2020/11/15 のログ
ご案内:「酒場「崑崙」」に武楽夢 十架さんが現れました。
武楽夢 十架 >  
開店直後の早い時間、常連もこれからな早い時間に店のテーブル席に一組。
この場では比較的に見ることの少ない男――生産の、農場系の部活動に所属する痩躯の青年・武楽夢 十架――がこの場にいるのは稀有であった。
彼の持ち場は学園地区中央部であったり、同じ生産型部活動の横つながりを利用した情報収集である。
正規学生でありながら、違反部活に所属する彼は、組織でも異端である。
そして、荒事は大の苦手であり組織内でも力比べなどしたら女子を含めたとしても下から数えたほうが早い。

――しかし、人望は高い。

故に、いつの間にか組織幹部に――否、問題があれば命の危険すらある事象に介入する組織故に自身の実力を見誤ったものから《卒業》しているだけに過ぎない。
そして、《裏切りの黒》で歓楽街または常世渋谷については自分ではなく《鳩》と呼ばれる十架と同じく情報収集担当がこの場の担当に何かあったとしても受け持つはずだ。

それを態々《鳩》が自分を指名した理由は、一つの盗聴音声データ。
話によれば、風紀の問題に公安も勘付いたという一件。
対面する男は、ここ歓楽街にある高級風俗店――所謂正規学生も働いてる店――の関係者で下手に目立ちたくないが、
『裏』にも通じている彼は、『個人的』に青年の耳にもこの案件は耳に入れておくべきと思ったのだそうだ。

会計は男の店に後ほど請求が行くようにしてあるそうで、好きに飲み食いしていいそうだ。

「……俺は《解決/実働》担当じゃないんだけどな」

そう一言ボヤくも自身に与えられた情報を確認しないわけにもいかない。
既に、耳には入れている『神宮司 蒼太朗の件』。
公式としての報告では、身に覚えがありすぎるが神代 理央《鉄火の支配者》よりも先に自分が狙われるとはと笑っていたらしい。 他、護衛の二名と現場に急行した神代 理央も共に襲撃者については認識阻害の影響により確認し切れていない。
公には、襲撃者の正体は不明。
神宮司 蒼太朗は、怪我はしたものの命に別状はなし。

彼の組織は、よくやっている。
落第街の消滅など人の営みある限り不可能とも言える状況が既に出来上がっているし、
落第街と言う名の《黄泉の穴》を囲う防壁を無くすことが目的でないことは、この一件に風紀以外が絡んでない事から容易に想像はできる。
広がり過ぎないよう、広がり過ぎたなら押し戻す。
そういう事をしているだけ、そのように見える。

過激ではあるが無策ではなく、あくまで秩序、数字を意識した活動。
出来れば、自分はそういう情報を集めて精査して報告するだけ、そういうのが望みだ。
それに去り際の『もしかすると見えない相手は《吸血鬼》とお知り合いかも知れません』だとかよくわからないことを抜かした相手に苛立ちを覚えたところもあった。

「そこまで言うなら、直接言えよな……」

苛立ちを言葉にしつつも、受け取ったデータを携帯端末に繋ぐ中に入っていたデータを転送し終えるとデータの入った媒体は火花を散らして軽く燃えると外郭にも損傷を見せながら内部は粉々に砕け散る。
呪術的な破壊と物理的な破壊に物質変換。
裕福層が最近よく使う情報のやり取りをした媒体を消す手段だ。

左耳に通話にも使っているインカムをつけると音声データを再生し始めた。

武楽夢 十架 >  
最初は、他人の行為が始まるところから女と男のやり取りを聞かされたが、
ようやく終わり際に、問題が始まりだす――(参照:2020/11/2◆特殊Free(過激描写注意)3)。

被害者と襲撃者のやり取りが始まり、認識阻害の影響で襲撃者が喋ったと思われるところは《音》にすらなっていないが。
やがて、待機していた護衛の二名が介入し、更に遅れて《鉄火の支配者》が到着。
そして、《鉄火の支配者》と襲撃者のやり取り一方の言葉しか聞き取れないのは歯がゆいが、こればかりはどうすることも出来ない。
というか、こんなもの自分に渡されてもな……と思わざるを得ない。
護衛の二人も、指名された嬢も特に知った相手という訳でもない。

そして――

『――……さ、ら?いや、椿……とやら、か…?』

神代 理央が口にしたソレは名前か、聞き間違いか。
巻き戻して聞き直すべきか、思考しているうちにやり取りは進む。

『………そうか。沙羅が…いや、椿、か。そう、か』

再び、その名称が口に、今度はハッキリと出てくる。
沙羅といえば、青年が知るのは水無月 沙羅という少女だ。 一度だけ対面した記憶がある。
彼個人の感想だが、彼女は不器用な少女である。
そういえば、夏に一度この両名がぶつかって……というようなところから以降は気にしてなかったし、調べてもなかった。
もし、自制聞かず青年の口から感想が漏れていたら

―――は? なんで? IFモノの二次創作作品か?

などと首を傾げつつ眉間に皺を寄せていたことだろう。
なんか仲良くなってデートしたみたいなそんな夏のおわりを聞いたような気がしていたのだが……と再生が終わって、
青年は天井を見上げてインカムを外した。

「……人の関係って物語みたいに上手くいかないんだなぁ」

思わず乾いた笑いが出た。
他人事である。
というか、なぜ自分にとも思わざるを得ない情報でもある。
いや、落第街の大通りで接触もしてれば《裏切りの黒》では自分に、となる……か。
と妙に納得できないところはあるものの思考して、
目の前の放置されたグラスに入った琥珀で少し下を濡らした。

「……俺には、まだ分からないな」

アルコールの良さは。

武楽夢 十架 >  
せめてグラス一つは空にしてから店を出るかと、
それからフードメニューを幾つか注文し、
水とアルコールのチェイスの果て、

青年は「いつかアルコールを美味い」と飲める大人になれるんだろうかと考えながら
未成年ながらに考えつつ店を後にした。

ご案内:「酒場「崑崙」」から武楽夢 十架さんが去りました。