2020/07/10 のログ
ご案内:「歓楽街 とある廃ビル」に水無月 沙羅さんが現れました。
ご案内:「歓楽街 とある廃ビル」にNullsectorさんが現れました。
水無月 沙羅 > 「えーっと…………、たぶんここら辺、でいいはず。
 よいしょっと……っ!」

爛れた夜の街、そんな印象がある歓楽街だが、にぎわっている区画であればそうでもない。
問題なのは人気のいない路地裏とか、そういう危ない区画があるっていうだけ。
今回は、ちょっと所用で情報屋さんというものにコンタクトを取りに来た。
理由は一つしかない、日ノ岡あかねの目的について調べようという算段で……。
正直風紀委員でも把握していないことを把握していられるのか、という疑問は無きにしも非ずだが、情報屋だというからにはそれなりの伝手もあるのだろうと期待するほかない。

廃ビルに、肉体強化の魔術を使って窓から入り込んだ。

Nullsector >  
窓から飛び込んだ先、薄暗い廃ビルの中。
ブルーシートで覆いかぶされた何かや瓦礫に埋もれたインテリアたちの奥に薄ら光るホログラム光。
そこにいたのは、ぼろぼろの椅子に腰を下ろした白衣の女性だった。
気だるそうに背もたれに身を預け、胡乱な常盤色がホログラムモニターを見つめている。

「……水無月 沙羅……。」

常盤色の瞳が、少女の方へと映された。

「あたいを呼びつけたのは、お前で間違いないね?」

水無月 沙羅 > 「あ、はい。 そうです。 よく一発でわかりましたね……? まぁ、こんなところに来る人もそうはいませんか……そういう場所を選んでるわけですし。
はい、水無月沙羅です。」

初対面といえど、素性のよくわからない人物と言えども礼儀というのは必要だ。 軽く会釈をするように挨拶を。
なんだかホログラムっぽいものがふわふわ浮いているように見える。異能なのか、それとも私の知らない何かのシステムの産物なのか。
まぁそこら辺は私にとってはどうでもいいことだ。

「そちらは……Nullsectorさん、で構いませんか?」

本人確認は大事……万が一危ない人とかだったら洒落にならない。
逃げることも考えないといけない、この身は意外と人に追われやすいというのは少しは理解してるつもりだ。

Nullsector >  
「別にあたいは何処でもいいんだけどね。ま、あたいから買い物をする連中が……後ろめたいっていうのは理解するけどね?」

言ってしまえば、情報なんてものはただのプライバシーだ。
人様の領域に土足で踏み込もうと、覗き込もうとするのなら
多少良心があるか、バレたくない事情があるか。
何れにせよ、"訳アリ"連中ばかりだ。女は多少客は選ぶが、情報の選り好みはしない。
懐から取り出した煙草を咥えれば、溜息を吐いた。火はつけない。

「……代理人『Nullsector』……間違いないよ。」

Nullsector(ヌルセクター)。
何もない領域、そこを参照すれば必ず何かしらのバグが起きるコンピュータ用語。
その証左と言わんばかりに、ホロモニターを人差し指がスライドする。
すると、沙羅の周囲に無数のモニターが展開された。
そこに映るのは学生街、或いは異邦人街、はてまた時計塔か。
何れにせよ、多岐に渡って島の景色が映し出されている。
"何時でも見ている"。
そんな情報を、何よりも情報を集めているという証拠を雄弁と突きつけた。

「……それで、どんな情報が欲しいんだい?」

周囲のホロモニターが消え、気だるげな声音が訪ねる。

水無月 沙羅 > 「噂にたがわぬ情報網……というわけですか。 一見は百聞にしかず、とでもいいたいんですかね。
 いえ、実力のほどはよくわかりました。
 本来なら風紀委員の一員として対処するべきなんでしょうけど。
 今日ここにいるのは水無月沙羅個人としてですので……安心してほしい、というのは虫がいいでしょうか。」

見られるのはちょっとだけ恥ずかしいな、とでもいうように苦笑いを浮かべながら、身だしなみに不手際がないかを確認する。
スウェットにデニムパンツという、場所を選んだ服装で来たつもりではあるだが。

「はい、えっと……ちょっと危険な人物の情報を集めるのに、私一人の脚では間に合わないだろうと思いまして……。
 日ノ岡あかね、彼女についての、風紀委員が確認している以上のデータがあるのでしたら。」

と、内容を切り出す。 本当であれば自力で調べたいし、何なら摘発したいのだが、生憎先輩に手を出すなと言われてしまったし、調べるにしても足がかりがない。
そこで不法侵入者らしき、怪しい人物であろうと利用すべきだろうと判断したわけで……。
でもこの人、綺麗だな。

Nullsector >  
「一々疑われるのも面倒だからねぇ……ああ、安心しなよ。別に"馬に蹴られる"ような事をしようって思う程、野暮じゃないよ。」

技術的進歩が目覚ましい今日、情報というのは強力な武器である。
何時の世も、技術を悪用する人間はいる。目の前の女がそうだ。
それを悪びれるそぶりもなく、寧ろ彼女のプライベートを知っているかのような口ぶりだった。

「対処、ねぇ……。」

煙草の先が上向きになる。

「それ、誰のための生真面目なんだい?自分?組織?他人?
 何でもいいけど、一々立場を振りかざすのは止めておきな。嫌な奴だよ。」

己が如何なる人物かは己自身が良く理解している。
れっきとした犯罪者。だからこそ、どんな"覚悟"もしている。
それ以前に、彼女は個人で会いに来ているといった。その前起きで立場を振りかざすのは
どういう意図であれ嫌味、それ以上に威光の影に隠れる矮小な人間にしか見えない。
フン、と呆れたように鼻を鳴らした。

「言っとくけど、これは忠告。お前がどう言う事するか知らないけど
 あたいみたいな犯罪者相手にするなら、変に逆上されていたい目みるよ。」

まぁ、要するにお節介。
煙草の先が下向きになった。

「…………。」

「あれは、大層な人気者だねぇ。これは誰でも聞いてる事なんだけど、お前。それしってどうするつもりだい?」

胡乱な常盤色がじっと相手の瞳を覗き込む。
淀んだ色は、女自身がいる立場を表しているかのようだった。

そして女は、おもむろに人差し指をくいくい、と曲げる。
沙羅によっといで、と言っているようだ。

水無月 沙羅 > 「ぁー……そういう風に聞こえる、というご忠告……でいいんですか?
 わざわざ、ありがとうございます。
 そういうことなら今後こういうことがあったなら気を付けますね。
 正直、ここに来るのも怖くないわけじゃないんです、前に落第街の方でそれはもう怖い人に逢いましたから。
 はい、肝に銘じておきます。 案外優しいんですね。
 ところで、馬にけられる……ってなんですか?」

残念なことに、非常に残念なことに沙羅にはそのあたりの皮肉、とか、ちょっと口の悪い言い方、というのは大体フィルターが通される。
もともとの彼女の性格、というのも大きいが、何よりあの堅物彼氏の傍にずっといるのだ、それぐらいできなければきっと一緒にはいられない。
要するに、わざわざ助言をしてくれるいい人にしか映らないわけで。

お礼を言って実に子供らしく微笑むのだ。
ついでに言えば、そっち方面の言葉にも非常に疎かった。

「どうするつもり……ですか? 調査をしたいだけです。
 手を出すな……と一応言われてしまってますから。
 でも、……どうしても気になるんです、なんだか、いやな予感がして。
 それではいけないでしょうか?」

聴くからには、聴くなりの理由があるのだろう、情報屋としてのプライドとか、そういうのが。
沙羅にはよくわからないが、わからないからこそ不安にもなる。
情報貰えなかったらどうしよう。

Nullsector > 「……お前、"プライベート"で会いに来てるんだろう?組織の名前は口に出すもんじゃないよ。例え、相手が知っていてもね……。」

言霊なんて言葉もある位だ。
人間、結局の所言葉に出さなきゃ伝わらないし、意図だって完璧に伝わる訳じゃない。
特にピリピリした連中なら、わざわざ言われるという事は威圧を覚えてもおかしくはないだろう。

「…………。」

煙草がぽろりと、口から落ちる。
此れでもかという程表情からは呆れが見える。コイツ正気か?と語り掛けてくるレベルだ!

