2022/11/14 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に神樹椎苗さんが現れました。
神樹椎苗 >  
 
 ――陽が落ちた常渋は、それでも活気がなくなる事はない。

 それでも、人が通らないような裏路地というものは存在し、そこに人目を忍ぶように隠れる存在もいる。
 そして、そんな怪異存在を狩る者もいるのだ。

 ――街の灯りも届かない細い路地で、紅い光が奔る。

「――これで、最期ですね」

 目の前に居た怪異は、黒い霧となって、薄暗い路地に消えていく。
 ぽつりと呟いた小娘は、自分の身長ほどもある紅い剣を引きずりながら、路地から出て来た。

 少女が持つ凶器に、一部ぎょっとして目を向ける通行人もいたが、そのほとんどが無関心だ。
 その紅い剣も、霧のようになっていつの間にか手元から消えてしまう。
 路地の入口には、桃色の衣装に包まれた、小さな娘だけが残されている。
 

神樹椎苗 >  
 
「はぁ――」

 ここしばらく感じるようになった妙な疲労感に、ため息を一つ。
 原因は今のところ不明。
 昨夜は朝まで、初対面の相手に抱かれて眠りこけてしまった。

「少し、休まねーとですね」

 指令された仕事も終わった所だ。
 帰る前に一休みしてもいいだろう。

 鞄から椎の実を一つ取り出して、足元に転がす。
 その椎の実は瞬く間に芽を出して、大きく成長し、幹を椅子のように曲げ、凹ませ、ちょうど椎苗が収まるような形になった。
 ベンチ程度の高さのそこに、ひょいと登って腰を掛けると、すっぽりと小さな体は、椎の木の幹に納まった。

 通行人からは、当然奇異の目が向けられるが、椎苗は気にしない。
 樹の椅子に座って頬杖をつきながら、眠そうに欠伸をしていた。