2019/02/25 のログ
ご案内:「歓楽街」にツクヨミさんが現れました。
ツクヨミ > 歓楽街の一角、道行く学生たちが放課後を謳歌する姿が多数見える。
そんな光景の隅にツクヨミは有名コーヒーチェーン店のテラス席で
ぼんやりとトールサイズのフラペチーノを飲んでいた。
違法部活の上級生にここで待っているように言われたからだ。

自分では注文することさえ出来ないなんとかかんとかフラペチーノを握らされ
待ち合わせ相手がツクヨミを見つけやすいようにテラス席に座らせられて
ほとんど飲まれていないフラペチーノが指先を冷やす。
テラス席は夜の寒さで冷えた風が吹き込みやすい。
寒い、とは思うけど防寒具は何も持っていなかったし、
勝手にここから離れたら上級生に怒られるだろう。

ご案内:「歓楽街」に花ヶ江 紗枝さんが現れました。
花ヶ江 紗枝 >   
「……ソイティーラテのオールミルク、ハーフシロップで
 サイズはグランデ、あと…そうね、
 ワンショット追加でお願いします。
 それを二つ。支払いはカードで」

気が向いた、という訳ではないけれど
随分久しぶりにこの店に来たな、と
注文を終え店内を眺めながらふと思う。
実は普段は自分で紅茶を入れるタイプ。
あまり人の多いコーヒーショップは好きではないけれど……
店内を一瞥すると、テラスに座る色素の薄い姿の横に空席を認め、
商品を受け取りつつ人でごった返す店内を縫うように
そちらへ足を向けた。

「相席失礼しますね」

覗き込む様に瞳を見つめて微笑むと
返事を聞く前にゆっくりと腰掛ける。

ツクヨミ > カップを2つ持って相席する女学生をぱちぱちと瞬きしてからじっと見つめる。
この人が上級生の言う、『待ち合わせ』の相手であろうか。
ツクヨミには相手の特徴や何やらは何も伝えられていない。
故に判断できず、ただ腰掛けた彼女に無言でぺこりと会釈した。

薄く開いた唇に緑のストローを咥えて、しかし中身を飲まずに相手を観察する。
ずいぶん暖かそうな格好だし、自分より年上のように見える。
本来このコーヒーショップに来るのは、こういう人が似合うのだろう。
あまり相手を気遣うことがないツクヨミの視線は
やや不躾に彼女を眺めてしまうだろう。

花ヶ江 紗枝 > 華奢で小柄。
色素の薄い、中性的な見た目。
遠目で見れば女の子と思う人も大勢いただろう。
えーっと……

「貴方が、”夜の子”でいいのかしら」

着飾ったらもう少し可愛らしくなるだろうにと思いながら
やや戸惑ったような口調で僅かに首を傾げ微笑む。
一応人相を聞いてはいるし、間違いではないと思うけれど
こんな格好でこんな場所に座っていたら
普段の巡回でも声をかけただろうと思う。

「あら、そんなに見つめてどうかしたの?」

くすくすと小さく笑いながら伺うように瞳を見つめ返す。
じっとこちらを見つめる視線にも若干訝しげな雰囲気を感じる。
この子も相手の人相や情報を聞いていなかったのだろうか。
それとも聞いていたものと違って怪しんでいるといったところか。

「それはともかく、こんな寒い夜にそんな格好だと冷えるでしょう。
 お気に入りのブレンドなのだけれど如何?」

ゆったりとした口調で机の中央に二つのカップをそっと置き
一応目の前で買ったわけだけれど変な物が入ってはいないと
言外に告げつつ好きな方を取ると良いと目で促す様に頷いて。

ツクヨミ > ”夜の子”、その符牒にぴくりと肩が動く。
確か、そんな事を上級生が言い残していたような気がする。
自分のことを指しているのか、いまいち自身は無かったが
何か反応しなければという反射的な理由からこっくりと無言で頷いた。

どうかしたの?なんて、優しく微笑んで聞かれたら
ふるふると小さく首を振ってなんでもないと伝える。
ただ、こんなに間近で自分とは世界の違う人が相対しているものだから
物珍しかったのだが、それを説明できるほどツクヨミは口が軽くなかった。

差し出されたカップ2つをじっと見つめ、その暖かそうな湯気が隙間から漏れる様に
一度花ヶ江のほうを窺うように見た。
勝手に手を出して叱られないかどうか、子犬のように縮こまっていたが
受け取らないのもまた不興を買うかもしれないとそっと一つに手を伸ばす。
フラペチーノで冷えた手が熱いくらいに温められ、
それを両手で大事そうに包むとゆっくりと一口飲んだ。
目に見えて冷えていた体がほっと緩み、おいしい、と一言こぼした。

「……ツクヨミ、名前……。あの、ありがと、ございます……」

上級生に名前を伝えるように言いつけられたのを思い出してそう付け加える。

花ヶ江 紗枝 >   
「もし良ければゆっくりお話でも、と言いたいのだけれど
 ……先に謝っておくことがあるわ」

少し困ったように柳眉を寄せる。
頷いたところを見ると人違いではないらしい。
それ自体は良かったと胸をなでおろすところだが……
此処からがまた少し大変な所。

「私は厳密な意味では私は貴方の待ち人ではないの。
 貴方に合うはずだった子と少し”お話”させて貰ってね?
 今夜彼、少し大事な用が出来てしまったから貴方に会いには来れないと思うの。
 待ちぼうけというのも困ってしまうでしょうと思って」

件の”彼”は今頃風紀の詰め所で楽しく御話しているはず。
まぁその場に居合わせたは偶然なのだけれど……
勧誘内容があまりにもあからさまだったので遅かれ早かれしょっ引かれていたと思う。

「……とは言え、貴方については多くを聞いたわけでもないの。
 だから安心して頂戴。本当に話に来ただけなの」

その内容が少し気になったのでこうして巡視に足を延ばした。
話通りであれば少しは処遇が違ったかもしれない。
けれど、いくら春が近いとはいえこの寒空の下
こんな薄着で長時間座らされている点。
そして何よりこの子犬のような反応は
それ程良い待遇を受けているようには見えない。

「……どういたしまして。
 ツクヨミ君……で良いのよね。
 私は花ヶ江紗枝。よろしくね」

人慣れしていないような、
けれど僅かに緩んだような仕草に
口の前で指を合わせゆっくりと嬉しそうに微笑む。