2022/11/11 のログ
ご案内:「裏常世渋谷・メルヒェンストリート」にキッドさんが現れました。
ご案内:「裏常世渋谷・メルヒェンストリート」にアリシアさんが現れました。
■キッド >
裏常世渋谷。
常世渋谷のもう一つの顔となっている異空間。
跳梁跋扈、あらゆる超常現象が起こりうるこの裏の街は
意図せずかそうでないか、島民が巻き込まれる事も少なくはない。
こうした住民を助けるのもまた、風紀委員の役割だ。
「……それで、お前さんはまたこんな所にいやがるのか。
野良猫娘(ストレイトガール)を気取るにゃぁ、ちょいと色気が足りない気もするがな」
その風紀委員の一人、悪ガキキッド。
今は故あって常世渋谷に席を置いており
表の渋谷の安全に裏街の抑制、そして裏渋の調査と昼夜問わず戦っている。
相変わらず口元からはキザな言葉と、咥えた無味無臭の煙草の白煙が漏れていた。
目深に被ったキャップの隙間から、碧眼がちらりとアリシアを見やる。
この前は怪異に襲われた所を助けた少女だ。
どういう縁か、また出会ったのはこの裏常世渋谷。
今度はコンクリートジャングルではなく、随分とファンシーな場所だ。
きんきらピンク、ふわふわな建物。看板の文字もまんまるまる。
此処は別名、メルヒェンストリート。店主のいない店が立ち並ぶ商店街。
どころかしこからも、甘い匂いが漂っている。
「しかし、甘ったるいな。俺には不釣り合いな場所だ。
……一応言っておくが、拾い食いはするんじゃねェぞ?」
「此処の食い物だ。食ったら何が起こるか、わかったモンじゃねェ」
■アリシア >
長いピンクブロンドを手で靡かせて。
腕組みをして少年を見る。
「放課後に何をするかは生徒の自主性の範疇だと思うぞ」
「そして私は迷い猫ではない」
「アリシア・アンダーソンという気に入っている名前がある」
メルヒェンストリートを歩く。
甘い匂い。
何も知らず迷って空腹になれば、食べて裏の世界の餌食というわけだ。
「ヨモツヘグイをする気はない」
「裏の食べ物を口にすればそれだけこの世界との縁が深くなる」
「そして食べて正気でいられる保証もない」
多分だが。このお菓子は美味しいのだろう。
二度と表の世界の食べ物など食べる気にならない程度に。
けい
「風紀委員の兄よ」
「君は随分と“こちら”に慣れているようだが」
■キッド >
「自分からこんな場所に来るやつがあるかよ。
自殺志願者は生徒って言わないぜ?野良猫娘」
此処では何が起きても自己責任だ。
転移荒野がよく言われるが、此処だって何が起きても不思議じゃない。
やれやれ、と呆れたように肩を竦めて首を振った。
似た色の金糸が左右に乱れる。
「キッドだ。風紀委員の悪餓鬼(キッド)さ」
「そう言うお前さんも、こういう事態には詳しいんだな。
手慣れている、というよりもこの前もやたら落ち着いてやがる」
異能者であっても、誰も彼もが非日常に生きる訳じゃない。
或いは自らの能力を忌避して非異能者と同じ道を行くものもいる。
誰も彼もがスーパーマンになった所で、人類全員がスーパーマンと同じ事をするか?と言うことだ。
そういう意味では、彼女が異能者であってもこの"場馴れ感"は気がかりだ。
「まぁ、一々お前さんの過去を詮索する気はないが……、……」
とは言え、"訳あり"なんてものはお互い様。
彼女の過去をいきなり土足で踏み入るほど、野暮じゃない。
それよりも彼女をさっさと表に返すか、と思った矢先
出口の目の前に人影……と言うには明らかに二周りほど大きな影が見える。
膝をついているようだが、甘い匂いに混じって漂う肌をなぞる"嫌な気配"が人ではないと教えてくれる。
アリシアにステイ、とハンドサインをすれば腰の拳銃に手を添えた。
「さて、カウボーイ映画なら問答無用で撃ってる所だが……お前さんならどうするよ?」
■アリシア >
「目的ならある」
「ここの敵対的怪異の討伐と迷い込んだ人間の救助だ」
「……裏の世界を探索する部活でもあればよかったのだが」
探したがそれらしい部活は見つからなかった。
とても残念だ。
「前回は慌ただしく入院してしまい聞きそびれていたな、キッド」
「名前を聞けたことを嬉しく思うぞ」
「もし上級生であるなら敬語が使えないことを詫びよう」
落ち着いている、と言われて。
自分が不自然ではないかと考えてしまう。
「きゃー。裏の世界だわー。こわーい。」
と一応言っておいた。
そして大きな影を見るに。
「マカロニもウェスタンも好みだが、早撃ちは現実的ではないな」
「たったひとつの冴えたやり方というものを見せる」
そう言って一歩近づいた。
「お前は人類への敵対的意思があるのか?」
そう、問いかけである。
馬鹿正直に影に問う。
■キッド >
「それなら風紀委員にでもなるかい?
