2022/10/02 のログ
■ソラ > 「君、淡々としてるなぁ。
笑わない男の子はモテないよ?」
青年の相変わらず無機質な返事に
クスッと笑いながら魔女は冗談を混ぜる。
その後、発生させた衝撃波が青年を飛ばすも
武器で威力を殺したとはいえ、傷を負っていない。
中々にタフな奴。
そして青年が呟いた一つの単語に魔女は反応する。
「聞き捨てならないなぁ。
あたしは魔術なんてもの使う必要ないんだけど?
あれは、凡人が使うものだよ。」
蒼い目を細めて溜息交じりに一言。
そこから間髪入れずして、飛ばした男の背後に異様な亀裂が。
空間を裂くように現れたのは、正に巨大なキャノン。
砲身が魔女に狙いを定める。
「へえ、そんなのも出せるんだ。」
砲口を瞳に映す魔女は動じることはない。
それどころか、興味深そうに関心の声を漏らす。
次の瞬間に、空気を轟かせる爆音と共に
放たれた砲弾が周囲を吹き飛ばす。
「でも、遅いかな。」
正に砲弾が周囲を吹き飛ばす直前のこと、
魔女そのものが光となったかと思えば
雷光の如く、空間を一閃し青年に詰め寄っていた。
しならせる腕の先には、空気をプラズマ化させて
形成されたであろうスピアのようなもの。
青年を貫くべく突っ込む。真正面から、試すように。
■雪景勇成 > 「――必要ねぇのに笑顔を振り撒くのは面倒だろうが。」
変わらず淡々と、言葉通り若干面倒臭そうに答える――実際普段からあまり笑わない。
別に全く笑顔を見せないという訳ではないが、今この場でその必要性を感じない。
先の殺し切れなかった衝撃波はダメージとしては浅いので戦闘行為に影響は無いが。
「――何だ、自分が天才だとか調子乗ってるタイプか?そういうのは見飽きてんだが。」
露骨に嫌そうに眉を潜めて。その手のタイプの奴は種族性別問わず何処にでも居る。
実際、そういう連中はプライドが高いヤツが多いが、調子に乗るだけの力量はある。
(――そこに付け入る隙はありそうだが、下手すりゃ薮蛇にもなりかねないのがまた面倒だな…。)
そうやって思考を展開する程度の余裕はある。砲撃の威力は申し分ないが…成程。
「――確かに”遅い”わな…。」
二つの意味合いで呟いて皮肉げに口の端を僅かに歪めた。
一つは自分自身が繰り出した砲撃…もう一つは――
「――なら、こっちも別の”速さ”で対応するしかねーな。」
男を貫くようなプラズマスピアの一撃。瞬間、男と槍の間に展開する空間の裂け目。
まともに喰らえばあっさり胴体を貫通して焼滅しかねないそれを飲み込むように無効化。
更に、別の裂け目が女を取り囲むように複数生じて――剣先を見せる異形の刃群。
今度は間髪入れずに近距離から超高速射出。砲撃が遅いだけで通常の異形の武装の”射出”は速い。
更に、別の裂け目が男を飲み込んで…カウンターがどうなるにせよ、魔女からある程度の距離を保って再び姿を現すだろうか。
「…埒が明かねーな…そっちの”試し”に長々と付き合う気はねーんだが?」
■ソラ > 「ふうん、随分と合理的なんだね?」
青年の冷静な回答を受けた魔女は、ばつが悪そうに一言。
文字通り光速で突っ込んでいるというのにこの青年、
焦りなど見せる様子が全くない。
そして魔女の槍が青年を貫かんとするその距離で、青年の策は発動する。
「確かにあたしは天才だけど、油断はしない。」
魔女の蒼い瞳は、冷静に青年の様子を捉えていた。
空間が裂かれ、槍が消失し、周囲の空間から無慈悲な刃が顔を覗かせる。
罠にかかったともいえる状況であるが、少し違う。
魔女は罠にかかりにいったのだ。
逃げ場を作る余地を残さず周囲から襲い掛かる無数の刃。
鋭く魔女の瞳が周囲を睨んだかと思えば、激しく何かが弾ける音と共に
熱された空気の衝撃波が射出された刃を次々と迎撃する。
弾かれた刃が周囲の壁や地面へ突き刺さり、