「常識知らずに加えてお前も朴念仁かい……。」

「神代 理央について今から一分間語ってみな。とりあえず、情報も調査もその後だ。」

>突然の一分間スピーチ<
はいよーい、スタート。

水無月 沙羅 > 「え、え? え?
 えっと、先輩は取っても親切で優しくて、口が悪くて横暴で薄情で、こわくておっかなくてついでに短気で。
 あ、でもでもお菓子を食べてる時は子供みたいにかわいくて、ぎゅってしてくれるとあったかくてやさしくて、あ、あとなんかすっごいおかねもちらしくておっかないです。
 鉄火の支配者っていわれてすっごくつよくてたよりになるけど正直あの火力量にたいしてちょっと油断しがちっていうか防御がお留守っていうか近づけば私でもコロッとやれそうな心配があってですね、だから傍で守ってあげないという庇護欲が、あ、決して弱いとかそういうことじゃないんですよ?
優しくて強くてかっこいいのが先輩のいいところですから。
あ、でもあの怖すぎるめつきとごかいされそうなげんどうはひかえるべきだとおもうんです、なかまうちのふうきいんからもへたすればごかいをうけてるとかもうあのひとはなにをしているんだか……」

慌てて言われるがままスピーチを始めるが……止まらない、止まらないマシンガン。
あいたたたこの子眩しい。
相手が相手ならとんだ情報漏えいでしょっぴかれる。

Nullsector >  
「煩い。」

ぴしゃり。理不尽だ!
落ちた煙草を拾い上げ、白衣のポケットに無造作にねじ込む。

「……つまり、好きなんだろう?神代 理央という人間を愛してる。独占したい。傍に居たい。」

「相手の事をよく見てる、目を離せないって言うのは強い"執着"がないと出来ないよ。」

但しその"執着"は必ず愛とは言わない。
少なくとも自分が"視た"中では、水無月沙羅のものは愛であるとはいえるかもしれないが。
ふ、と笑みを浮かべればそっと沙羅へと手を伸ばした。

「いいかい?そう言う仲を面白がってからかう連中がいる。」

「一人二人なら鬱陶しいかもしれないけど、度が過ぎると腹が立つだろう?」

「そう言う連中は、"馬に蹴られて欲しい"って思う位にムカつくってことさ。」

わざわざ分かりやすく解説してくれたらしい。
伸ばした手を拒まないのであれば、優しくその黒髪を撫でてくれる。
細い指先が慣れた手つきで優しく、あやすような撫で方だ。

「ああ、勿論からかってくる奴は適当にひっぱたいていいよ?『これは私のだ』」

「……そん位やって上等、さ。もうやってるなら、余計な口出しだと思って流しておきな。」

女は強し。そう言う教えだ。

水無月 沙羅 > 「理不尽!?」

おこられた、なんでぇ???

「まぁ、えっと……そうですね、愛してると思います。 はい、私は先輩を愛してます。」

それはもう清々しい照れた顔で肯定してくる。
伸ばされる手を以前であれば、恐怖と相手を汚すという嫌悪感で払ってしまっていたが……。
ここ最近沙羅はどういうわけか、これを拒めずにいた。

優しい手つきに目を細める、母親に甘えている子供の様に。

「なるほど……覚えておきます……暴力は苦手ですけど。」

恋路を邪魔されたら、確かに嫉妬、というやつはするのだろう。
多分私は人以上にそれは大きい気がする。
執着も、たぶん強い……そこまで相手を忌避するつもりにはなれなさそうだけど。

風紀委員の任務として、何度か暴力を振るったことがあるが、
どうしてもあの感触が沙羅には馴染めずにいる。
肉を打つ、あの拳に伝わる痛みは、どういうわけか心に来るのだ。

Nullsector >  
「だろう?なら、そう言う事さ。」

「別に殴る蹴るだけじゃないさ。適当に言葉を吹っ掛けるだけで、充分。」

言葉の刃とはよく言われるものだ。
場合によっては、物理的暴力より聞く。
少しばかり、笑みに寂しさが混じる。

「……でも、その通りだねぇ。暴力も暴言も、無い方が良いのは間違いないよ。」

平和であれば、些細な平穏であればそれでいい。
煤けた女の奥の本質は、とても穏やかで、優しき母性だった。
ぽんぽん、と優しく頭頂部を叩いて、最後にからかうように額を二本指で小突いてやった。

「まぁ、そうも言ってられないのがそう言うご時世さね。けど、苦手は苦手のままで言うの。」

「そう言うのはね、克服しない時がいいって時があるのさ。」

暴力も暴言も、痛みを感じるからこそ人は優しさを忘れない。
慣れると言う事は、他人の痛みも忘れてしまうと言う事。
自分の様に、人を道を踏み外す。
コッチに来てはいけない。暗がりの向こう岸にいる、虚数からの忠告。

「さて、日ノ岡 あかねの事、ね……、……。」

無造作にねじ込んだ煙草をポケットから出す。
無理矢理ねじ込んだせいで、すっかりひん曲がっている。

「……あれはねぇ、お前等が思ってるよりも純粋だし、沙羅。お前と何ら変わらないんだよ。」

「あたいは情報屋。対価さえ用意してくれれば、勿論何であっても用意はする。」

「けどお前……"馬に蹴られる覚悟"位はあるんだろうね?」

「自分が逆の立場だったら、どうする?」

「"神代 理央"の立場を確実に崩しかねない情報を教えろと言う奴があたいの目の前にいる……。」

「……アンタは、どうするんだい?」

今彼女が聞こうとしている日ノ岡 あかねの情報とは、彼女の核。
それと同じように、彼女が大切なもの、愛の執着を崩す情報を求めるものがいる。
女の目から見ても、神代 理央という人物は人に恨まれて当然だろう。
そう言うケースもある。そう言う仕事も、したことがある。
だが、彼女がしようとしているものはまさに"そこだ"。
情報とは武器だ。つまり、簡単に人を殺せる。
今、暴力が苦手と言った少女が手に取ろうとしている者は
"日ノ岡 あかねを殺せるかもしれない武器である"。
その手に殺人を意識しろ、それとも、そんな覚悟もなくそれを手に取るのか?
細く、見据える常盤色の瞳。
ぐっ、と握りつぶした煙草の破片が、女と沙羅の間にパラパラと落ちてくる。
まるで、それは今飛び越えようとしている"一線"のようだ。


憂いを帯びた常盤の双眸は静かに語る。


『────アンタはコッチにきちゃ、いけないよ。』


口には出さない。
けどそれは、情報屋として客を選ぶ"最低な行為"に違いない。

水無月 沙羅 > 「あたっ……デコピンも最近多いです……。」

なんだか、私の扱いワンパターンじゃないですか?
とちょっと口をとがらせている。

「……みんなお母さんみたい。」

寂し気な女性を見て、似たような顔をした時計塔の少女のことを思い出した。
あの子も、どこか寂しげな表情をしていた気がする、無くしたものを自分を通して見ているような、そんな眼。

「苦手なものは、苦手なまま……風紀委員としては、あまり褒められたものじゃないのかもですが……あ、これは言っちゃいけないんでしたっけ。」

言ってから口を抑えた、懲りない。

「……。」

呆然とする、出てくるとは思ってもみなかった拒絶の言葉に、しばし言葉を失った。

「……あの人も、自分の守りたいもののために戦ってる……そう、言いたいんですか……。」

自分と彼女は違う、口に出したくもなる。
自分の大切な人を侮辱した人間だ、そうも言いたくもなる……が。
確かに彼女の言からは、そういった『執念』が感じられたのは間違いない。
終始ふざけているようにも見えたが……あれは猫を被るというのだろう。
ふざけている……、そう思わなくもない。

