2020/07/27 のログ
ご案内:「歓楽街 とあるホテルの屋上にて」に橘 紅蓮さんが現れました。
橘 紅蓮 > お気に入りのジッポライターのフリントを廻し、ジッ……、ジッ……と音を立てる。
二、三度、火花が散ると、ウイックに火が灯る。
ほんの少し気化したガスのような臭いが充満し、それも炎によってかき消されてゆく。
口に咥えていた煙草、彼女のお気に入り『マルボロ』の先端に火を点け、少しだけ空気を吸い上げる。
マルボロ特有の、酸味と苦みを合わせたような香りが口に充満するのを感じてから、口を離した。
ジリジリと音を立ててマルボロの先端には紅い火が燻っている。
煙は彼女の口から吐き出されて、空中をふわりと少しだけ漂うと、髪を掬う様な強い風に吹かれて霧散した。

「……救えないねぇ、どいつもこいつも。」

少し前から起きていた『真理』を廻る風紀委員内の一連の出来事は、どうやら収束に向かいつつあるらしい。
此処から見るだけでも、それなりの人数が死んだり、邪魔されたり、死ねなかったり、泣いたり、笑ったり。
橘 紅蓮はそれを、この場所からしばらく見下ろしていた。
見下していた。

「もう少し利口に生きれば良い物を……、いや? それができないからガキなのか。」

呆れたように、汚いものでも見るかのように、目を細めて独り言ちる。
死ぬのは勝手だが、責任を追及されかねないのは此方の方というのは理不尽だと思う。
周りの事を考えない向こう見ずな奴らに、紅蓮は嫌悪感を隠さないでいる。
少なくとも、この場所では。

ご案内:「歓楽街 とあるホテルの屋上にて」にメアさんが現れました。
橘 紅蓮 > 未だに、ジッポライラーに灯っている火をおもむろに見つめた。
揺らめく火は吹けば消える、その程度の物。
蓋を閉じてしまえば、呼吸ができなくなってまた消える。
それは脆く、儚く、指先一つの意思で消えてしまうほどに儚い。
火の向こうに、死んだ命が垣間見えた気がした。
蓋を閉じて、命を終わらせた。

「ま、好き勝手にやって、好き勝手に死んだんだ。 本望だろう。
 向うってやつがあるなら好きにやればいいさ。
 好きなものを好きな分だけ喰ったり飲んだり殺したり殺されたり。
 遊んだり遊ばれたり、青春するなり絶望するなりすればいい。
 私は、そんな保証のない向こう側はごめんだけれどね。」

足元に転がしておいた、少々高かった『レ・フォール・ド・ラトゥール』というワインの注ぎ口を、屋上のへりに叩きつけて砕く。
ガシャンッという甲高い音と共に、赤い血の様なワインは零れて。
紅蓮は屋上から、瓶を逆さにして階下に流してゆく。
赤い血の滝が落ちる様に、それは真下に小さな水たまりを作るのだろう。

「向こうで、少しうまい酒でも飲むがいいさ。 飲めるかどうかは知らないがね。」

空になった瓶を足元に放って。
もう一度煙草に口を付けた。
あぁ、勿体ないことをしたなと思いながら、流れ星が落ちていた空を見上げる。

メア > 「あら」
屋上へ繋がる扉を開けると、先客が居た。
赤い髪に…煙草。長い髪から察するに女性。
こういう場所に遊びに来るような格好には見えない。
そもそもホテルの屋上に居る人間なんて私みたいな好き者か、『仕事』をしている人間か、『観察』している人間だ。
「こんばんは、いい夜ね?」

