2020/06/24 のログ
紫陽花 剱菊 > 「……悦に浸るとまではいかぬ。此れは、私の生き方。"宿業"だ。」

民草を護る刃。
人に非ず、刃で在る男の有り様。
ある種、公安組織に身を置くのもそう考えれば必然だったかもしれない。
其処に、少女の言う楽しみは無い。
果たすべき使命だ。大層真面目な男だろう。

「双方、顔見知りであったか、此れは失礼した……。」

「女子同士、友垣の間に割り込む気は毛頭無かった。済まなんだ……。」

静かに二人に、頭を下げる。
本当に真面目な男だった。
ゆっくりと頭を上げれば、園刃とあかねを交互に一瞥した。

「……当人が言うなら、是非も無い。」

「……一つ。とある少女からの言伝を承った。其方には、会いたい人物がいるようだが……如何様な人物か?」

臆面もなく、訪ねた。
いざとなれば、そう言う事に躊躇はしないような人物だ。

日ノ岡 あかね > あかねが……目を細める。

「へぇ……それを聞いたってことは、ナナちゃんに会ったのね? ふふ、イイ子でしょ? あの子」

共通の知人……227番の事を仄めかして、あかねは笑った。
以前と変わらない夜のような瞳で、剱菊を見る。

「別に特定の誰かに会いたいわけじゃないわ。昔馴染みに会えたら嬉しいなって……思っただけよ?」

猫が尻尾を揺らすように、軽く身を捩って見せて。

「勿論、そのメッセージを聞いて私に興味を持ってくれたなら……新しい人でもいいしね?」

あかねは、そう微笑んだ。

「どっちでもそれで私に会いに来てくれるなら……『楽しい』でしょ?」

園刃華霧 > 「ン―……」

なるほど、この態度、この言葉遣い。
こちらの……えっとコンギク?だっけ。コイツはまあ堅物ってトコか。
まあ警戒はいらんかな。というか、おまえ言葉難しいんだよ。
アタシの理解できる言語で喋れ。
いや、流石に言わんけど。
ただ、うへって顔だけしてるのは許せコンちゃん。

「なに、コンちゃん知りたいのソレ?
 まアでも、あかねちんの会いタい人物、ナー……
 そりゃ興味深い。愛人? 仇? それトもそレとも……」

無駄に妄想を広げる。
色々と鳴り物入り?で入ってきた期待の大型新人さんだ。
ある意味で、自分の大先輩とも後輩とも言える存在。
そりゃ知らなきゃソンソン。

「は、ン……?
 あかねちん、何? 『楽し』けりゃナンでモいいッてクチ?
 昔なじみはいイの? かっわイそー」

事情は読めない。いや、多分読むだけ無駄な気がする。
これは、多分あかねちんの性質なんだろーって気もする。
ただまあ気になることはとりあえず聞いておく。
知っておいて困らないしね。

紫陽花 剱菊 > 「……宵闇の静寂にて、しどけない姿だった。故合って、彼女の生活を支えている。」

夜の落第街の事を、あの出会いをしかと脳裏に記憶している。
今では彼女の世話を焼く側だ。
小さな命ではあるが、懸命に生きる其れを見過ごす事は出来ない。
あかねの笑顔とは対照的に、男は静かな仏頂面のままだ。

ふと、園刃の方へと視線が向いた。

「……して、紹介が遅れたようだ。私は……、……。」

「こんちゃん。」

なんだその名前は。
男は目をぱちくりと瞬かせた。
異邦人街で出会った少女もそうだが、渾名をつけるにはうってつけの名前だろうか。
其処まで頓着や気に掛ける事ではないが、呼びなれないふわっとした言い方に面を食らっている。

「こんちゃん……。」

二度言ったぞコイツ。

「…………。」

「……私は、紫陽花 剱菊(あじばな こんぎく)。
 如くも無い男ではあるが……呼び名は好きに召されよ……。」

園刃へと一礼。
言動の何から何まで固く、真面目な男だ。
故に、"抜けている"。
つまりヘンな事を言われると弱いぞ!