「……私は、思い知った事があるんです。」

「私、人殺しをしました。 数え切れないぐらい。」

「薬で精神を鈍らせて、痛みと心を殺して、でも。」

「初めて自分で誰かを殺してしまった時、すごく怖かったんです。」

少女に銃弾を撃ち込んだ瞬間、少女が血だまりに倒れた瞬間。
確かに自分はそれに恐怖していた。
だからこそ、私は異端のままで居るべきだったのかもしれない。
心無い、不死身の化け物のままの方が、幾分楽だったのかも。

「…………。 でも、理央さんが……死んじゃったら……どうしようって、思ったら……もっと怖くて……。」

しゃがみこんで、思わず涙がこぼれ出る。

「危ないことだから、きっと何かあったらあの人は行ってしまうから……、もう帰ってこなかったらと思うと……怖いんです。」

だから、そうなってしまう前に止めたかった。
沙羅はそう零した。

Nullsector >  
「アンタは子ども、当然だろう?誰がお母さんだい。次言ったらしばくよ?」

大人が子ども褒め、甘やかし、そして叱る。
そうやって子どもは正しく成長していく。
女は大人というものがどんな存在か弁えているつもりだ。

「……別に、風紀委員って、人殺し部隊じゃないんだろう?そりゃぁ、現場職に荒事はつきものだけどさ。」

「アンタにゃアンタのやり方があるはずだよ。暴力に頼らずともね。」

それを模索するのも人間だ。
そのヒントを上げる事は出来ても、道を示す事は出来ても
選ぶのは当人次第。
だから女は、これ以上何もいいはしない。
そのやり方を見つけるのは、水無月 沙羅にしか出来ない事だ。

女は椅子から、ゆったりと立ち上がる。

「……守りたいもの、とは違うけどね。」

泣き出した、泣き崩れてしまった少女の傍へしゃがみ込む。

「アンタが泣いちゃう程の存在が日ノ岡 あかねにもあるってことさ。」

事情は人それぞれだ。
だが、日ノ岡あかねがそうであることを
日ノ岡あかね自身が口癖のように『選んで』いるのだ。
水無月 沙羅が神代理央に縋るように、彼女にも執着するものがある。
女は情報屋である以上、それを売るのは吝かでは無いが……。

「──────馬鹿だね。」

「何をしたって、人を殺すのは怖いんだよ?当り前じゃないか。……ねぇ」

「"怖かったね"……もういいんだよ?怯えなくても。」

"人である以上、目の前で泣く少女を放ってはおけない、諭さずにはいられない"。
泣いて蹲る背中に、そっと細い両腕を回す。
払うも拒否するも、如何様にも出来る。
抱きしめられれば、きっと暖かな女の体温に包まれるだろう。
なんて小さな背中なんだい……、と内心独り言ちるかもしれない。

「……神代 理央、ね……子どもは親を選べないからねぇ、歪んじまったのも、仕方ないかもねぇ。」

それは一度、子を授かったが故の同情心か。

「そんなんでも、あれもまだまだ"ガキ"であって"人間"さね。色々と経験して、学んで、悩み始める。」

「……あたいが見る限り、転機はすぐそこだ。そして、問題は"そこ"。自分のやった事の重さをね、どう自覚するかって次第だけど」

「もし、あの子が真正面から受け止めちゃったら……潰れちまうだろうねぇ。」

人の抱えられるものには限界がある。
それを業と例えるのであれば、神代 理央が背負うべき業は
大よそ人一人が受け止めれるものではないと女は推察する。
死ぬかどうかはさておき、その瞬間『神代 理央』という人間が呆気なく終わりを迎えるだろう。

「……沙羅、アンタはアイツの傍にいるんだろう?それとも、いる"つもり"かい?」

「まぁ、どっちでもいいんだけどね。アイツを死なせたくないなら、傍で支えてやりな。」

「他の女や連中に目をかけずに、アイツを生かしたいだけなら、支えるだけで充分さね。」

「……幸いあのガキは、周りには相応に恵まれてる。押しの一手は、アンタだよ。」

「"神代 理央の全てを背負って、隣で歩いて行ける自信はあるかい?"」

心の真が彼を死なせたくない、止めたい、いなくなってほしくない。
だったら、尚の事日ノ岡あかねよりも、何処の誰よりも
彼の傍にいて、彼を見るべきだ。
情報なんかよりも雄弁に、女は人として少女の行くべき道を言葉で示した。
そこを進むかどうかもまた、当人次第。


『選んで』


なんて、皮肉じゃないか。
気に掛けた気に食わない女の言葉が、まさに此処で言われているようなものだ。

水無月 沙羅 > 「……やっぱり、貴方は優しい人です。 口が悪くて、でも、心の底からじゃない。 皮肉ばっかり……まるで理央さんみたい。」

まだ乾ききらない涙を両腕で拭いながら、つぶやく。

「暴力とか、異能で傷つけるとか、本当は嫌いなんです。だから……私はいつも自分を傷つけてました。
それで済むならそれでいい。」

自分の異能ならそれができるから、痛みは与えてしまうけれど最悪の事態はそれで避けられる。 それに甘えていた。

「でも……そうじゃない方法、探さないといけないのかな……。」

それはきっと、理央が歩む道とは異なる、正反対の道。
それでいいのかと、自分に問いかける。
あの、無慈悲なまでの愚直さに憧れたのではなかったのかと、問いかける。
答えは出なかった。

「……ううん。 わたしね、怖いのは失っちゃいけないと思うんです。」

初めて否定する、目の前の女性の優しい言葉を。

「おびえることをやめちゃいけないんだと……思うんです。」

怯えて逃げることは、背中に隠れてるのと変わらない。

「おびえながらでも、怖がりながらでも……おっかなびっくりでも、隣に立ってなくちゃいけないんです……。」

あの人の隣にいたいから。

「理央さんには……本音を言えば、無茶なことをしないでほしい、でも、あのままでいてほしい。
 どっちも本当なんです、でも、でももし、理央さんが変わりたいっていうなら、理央さんがそのまま信念を貫くというなら。」

どちらにしても

「あの人の罪は、私が一緒に背負うんです。 あの人が傷つくのなら、私だって傷つきたい。」

傷つくのは怖いけれど、だからこそ逃げてしまったら、あの人は一人になってしまうから。

「自信なんてないです、私は弱くてちっぽけだから。 でも……丈夫さには、自身があるんですよ。 これでも。」

自身の不死にかけて、ジョークのように泣きながら笑う。
震える腕を握りしめる様に。
自らを抱く女性の温かさを感じながら。

「…………もし、本当にあかねさんが彼のことを傷つけるようなことがあったなら。
 今度は本当に、教えてもらいます。
 でもね、それは殺すためじゃなくて。」

武器は、人がどう使うかによって、意味合いを変えることを、良く知っている。
あの人の異能は、いつだって私を守っていたから。

「あの人を守るために。」

最後に沙羅は、小さい少女は、強がるように笑って見せた。

Nullsector >  
流石にそう言われると、顔をしかめた。

「勘弁しとくれよ……それ、控えめに言って馬鹿にしているのかい?」

あれとは一緒にされたくない、そう言いたげだ。
ハァ、と溜息を吐いて頭を振った。

「……ふぅん。」

トントン、女は沙羅の背中を叩いて、そっと立ち上がる。

「なら、それでいいんじゃないかい?自分で選んだ道なんだ。後悔しちゃいけないよ?」

「ま、一つ付け足しておくなら……『自分が傷つけば済む』なんて考えは止めておく事だね。」

彼女が選んだ以上、そこに口を挟むことはない。
ただ、それを見守るだけ。
間違った事にはこうやって一言だけ添えておく。
大人と子どもの距離感なんて、そんなものだと思っている。
過度にお節介を焼いてもいけない。
彼女の成長には、彼女自身の選択が必要なのだから。