やがて針山地獄のような光景に。
飛ばされた武器を迎撃しきった魔女が顔を上げる。
頬に一筋の血を残して。
「...酷いなぁ。女の子の顔に傷をつけるなんて。」
言葉とは対照的に、楽しそうな笑みを浮かべる。
ここまで面白いのは久々だ。
距離を取った青年と同じように、魔女も浮遊するように距離をとる。
「あたしはソラ。鋭光の魔女。
君、名前なんて言うの?」
青年の埒が明かないという言葉に対して同感だと言うように
纏わせていた光を霧散させる。
彼の名前は知っておく価値がある、魔女はそう判断した。
相手が名を教えてくれる保証はないが、
魔女には自身を周知させる目的があった。
■雪景勇成 > 「どうだかな…俺は単に面倒な事が嫌いなだけだ。」
その言葉に嘘は無い。実際口調は淡々としているが、嘘を付いているような挙動不審さは微塵も無く。
まぁ、平然と嘘を付けるタイプというのも勿論居るのでどう判断するかは魔女任せだが。
「――そうとも、”だから”面倒なんだよ…そういう方面の天才って奴は。」
決して天才でも何でもない己からすれば、面倒で厄介でついでに上から目線が気に入らない。
だが、それはそれ――敵に回ると厄介なタイプの一つが今、目の前に居る魔女みたいな奴だ。
(油断してくれりゃ別の手札も切れたんだが――いや、むしろ手の内をあまり見せずに済んだって事にしとくか)
そもそも、男は戦いでも土壇場まで全ての手札は見せない。
今、異能を思い切り使っているが、まだ幾つか手札―能力の応用は隠している。
この魔女は決して油断ならない相手だ…故に、尚更こちらの手札を迂闊には晒せない。
「――お見事…さっきから見てると…空気の電熱化が得意分野か…まぁ他にも色々あんだろうが。」
一応ちゃんと観察はしていたらしい。プラズマ波、防壁、衝撃波…一通り見てそう判断した。
勿論、まともに直撃すれば男が幾ら頑丈とはいえ下手すればどれも普通に致命傷だ。
だからこそ、能力の応用を用いた回避やカウンターを主体としていた。
「――んで、睨んだだけで迎撃となると…音声はトリガーじゃねぇな。
かといってジェスチャーも最小限…と、なりゃ手数の多さと即応性もあるな。」
先程の防壁からの衝撃波も、手を叩いただけで瞬時に切り替えてカウンターをかましてきた。
ある程度、決められたジェスチャーか何かは必要なのだろうが…。
(真っ向から光速攻撃と遣り合うのも馬鹿馬鹿しい。かといって絡め手はあっちも使ってくる、か。)
本当に面倒だ、とばかりに嘆息を零した。…当然だが、咥えていた煙草は最初の攻防でとっくに吹き飛んでいる。
一筋、血を流す女を一瞥すれば肩を竦めてこう答えよう。
「――男だ女だ関係ねーな。仕掛けてきたのはそっちだから迎撃したまでだ。
自己責任って奴にしとけよ――どうせただの掠り傷。怪我にも入んねーだろ。」
仮にだが彼女が試してこなかったら、会話程度で済ませて男からは仕掛けなかっただろう。
これが”仕事”なら話は変わるが、プライベートでドンパチなんてしたくもない。
「――雪景勇成。風紀委員の端くれだ。」
名前と所属――特務広報部と特別攻撃課についてはあえて伏せておくが素直に名乗りを返す。
【鋭光の魔女】――また、面倒なのと知り合ったものだ、こっち側に居たら間違いなく監視対象だろう。
お互い名乗れば、男も予め呼び出していた異形の武装を空間へと収納しておく。
軽く首や肩を回しつつ、「はー、やれやれ」とばかりに大仰に溜息をついて。
「んで、”品定め”は満足かよ?わざわざ名乗ったっつぅ事はあれだろ――自分の名を周知したいってトコだろ。」
直感なのか論理的あ思考でそう導いたのかは謎だが、そう言葉を投げ掛けて。
■ソラ > 「面倒事も見方を変えれば、楽しくなるかもよ?」
結局、魔女は変化のない生き様を嫌うのだ。
日々の中に刺激があれば、