さて、それはそれとして気を取り直し、あかねの言葉に静かに首を振った。

「あかね……其方が何を以て悦をとするかは、私にはわからない。」

「……が、昔馴染みとは……かつて其方が所属していた、"違反組織"の事か……?」

日ノ岡 あかね > 「『楽しいこと』は大事なことよ?」

くすくすと、華霧と剱菊の言葉にそれぞれ笑う。
月明りも掻き消すネオンの光の中で……あかねは呟く。

「ナナちゃんの面倒までみてくれる生真面目なコンギクさんなら、もう調べてるかもしれないけど……『そっち』の昔馴染みは誰もいないわよ?」

そう、笑う。
『そっち』……即ち、あかねがかつて所属していた所。
『トゥルーサイト』と呼ばれた、違反部活。
風紀委員会執行部の『執行』によって壊滅した……今は亡き違反部活。

「『トゥルーサイト』の生き残りは……私一人だから」

そこの最後の生き残り。
たった一人の残党。
それこそが……日ノ岡あかね。

「昔付き合いがあった他の人達とかを狙っただけ。今のところ不発だけどね?」

園刃華霧 > (ナナちゃん、ネ。なンか共通した知り合い?
 でもコイツラの接点ッテよめンんなー……ま、覚えトコ)

ぼんやりと会話を聞きながら思っていたら、自己紹介。

「紫陽花 剱菊……だと……っ」

戦慄。絶対難しげな字だぞ、コイツ。アタシの直感が告げてる。
そうと知ってれば、アジコンとかつけたんだがな……
いまからお詫びして訂正するか……?
真剣に悩み始める。

「お?」

違反組織のこと言ったぞコイツ
やったー、そこツッコんでったー。
あえて触れてなかったけど、アジコン、ナイスゥー!
まあ、確か記憶じゃ全部ぶっ飛ばしたってことだったが……
残り物があってもおかしくないしなあ

「……ァ―、ま。そッカ……
 ンー……ってこと、は。だ。
 あかねちんは、どっチかってート、『出会い』を求めテる感じ?」

で、まあ……あかねちんは、私一人、と。そう言った。
真偽はわからない。でもあかねちん、そういうところで嘘つく感じはしないんだよな。
ま、アタシの見込み違いならそれはソレ。そういうもんだ。

紫陽花 剱菊 > 「…………。」

あかねの言葉には一理ある。
苦だけでもは人は生きていけない。
哀だけでは人は歩いていけない。
怒だけでは人は死するしか出来ない。
楽しさも一緒くたになってこそ、その人生はきっと満たされるものだろう。

「…………。」

「……触りだけではあるがな……。」

違反活動部『トゥルーサイト』
唯一の生き残り、日ノ岡 あかね。
彼女の口から語れるのあれば、其れが真実なのだろう。
……だからこそ、そう見えてしまうのか。
男は静かに、首を横に振った。

「…………?」

ふと、園刃の方を見やった。
何かに戦慄している。
果たして、自らの名に何か問題があったのだろうか。
……よもや、かつての自らは、何か問題になる程の人物だったのだろうか。
ともすれば、彼女もまた治安を維持する人間か。
申し訳なさそうに、園刃にまた頭を下げた。

「……申し訳ない……。意図せずとして、此の身は潔癖とは言えぬ。
 辺りを払ったつもりではあるが、因果を含めているなら立つ瀬も無し。
 私の汚名は、行動にて雪ぐ心算故に、此の場はあかねの事も含めて、如何かご容赦して頂きたい。」

お堅いと言えばそう
男はドが付く程真面目だった。
圧倒的勘違いから始まった事だが、彼女が風紀か、同じ公安で在るならば
此方も敬意を、意を示すべきだと思ったからだ。
……実際無名の風来坊。
実際風紀の世話になるような真似はしていないはずの男なので
風紀委員会に紫陽花 剱菊なる情報は恐らくないだろうが……。


