フィールはあーしのコトが恋愛的に『好き』。
 あーしからフィールへの『好き』は……正直、
 まだ分かんなぃ。

 あーたへの『好き』だって分かんなぃよ。
 フィールへ向ける『好き』とは同じじゃなぃ。
 そもそもあーしがこのキモチを『好き』だって
 決め打ちしただけで、あーたもフィールも……
 ホントに『好き』かすら、分かんなぃ。

 執着や依存を『好き』と履き違えてんのかも
 しれなぃし、違ぅ『好き』だと思ってんのが
 実はおんなじ恋愛的な『好き』かもしんなぃ。
 単なる友愛としての『好き』もあり得るよ」

「でも」

「分かんなぃキモチを、あーしは『好き』って、
 そう呼ぶって決めた。だって、膨らんじまって
 もう目ぇ逸らせなぃんだ。誤魔化せなぃんだ。
 見なかったフリ、知らなかったフリはもぅ無理。

 あーたが言ぅ通りあーしが誰も彼も受け入れる
 酷ぃ人だったら……この言葉も、このキモチも
 実は軽ぃモノかもしれなぃ。でも、あーしには
 大事なんだ。受け入れたぃって、思ぅんだ」

「……『好き』って、決めたんだ。あーたのコト」

ご案内:「常世渋谷 喫茶店」から『調香師』さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 喫茶店」から黛 薫さんが去りました。