2022/11/07 のログ
■杉本久遠 >
――面白い事。
それが先にくるとなれば、なら、自分は面白いと思われているのだろうか?
そんなふうに考え――面白くなくなった時にどうなるか、と思って少しだけ肌寒くなった。
「えっと、その笑わないでくれると――いや、むしろ笑ってもらった方がいい、のか?」
うーむ、と首をかしげる。
真顔で受け取られても、それはそれで辛いのではなかろうか。
「ん――?
ああ、永遠も君に会いたいって言っていたし、今度、夕食でも食べに来るか?」
と、無自覚に家族団らんの輪に誘う。
自分のメンタリティに興味を持たれているとはつゆとも知らない。
「――と、大丈夫か?」
ヒトの波に流されない大きな男は、彼女の方へ半歩近づいて様子を伺う。
周りは人間に近い体格ばかりではない。
巨大な仮装や、仮装でない巨体も混ざっている。
「さっきも思ったが。
こうして近くで感じると、すごいもんだな。
オレよりデカいやつもいっぱいいるし――おっと」
足元を1mもないような小さな姿が走り抜けていく。
気を付けないとうっかり事故してしまいそうだった。
■シャンティ > 「そう、ねぇ……機会、が……ある、なら……そう、ねぇ……お食事、も……いい、かも、しれない、わ、ねぇ……」
家に誘う、というのはそれなりに大きなイベントであろうが、女は特に意に介さない。男自身も言っていることの重みをあまり理解していないので、ふつうのことのように話が進んでいた。
「そう、ねぇ……平気、よ。久遠、の……手が、ある、し?」
女は様々な理由で人混みの中に入ることはあまりしない。そもそも、肉体的にも頑強ではないので人混みにまみれてしまえば容易に流されていってしまうだろう。ただ、いまは……標がある。
「そう、ねぇ……でも。思っ、た、より……人、は……多い、わ、ね? うっか、り……した、ら……流、さ、れそう……だし。気を、つけ、ない、と……か、しら? よろ、しく……たの、む、わ……ね。」
わずらわしいことはすべて男に投げてしまい。女は男の手を握る。
「確か、に……色々、な……存在、が……たく、さん……ね? 仮装、が……意味、ない、かも……だ、わ?」
くすくすと笑う
「本物、の……魔女、も……吸血鬼、も……いそ、う……よ、ねぇ?」
■杉本久遠 >
「おお、それじゃあ是非遊びに来てくれ!
父さんの料理は美味いんだ」
まるで当たり前のように話が進んでしまうが。
きっと当日になって慌てる事になるんだろう――。
「――お、おう。
なんていうか、その、今どきっとしたな」
自分が彼女の標になり、支えるのは当然の事のように課していたが。
彼女の口から言われると、まったく違う、胸が熱くなるような心地になった。
「ああ、まかせてくれ!
なんなら、抱き上げたってかまわないからな!」
たはは、と嬉しそうに笑いながら、改めてしっかりと手を繋いで。
「む、そうだなぁ。
魔女――なら先輩に何人もいたっけな。
でもそういえば、吸血鬼には会った事ないな」
これでも、久遠は常世島歴は非常に長い。
しかも異邦人街にも頻繁に出入りしている。
それで見かけないのだから、少し不思議なものだ。
「君は会った事あるか?
吸血鬼とか」
そう、身を寄せ合うように歩きながら、隣の彼女に訊いてみる。
■シャンティ > 「あら、あら」
たのもしいのか、たのもしくないのか。慌て、動揺しつつ、それでも抱き上げてもいい、と大胆なことを口にする男に思わず笑ってしまう。一言、無自覚、と切って捨てるにはあまりに面白すぎる。
「それ、なら……い、っそ……抱き、あげ、て……み、る?吸血鬼、さん。 なぁ、ん……て、ね?」
くすくすと笑って付け加えた
「魔女、は……人、の……派生、といって、も……いい、かも、しれ、ないし……いて、も……おか、しく、は……ない、わ、よ……ね、え。吸血鬼、は……」
人差し指を唇に当てて考える。それらしき物語を抱えたものの心当たりはいくつかあった、が
「そう、ねぇ……何人、か……噂、は……聞く、けれ、どぉ……ただ。純粋、な……吸血鬼、その、もの……は。私、も……しら、ない、わ……ね、ぇ」
探せばいるのだろうけれど、そこまでの興味はない。そもそも、実際に居たところで、それだけでは面白みにかける。
「ん……それ、にし、て……も、人……多い、の……は、かわら、ず……ね。目的地、は……見失、って、ない……か、しら?」
そもそも場所を把握していないので、連れて行かれるままだ。どこに、どうやっていくかの先すらもわからない。それをしらなくても。否。しらないほうが楽しめるだろうと女は踏んでいる。すべては、男にかかっている。
■杉本久遠 >
「お、はは、試してみるかい?