それは自身を色々な意味で変えられるトリガーとなり得る。
そこの所、目の前の青年と魔女は考え方が合わない。
また、青年はあの戦いの中で、魔女の能力をある程度分析していたようだ。
魔女の攻勢の中、そんな余裕があるとは中々侮れない奴。
「それは、あくまで現象の一つ。本質じゃないかな。」
彼の能力に対する知見にはそう一言。
さらなる彼の分析には少し笑みを浮かべて
「ひみつ。身振りはあたしの癖ってだけかな。」
悪戯っぽくはぐらかすような一言。
しかし、その言葉から能力の行使に動きすら
必ずしも必要でないと察せるだろうか。
「君の方こそあたしにかすり傷をつけるなんて、中々できないよ。」
青年の高次空間接続能力は魔力由来ではないらしい。
異能のようだが、詳細は分からない。
おおまかな原理くらいか分かるのは。
頬の傷をさすりながら魔女は少し考えていた。
別に傷をつけられたくらい、怒る程にも入らない。
「勇成君ね。次はもっと別の場所でやろっか。
ここじゃお互い全然力を出せないでしょ?」
ニコッと笑顔を浮かべてそう一言。
次にまた戦うのか、そもそもまたあるかも分からない出会い。
見えない未来に期待するのはそう悪くない。
「どーかな?でも今日はぐっすり眠れそう。
あたしはいつでも面白いものを待ってるよ?」
今日の”品定め”に満足げな様子を見せる魔女は
風で舞い上がるように空中へと浮いていき、
ノイズが走るように姿が乱れていけば、
最終的にその場から見えなくなった。
気まぐれな魔女は気ままにやってきて気ままに去ってゆく。
■雪景勇成 > 「――そうかい。俺は”楽しい事”は暇潰しも兼ねて探してるが…。」
こういうのはプライベートでは避けたいものだと思う。
何で非番の時にまで殺し合いやら壊しあいをしなきゃいかんのだ、面倒だとばかりに。
考え方が合わない、というより方向性がまるで違うのだろう。
「――現象操作系の異能とかって面倒でしかねぇんだよなぁ。」
自分の異能はどうか、と聞かれたらそもそも複合系異能なので何とも言えない。
どのみち、彼女とは相性が悪い…少なくともこちらが少々不利なのは否めず。
今回は、お互い挨拶程度のやり取りで本気ではなかったからこの程度で終わりそうだが。
「いや、そう言われてもな…。」
掠り傷一つにこれだけ手間が掛かるのが、矢張り相性の悪さを裏付けているような。
と、いうよりこっちの戦い方が悪いのかもしれないが、そうなると頭脳戦ではまず及ばない。
かといって、戦闘スタイルを大幅に変えるのも今更だ。もう少し幅を増やさなければならないか、とは思いつつも。
「何で次も遣り合うの前提なんだ、こっちはプライベートでは勘弁なんだが?」
と、嫌そうに口にするも、そういうのは気にしない唯我独尊魔女っぽいので無意味だろう。
本当に、もう何度目になるか分からないが面倒な魔女と知り合ったものだと思いつつ。
「面白いものを探すのも待つのも勝手だが、俺以外の他所でやってくれ…。」
こっちもこっちで勝手に”楽しい事”を探すのだから。
なんて、言ってもさして意味は無い。また偶然に遭遇する可能性もあるのだから。
気紛れな魔女が一足先に去るのを、淡々と見送りながら…ややあって男も踵を返して。
「一先ず帰るか――やっぱプライベートでドンパチなんざするもんじゃねーな。」
雑魚ならまだしも、あのレベルの相手とやり合うのは仕事中だけにして欲しい。
ともあれ、【鋭光の魔女】と違って通り名なんぞない【無名】の男は、気だるそうに立ち去るだろう。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」からソラさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」から雪景勇成さんが去りました。