とりあえず、挨拶してみる。

橘 紅蓮 > 「あぁ……?」

気分良く、いいや、気分が悪く、煙草を吸っているときに無粋な訪問者。
目を細めて背後に振り返る。
随分と若い、10歳前後に見える少女を見つめて目を細めた。

「こんな場所に何の用だいお嬢ちゃん。 夜遅くに出歩くなんて感心しないな。
 怖い幽霊でも出ないうちにさっさと帰るんだね。」

小さく舌打ちをして、口にしていた煙草を足元に捨てて、にじり潰して消火する。
あぁ、またもったいないことをした。

メア > 「あら、構いませんでしたのに。もったいない。」

かくり、と体を傾げて。

「携帯灰皿、持ってませんこと?あまり汚さないでほしいのですけど。」

夜景を一望できるこの場所はメアにとってお気に入りのうちの一つだ。煙草を吸いたくなる気分は分かる気はするが、それでこの場所を汚されるのなら話は別だ。

「わたくし、このあたりの方々とは『懇意』にさせてもらってまして。怖いものはあんまりありませんの。貴方は…初めて見ますわね。」

そして、くるりと、自分の姿を見せるように、一回転し、スカートの裾を持って、軽く持ち上げ…そのまま、カーテシーと呼ばれる挨拶を見せる。

「メア・ソレイシャスと申します。以後、お見知りおきを。」

橘 紅蓮 > 「立ち入り禁止にでもするべきだったかね……。 生憎、ここは私専用でね。
 このホテルは私が建てたもんだ、自分のものをどうしようが文句を言われる筋合いはない。」

このホテルは、紅蓮が自分の住居として買い取り、自分好みに改築した私有物だ。
中にほとんど住人はいないし、そもそも住まわせる気がない。
何人か、自分の患者が居る程度だろう。

「私有地なら、犯罪にもならないからね。 ふん、怖いものがない、か。 羨ましいことだ。
 ぜひ私にもその人間味の無い心を分けてほしいね。」

屋上にまた、強い風が吹いた。
紅蓮の紅い髪は舞い、目元を隠す。

「……随分時代錯誤な人形だね。 あぁ、お前はつまらないな。
 つまらないやつだよ。 『怖い』がないなんて、つまらないね。
 感情が欠けた人間なんて、人形と同じさ。
 名前すら必要がない。
 壊れたやつに名乗る名前は持っちゃいないよ。」

名乗る少女に、興味はないと突き放す。
冷たい風に視線をのせて、ナイフのように言葉を滑らせる。
無粋な邪魔者が入った以上、もうここに用もないだろう。
メアの横を通り過ぎようと、カツコツと低めのヒールを鳴らして歩いてゆく。
 

メア > 「あら、そうでしたの。それは失礼しましたわ」
どうやら知らぬ間に不法侵入していたらしい。ここ、夜景が綺麗だからお気に入りだったんだけどなぁ。

「あら、よくご存知で。でも壊れてる、っていうのは心外ねぇ」

横を通る女性を横目で追いながら、話す。

「『完璧』なモノなんて、有り得ないでしょうに。それこそ『つまらない』でしょうに」

橘 紅蓮 > 「……。」

退屈そうに溜息をついて、メアの真後ろで歩みを止める。
冷たい、しかし燃える様な、炎のように赤い瞳で少女を見やる。

「壊れていなけれ完璧、っていうのは子供じみた考えだね。
 あぁ、お前の言う通り完璧なんていうものは存在しない。
 ただ……、自分が壊れている事にも気が付いていない、可愛そうなお人形が居るだけだ。
 欠点と、欠損では意味合いが違う。
 必要のあるものが欠けているのを、壊れているっていうのさ。
 だから、お前の心はつまらない。」

どこまでも冷たく、慮る様子もなく、自分の価値観を押し付ける。
子供だからと言ってそれを止める理由もない。
相手が迷い込んだ生徒ならば、まだそういう機微もあったかもしれないが。
面白半分にやってきた珍客にその必要もないだろう。

「ここに居たければ好きにするといい。 私の用はもう済んだ。
 何もないなら私は行くよ。 生憎暇じゃないんだ。
 これから忙しくなる、慰霊祭なんて面倒なイベント誰が考えたんだか。」

また独り言ちる様にして、しまっていた煙草を取り出した。
一本だけ取り出して、口に咥える。
香りだけ楽しんで、まだ火は付けずに。 
 

メア > 「必要あるもの、ねぇ。『貴方が決めることではない』でしょう?まるで神様みたいな物言いよねぇ」
くる、と振り返り、下から、覗き込んで。

「誰かに『壊れてる』だの『欠けてる』だの言うけれど、じゃあ貴方は壊れてないの?誰がそれを証明してくれる?貴方が言ってることはそういうことよ?『人の心のわからない科学者さん』?」