まともな学園生活をしたいなら、オススメはしないがね」
此の島でまっとうな人助けの近道ならそこだ。
但し、仕事は多岐に渡る上にこの学園都市は問題に困らない。
此処の調査は飽くまで仕事の一つだ。怪異退治の専門家ではない。
風紀委員らしからぬ、いや、だからこそ白煙と共に悪態を吐き捨てた。
「何、一年ならタメだ。と言っても、マイハニーに合わせて飛び級卒業予定だがな」
今はまだ、此の風紀で恩人達に恩義を返しきれていない。
今はまだ憧れの先輩に、自分を見定めてくれた先輩の為に
風紀委員として街の治安を守る義務がある。
何処がゴールかはわからないが、何時か辿り着くと信じている。
「……逆に不自然だぜ大根娘(ヘタクソ)。って、おい……!」
大根役者も真っ青である。
そして、此方の静止も聞かず問いかけた結果──────。
■一つ目の怪異 >
甘い香りを巻き上げ、一瞬で影は距離を詰めた。
その姿は一種のオーク、いや一つ目(サイクロプス)だ。
無骨な肉体に巨大な手。何処となく輪郭と体がドロリと解けた不気味な姿。
それが、それを怪異だと知らしめていた。
巨大な手が、アリシアの両肩を掴み、真っ赤な一つ目がアリシアを映す。
『キレイなブロンド……可愛いゴスロリチック……き、きめた……!』
一つ目はゴクリ、と生唾を飲み込み……アスファルトが凹む勢いで土下座したのだ……!
『た、たのむ!オデと"ポッキーゲーム"をしてくれェッ!!!!』
一つ目のだみ声が、甘い空気に木霊する。
もう何もかもが真に迫っているが、敵意の類は感じないだろう。
■キッド >
「チッ…」
だから言わんこっちゃない。
鉄音こすらせ即座に銃口を怪異に向けるも、土下座に困惑。
だみ声に思わず煙草を落としそうにまでなった。
「なんだコイツは……おい、アリシア。
別に言う事聞く必要はねェぞ」
と言いつつも、アリシア当人の様子を伺った。
■アリシア >
「風紀委員に入る気はない」
「私が倒すべきは敵対的怪異であって悪ではない」
肩をすくめて苦笑した。
どうやらマイハニーという名前の恋人がいるらしい。
「そういうキッドは交通整理をする部署に異動したほうがいいんじゃないのか」
「マイハニーが悲しむぞ」
見上げた影は。姿勢を低くした。
土下座するサイクロプス。
巨人、そして人ひとりくらい簡単に握りつぶせそうな巨大な手。
だが……どうしても彼に敵意があるようには感じられなかった。
「キッド、銃を下ろして欲しい」
「こいつの話を聞こう………まずは、ポッキーゲームというものがどういうものか説明してもらおう」
「お金がかかる遊びなら遠慮したい、お金は大事にしろとワン姉様に言われているからな」
■キッド >