「そうさね……ニクいカップルで、いいんじゃないかい?」

「一緒に傷ついてさ、泥に塗れて……それで、一緒に笑えるくらいで。」

レンズの奥で、少女を見下ろす女は言う。
とても穏やかで優しく、子どもを見守る母の様な眼差し。

「でもねぇ、一つだけ人生の先輩として言わせてもらうよ。いいかい?」

「"寄り添う"だけじゃいけないよ。女って言うのはね、我儘な位が丁度いいのさ。」

「男がアホをしたら引っぱたく、男がバカしたら叱りつける。……それで、甘える。」

「傍にいるだけなら、誰にでもできる。"水無月 沙羅でなきゃいけない理由"はちゃんと彼にアピールしておきな。」

自分じゃなきゃいけないという女のアピール。
恥じる事はない、それが自分のものだと言うのであれば
しっかりとアピールして、"二人で歩く道"を示してあげなきゃいけない。

「……ま、やりすぎは良くないけどね。」

勿論、我儘のし過ぎはただの毒。
女は静かに踵を返す。

「……その時は、対価と引き換えに教えてあげるよ。……"その時"はね。」

何か引っかかる物言いだが、視線だけ後ろに向けて一瞥する。

「ちょっと、喉が渇いちゃってね。付き合いなよ、そこにさ。良い店知ってるから。」

そのまま彼女についてくるように促す。
素直についてくるのであれば、ちょっとした静かなバーで
静かに酒を嗜む。当然、未成年の沙羅にはジュースを奢ってあげるのだ。

水無月 沙羅 > 「私にとっては、最大級の好意のつもりなんですが……」

おかしいなぁと笑い。

「……うん。 みんな、そうやって私に、教えてくれるんです。
 少しづつ、一つづつ。
 だから、私強くなります。
 もっと、強くなる。
 力じゃなくて、もっと大きな意味で。」

傷つくだけでは、身を挺するだけでは、守れないのが心だから。

「わたしは、いつだってわがままですよ? だってほら。」

立ち上がって、黒い髪を世風になびかせながら少女は不敵に笑うのだ。

「私はあの『鉄火の支配者』をオトシタ女ですよ?」

我がままなら、だれにも負けない。

「じゃ、えっと……ほっとみるくがいいかなぁ。」

ちょっとだけ大人びた少女は、味覚はまだまだ子供だった。

ご案内:「歓楽街 とある廃ビル」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「歓楽街 とある廃ビル」からNullsectorさんが去りました。
ご案内:「歓楽街」に妃淵さんが現れました。
妃淵 >  
ぷう、とフーセンガムを膨らませながら通りを歩く、パーカー姿の少女
なんだかいつも同じ格好だ、お気に入りではあるのだが一張羅というわけではない
単純にスラムだと良い服が手に入る機会が少なくて、いつも同じ服を着ているというだけ

今日はまだ陽が高い
日が傾くまでもまだ時間があり、歓楽街といえど通りは疎らだ
夜の街の雰囲気を感じさせない姿は、いつも訪れる時間帯に見る姿とは別の街すら見える

「(──ヒマだな)」

特に目的があるわけではなく
最近は羽振りもいいので、スラムにいてもやることがないのだ

ご案内:「歓楽街」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
水無月 斬鬼丸 > 試験期間というだけあって、歓楽街といえど
比較的人通りが少なく感じる。
そんな中でブラブラとしているのは
まぁ、テストがどうでもいいやつか、勉強しなくても頭のいいヤツ
そして、そもそも学園に行ってないやつ。
それくらいなもんだ。

早くに終わってしまってちょっと手持ち無沙汰になり
歓楽街に顔を出したが…
ゲーセンに行くにもなんだかな…

そんなまばらな人混みの中で…小さな影を見つける。

「あ…」

フェイの姿。見ただけで心臓が高く跳ねる。
そりゃ、あんな事があったのだ。そうもなろう

妃淵 >  
フェイエンはいわゆる二級学生
故に試験もなんにもない

なので人が少ない理由を、單純に時間が早いからだとしか思っていなかった
相変わらずフードを目深に被った少女はたただ気怠げに歩いていた

目的もなく、ぶらぶらと
それを体全体で表現するように

水無月 斬鬼丸 > 「ぁー…」

どうする?声をかけるのか?
でもここで声かけたらなんかこう気まずくない?
いや、でもそれ以前に友人なんだからそれくらい別によくない?
しかし、しかしこの間のあれもあるし期待してると思われたらかっこ悪い。
心のなかで色々葛藤しつつも…

「お、おーい……フェイ…」

中途半端な声量で声をかけた。

妃淵 >  
「……あ?」

振り向く
はっきりと声が聞こえたわけではなかったが、阻害するものもなかった
なんとなく自分を呼ぶ声に聞こえた…に過ぎない

それでも振り返れば、視線が交差する

「あれー斬鬼丸じゃん。こんな時間から何してんの?ガッコは?」

そう話しかけながら、ぶらぶらと歩み寄る

試験期間、というものを知らない少女
試験中は通常講義がなく放課後になるのが早い、ということも知らないのだ

水無月 斬鬼丸 > 気づいた。
声をかけはしたが彼女がこちらを向くと少しびっくりしてしまう。
ちょっと女の子を呼び止めただけだ、冷静になれ。

少し遠間でも、赤い瞳は目立つ。
お互いの視線が合うとなんだか照れくさい。

「あー。えっと、試験期間なんではやくおわって…
フェイは…?」

少女に向かって歩く。
うまく喋れてるだろうか?
彼女にとってはおそらくこの間のことなんてなんでもないんだから軽く流せ!

妃淵 >  
「へー、試験の時ってガッコはやく終わんのな。
 でも他にガクセーいなくね?」

辺りをきょろきょろした上で、視線を戻す
顔を突き合わせる距離、身長差も手伝って見上げるようにフードの裾から紅い瞳が覗き見る

「俺はいつもどーり。
 金がそれなりにあるとスラムにいてもやることねーからな
 ここんところ誰かさんが飯食わせたりしてくれたし」

そう言ってにっと笑みを浮かべる

水無月 斬鬼丸 > 「べんきょーしてんじゃないっすかね…
俺は、まぁ…あんまそういうのやんないんでぶらついてるんっすけど…」

他の学生は遊び回っている暇はなかったりするだろう。
おかげさまでまだ日も高いというのにこの閑散ぶり。
彼女は背が低いので自然に見下ろす形になる。
見上げられるとなんかこう…色々思い出してよろしくないが。

「そういうもんっすか。
遊んだりとかは…まぁ、こっちのほうが娯楽的なものは多いっすもんね」

笑う彼女には同じように…いや、少しぎこちない笑顔を返す。
しかし、そういえば…彼女、前も同じパーカーだったような。

妃淵 >  
「ははっ、オマエふりょーじゃん。ちゃんとおべんきょーしろよな。
 人のこといえねーけど」

ぼす、と全く痛くないぱんちが胸元を襲う

「多いっつーか、あっちに娯楽なんてなんもないぞ。
 せいぜい頭悪くなるよーなことぐらいしか」

セックス、ギャンブル、アルコール、ドラッグ、ファイト
荒んだ街にある娯楽なんてたかが知れている

「ん…どした?なんか気になる?」

服に視線が向かったような気がして、何かついてるかと自分の体へと視線を落としてみる

水無月 斬鬼丸 > 「まぁ、あんまたのしいことでもないんで…
いい点とっても自慢にもなんねーっすから」

低い位置からのパンチ。
なんだか距離の近さに少し安心する。
この間のことは全部夢だったのでは?

