2020/09/17 のログ
ご案内:「ゲーセン:イワトビラキ」に《ノヒメ》さんが現れました。
《ノヒメ》 >  
ゲームセンターのイワトビラキの大型ディスプレイから音楽が流れ始める。
エレキギターがゆっくりと鳴り始めると真っ暗な画面にスポットライトが照らされる。
そこに合流するように、ベースが混じり始め、一際派手な音が鳴るとベースも律動する。

スポットライトが照らすは唯一人の《アイドル》―――アバター名:ノヒメ。

画面の中で背を向けていた彼女が、くるりと回って正面を向く。
閉じられていた翡翠色の瞳が開かれて、光る唇が動く―――、

「―――煌めく夜の輝きの中に 君を探し続けた」

《ノヒメ》 >  
身体を揺らして、赤い着物が揺れて髪の毛は踊る。
他の《アイドル》と比べると控えめな胸ではあるが、
下品ではなくどこか神秘的とさえ言えるその存在感が彼女にはある。

「"i don't know the way" 明日への道を」

手で顔を隠してから求めるように、前へ手をのばす。

《ノヒメ》 >  
伸ばしたその手を顔をに近づけて、哀愁漂うような雰囲気で自身の手を見つめる。

「私は貴方の友であり、奪うために来たわけじゃない。
 それでも "i rob you" だけど、恐れないで」

ゆっくりと視線を外すのと合わせて、拳を握る。

《ノヒメ》 >  
ダンと床を蹴ってクルッと一回転して和服の袖の広がりを魅せる。
裾が短いにも関わらず、動きは計算ずくか、
ユーザーが動かせるカメラアングルの範囲では彼女の秘密を暴くことは叶わぬ。

「光輝く世界で 君を見つける
 地下へと続く道か 空を目指す階段か
 君となら どんな世界だって歩んでいける」

人指し指で上から下へ切る―――魔力の粒子を出して線を引く。

《ノヒメ》 >  
「"Go away!"」

右から左へ十字を描くように腕を振って叫んだ。
彼女が最も得意とする楽曲『WORLD>>STAR LIGHT』。
今この瞬間、女神が舞台に降りている。

この秋からリアルアイドル育成ゲーム『イワトビラキ』に現れた新星――《ノヒメ》。
彼女の存在にガチ勢は揺れた。

《ノヒメ》 >  
曲が終わると照明が舞台を明るく照らす。

「ありがとー!」

長い黒髪を揺らして、
歌っていた頃とは一転して花が咲いたような笑顔で自分の顔の横で手を揺らす。
ぴょこぴょこと彼女のエルフ耳が揺れていて、
歌い切った高揚からか頬と耳を赤く染めたその顔は演技とは思えぬ輝きを持ち、
男女問わず『イワトビラキ』プレイヤーの心を鷲掴みにする。

「また、よろしくねーっ!」

そう言いながらカメラアングルでウィンクを一つ。

《ノヒメ》 >  
ゲームが終わって、筐体からプレイヤーが出てくる……!

そう思って多くのイワトビラキのファンが構えるが、
気がついたときには筐体の中には誰もいない。

アバター《ノヒメ》のプレイヤーがどんな人なのか。
知る者はいない。

ご案内:「ゲーセン:イワトビラキ」から《ノヒメ》さんが去りました。