「……"出会い"……。」

園刃の言葉に、静かに上げた顔が、あかねを見た。
楽しそうに、笑ってる。
人の心を覗けるほど、男は器用ではない。
だが……嗚呼、そうだな。
あれだけ楽しそうだったはずの、彼女の笑顔は……

「秋風が立っている……『寂しい』のか……?
 其方は、"何処にいる"?此方か、彼方か?」

男は静かに、問いかける。

日ノ岡 あかね > 剱菊の言葉に。
あかねは……深く、深く……薄い笑みをその相貌に湛えて。

「……『寂しい』わよ? 私はいつだってね」

囁くように、返答する。
微かに目が細まる。
夜風が静かに吹き抜ける。
その夜風で緩やかに髪を揺らしながら。

「だから、『出会い』は当然……多い方がいいのよ」

あかねは……笑う。
その笑みはいつも通りの笑み。
その笑みは以前と変わらぬ笑み。
月明りを受けて咲き誇る……月下の笑み。

「私が居る場所は……此方でも彼方でもない」

あかねは笑う。
夜の瞳を剱菊に向けたまま。
宵の瞳を華霧に見せたまま。
日ノ岡あかねは。

「私の居る場所は……『私の居る場所』」

ただ……笑う。

「私はあかね……日ノ岡あかね……だから、私が居る場所はいつだって……『日ノ岡あかねが居る場所』よ?」

そして、踵を返し。
そのまま、歩いていく。
何処へなりとも。
野良猫のように。

「また、会いに来てね。待ってるから」

ただ、その髪を揺らして。
音もなく。

ご案内:「歓楽街」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
園刃華霧 > 「ま、アタシも楽シいは最高、デ生きてるしナ―。
 アジコンに、わっかルかねえ?」

さっきから、ダイヤモンドか何かかってくらい固い男を横目で見つつ言う。
あかねちんの意図は、まーよーわからんけど、方向性は嫌いではなさそうな気はする。

「……そンなだカらアジコンなンだぞ、おまエ。
 ちょっト、肩の力をヌけ。聞いてテつかレる。」

コンギクに対してさらなる追い打ち。とても理不尽な言い草だった。
意地の悪い顔をしている。

「……ソ。そレが、あかねちんノ想い、ネー。
 アー……コレ、色ンな意味でやリにキぃなァ……」

私が居る場所は……此方でも彼方でもない
私が居る場所はいつだって……『日ノ岡あかねが居る場所』

その二つの言葉を脳内で反芻する。
なるほど、自分にいい場所を作っていく手合かな?
……嫌いじゃないんだよなあ

「ハ。ンじゃ、まタ。会いニ行く……じゃ、なク。来てもラいまショーか、ね。
 アタシはめんどうがリだかラ、こっちカら行クの、ヤなんだヨねー。
 ……やー、ヤでも今度会いそウな気もスっけドさー」

へらり、といつものだらしない笑顔を浮かべる。
まあ、どうせなるようにしかならないし、
自分には何かを変える力なんてないのだ。たぶんきっと

紫陽花 剱菊 > 「…………。」

『日ノ岡あかねが居る場所』
自らの存在意義を確立させる言葉なのか。
或いはそれは……。
男は去り行くあかねの姿に、静かに手を伸ばした。

「────立秋の陽炎……。」

季節外れの陽気に揺れる、影のように。
男にはそれが、"どこにもない"ように見えてしまった。
追いかける真似はしない。
伸ばした手も、届かない。
人は陽炎を、ましてや刃も夢幻を斬る事は出来ない。
ぐ、と強く拳を握りしめ、腕を下ろした。

「……私に享楽的生き方は分からぬ。心の底も読めぬ。
 然れど、暗れ惑うのであれば、其れを見過ごす事は出来ない。」

大きな流れのまま、民草のまま刃を振るった。
不器用な生き方をしてきた男には
彼女達の考えは今一腑に落ちない。
勿論、理解する努力はする。
それはそれとして、其れが本音でなければ手を差し伸べたいと思った。
男の心根は、太平の世を願う、お人好しなのだ。