「頭が悪くなるようなって…
まぁ、一時期ゲームばっかりやってるとーとかも言われてたし
娯楽ってもんはそういうもんだって風潮あるかもしんねーっすね」

彼女の言う娯楽がどういうものかは及びもつかない…
が、一度見たスラムの光景を鑑みるに…まぁ、ろくでもないものだろうというのは伺える。
あれが夢じゃなかったとして、フェイがああいう行為を楽しんでいたことも含め。

「ん?え、ああ、そのパーカー、前も着てたなって。
好きなんすか?それ」

妃淵 >  
「ふーん…あ、消えてんな。マーク」

ぼす、とぱんちした手をそのまますいーっと首元へ持っていって確認

「ココにつけといたんだよこないだ。キスマーク♪
 なんかおもしれーことになるかなと思って」

単なるイタズラ心だったが、特に言及されなかったところを見ると
楽しいハプニングなかはプレゼンされなかったようだ

「ああコレ?まぁお気に入りっちゃお気に入りだけど。
 あっちに住んでると滅多にいい服とか手に入んねーから、基本着の身着のままだったりな」

匂う?一応洗ってるけど、と袖を鼻の前にもってきてすんすん

水無月 斬鬼丸 > 「……やっぱり……」

思い出して頬を赤くする。
昨日指摘されたが、それまで全く気づいてなかった。
むしろ、指摘されたあともなんか別のもんだと思ってた。

「言われて気づいたっつーか…なにしてんっすか!!
バレたらどーするんっすか…もう…」

結局は家に帰ってから頭を抱える羽目になっただけであり
出会った人々にはキスマークだとバレてはいなかったようだが。
そもそも、自分にキスマークとか、自分が一番信じられんわ。

「ああ、臭いとかじゃなくて。似合ってるしいいと思うっすけど
この間も同じだったしきになって」

流石に匂いまで追求したら色々とよろしくないだろう。

妃淵 >  
「ん、バレたら困る?カノジョいないんだろ??
 …あ、カノジョいなくても好きなオンナとか気になるオンナはいるってパターンか」

なるほどねー、と悪い笑み
そりゃ悪いことしたなと胸板を平手でぱむぱむ

「ま、他に着るモンがあんまないんだよ。
 別にオシャレしたいとも思わないし、いーんだけどな」

対して見た目自体は気にかけない、というよりも
スラムで底辺生活しているとそこまで気にかける余裕はないのだろう

水無月 斬鬼丸 > 「そ、そそ…そういうわけじゃなく!!
彼女とかいないんすけど!!
俺がなんて言っていいかわかんねーっていうか…」

親戚の女の子とかもいるし、弁明する際に困る。
彼女の言葉を否定しつつも、触れられた…
キスマークのあった場所を押さえて

「似合ってるからいいと思うっすけどね。
俺もだいたいジャージか制服だから人のこと言えませんけど」

おしゃれには自分もだいぶ無頓着だ。
更に女子のとなると、もはや異次元。
彼女くらいスパッとそのへん割り切ってると謎の安心感がある。

妃淵 >  
「は、スラムのガキにつけられました、じゃ確かに格好つかねーもんな。
 ってか、カノジョはともかく好きなオンナの一人もいねーの?その年頃で?」

なかなか珍しーヤツだな、と笑う
好きとか嫌いとかはともかく気になるヤツぐらいいるだろー、と

「いーんだよ服なんて。外歩いてて捕まんなきゃそれで。
 そんなもんに金使うくらいなら美味いもん食べたほうがよっぽど毎日楽しーからな」

即物的、というか、刹那的というか
そういった感性の持ち主であるのは、底辺生活のイメージの通りだろう

「で、遊びに来たんだろ?またどっかいくのか?」

水無月 斬鬼丸 > 「カッコつかないとかそういうわけじゃないっすけど…
なんていうか…女の子とそんな、好きだとかなんだとかってなるくらい接することないんで…」

ははは、と力なく笑う。
気になるというのならば、まぁ、いるにはいるが
つけた本人にそれを言うのもどうかと思う。
むしろ意識を持っていっているという意味では
目の前の少女がそれなのだし。

「そりゃいえてるっすね。
おしゃれとか服とか化粧とか、俺にもよくわかんなくて…」

普通の生活をしている女子感性とはまた違うもの。
衣食住とは言うものの、食と住が足りてこそだ。

「そっすね…ゲーセン、カラオケって感じだったんで、なんかほかにないかなーってブラブラしてたんっすけど…」

妃淵 >  
「ほーん。ほんとにモテないんだなオマエ」

相変わらず、歯に衣着せぬ物言いである
人が人なら引っ叩きたくなる一言だ

少女と同じく、ブラブラしてただけ…と聞けば、じーっと顔を見つめてくる

「じゃ、俺と悪いコトでもするか?」

突然そんなことと宣う少女の顔は、あの時の
カラオケボックスで見せた、蠱惑的な笑みが貼り付いている

水無月 斬鬼丸 > 「うぐ…ま、まぁそうなんっすけどねぇ…」

はぁ、とため息とともに肩を落とす。
モテないことはこの十六年でガッツリと思い知っている。
だが、再確認させられると毎度ガクッと来てしまう。

ガクッとしたままに、見られたことには気づかない。
不意に飛んできた言葉に思わず顔を上げた。

「え…わるい、こと?っすか?」

スラム式悪いこと…。
やっぱあれだろうか。お薬パーティー的な。

妃淵 >  
「そ、ワルいこと。フーキにバレたらドヤされる」

どふっ、と身体を預けるようにして、くっつく
くっついたまま、視線を上へとあげて

互いの吐息が聞こえるくらいの、距離

「1万ポッキリで今日1日俺のこと売ってやるよ」

紅い、細まった瞳がどこか年齢離れした、危険な色香を感じさせる
そんな顔で、見上げながら

「…悪い話じゃねぇと思わねぇ?」

服の上から指でくるくると、胸元を撫でる

水無月 斬鬼丸 > 「ぐぇ」

思わず受け止めるも、突然のこと
うめいてしまうが、密着した少女を見下ろせば
ぱきりと体が硬直する

てか…やばい…なにを。
何を言っているんだ?
1万?売る?これってあれか?
でも、それって売春っていうか…
友達でやることか?

そんな目で見られると揺らいでしまう。
色変に対しての耐性なんてありゃしない。
フェイを一日1万で。考えてみれば悪い話じゃない、話じゃないが…

「ちょ、ちょっと、まって!まって!!それって、どういう…」

妃淵 >  
「何って、そのままだけど?
 今日1日、今の今から明日の朝まで。
 俺をオマエのモノにしてやるよって話」

言いながらも、距離はそのまま、指はついつい

「俺も退屈してるしな、ちょーどいい。
 オマエのスキなことしてやるし、オマエのスキにしてもいい。
 オマエのやりたいことに付き合ってやるし、いらないなら、それでいい。
 他のヤツに売りにいくヨ」

水無月 斬鬼丸 > 「ぐ……」

かんがえろ、かんがえろ…かんがえ、かん…
他のやつに売りに?
…え…それって、まぁ…そういうことだろう…
なんか、なんだか、それはいやだ…

「う、うっす…1万…で…」

頬は赤い息も絶え絶え、だが、払う。
学生的には痛い出費には違いない。
だが、それはそれとしてなんかここで
そんなことで
他のヤツに明け渡すのが嫌だった。

妃淵 >  
「へへっ、まいどアリ」

後払いでいーヨ、とにんまり笑顔

「じゃ、今からこのカラダ全部お前のだから、
 遊びに連れ回すもよし、どっかシケ込むもよし。スキに使ってくれよな♡」

くるん、と姿勢を反転させて、その腕を抱く姿勢に
いつぞれやの手をつないで歩く姿勢よりも更に密着している
当然そのやわらかい感触も、わざとだ

水無月 斬鬼丸 > 「あ、はは…」

どうしよう。
勢いで買ってしまったが…!
スキに?使う?
まじか?
いや…今度こそ考えろよ?俺の脳!
どうする、どうするんだこれ。

「え、えええっと、ですね!
あれ、あれっす!
服、見に行きません?服。
フェイの気に入るもんあるかもだし!!」

ひとまず考える時間を稼げ。
ってか柔らかっ!手ぇちっさ!

