2022/11/06 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に杉本久遠さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」にシャンティさんが現れました。
杉本久遠 >  
 
 ハロウィンの約束で、恋人(仮)と待ち合わせているのだが。
 さて、この仮装は彼女を楽しませられるだろうか。
 
「――うーん、もっと何かなかったかなぁ。
 永遠には大丈夫と言われたけどなぁ」

 ハロウィンに装飾に彩られ、仮装した生徒たちが歩き回っている。
 そんな中には、異邦人や本物の怪異が混ざっているが、そんな光景は島中走り回っている久遠からすれば珍しいほどでもなく。
 ただ。

「ふむう、壮観だなぁ」

 ヒトとそれ以外の波、壁。
 それが同じ祭りを目的に集まっているのと考えると感心せざるを得ない。

 そんな、人々のごった返す中から、少し外れて待ち人を待っていれば。

「――お、あれ、か?」

 魔女のような装い、神秘的な雰囲気。
 その手には本。

「――おーい、シャンティ、こっちだ!」

 とんがり帽子にローブを羽織った姿は、イベントによくある羽目の外した露出の多い衣装とはちがい。
 むしろ彼女の個性的な雰囲気が引き立つようだった。
 

シャンティ > 「ふ、う……」

女は小さく吐息を吐く。つい先だってこの街に訪れたことはあったが、あくまで目的地に行くだけ。街中の部分はただの通り道にすぎなかった。しかし、今日はそうはいかない。あくまで、街の中で行動するのが目的である。

「……意外、と……い、え……いい、わ。これ、も……この、先の……た、め……」


そういえば、エンターテインメントを重視した同志もできたことだ。少しはそういう空気を身をもって知るのも悪いことではないだろう、と女は思う。とはいえ、これだけの人の波は――


「さ、て……約束、の……場所、は……」

余計な思考を振り払い、予定の場所を確認する。といっても女の場合は、脳裏に浮かぶ文面を読み取って位置の修正をしていく作業になるのだが。


「……ん。いる……わ、ね?」


思い思いの仮装をした多数の一般生徒。この常世の島にあってもどこか変わった空気感の中、更に異邦人が。怪異が混ざって練り歩く。その中で、一人の男が声を上げているのが見える。


黒いスーツ、黒いマント、その中に赤のタイをして、いかにも古典的な吸血鬼のイメージを彷彿とさせる格好の男。


「……は、ぁい……」

小さく手をふってみせて、ローブをまとった魔女姿の女は男の方へ向かって歩いていった。間に、相変わらず溢れかえる色とりどりな生徒たちがいるが、彼らをうまく避けていく。


「ほん、と……色々、いる、わ……ね、ぇ……?」

わずか首を傾げる

杉本久遠 >  
 
「おお、よかったよかった。
 ヒトが多いから心配だったんだ」

 と言いつつ、駆け寄っていく。
 歩いてくる彼女の手を迷いなく取れば、その細い体を支えるだろう。

「ああ、ほんとになんでもいるよなぁ。
 ゴーストなんかそこら中にいるぞ」

 その声に恐れるような様子はなく、面白そうに。
 ただ、彼女の様子は気になるようで、そわそわと。

「それより、大丈夫か?
 やっぱり家まで迎えに行った方が良かったんじゃ――いや、そもそも誘って嫌じゃなかったか?」

 ヒトの多い場所が得意でないのはよく知っている。

「ああ、やっぱり商店街のささやかな方が――いやでも永遠は大丈夫だって言ってくれたが、でも、そこはオレがしっかりしなくちゃいけなかったんじゃ――」

 そわそわが止まらない。
 すでに何度かデートというものをしているが、相変わらず緊張しているらしい。
 

シャンティ > 『吸血鬼の姿をした男は駆け寄ってきて、女の手を取る』

淀むことなく、謳うように目の前の状況を語り……素直に手を差し出す。それは、すっかり慣れ親しんだ動作となっていた。


「そう、ね、ぇ……仮装、も……たく、さん……ん?」

辺り一面の気配。そして、その多種多様極まる存在に流石の女も関心の声をあげる。知識としては知っていても、実地の描写はやはり違うものだ。


「あ、ら……ふふ。なに、を……そん、なに……慌て、てる、の……かし、らぁ…… そも、そも……いや、なら……断、る……わ、よぉ? それ、と、もぉ……自信――ない、の?}


