2021/12/20 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」にイェリンさんが現れました。
イェリン > 電飾に彩られた常世渋谷のセンターストリート。
先月には探し始めたというのに未だ友へのクリスマスプレゼントを決めきれずふらふらと歩く影が1つ。

「なんでも喜んでくれそうだけど……」

だからこそこだわって贈りたいと思ってこの通りに足を運んだのは何度目だろうか。

イェリン > 煌びやかなショーウィンドウの前を夜色の髪を揺らしながら、トタトタと。
ふらりと通りがかったぬいぐるみ専門店で足が止まる。
猫、熊……羊!

「これは……」
ガラス越しで手触りは伝わらないけれど、大変もふもふ。
太い一文字で描かれたデフォルメされた目が愛くるしい。

「これが、きゅーと……」

クリーム色の毛皮と巻いたツノ。
ビーズクッションらしく手で触れればさぞ沈み込むような柔らかさがあるだろう。

イェリン > 「――飼うわ」

決意を決めた声で呟くと、風に押さえられて少し重たく感じる店の扉を開く。
ビュウと吹き込む風に暴れるコートの裾を掴みながらなるべく店内に風が吹き込まないようにそそくさと。
買うにしろ迷うにしろ、ちょっとくらい楽しんでからでも良いわよね……。

「―――っ! ふぁぁ……」

もふ……いえ、ふにふにかしら?
もっちりしててすべすべしていて、撫でても押しても手が幸せ。

「……これは、良いわね」

我に返って冷静ぶってみるけれど、
一つに束ねたポニーテールも揺れもする。
触る手が止まらない。

ガラスの向こうで珍獣でも見るみたいに眺められる事にも気づかずにもふりもふり。

イェリン > 「メル、いえ……メリーね」

もふりもふりと頬を緩ませ手触りを堪能しながら。
いえ、まだうちの子じゃなかったわ。
先に買ってから――

「――違うわ。先輩のプレゼントを見に来たのよ」

目的がすり替わってしまっていた。
冷静になっている時間が数瞬と保てない。
お前が可愛いくてもふもふなのがいけないのよ、メリー。

「でも、先輩ってどんな動物が好きなのかしら……」

イメージだけで言うなら猫だろうか。
猫といえば奔放で可愛いし。
いえ、でも可愛さで言うならメリーもペンギンもなかなか……

イェリン > むにむに。
ペンギンの頬っぺたの所ってこんなに伸びるように作られてるのね。

「――っ!?」

冷ややかな視線を感じて振り返ると店員さんの生温かい視線。
そうよね、売り物をこんなに触りすぎると迷惑よ。
やっぱり悪手かもしれないけれど先輩に直接好きな動物を聞きましょう。

思い立って腰を上げると蒼と目が合う。
黒に近い灰色の毛並みにビー玉のような蒼の瞳。
澄ました顔のシベリアンハスキーのぬいぐるみ。

何故かしら、凄く親近感のような物が湧いてくるような
俺にしておけと語りかけてくるような……

イェリン > 「先輩のおうちで飼われる資格があると……?」

じりじりとにじり寄るけれどぬいぐるみは黙して語らず。
触れてみれば分かるとでもいうの……!?
ビーズクッションを触った後の私にもふもふで語れるというの!?

「あっ……」

細かい毛の感覚が存外気持ち良い。
くすぐったいような、ふにふにとは違う心地よさ。
貴方洗えるのね……。

「っくぅ……」

悔しい、ふわふわもちもちの方が気持ちいはずなのに。
枕にしたり抱いて眠るのにも良さそうと思ってしまう……

――私の負けよ。

「店員さん、プレゼント用にラッピングお願いできるかしら。
あ、あとこっちの羊の子も。こっちはラッピングは大丈夫」

かくして半月以上に渡るプレゼント選びは幕を閉じたとか。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」からイェリンさんが去りました。