確かに言う通り敵意は感じない。
何なら一つ目から大粒の涙を零して懇願している。
珍しいタイプの怪異はあるが、怪異という時点で懐疑的だ。
「……仕方ねェな」
とは言え、下手な刺激をするよりはマシかもしれない。
彼女はこういうのに手慣れてはいるようだし
平和的に解決できるなら別にそれでも良い。
ここは一つ、お手並み拝見と腕を組んだ。
■一つ目の怪異 >
『デヘヘ、や、やっぱりオデのみこんだおんなのこだぁ…!』
喋り方はがたどたどしい。
微妙に口周りが崩れているせいなのだろうか。
『えっ』
『……それはオデのくちからはちょっと……』
えへへ。
■キッド >
「えへへ、じゃねェよ!自分で言ったんじゃねェか!」
思わずツッコんでしまった。
なんだ、肩の力が抜けるぞ。
ハァーと白煙とともに大きな溜息を吐き出した。
「アレだ。ポッキーゲームっていうのはな。
男女が左右でポッキー咥えて、互いに食い合うチキンレースみてーな……」
「まぁ、そういう事だ。いいんだぞ、断っても。
と言うか、ポッキーゲームを知らんのかお前さんは」
ましてや怪異。
幾ら内容が内容とは言え、一応女子であるアリシアなら
流石に怪異抜きにしてもお断りくらいはするんじゃないかと期待はしているが、さて…。
■アリシア >
キッドの説明を聞いて頷く。
このサイクロプスは青春がしたいのだな。
「知らない文化だな……興味深いぞキッド」
「ふむ……なるほど」
「つまり男女の接吻や接近を楽しむ“ぱりぴ”の遊びなのだな」
両手をワキワキと動かして。
「いいだろう……見せてくれる、この私の異能」
「空論の獣・起源種(ジャバウォック・オリジン)をな!」
力が集中し、両手の間の空間が歪んだ。
そして。
ぽん、と気の抜けた音がして1メートルほどの細長いチョコレート菓子が生成された。
「ククク、少しサイズ感を間違えたが……私とお前とのサイズ差を考えればこんなものだろう」
そしてチョコレート菓子を咥えて先端を向ける。
メモ帳とペンも錬成して強気に書いた。
【どうした? 早くしろ】
【それともチョコレート部分が始まるほうがいいのか?】
と書いてサイクロプスに見せた。
■キッド >
「大体合ってるが……って、おいおい。乗り気かよ。
本気で言ってるのか?一応相手が相手だぞ……?」
もうちょっと恥じらいがあると思ったら見誤った。SHIT!
寧ろ思ったより乗り気だし興味満々だった。
流石に苦い顔をして、首を横に振ったのも束の間。
今度はなんと、ポッキーにしては明らかに長過ぎるお菓子が出てきた……!
「わざわざ自分で作るほどかよ!しかも挑発までしやがって……」
見かけによらず、結構やり手なのか?