男のそわそわぶりに、女はくすくすといつもの笑いを浮かべる。


「それ、だけ……ちゃん、と……準備、して、る……の、に?」


そういって、彼の仮装を示す。


「ま、あ……そう、いう……こと、なら……帰、ろう、かし、らぁ……?」


くすくすくす、と変わらず笑っている

杉本久遠 >  
 
「――ああっ、違う違う、そうじゃない!
 嫌じゃないならよかったんだ、その、オレは君と来れて嬉しいし、うん」

 帰ろうか、なんて言われてしまえば大慌てで。
 最後は言いながら赤面してしまう。

「う、その、なんだ。
 つい心配しすぎてるんだろう、な。
 その、大事な――こ、恋人だからな」

 言いながら、真っ赤になった顔を背ける。
 まったく言い慣れていない事がまるわかりの言葉だろう。
 

シャンティ > 『「その 大事な――こ、恋人だからな」男は頬を赤く染め、顔を背けながらたどたどしく口にする。動揺、羞恥、ないまぜに成った感情が男を――』

そこまで謳い上げ――女は口を閉ざす。

「あ、ら……野暮……だ、った……かし、ら……ね、え?」

くすくすと笑う。まるで反応を楽しむかのように


「心配、は……そう、ね……あり、が、とう。けれ、ど。平気……よ? それ、より……」

軽くバサバサとローブを振ってみる

「これ、から……どう、する、の……かし、らぁ?一応、用意、は……した、の……だけ、れ、どぉ……」

せっかくのハロウィンだし、というどちらともなく話題になったことで仮装まですることになった。とはいうものの、女は風習は理解していてもどうする、というプランはない。

「それ、に……これ、で……いい、の……かし、らぁ? 場違、い……だった、り、しな、い? ほ、ら……周り、とか……」


そういう女が示すのは、仮装なのかコスプレなのか、はたまたただの酔狂なのか……割と露出の多い人々。

杉本久遠 >  
 
「う――読み上げないでくれ」

 へなへなと弱気な様子でがっくりと肩を落とした。
 耳まで赤く染まってるのはご愛嬌。

「平気ならよかった――うん、そうだな」

 気を取り直して周りを見て。
 あらためて彼女を見て。
 これからどうするか、考えながらも、口は滑る。

「いや、すごく似合ってるぞ。
 オレも何とか恰好になってるみたいで良かった」

 そう言いつつ、彼女が示した周囲の仮装を見て、一瞬彼女がそれを着ているのを想像するが。

「――いやっ! それでいいんだ!
 とても似合っているし、その、露出はあれば良いというものではないしな、うん!」

 困ったことに、紅くなった顔が戻らない。

「それに――その、君がああいう恰好するのは、あまり、ヒトに見せたくない、と思う」

 言いながら、やっぱり顔を合わせられなかった。

「――それより!
 この後のことなんだが――」

 そう言って、自分の携帯端末を覗いて、妹とのメッセージのやり取りを確認する。

「うん、永遠が言うには、向こうの方にハロウィン限定の店があるらしい。
 絶対外さないから行ってこい、って言われてるんだ」

 と、言わなくていいところまで読み上げてしまう。
 妹の気遣いが伝わらない兄であった。
 

シャンティ > 「ふふ……ごめん、な、さい……つい、ね?」

くすくすと笑いながら謝罪する女。そんな二人の様子を通行人がちらりちらりと見ていく。どこまで何を聞かれ、見られているのかは見られる側にはわからない。


「そう、ね。外、の……人ご、みも……これ、は……これ、で……いや、では……ない、の、よ…… 昔、なら……別、だけ、れ、どぉ…… 気が、むい、たら……おぼ、えて……おい、て、も……いい、わ、よ」

以前に少しそんな話をしたので心配も確かにするものかもしれない。それであれば、より正確に情報を伝えてもよいか、と女は考える。そこまでの必要もなかったかもしれないが。

