2021/10/03 のログ
シャンティ・シン > 「私……?」 


気怠げだが、やや意外そうな心根がこもった声色が響く。


「聞く、だけ……つまら、ない、わよぉ……? 引く、かも、しれな、い……わ、ねぇ……」


人差し指を唇に当てる。しばらく、考えるような仕草をして僅かでは在るが静かな時がすぎる。
喧騒は其処に在るが、しかし。其処だけが、ぽっかりと空いた穴であるかのように虚無のような奇妙な空間と化していた。



「……満足する死」


ぽつり、と女はそれだけを口にする。憧れが、そこにあり。悲しみが、そこにあり。悔やみが、そこにあった。


「…今は、それ、だけ…… つまら、ないし……ふふ。引く、でしょう?」


肩をすくめるようなおどけたような仕草をしてみせた

伊都波 凛霞 >  
満足する死
そう少女は答えた
死を望む者…それ自体は、この土地ではそう珍しくはないのだろうか
しかし単なる死では満たされないのだということが、その言葉には含まれていた

「…そっか」

そこには様々な感情が感じられた
一言に集約されたものは、決して軽くはなく…
どうすれば満たされるのか、少女はそこまでは語らなかった
あるいは、それを探しているのか…なんてことも頭を過ぎる

「んーーー……わかんない!
 つまらないとか、引いちゃうとか?よりも
 私は顔を知ってて、お話したヒトがいなくなっちゃうのが寂しいなって思うほうだから」

少しだけ複雑かな?と、苦笑しながら、そう言葉を返す
目の前の少女の、おどけるような仕草が何かを誤魔化しているようにも見えた

シャンティ・シン > 少女は思い悩む。様々なことを感じ取りつつも、しかしそのすべてを口にすることはない。女も、それは重々感じ取っている。だから、いい。それで、いい。今、此処で全てを曝け出すのも脚本としては大概駄作だ。


「……そう。ふふ、貴女は、そう……そう、ね……そう、いう……人よ、ねぇ……」

(そう、だから……)


気怠さはそのまま、少しだけ笑みに軽やかさが加わる。微細な変化で、気づくかどうかは別だが。


「で、も……知り合った……ヒト、じゃ…な、く……案外……夏の、夜……の、夢……なら、ぬ……秋の、夜の、夢……かも、しれ、ない、わ、よぉ……? ふふ。さしず、め……『噂』の、幽霊、と、か……? なぁ、ん……て」


くすり、と笑う。

伊都波 凛霞 >  
そういう人よね
と、少女は言う
まるでずっと前からの自分を知っているような言葉
そう感じる瞬間は、この対話の中でいくつもあった
そういった、異能の持ち主であるのか
それとも…

続けられた少女の言葉には微笑みでもって返す

「それなら大丈夫。
 ちゃんと見えてお話できるなら、キミが噂の幽霊でも怖くはないよね」

怪異に慣れているとか、そういう問題ではなく
意思の疎通が出来て、言葉が通じて…そんな程度で、この凛霞という少女は十分らしかった

シャンティ・シン > 「……そう、それは……嬉しい、わぁ……」


出涸らしの亡霊だとしても。死にぞこないの夢の残滓だとしても。
ただ、在るだけでも認められるのは……存外悪くはなかった。


「……さて。潮時……かし、らぁ……凛霞ちゃん、はぁ……まだ、見回り、する、の、かし、らぁ……? 現し世と、隠り世の……狭間、みたいな……こんな、ところ、で……?」


本来の目的は別にあったが、今日はなんだか、いたずらをする日ではなくなった。少なくとも――今、此処では。だから、そんなふうに問いかけてみた。


「私、は……そう。そう、ねぇ……心配、され、た……しぃ……いい加減、戻ろ、う……かなって……ね?」

伊都波 凛霞 >  
「ふふ」

嬉しい、という言葉を向けられればこちらもまた嬉しそうに笑っている
言い方を考えずに言ってしまえば、単純なのだ

「ん…まぁ帰りがてらにって感じだけどね」

例の噂と予告に関してはあくまで悪戯やその類にしか思われていない
よって仕事で警邏活動をしているわけではなかった

「そっか。大丈夫だと思うけど気をつけてね」

彼女の語った望みは、歓楽街で危険に巻き込まれては得られないものだろうから
なんだったら送ってく?とまで、笑顔で付け加える始末だった

シャンティ・シン > あまり意図した言葉ではないが、それが人に影響を与えたのであればそれはそれで面白い。やはり、生の人間は、いい。味わいが違う。そういえば……彼とも、再会したいものだ。自分ではなし得ないスポーツの感覚は、実に瑞々しい。いや、今はそこではない。

そんな他愛ない思考をしていると……これまた想定になかった提案。本当にもう、不意打ちというのはとても美味しい。



「ん……そう、ねぇ……」


人差し指を唇に当てる。


「貴女が、問題……なけれ、ば……だ、けれ、ど……もぉ……? だって……お仕事……で、しょう?」


なんて、真面目に受け取ってみせたりして。ゆっくりと、足だけは学生街に向けて歩くのだろう、と見える動きを示す

伊都波 凛霞 >  
「私用とお仕事半々ってトコ?調べろ!とまでは言われてないからね」

最初の緊張した姿勢はどこへやら
会話を交わした後の凛霞は距離感も近く、にこやかに答え横に並ぶように歩きはじめる

「シャンティさん普段は何してるの?歓楽街にはよく来るの~?」

そんな他愛のない、少々うるさく感じる程に声をかけられながら
恐らく学生街の入り口あたりまで、足並みを揃えた帰路につくのだろ──

シャンティ・シン > 「普段……? 普段は、ずぅっと……本を、見て、いる……わぁ……?」


にこやかに、遠慮なく、そばに並び立つ少女を面白く、好ましく思いながら……変わらぬ気怠げな声と言葉で、答えていく。
足取りはゆるゆると。ゆるゆると。


いきはよいよい かえりはこわい

この邂逅はなにがしかの意味を齎すのだろうか―――――そんなことを夢想しながら

ご案内:「夜の歓楽街」からシャンティ・シンさんが去りました。
ご案内:「夜の歓楽街」から伊都波 凛霞さんが去りました。