「あじこん……。」

なんだか知らないが、また妙な渾名が増えている。
男はじ、と園刃を見つめる。

「……忖度し難き渾名だ。私は、大根と相違なく見えるか?」

真顔で問いかけてくる。
まさか自分が大根に似ていると本気で思われてると勘違いしているようだ。
肩の力を抜けと言われると、ぐでぇーっと両肩が下がった。
真顔のまま。
違う、そうじゃない。

園刃華霧 > 「あの手ノ手合は、真面目サンが相手するト疲れルだけダと思うけどネ―。
 ま、関わりタきゃ好きにシな?」

見過ごすことは出来ない、と男はいった。
これは簡単に曲げられるものでもないだろう。
そもそも、そんな義理もないしね。
やれやれ、ご苦労なこった、と心のなかでお手上げポーズ

「ヤ、見た目ならナスかキューリのが近いンじゃナい?
 大根はナいから安心しテ。良かったネ」

何も良くはなかった。
すでに好き勝手言いたい放題である。

「ァ―…武士っぽいクセに、そーユーとこ、言葉通り受ケとルなヨ。
 アれだ、えート。悟り? いヤちがうカ。まあ、アレだ。
 心に余裕を持つ、トか? そンなのコトだヨ」

両手をだらん、とさせる男に、あちゃーって顔をしてみせる。
だめだこいつ、はやくなんとかしないと

紫陽花 剱菊 > 「……成すべき事がある。民草の笑顔。彼女もまた、此の島の一つで在れば
 先に出流が底の国で在ろうと、歩みを止める心算は無い。無論、其方も同じ。
 何か在れば、刃は直ぐにでも抜かれる……。」

どの様な暗闇にいても、其処に苦しむ人あれば
困っている人がいれば、其処に行かずにはいられない。
地獄の底だろうと、躊躇なく飛び降りる。
勿論それは、あかねだけではなく、万人向けられる感情だ。
園刃もまた、其の一人と男は言う。

「なす。きゅうり。」

自らの全身をくまなく見る。
……言う程にているだろうか……。
男は訝しんだ。

「……我が心、明鏡止水。御心配はご無用だ。其れよりも……。」

「なすやきゅうりに似ていると言うので在れば
 然るに『なすぎく』か『きゅうぎく』ではなかろうか?」

男は訝しんだ。
明鏡止水 #とは

園刃華霧 > 「やレやれ、そリャまタごたいソ―な想いデスこトー。
 人間なンざ、目の前ノ範囲ができルことの限界ダと思うけドねー。
 ま、せーゼーとりこボしテ、泣かンよーにナ?」

無理無理、アタシには無理。
そんな口調で、だらーっと話す。
自分には自分の届く範囲しか出来ないのだと。
かぎりはかならずあると。

「そレならソれで、改名したラ?
 とユーか、別にアタシ、野菜のつモりで言っテなイんだガ……」

根本的な部分でのツッコミを入れた。
まあたまたま野菜っぽいイントネーションにはなったが、単に名字と名前を合体させただけなのだ。

紫陽花 剱菊 > 「────……嗚呼。」

多くを取りこぼした。
かつて、自らの世界で、国で、多くの命を斬り捨て
多くの救える命をこの手に取り零した。
限りある事は、この身が既に知っている。
だが、理想を語らずにはいられない。
夢想家ではないものの、叶えられるなら、それがいい。
そんな静かな、頷きだった。

「…………。」

「……野菜の心算で申したのではないのか……!?」

男の顔が驚愕に染まる。
何言ってんだお前。

園刃華霧 > 「……」

コイツも、なーんか鬱屈したもん持ってンなー。
堅物ってだいたいそうだよネ。
静かな、間をおいた頷きにたいそう失礼なことを思う。
肩の荷はなるべく少なくする、それが人生を楽に生きるコツだと言うのに。
どうしてコイツラ、好き好んで背負ってくんだろうね。マゾか。

