2020/10/17 のログ
ご案内:「歓楽街」に東山 正治さんが現れました。
東山 正治 >  
「飲み会……ねぇ……。」

歓楽街。夜に輝くネオンの不夜城。
眠らない街の人込みの中、東山は静かに呟いた。
同時刻、教師同士の親睦会めいた飲み会があったらしいが
東山は当然のように顔を出す事は無い。
程々に、適当な付き合いを気づく位ならああいう集まりも嫌いじゃない。
東山はこう見えて、酒も煙草もまぁまぁ嗜む。所謂、人並みだ。

「くっ……ハハ……。」

だが、行く気はなかった。
それ所、メンツを思い出して思わず笑ってしまった。

「……冗談じゃないよねェ、いけるかよ。あンな"臭い"場所。」

東山 正治 >  
東山は、ああいった連中を毛嫌いしていた。
今時人間以外の種族が珍しい訳じゃない。
人間以外にも幽霊だの精霊だの、挙句の果てに神までいると来たものだ。


──────馬鹿げた話だ。


地球上の頂点を人間だと、傲慢な考えを持ち合わせた覚えは無い。
だが、元より人間が暮らしていたテリトリーに、人外(ヤツラ)は土足で入り込んだ。
さも当然のように、植民地のように、人外(ヤツラ)は本来の法律(ルール)さえ変えていった。
今や友好的に、人間と変わらず手を取り合って過ごしましょうと来たものだ。
異世界の住民ならず、元から地球にいましたと宣う連中もいる。


──────ふざけた話だ。


無理矢理人様の法則をぶっ壊して変えて、何食わぬ顔でいる。
如何して、誰一人、疑問にさえ思わないのか。
……こんなものは、侵略者と何一つ変わらない事を。

東山 正治 >  
"元からいたなら、出てくるなよ。邪魔だ。"

"異世界の住人だからどうした。土足で人様の領域に入り込んで、何様だ。"


ともすればこれは、純粋な憤りかもしれない。
但し、恐らくこれを理解出来る人間は少人数だろう。
人間は、"慣れる"。どんな状況でも、時間と共に"慣れてしまうのだ"。
環境適応と言えば聞こえばいいが、『何故わざわざ侵略者側に合わせなきゃいけないのか』


──────法律(ルール)も護れないなら、死ぬしかない。


過激な考えと言われようと、馬鹿は死ななきゃ治らない。
死刑と言う制度は、得てして"必要なもの"だ。

「…………へッ。」

吐き捨てるように、自らを嘲笑った。
今や、この考えすら排他的だのなんだのと"酷評される"始末だ。
挙句、こんな学園とは言え、今やそんな侵略者共が教師をやっていると来たものだ。
文句を言っても、きっと誰も疑問に思いやしない。



───────なら、終わらない悪夢を見てるんだろう。



胸ポケットから取り出した煙草に、静かに火をつけた。

東山 正治 >  
萎びた草として、時が経つのを待っても、何も変わらない。
己にとっての救いは今や、世界の破滅他ならない。
畜生も食いやしない。無意味で無秩序な悲劇を生きろと、強いられている。

「……あーあ。」

気だるげな、声が漏れた。
同時に、静かに足を止めた。
人込みから離れ、目の前にあるのはギラギラとネオンライトが眩しいクラブだ。

「……で、俺の見立て通り"黒"だったワケ?」

東山が声をかけた人物は、さも当然のように背後にいた人物だ。
フルフェイスヘルメットにライダージャケット。
同じ公安の人間だ。その人物が、ほんの小さな包み紙を東山に手渡した。

「あーあー……ほんッとどいつもコイツも、ヤンチャしかしねェなァ……」

包み紙を受け取った東山は、うんざりしたように吐き捨てた。

東山 正治 >  
この包み紙の中身は、所謂"違法薬物"だ。
元から地球上に在ったものでは無く、異界の植物で作られたものらしい。
但し、元の世界では『何の変哲もない植物』であり『地球人にとって効果を発揮する』ものだ。
偶然持ち込まれたものが、たまたま地球人にとっての害悪に成り得る。
良くある話だ。文化の違い、生活圏の違い、それと何ら変わらない。


……"だから何だと言うのか"。


それを許すなど、それこそ馬鹿げている話だ。
人間同士、些細な違いで差別が生まれるが、これはそう言った話じゃない。
この、"無自覚な侵略"さえ、誰も疑問に思わない。
こんなものがあるから、不幸になる人間がいることさえ気づかない。
誰も、何も、"当たり前"になってしまえば、何も言わない。
馬鹿げた、話だ。

「……大人しく、落第街だけにしときゃよかったのによ。」

この違法薬物は、落第街でちまちまと流行していたものだが
ついにこの歓楽街へと進出し、このクラブで早速売り払われる事になっている。
落第街なんて"無いもの"の事など気にしはしない。
だが、"歓楽街は別だ"。こんなものが流行れば、あっという間に常世島はおじゃん。
そう、影の危機である。気づけば東山の傍には数名、風紀の腕章をつけた人物が見える。

「じゃ、行きますか……今日も立派に、お仕事しようじゃないの。」

東山 正治 >  
そんな東山が唯一信じ、準ずるものが"地球の法律"だ。
此れだけを護り、彼は常世島の影で治安を維持する。
それだけは、それだけは何事も変えれない法の番人としての生き様。
クラブの扉が、静かに開かれた──────。

東山 正治 >  
……後日、経営法違反として、このクラブは活動停止する事に成る。
人知れずして、よくあるかのように、夜の明かりは一つ途絶えた──────。

ご案内:「歓楽街」から東山 正治さんが去りました。