美しい魔女さん」
と、たまには動揺せずに返す事もあったり。
面白いと思われている事には気づけないものの。
きっと本人が気づいていないというのも、面白さの一つなのだろう。
「そうかあ。
オレも噂ぐらいしか聞かないもんな。
あ、夜中とかに異邦人街歩いていたら会えたりするんじゃないか?」
なんて、言いながらも、本気にしているわけじゃない。
いや、久遠なら本当にやりかねない所はあるのだが。
会ってみたい、だけで深夜徘徊は流石にしないのだ。
「おお、そうだな――ん、もう少し、か?」
端末の画面を見ながら歩いていくと、少し向こうに、巨大なカボチャが聳えているのが見えた。
それを確認し、もう一度端末を見て、座標を確認して、もう一度カボチャを見た。
「――あれ、みたいなんだが」
その十メートル近い巨大カボチャは、目と鼻と口がしっかり彫られており、どうやら中身がくりぬかれて臨時の店になっているようだった。
口が入り口のようで、その前には一般客の行列のようなものが出来ている。
そのカボチャのあまりの大きさに、流石の久遠も口が開いていた。
■シャンティ > 「ふ、ぅ……ん……?」
少し刺激を与えすぎたかしら、などとどこか不穏なことを女は考える。ついつい人をからかったりするのは染み付いてしまった性分なので仕方がない。
「本当に、いた、として……生活、大変、そう……だ、もの……ね。たと、えば……久遠が、本物、だ、とし、て……私、の血……を、飲む?と、か……むず、かし、そう……ね?」
首を差し出すようなふりをして見せる。実際に、いたとしたら――古典よろしく輸血パックからすする、などということになるのだろうか。
そしてさらにあるき進めば、ほどなく……男が場所を指示……する、のだが。
「あ、れ……?」
男の声もやや動揺……というより、唖然としている、というべきか。不思議な声音で語っていることが見える。そして、女は自分でも実際にその場の描写を追ってみると
「おお、きな……かぼちゃ……ね、え? ふふ。これ……わざ、わ、ざ……用意、し、たの、か、しらぁ……? なん、にし、て、も……ハロウィン、に……は、ふさわ、しい……建物、よ、ね。人、の……数、を……みる、と……成功、なの、は……間、違い……なさ、そう、ねぇ…… で、も……」
少し離れているからか、描写はまだ大雑把で、詳細がわからない。あんな奇妙な店構えを用意して中身は何をするつもりなのか。
「ふふ、どん、な……ところ、か……楽しみ、ね?」
■杉本久遠 >
「生活なあ、大変そうだよな。
オレが本物だったら、うーん――飲みたくなるんだろうか?」
不思議そうに首をかしげる。
そう言った異種族間の法令に関する講義だとかで、なにか聞いたような気もするが――成績の危うい久遠が覚えているはずもなく。
しげしげと、彼女の首元を眺める事になった。
彼女もそのカボチャの事が読み取れたのだろう。
流石の彼女も予想外だったようで。
「はは、これは人気にもなるな!
どうやって育てたのか気になるが――いや、それより早く行ってみよう」
中からは楽しそうな声が聞こえてくる。
どんな店なのか聞いてはいなかったが――確かに期待してよさそうだ。
彼女の手を引いて、どこか子供っぽい好奇心を見せながら、カボチャの口へ向かう。
「入ってみてからのお楽しみ、だな!」
彼女と繋いだ手は離さず、しっかりと店まで誘導して。
わくわくとした様子で、カボチャの中に一歩踏み出していく。
■シャンティ > 「……なる、ほど……ね、え?」
真面目に自分だったら……ということを考え始める男の様子を眺める。こんなことでもこの男は真面目に考えてみる。そして考えるなら、そこに意識がしっかり向く。ある種の愚直さ、のようなものだろうか、と女は思う。
それはともかく
「ええ、そう、ねぇ……」
流石に想定外の作りの店に、少しだけ女自身も驚かされ、少しだけ呆け……少しだけ、好奇心をそそられた。素直に言葉に従って店に向かうとするだろう。
『今宵このときこの場所で この日限りの特別な仕掛け(トリック)と思い出(トリート)を皆様に』
そう、入り口に書かれた店は確かに手の込んだ用意のされた場だった。
「ふふ……見かけ、だおし……で、は……なか、った……わ、ねぇ? ふふ」
十分に堪能した女はくすくすと笑った。
そして――
帰りに、お礼、と称して女は一つ男にメールで贈り物をするのであった。
誰にも見せないほうがいいわよ?と……そう、添えて
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から杉本久遠さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」からシャンティさんが去りました。