妃淵 >  
「服?いいけど、このヘンの店ってたけーんじゃねえ?」

まぁウィンドウショッピングなんかでもヒマ潰しにはなるかー、と
腕を組んだまま、歩幅を合わせて歩くだろう

「万券払った上で服も見るとかなかなかリッチじゃん、斬鬼丸」

身長はお世辞にも高くない
というか中学生以下程度の小柄さだ
そのくせ、大きいとは言えないまでも出るところはそれなりに主張しているからたちが悪い

水無月 斬鬼丸 > 「ぐ、う…そうなんっすけど!!」

ほとんど勢いで1万出したとは言えない。
かと言って服を見るだけ見て終わりとかじゃかっこ悪い。
だからといって…
お金を払って抱かせてもらう…なんてのは
なんだか、フェイに対してしたくない。
彼女がおごりの礼としてされるのはいいのだが
自分が抱かせてもらうために払うってのは、少しもやっとする。

「はははは……こ、これでも結構身銭切ってるんで…
一着くらいで勘弁していただけると嬉しいかなーなんて…」

小柄だが、スタイルが悪くない
これが曲者。
当たれば柔らかいのだ。腕に神経が集中してしまう。

妃淵 >  
「ぷ。見栄張って無理しなくてもいーって。ガクセーだろ?」

そんなに金もってるやつがそうそういるわけない
1日に1万使う、それだけでも手痛い出費のはずだ
それでも彼は払うことを選択した

そこにどういう葛藤や拘りがあったのか、フェイエンが知る由はないが
横の少年がただのカラダ目当てのサルでないことは、さすがに理解る

故に、変わったヤツだな、という印象を更に深めた

「しかし服なぁ…あんまりにも興味がなさすぎて。
 何が似合うのかもわかんねーぞ、俺」

丁度服飾の店舗に差し掛かり、道に面した大型のショーウィンドウを眺める
今年の新色やら何やら、お高そうなブランドものを着込んだマネキン達が鎮座している

水無月 斬鬼丸 > 「せ、せっかく1万も払うんだから
なんもしませんでしたじゃもったいないし!」

見栄張ってるし、無理もしてる。
でもそうすると決めたし
それでも惜しくないというか、そうしないと嫌な気分になると思った
だからそうしただけのことだ。

「俺にもよくわかんねーっす…
だから、その…似たようなパーカーでも見に行かねっすか?
気に入った色ーとか着心地ーとかあるかもしんねーっすし」

さすがにこういうアパレル関係のやばいブランド系のお店に並んでるものなど
1万はらってなくても買えはしない。
むしろ、量販店とかで着心地重視のもののほうが彼女にはいいだろう。
そして、こっちの懐にも優しい。

妃淵 >  
「だからってこの辺で服とか、店も満足にしらねーぞ、俺」

綺羅びやかなブランド物
それを見てもコピって売れば金になりそうだなとしか思わない
次々、と腕を抱き込んだまま歩いて、しばらくいくと安値で良品が売りの大衆向けのお店があった

ココ入るかー、とぐいぐい引っ張りながら、入店
店員さんはにこやかに迎え入れてくれる
年齢的に学生同士のカップルにでも見られている雰囲気だろうか

「ここならいいもんあるかもな、っても結構するけど…。
 パーカーねえ、まぁこれもずっと着てるしなー、そろそろ替える時期か」

こーゆーパーカーある?と店員さんに物怖じせず聞くと、売り場へと案内してくれる

カジュアルちっくな雰囲気あふれるコーナー、かなりサイズも広めに揃っている中で、適当にハンガーを2つ、3つと手にとって、品定め

なんかどれも少女にとっては大きめサイズ、な気がする

水無月 斬鬼丸 > 「俺だって知らねーっす」

でも量販店の看板くらいは見たことある。
どっかにないかなと一緒に歩いていると
思いっきり腕を引っ張られた

「うおおっ!?あんま、あんまひっぱんないで!!」

前もやったけどそれはいろいろとよろしくないから!!
あたるから!!往来というか、お店で色々なるとやばいから!!
引っ張り込まれた先はリーズナブルな価格のお店のようで…

フェイは初めての店にも関わらず、割とグイグイと行く。
コミュ力高いな、この子。

「おっきめなサイズ、いいじゃないっすか?
なんかそういうの似合う雰囲気っつーか…」

今着てるパーカーもだいぶサイズ的にはオーバーサイズだし。

妃淵 >  
実際はコミュ力が高いと言うか、単にまわりに遠慮しないというだけなのだが
スラムで遠慮がちに生きていると、食い物にされて終わってしまう
そんな生活の中で培われた性格なのかもしれない

「あんま派手なのもなって感じだし、このあたりで決めるかー。
 あ、じゃあちょっと試着だけしてくるかな」

ぐいぐい、試着室前まで来るとようやく腕を開放し、
じゃあ行ってくる、と試着室の中へ

──しばらくすると、カーテンのスキマからにゅっと顔を手だけが出る

「斬鬼丸、ちょっとこっち」

ちょいちょい、と手招きしている

水無月 斬鬼丸 > 迷わずスパッと決めるあたり決断力も高い。
これもスラムでの生活の知恵だろうか?
試着に行ったフェイお見送り、ようやく一息。
いや、一日は長いのだから気を抜くにはまだ早いのだが…

彼女がくっついてた腕を見下ろす。
なんだか照れくさい。
ディレイ気味に頬の暑さを感じつつ、座って待っていると…
なんか呼ばれた。

「あ、なんすか…?」

気に入ったのが決まったのかな?
そういうときに荷物持ちさせられるのは
経験で知っていた。
手招きに従い近寄って。

妃淵 >  
似合うか?なんて新しいパーカー姿を披露する──ではなく

「よっ、と」

斬鬼丸が試着室の前まで来ると、カーテンから出ていた手が近寄った少年の手を掴む
そのまま引っ張られて、カーテンの隙間から、顔だけ試着室の中へと誘われる
それくらいの勢いと、不意打ち

「サービス」

試着室の中にはパーカー姿どころか薄紫のショーツ一枚だけの姿のフェイエン
薄く肋の浮かぶ痩身に、大きいとまでは言えないまでも整った形の双丘を晒して
淡く色づいたその先端までも隠そうとせず、その更に上では少女が小悪魔のような笑みを浮かべていた

水無月 斬鬼丸 > 買う予定の服を渡されるか
試着した後の感想を聞かれるものかと思っていた。
誰だってそう思う、俺だってそう思う。

だから彼女の不意打ちにはなすすべもなくて

「うぇっ!?」

ひっぱりこまれた。
一体どういうことだ?なにが…なにが?何だ…?

「ぇ」

ぽかーんと、そのサービスと言う言葉に顔を上げた。
見てしまった。
動画とか写真とか漫画とか、そういうものではみたことあるし
どういうものかもわかっている。
それが生で、目の前にあった。いや、それだけじゃない。
なめらかな少女の肌、肉付きの薄い部分すら…ショーツに隠されたところ以外すべてさらされていた。

「っ~~~~~~!?」

声にならない。思わず声を上げそうになるも、ここはお店の中。頑張って耐えた。えらい。
偉いが…え、これ、席に戻るときどうするんだ?前かがみで歩けってことか?