「や、逆になンで野菜だと思ったシ。
 つながりナさすぎだロ。落ち着ケ、冷静になレ。
 そーゆーノが、余裕ナイってンだ」

散々人をネタにしておいて酷い言い様であった。

紫陽花 剱菊 > 「…………。」

すぅー、静かに息を吸い、息を吐いた。
よし、落ち着いた。
何処となく顔はキリッとしている。(※仏頂面)

「……失礼、些か心を乱していたようだ。其れは認めよう……済まない……。」

一礼。

「…………だが」

「私は……なすやきゅうり、大根よりは白菜のが好みだ。」

誰もお前の好みの話してないが大丈夫か?
何したり顔してんだ、お前?

園刃華霧 > 「……よシ、だいぶトンチキだナ?
 いいゾ、その調子ダ」

あまりに外れまくった反応に、一瞬止まる
そして、げらげらと笑い出した。
堅苦しいより、トンチキな方がよほど良い。
いや、こいつさっきからチラホラとトンチキかまシてたケド。

「よシ、わかっタ。
 つマり、こうイうコトだナ?
 今日から、『ハクサイ』と呼べ、ト」

両手をあげ、どうどう、とでも言いたげなポーズをとって……
こちらもしたり顔で答える。
なにもわかってないのでは?

紫陽花 剱菊 > 「頓痴気。」

果たして自分はそこまでして妙な事を言っただろうか。
男を首を傾げ、訝しんだ。
大分阿呆な事言っているのは間違いない。

「…………。」

「いや、私は剱菊だが……?」

其方は何を言っているのだ?
男はなんだか、可愛そうなものを見るような目で、少女を見た。
突然の裏切りである。

園刃華霧 > 私は剱菊だが……?
……こいつ、ここでハシゴ外してくるか?
マジか、まじなのか。どういう神経してるんだ。
しかも、なんかむかつく目でみてくるし。
そこは乗るところだろうが、許さん。
かぎりは ふくしゅうの こころを てにいれた

「あノなー。さっきカら、アレばダメ、これはダメってダメだしシて、
 ハクサイが好キって言いダしたのはソッチ。
 だから、アンタはハクサイ。OK?」

なにもOKではない。理屈も通っているのだか通っていないのだか。

紫陽花 剱菊 > 「…………。」

男はいたって真面目であった。
問答に至って真面目に答えていた。
真面目に答えた結果此れだった。
即ち、阿呆である。
本人は"さもありなん"みたいな顔をしているが更に腹立たせる部分かもしれない……。

「…………。」

「……私は其方の事を良く知らぬ。然れど、決して其方が落第とは思わない。
 所感ではあるが、けだしに居住まいが悪い。女子のする髪型ではない。
 折角の美人が台無しだ。然るに、先ずは髪型を……ふむ、丁度額が出るような、其方の良い顔が目立つ物が良いだろう。
 個人の好感なれば、私は其の良い肉付き(戦闘的な意味で)の肉体は大変好ましく思う。」

「其れと、私は剱菊だ。」

少女は駄目だしをされていたらしい。
何を申す、ととにかく少女を褒めた。
明らかにずれた観点で。そもそも微塵もダメだしした覚えはないので、しょうがない。
とんでもない男である。白菜もしっかり断った。
人は完璧ではない。何かしら欠点はある。
この男も、人として見ればその欠点は数知れず。
そのうちの一つは……。

──────致命的にデリカシーに欠ける。

園刃華霧 > よし、よくわかった!
こいつ、アホだ。
間違いなく底抜けのド阿呆だ。
皮肉も冗談も通じないってマジでやりにくいなこれ!