こうなれば彼女の好きにさせよう。
やれやれ、と帽子を目深に被って肩を竦めた。
■一つ目の怪異 >
『お、おおおお……!!』
感謝感激感動の嵐。
そんな感じの感涙を浮かべながら口元にっこり。
『そ、それじゃぁシツレイしてオデから…むふふ…』
巨大な口があんぐり開いた。
口の奥は真っ暗闇の虚の世界。
パックリ咥えると、大口の割りには口を窄めてサクサクと進み始める。
『フゥー…!フゥー!』
興奮しているのか、鼻息が荒い。
■キッド >
「(……コレは、なんつーか……)」
幾ら怪異とは言え、容姿に言及をする気はなかったが
こう、此の絵面はキツい。一つ目とは言え
そもそも崩れかけの体は不気味だし、喋り方も野暮ったい。
何より興奮して目をガン開きにして、鼻息でチリが舞っている。
そう、敢えて悪い言い方をすれば"凄くキツい"。
流石のキッドも口元への字。
「(これなら流石にアリシアの奴はもっと効いてるんじゃないか……?)」
傍から見てこれなんだもん。
当事者はかなり効いてそうだが……ちらり。碧眼流し目、アリシアの様子を見やる。
■アリシア >
【敵対意思がない怪異は】
【私の仲間も同然だ】
と書いてキッドにメモを見せた。
私のDNAの元はどんな存在なのか。
それがわからない以上。
私は人の姿をした怪異なのだから。
ポッキーを食べ進める。
ちょっと長く作りすぎたな。
【このゲームはどうなればクリアなんだ?】
と書いてメモ帳をキッドに見せた。
というかこの場で喋れる人がもうキッドしかいない。
【鼻息が荒いぞッ】
と書いてサイクロプスにも見せる。
顔と顔が近づいてくる。
粘膜の接触は可能な限り避けろと姉様に言われたな。さて…
■キッド >
「…………」
"私の中も同然だ"。と、少女は綴る。
どうやらただの異能者というわけではないらしい。
どんな事情かは知らないが、聞く雰囲気でもないし何も言わない。
ただ静かに、青い双眸だけが二人を見る。
「あん?そりゃァクリア条件といえばポッキーが無くなるか……」
不意に、キッドの言葉をバキンッ!と甲高い音が遮った。
■一つ目の怪異 >
『ブフゥーーー……ッ!ブフゥーーーー……ッ!』
それは互いの鼻先が掠めるような目前で、ポッキーを噛み切った一つ目の音だった。
興奮しているのは違いないが、明らかに気配が違う。
血走った眼に、ボコボコと滾る崩れ行く全身。
確かにその瞬間まで敵意はなかっただろう。
『チガウ、チッッッガーーーーウッッ!!!!』
甘みに響く怪異の雄叫び。
『ぽ、ぽぽぽぽぽっきーげーぇむはも、もももっとかわいいはんのう、する!』
『お、おおまえ!おまえおまえおまえおまえおまえおまえぇぇぇっぇぇッ!!』
『す、すずしいかおでほ、ほほほかのおとこに!オ、オデ!オデオ……!!』
『オデを見ろぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!』
理不尽、不条理、不可解な叫びの数々。
どうやら、一つ目にとっての理想のポッキーゲームの反応とは違ったらしい。
何を突然と思うかもしれないが、"だから怪異なのだ"。
理性も何もあったものじゃない。歪みきった男心の一つ目巨人。
獣のような雄叫びを挙げ、巨体がアリシアを翳らせる。
■キッド >
────瞬間、弾ける発砲音。
伊達にこれ一本で戦っていない。
音さえ出ぬ早抜き、早撃ちファニングショット。
四発の鉛弾がアリシアの横を通り過ぎ、一つ目の体を貫通していく。
「────追加ルールとして、暴漢を倒せばクリアってのはどうだ?」
目深のキャップの奥は鷹のように鋭く、怪異を睨んでいた。
予想済みとは言わないが、油断はしていなかっただけだ。
仄かな青春の香りさえ、今は硝煙の匂いにかき消された。
大きくのけぞった一つ目の巨人は膝を付き、息を荒くしてアリシアを睨んでいた。
余程執着していたのだろう。その眼光にはハッキリと、"敵意"を宿している。
■アリシア >
どこか失望したような表情を浮かべ、銃声より鋭く重い溜息をついた。
折れたチョコレート菓子が淡雪のように溶けて消える。
万物分解能力。
「残念だよ」
足元に手を伸ばすと長大な刀剣が伸びてきて手に収まる。