妃淵 >  
「おしまーい♪」

楽しげな声と共にカーテンから押し出される斬鬼丸くん

「~♪」

───その後は鼻歌と、絹擦れの音だけが試着室から響く

ややすればシャッとカーテンが開いて、さっきまでと同じパーカー姿に戻ったフェイエンが出てくる

「んー、コレにしよ。サイズはまぁちょっと大きめぐらいで丁度いいや」

まるで何事もなかったかのように、いつもどおり

水無月 斬鬼丸 > 反応をまるで楽しまれているようだ。
こんどはぽいっと外に出された。
ひどいことをする…

「……」

恨みがましくカーテンを睨むも
ちょっと中腰気味にそばに設えられたベンチに戻る。
今日は人が他にいなかったのがすくいだ。

そして出てきたフェイは至って涼しい顔。
むぅ、理不尽だ。

「んじゃ、買っときますんで…」

1万+パーカー代…
今日これだけでもかなり痛いが…
もういい、蓄え吐き出す覚悟をしておこう。
もやし生活も悪いもんじゃない多分。

妃淵 >  
「悪いね~服まで買ってもらっちゃってサ。
 その分サービスつけたからいいヨな?」

馴れ馴れしく、店を出れば紙袋を片手に腕を組んでくる少女
歩幅がかなり違うので歩きにくい気もするが、気にしない。マイペースだ

「で、次はどーする?どっかで休む?」

水無月 斬鬼丸 > 「そっすね…」

確かにサービス。
すごいサービスだったが、それは今はまずい。
こっちだって色々あるってのに、もう…。

しかもそれでくっついてくるもんだから…
あー、あれが今くっついてんのかーってなっちゃうだろ!!
などとは流石に言えない。

「…休憩ついでになんか甘いもんでも食いません?
甘いもん苦手なら別のもんでもいいっすけど…」

妃淵 >  
「うわー、素っ気ねえ。
 なんだよお前がずっとなんか覇気ないから
 生おっぱいでも見たら元気出るかと思ったのに」

近くに丁度通行人がいなかったのが幸い、
普通の会話の音量でこんなセリフをのたまう

実際にくっついている
そして気づいたかどうかはわからないが、試着室にはブラジャーの姿はなかった
多分この少女、地肌にそのままパーカーを着てるだけだ

「甘いもん…?まぁ別に嫌いではないけど、何食うの?」

水無月 斬鬼丸 > 「でたからこまってるんっすよ!!
つかありがとうございました!!」

今普通に歩けてるのだって奇跡だ。
ここまで鋼の精神力を持っていたとは自分でも驚いている。

それが布一枚隔ててくっついてるもんだから
余計に大変なのだ。
彼女はもちろん知っているだろうが、興味ないわけでも不能なわけでもないのだから。
そのための休憩。そのための甘いもの。

「アイスとかどうっすかね。暑いし…」

妃淵 >  
「うはは、なら良かったよかった」

なにがうははだ、と行った感じだが斬鬼丸の反応に満足したらしく、笑っている

「アイスいいねー」

お誂え、というべきか
ワゴンカーのアイスクリーム屋が炉端に止まっている
ちょうど近くにベンチもあった

あれにするかー、と近寄ってゆく
フレーバーこそめちゃくちゃ多くはないものの、こういう店はいろんなミックスなどの融通が効くのと、
独特の即席感がなんだか楽しい気分にさせてくれる

「じゃークリーム&クッキーとストロベリーとーオレンジソース!」

この手の販売者は落第街付近まで来ることもあるのか、慣れた調子で注文していた

「お前は?斬鬼丸」

水無月 斬鬼丸 > うははではないが。
カーテンに向けたのと同じ視線をフェイに向ける。
まぁ、男の子の苦労はわかるまい。

彼女はアイスという提案に気を良くしたようだ
そして目にとまるのはアイスのワゴン。
…これは陽キャとか女子が使うようなものだと思っていた。
実際、利用するのは初めてである。

こういうときにフェイの行動力には助けられてしまうわけで…

「あー、俺は…チョコミントとチョコとリッチミルク」

彼女を真似て3つ注文。
程なく二人分、手渡されるだろう。

妃淵 >  
「じゃそのへんで」

大きめのコーンに3つ乗った色とりどりのアイスを手に、ベンチへ
日差しはやや強く、ちょっとアツい
まぁアイスを食べるには丁度良い、だろうか

「なんか、試験期間中なんだっけ?
 こんな時間に他にガクセーもいなくて、こうやってると学校サボってデートしてるようにしか見えないな」

多分、周りからは

そんなことを言いつつアイスを舐めていた。ぺろぺろ
…無駄に艶めかしい

水無月 斬鬼丸 > こちらはカップタイプ。
スプーンでもしゃもしゃアイスをすくって食べる。
人通りも少なく、日差しも強い。

「こういうときアイスってのはうまいっすね
冬でもうまいっすけど」

彼女の方に視線を向けると美味しそうにペロペロと。
……なんかカラオケでのことを思い出してしまうので
これ以上はよろしくないと目をそらす。

「そ、そっすね。
まぁデートっつーかなんつーかなんっすけど…」

周りはそう思うかもしれない。
少し自分を知るものなら、そうは思わないかもしれないが。
しかし、それがまさかフェイの口から出てくるとは意外だった。

妃淵 >  
「まぁ今日1日はお前のモノだから、実質デートみたいなもんかー」

熱い日差しに蕩けるアイスクリームの甘さと冷たさが心地よい
なんだかんだ、落第街で売るよりは良い思い出来てるな、なんてことを内心思いながら

「お前のもウマそーだなそれ、一口くれ一口。
 俺のもちょっと齧っていいから」

はい、とコーンを手渡そうとする

水無月 斬鬼丸 > 「お金はらってデートってのもなんか悲しいもんあるっすけどね」

自嘲と冗談、はははと笑いつつリッチミルク部分をすくい取る。
濃厚なミルクの味はバニラの香りではなくしっかりとミルク。
刺激の少ない一日だが…彼女は楽しんでいるのだろうか?
スラムでの常識や楽しみ、彼女の趣味とか…知らないことばかりなのだから
不安になるのも仕方がない。

「あ、はい。んじゃシェアってことで」

アイスの交換。
ペロペロなめてた場所から少しずらして食べるべきだろうか。
少し迷ってから一口アイスをかじるオレンジソース部分だ。

「そういや、フェイって普段どんなことしてるんっすか?
あと、そうだな…何が好きとか…」

妃淵 >  
「だからサービスもしてやってんじゃん。スキで払ってんだしさー?」

自嘲じみた言葉にそう返しつつ、カップとスプーンを受け取ってぱくり
濃いミルク味はなかなかクセになりそうで、やや溶けかけぐらいが実になめらかに口の中へと広がる、美味
こうやってアイスを交換して味わうところなんかは、まんまデート、といった感じだが…

「普段…?
 金があったら別にやることもねーから、こうやってブラブラしてる。
 金がなかったら、まぁ金稼ぎかな。コナかけてきたアホから財布もらったり。
 好き、好きなもんかぁ……金もってるやつ…?」

そんでできれば頭はワルいほうがいい、と付け足す。ひどい答えだ

再び交換しなおしたアイスをぺろぺろ

水無月 斬鬼丸 > 「そうっすけどーー!!」

たしかにそのとおり。
好きではらった、選んで払った。
そのうえで何してもいいのにこういうことしてるのだから
それに文句があるというわけではない。
オレンジソースが嫌に舌にしみる。

「へー…なんか趣味とかないんっすか?
俺はまぁ、そういう連中よりは貧乏かもしれねぇっすけど…」

金稼ぎに関しては言及しない。
なんとなく今までの言動でわかるので。
顔もいいしスタイルもいい、そして小柄…お金はらってなんとかなるならいくらでも払う人はいるだろう。
好きなものはなんというか…獲物というか。
彼女から言わせれば自分は金を持ってない頭悪いやつ…ってことにはなるのか。