「あら、そう……一応、用意、も……して、は……みた、の……だ、けれ、どぉ……い、い……なら、いい……の、かし、ら……ね? それ、は……それ、と、して……」

くすくすと笑う


「独占欲……と、いう……の、かし、らぁ……意外、と……意外、ねぇ……?」


顔を背け続ける男に追い打ちの言葉をかける。笑いは続いている。それでも、次の句を継がれれば


「……あら、それ、は……ふふ。妹、さん……に、お礼……いわ、ない、と……かし、ら……ね、ぇ? 好意、を……無駄、に……する、のも……悪、い……し。いき、ま、しょう、か……? どん、なとこ、ろ……か、は……ふふ。秘密、ね?」

男本人の面目は丸つぶれな伝え方に、特に気分を害した様子もなく女は告げる。ただ。指摘をすることもなかった。

杉本久遠 >  
 
「つい――」

 いや、絶対わざとだ!
 と、内心思わないわけでもないが。
 とはいえ、彼女にこうされるのが嫌ではなく――

「そう、なのか。
 うん、なら、必要以上に心配するのも、よくないな」

 そう言いながら、少しだけホッとした表情になる。
 少し聞いただけの事でも、それだけ大事に思っていたのだろう。
 あらためて、もっと彼女の事を知らなくては、と思わされる久遠だが。

「ぶふっ」

 用意してある、と聞けば反応せずにはいられない。
 いや、一応男の子なんです。
 水着で抱き着いておいて、今更なんだって所ですが。

「――それは、その。
 あとでこっそり着てくれたり、写真くれたりとか、は――いやいや!」

 ほとんど煩悩が口からはみ出していたが、慌てて首を振った。
 それから、改めて咳払いして。

「意外、か?
 ――うん、言われてみれば意外、かもしれないな。
 君じゃなかったら、多分、こうは思わないだろうし」

 追い打ちの言葉だったはずが、妙に納得してしまってむしろ落ち着いてしまう。
 説明のつかなかった感情、気持ちに名前がついてすっきりした、というような様子だろうか。

「ん、ああ、あいつはほんと、よく気が回るんだ、オレと違って凄いやつだよ。
 なんだか、予約? も出来ているらしい。
 どんな場所だろうな、オレも楽しみだよ」

 面目は丸つぶれだけど、まったく気にしていないのは久遠らしいのか、ただのシスコンなのか。
 それはそれとして、少し落ち着いたらしい久遠は、彼女と繋いだ手をゆるく引いて、人の波に飲まれないように歩き出す。

 そうして歩いているだけでも、本当に色んな種族や怪異にすれ違う。
 仮装もしているとなれば、個性が満開の花畑のように色づいている。
 はぐれないよう細心の注意をしつつも、その様子を眺めて面白いと思っていた。
 

シャンティ > 「私、は……ね。面、白ぉ、い……こと、が……先、なの。もし……そう、じゃ、なけ、れ、ば……後、回し、か……さも、なけ、れ……ば、ね?」

いつもの気怠い口調に、いつもの声音。しかし、どこか力のこもった言葉であり濁した先への感情も伺い知れるような……そんな奇妙な答えであった。


「あ、ら――?」

男の口からつい、漏れ出てしまった煩悩の一部。しかし、女はただ一言だけを口にして――


「ふふ」


くすくすと くすくすと ただ笑った。


「……へ、ぇ?」

しかし

「そう、ねぇ……それ、なら……それ、こそ……本当、に……お礼、で、も……しな、いと……いけ、ない、か、しら……ね、え? ふふ。きっと、しっか、り……もの、なの、ね。妹、さん」


今まで動揺や混乱などで揺れ動いていた男の感情が、急に落ち着く。もはやいつものこと、になっているが。これはスポーツマン特有のメンタル制御能力なのだろうか、と女は考える。何かにつけて、わずかなきっかけで平静に戻れる。その起伏の奇妙さは、逆に興味深いものだ、と女は考える。


――これは、どこまで切り替えられるのだろうか?


「ま、あ……それ、は……後。まずは、いき、ま、しょう、か……」

素直に手を引かれながら歩きだす。その道程には、様々な人、異邦人、怪異。ただそれだけでは、女の興味は惹かない。そんなものは見飽きるほど見てきている。それでも、これだけ混沌と混ざり合っているのは珍しいことだ、と女は読み取りながら思う。

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