全てを拒絶し、否定する刃を錬成した。
「キッド、手を貸してくれ」
相手の右腕に向けて刀剣を切り上げた。
「レディーの扱いがなっていないのは、減点だ」
背中から刃を連ねたような翼を創り出して構える。
「ゲームオーバー」
■一つ目の怪異 >
右腕は切り飛ばされ、宙を舞う。
甘いお菓子の匂いに紛れて、泥臭い右腕が飛散した。
『はぁーーーー……っ!!はぁーーーー……っ!!』
恐怖心も無い。
恐れも無い。
この怪異は何かの、何処かの未練の塊。
それが叶わないのであれば、暴力も厭わない。
故に、怪異なのだ。
ドロドロと崩れていくその体。
まだだ、と言わんばかりに残された左巨腕を振り上げる。
■キッド >
……が、それも素早く放たれた二発の弾丸が崩した。
熱されたチョコレート用に、黒い体がどんどんと溶けていく。
リボルバーを弾くように開けば、カランカランと空薬莢が飛び散った。
「あいよ。お前さんが初めたゲームだ。ちゃんとケリを付けな」
懐から滑り落ちた予備弾倉が即座に収まりリボルバーを閉じた。
更に追加で二発、両膝を砕いた。一つ目は膝を付き
絶対否定の天使を見上げる。
■アリシア >
「言ってくれるな、知らなかったんだ」
キッドの銃弾が寸分違わずサイクロプスの両膝を撃ち砕く。
私は後方に弾かれるように飛んで。
「このゲームでディレクションを失敗すると怪異は怒り狂うなんてことはな」
そのまま否定の刃を腰だめに構え。
放たれた矢のように突撃。
サイクロプスを貫いた。
大穴の空いた彼の後方に着地して、否定の刃を振って消滅させ。
「さよならだ」
すべてが終わった後にキッドの元へ行き。
右手に残った溶けたチョコの黒に視線を落とした。
「教えてくれないか、キッド」
「“彼”は何故、怒り狂ったんだ?」
彼の心情を察することができない。
こうして私たちは11月11日を。
世界一無駄な時間に費やしていったのだ。
■キッド >
見事に一つ目は貫かれ、その体は泥のように溶けて崩れていく。
甘い香りに交じるのは、酷く臭い何かの匂いだ。
なんというか、生臭い男の匂いにさえ感じる。
なんの未練なのか、怪異なのかは考えたくはない。
やれやれ、と匂いを追い払うように手を振った。
「ダチにはなれねェってだけさ。残念だけどな」
コツ、コツ、と彼女の方へと歩み寄る。
「お前さんが怪異と同類かどうかは知らんが
アイツは、そうだな。"男心"しか知らんのさ」
「恋は盲目……とは、ちと違うがね。
恥じらいもねェ女は可愛げがなくて趣味がねェとよ」
結局求めた青春ごっこも、見た目はかくも中身は理想の女ではなかった。
理由自体を間抜けだと片付けるのは簡単だが
一重に自分勝手な考え、ワガママだけが残った最悪な男、というだけだ。
所詮怪異は怪異。此方のルールが通じる相手ではない。
ぺっ、と煙草を吐き捨てると、キャップを外した。
軽く首を振り、金糸を細かに乱して首を振り、アリシアを見下ろす。
そこに鋭い視線はなく、穏やかで優しい視線だった。
「自分の欲望が満たされない不条理なもの。
多分、彼は"心"がなかったんだ。悪いところばかり見ちゃったのが、あれなんだ」
「だから、君とは違う」
歪んだ青春の断片。
結局あの怪異の心は、どんな女性でも満たせる事はなかったんだろう。
"女性"を"その人"として見るのではなく"雌"と見る下賎な思考。
心のない、歪んだ男を象徴したような一つ目怪人。
それを語るのはキザな声音ではなく、穏やかな少年の声だった。
言い終えると、ぽふ、と彼女の頭にキャップを被せた。
遮られたアリシアの視界の向こうでは
カチッ、とライターの音がして、再び白煙が舞い上がる。
「……その"違い"がわかる女になれば、自然とわかるようになるさ。アリシア」
「ホラ、行こうか。Lady?」
それこそ煙の合間に見えたような、少年だったのかもしれない。
女性の扱いはキッドのお手の物。そっと手を差し出して
今日という日の無駄を楽しく過ごしたのだった。
ご案内:「裏常世渋谷・メルヒェンストリート」からアリシアさんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷・メルヒェンストリート」からキッドさんが去りました。