「…………」

そして、男の口から出たのは余計なお世話だった。
まあ元々人からどう見られてるか、なんてさして気にしなくはあるんだが。
こうクソ真面目に指摘されるのはムカつく。

「ァ―……そうくる?
 あのナぁ、ミスターブシドー。コンちゃん、アジコン。
 女の肉体につイて、堂々と本人の目の間でアーだこーダいうノって、犯罪ダって、知ってル?
 詰め所、いっちゃウ?」

いわゆるセクハラってやつだナ。
別に気にしちゃいないけど、脅し要素としては機能するだろう

紫陽花 剱菊 > 「……?」

男は怪訝そうに眉を顰めた。

「……何故?私は其方の良い所を上げたに過ぎない。
 其の肉体は、其方の堆い研鑽の結果でだろう。
 誇りに思って然るべきだが……。」

そう、飽く迄善意なのだ。
男は善意を口にしている。
タイミングが非常にかみ合っていない。
だが、そんな男も一つだけわかる事がある。
────このままだと詰め所どころか、此処で締め上げられる…!
些か納得はいかないが、此処は……。

「…………。」

「然らば、御免。」

くるっ。
踵を返してダッシュで逃げた!
なんて男だ。無駄にフィジカルエリートなので早い。
かくして、追いかけられるかは分からないが、男は夜の繁華街を駆け抜けていくだろう……。

園刃華霧 > 「アっ、野郎逃げやガッた、最低だナ!?」

割と想定になくもなかったが、真面目ヅラしておいて
あっさり逃げる選択肢をとるとはなかなか腐れ外道だな、コイツ

「まー……いっか。
 はい、おーしマイっと。」

やれやれ、と肩をすくめる。
別に怒っちゃいない。まあ別でムカつく要素はあったわけだが……
そこはソレ、いまのでちょいと脅して借りは返せたと思うのでオールオッケー。
あんなフィジカルモンスターとマジで追いかけっ子とか、ナイナイ。

「まー、よっぽどガチで怒らセたら別だローけど」

ぼつ、とつぶやく。
まあ基本ものぐさなので、それを覆すほど怒らせるやつなんて激レアだろう。
こちらはゆうゆうと帰ることにした。

ご案内:「歓楽街」から紫陽花 剱菊さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」から園刃華霧さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」に矢那瀬陽介さんが現れました。
矢那瀬陽介 > 日が暮れても燦然と輝くネオンが眩い街並みを一人歩く。
昼間の蒸し暑さとは別の賑わう人の熱気に撫でられる頬は緩んで
微笑みを浮かべて健啖とした歩みで通りを歩いていた。
周囲に見えるのは学校帰りの学生、のみならず大人たちも。
壮麗な建築された店が片寄せ合うショッピングモールは商店街とは一味違う。
魅惑的な衣服やレストランから届く匂いは興奮を。
またその合間の路地裏は闇凝らせたように危険な匂いを放つ様に緊張を。
双方を綯い交ぜに柔らかな黒髪を揺らめかせて歩いていた。

「どこか、面白いところ、あるかな」

NPC > 「学術大会に何時いくよ?」
矢那瀬陽介 > 雑踏、ざわめき、に交えて届いたどこからか聞こえた声に
淀みない歩みが止まる。
声の主の方を見れば学生服を来た人集り。
遊びに呆けていた己の胸に突き刺さり笑みが苦々しく口角を下げてしまう。

「んー、俺も何か披露したほうがいいのかな。
 でも、どうやって見せればいいんだろ?
 投げ飛ばす訳にはいかないし」

通りの中央を進んでいた足もやがてよろよろと隅の方へ。
ベンチに腰を下ろして小さく溜息を零した。
嬉々とはしゃぐ街並みの賑わいが瞳に映る度、ちくりと胸に刺さる焦燥――

矢那瀬陽介 > 「んー。今から真剣に頑張って間に合うかな?
 為る様になって、為る様にしかならないよな」

膝の反動を活かしてしなやかに腰を持ち上げれば
そんな楽観的な詞と共に晴れ晴れしく笑った息を吐き出した。
その後は元のように夜の街を堪能して帰宅したことで。

ご案内:「歓楽街」から矢那瀬陽介さんが去りました。