挑発するように。

橘 紅蓮 > ふっ……と目先の少女を鼻で笑う。
相手をする必要もないという風に扉に手をかけた。

「いいや? それは人間には必要なものだ。 少なくとも心理学的にはね。 決めたのは神様じゃなくて頭のいい『人間様』だよ。
 まぁ、私ではないのは確かだね。」

くつくつと笑いながら扉を開け、口元の煙草に火をつける。
紅い火が灯る。
紅蓮はそれを見つめて。

「私かい? あぁ、私もきっと壊れているさ。
 壊れているからこそ、壊れてない奴を壊すのが楽しいんだ。
 だからお前はつまらない。
 弄り甲斐がない、暖簾に腕押しみたいなお人形はね。
 だれが証明するか? 決まってるじゃないか。
 私がそう思ったらそうなんだよ、『何も知らないお嬢ちゃん』。
 私は神様でもないし、人の心なんてわからない。
 あぁ、だれにもわかりはしないのさ。」

分からないからこそ、人は争い。
その果てに死んで、後悔しては涙する。
愛も、恋も、友情も、憎しみも、人が人を理解できないからこそ生じるものだから。

「分からないから楽しいんだろう? 分からないから、ぶち壊して解き明かすのさ。」

少女の顔に煙を吹いて、紅蓮は扉の奥に消えた。

ご案内:「歓楽街 とあるホテルの屋上にて」から橘 紅蓮さんが去りました。
メア > 「…損な人ねぇ。先入観で選別して。」

夜空を見上げる。アイカメラに多少のヤニがついて少しだけ見づらい。

瞬きして、それを落とす。

「そういうものにこそ、求めるものがあるかもしれないのに」
欠損しているからこそ、特異な何かが芽生えることもある。
ぶち壊すだなんて勿体ない。

そういうものは、『昇華』させてこそ。

「…ほんと、勿体ない」
落第街で見かけたあの子。四肢を失い、狂気に身を委ねる彼女をみたら、どう思うだろうか。

そんな事を考えつつ、星空を見上げる。

メア > 「…」
手のひらを広げる。

ちっぽけな、手。世界の中でも極小な点。

それでも。

この手が届くところは、愛で満たせたら、と。

そんな妄想をしながら、屋上の端へ。

そして、そのまま。


飛び降りていった。

ご案内:「歓楽街 とあるホテルの屋上にて」からメアさんが去りました。
ご案内:「歓楽街」に雨夜 賢瀬さんが現れました。
雨夜 賢瀬 > 交差点の角に佇む、白いバイクと風紀委員制服の男。
缶コーヒーを片手に夜の街を眺めている。

制服を着ているので、非番というわけではない。
……この説明前にしたな。

つーことで、歓楽街健全化運動の一環。
立ち番。

生徒諸君、夜遊びはほどほどにするんだぞー。

雨夜 賢瀬 > 連日走り回らされていた例の件は落ち着きを見せ、
光の柱も消えてしまった。

暇だった俺は、報告書にも目を通しておいた。
あれだけ騒ぎになっても、ページ数枚の報告書と、添付資料で片付いている。
まぁそんなもんだろうな、という感想しかなかった。

雨夜 賢瀬 > 今日も変わらず、制服を着て、「ここに居る」仕事だ。

怪しい動きはもちろん、速度違反を見れば追うが、
俺がここに居るのは何日目か。つまるところ、周知の事実。
よっぽどの間抜けでもない限り、そんなヘマをするやつは居ないだろう……。

……やっぱりいつものコーヒーが旨いな。

雨夜 賢瀬 > 道行く人に目をやり、通り過ぎていく車に目をやり。
次の休みはいつだったかなぁ。

「……明日か。慰霊でも行くかね……」

空き缶をゴミ箱につっこみ、
バイクに腰掛けて、立ち番をの続きをする。

と、ヘルメットからアラームが鳴る。定期報告の時間だ。
ヘルメットのバイザーを降ろして、メッセージを送信する。
前回送信をコピーして、作成。歓楽区○○の○番○号、異常なし。

雨夜 賢瀬 >  

交代までは……結構あるようだ。
夜の街は、まだまだ眠らない。

ご案内:「歓楽街」から雨夜 賢瀬さんが去りました。