「食べもんとかで好き嫌いはないんっすね…」

チョコミント部分もすもす

妃淵 >  
「趣味…趣味……?
 恐喝…してるヤツをボコすこと…?」

楽しんでよくやってることならそれだな?と思ったけど多分一般的な趣味とは遠い

「んー、よくわかんねえなー。
 斬鬼丸みたいなのと遊んでるのは割とスキというか楽しいけどな」

退屈しないし、お前。と付け加えて、アイスをぱくり
舐るターンは終わったようだ、はむはむ

「嫌いなモンもなくはないけど、そういうこと言ってると食えるモンない時に餓死にするだけだしなぁ」

溶けたアイスがついた指をぺろりと舐めつつ、当たり前のようにそう言葉を返した

水無月 斬鬼丸 > 「やっぱそういうのあるんっすね…」

善行というわけではあるまい。
彼女のことだし。
なんか気に食わないやつボコったらすかっとする…位のノリだろう。
暴力的ではあるが、それを野蛮という気もない。

「………………あざっす」

そんな暴力的な趣味を持つ彼女からそんなふうに言われれば…
嬉しいというかなんというか…
なんかふわふわするというか、照れるというか。
言葉に詰まってしまう。
なんとか礼を言うのがやっとだった。…なんだこれ。

「ぁー、えー…んじゃ、そういうときはまた…
歓楽街探してくれりゃ…あと連絡?できたらしてくれりゃラーメンぐらいなら…
…まぁ、そういうことじゃねぇっすよね…」

別に哀れんでとかそういうわけではないのだが
そういうのは余計なことかな?という気がした。

妃淵 >  
「ん、何。金も食うモンもなかったら助けてくれるって?
 いいやつだなー、斬鬼丸」

笑いながら肩をぐらぐら揺する

「ま、独りで生きてけないようなら大人しくスラムなんか出てってるよ。
 たまーにこうやって遊んでくれりゃーいいかな。退屈しのぎに」

そう行って、コーンをさくさく食べて、終了
最後まで食べ切れてゴミも出ないのがコーンアイスの楽ちんなところだ

水無月 斬鬼丸 > 「あははは…まぁ、フェイならそんなことにはならないだろうけど…
えーと、なんつーか…友達、みたいなもんっすから…?」

ぐらんぐらん。
アイスを半ば以上食べていてよかった。
なんというか我ながら浅はかなことを言ってるなぁなどと思いつつ
アイスを食べすすめる。

「それくらいならお安い御用っす。
懐的にはお安くないっすど…」

ぺいっとカップをゴミ箱へ。

妃淵 >  
「ふーん、友達。友達ねえ。
 一緒にラーメン食って、ゲーセンいって、カラオケいって、ショッピングして、アイス食って…。
 まー、悪かないかな…」

仲間はいても、友達と呼べる相手がいたかな、と少し思い返す

「今日はお高いぜ。
 なんてったって俺そのものを買ってんだからなー。
 なーんでも言ってくれりゃいいんだからさ。死ね、ってのは困るけど」

水無月 斬鬼丸 > 悪くない。
そう言ってもらえただけでなんか嬉しい。
やったぜと心のなかでガッツポーズとってしまうくらいには。
珍しくニヤリと楽しげに笑ってしまう。
だが、友達となると、あれ以上を望むのは流石に贅沢だろうか?

「あはは…まぁ、そりゃそうっすね…
フェイを一日好きにできるってなら買い手とかいくらでも付きそうっすけど…
なーんでも…なんでも…」

なんでも。
このあとどうしようか。
一日…時間の許す限り遊び回るか?
それとも、なんかほかの…

「フェイの好きなこと…あそびでも、運動でも…なんでも…
ああ、やりたいことでもいいっす。
できりゃ金がかからないほうこうがいいんだけど…
やりましょーか。なんつかー…俺、そういうの知りたいんで…」

妃淵 >  
「なーに言ってんだよ。
 アッチじゃ自分を売るヤツなんで日毎にどれだけいると思って。
 俺みたいなガキなんかじゃ相手にしねーなんてヤツもしょっちゅうだっての」

その点、歓楽街にはそういうのにこなれていない人間が多い
慣れていると買い叩かれたり、妙なことに疲れるリスクもある
余裕がある時に此方に来ているのは、そのためだったらしい

「スキなことにやりたいことー…?
 お前のスキなことに使わせてくれればいーんだけどなぁ…」

考えるのが面倒クセー、と言うような表情をする
けれどまぁ、ここまで服だアイスだと金を使わせているし…

「──…じゃ、えっちする?」

そう言った少女の紅い瞳は妙に細まり、やや危険な雰囲気を孕んでいた

水無月 斬鬼丸 > 「そういうもんなんっすか…
童貞にはかんがえもおよばねぇっすね……」

そういう中で生きているのだから
体を売るのにもなれていたり
好き嫌い言ってる場合でもないというのもうなずける。

「俺の好きなことってなると…
まぁ、ゲーセンとか買い食いってとこっすからね…
一日長いんで、お互いで好きなことやったほうがいいかなーって…」

めんどくさそうな表情に苦笑い。
まぁ、仕方ない。が…続いた言葉に笑顔が固まる。

「………えーと…それは、したいこと…なんっすか?」

目をそらせない。
彼女の返事次第では…うん。
危険に首を突っ込んでしまったかもしれない。

妃淵 >  
「さあ?でも買い物もしたし、腹も減ってない、デザートも食べた。
 カラオケやゲーセンはこないだいったじゃん。後何する?何かあるなら付き合うし」

スラムの娯楽なんて乏しいものだ
故に少女の持つ、娯楽趣味の範囲などたかが知れている
セックスを娯楽という認識は、此方では受け入れ難い人間のが多いだろうけれど

「…どうする?
 スキになるオンナが出てきた時までとっとく、ってのも斬鬼丸らしーし、いいと思うケド」

いつの間に体面し、するりと顎のラインを手で撫でながら

「俺のカラダを買ったのお前なんだから、お前が決めろよ」

目を細めたままに、笑う

水無月 斬鬼丸 > たしかに、そのとおり。
娯楽にそんなに明るくないのは自分も同じ
知っていたとしても一人での遊び。
これ以上何をする?と問われれば答えは思い浮かばない。

セックスが娯楽…とは言わないが、デートする愛だからであれば
それも自然の流れ。
実際娯楽的な意味でいろいろな器具があるのは知ってるし。

「え…ぁ……俺、俺は…その…」

どうする?どう、する?
顎を撫でる指…唾を嚥下する喉の動きが伝わるだろう。
おそるおそる手を前へ。
フェイの肩、自分よりも低い位置にあるそこに手を置く。

「フェイがっ!!フェイが…俺とシたいって、なったときにスる!!
俺はフェイと…その、シたい、けど……
楽しいとか、悪くないって…思ってくれてんなら…スるときも…フェイにそう思ってほしいんで…!!」

……往来だった。
そして、その決意を込めた言葉は、大声だった。
まばらである人々の波がこちらを見ている………やらかした。

妃淵 >  
「……お、おう」

想像以上にマジなテンションに思わずたじろぐフェイエン
なんというか、間違ってもこんなヤツは、スラムにはいない

「ヘンなヤツすぎて、調子狂うよお前」

言葉とは裏腹に、表情は笑顔
周りからの視線なんて気にする様子もなく、その手を引いて…

「じゃ、遊んでてそのうちスル気になったらするかー」

引っ張ってゆく、行き先はゲーセンか、それともカラオケか、他のところか
往来の視線を独り占めしつつ、波をかき分けるようにして、歩く

こいつは、まぁ退屈はしないやつだ
わざわざ金を払ってまでの時間に、こちらの意思を優先する、本当に変わったヤツ

「さっさといくぞ。1万も払ってんだから時間もたいねーだろ」

手を引っ張って、行く先
今日のところは、終点までにはまだ遠かっただろうか
ものすごく近いところで、あえて踏切を渡らなかった、それだけかもしれないが──

ご案内:「歓楽街」から妃淵さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」から水無月 斬鬼丸さんが去りました。