2021/10/15 のログ
『調香師』 > 本日も看板を取り込んで、お店は閉じられる
お客様が来てくれた、そんな日にする事は決まっている

「~~~~♪」

鼻歌交じりに、また新しく香を焚きながら。日記をつけるのだ
今日、どんな風に人の為になれたのか。その時に作った香り、感じた香りを事細かに日記帳に付けていく

本当は同時に帳簿も付けた方が良いのだろうが、道楽営業な上にその辺りの管理は『機能にない』

今日も確かに付けた後、『彼』に連絡を入れる
急ぎではない、隠されてはいる程度の連絡回線。お客様が来てくれた日にはこうして、『梟』の業務がてらちゃんと出来たお仕事の話を日記片手に一方的に伝えるのだが


「.........出ない?」

今日に限って、『彼』は出てこなかった
一応、万一の事は用心故に手筈を説明されてはいたが


一瞬過った、動揺の信号が彼女の感覚を奪う

『調香師』 > 「嫌だ」

その隙間を記録が入り込んでくる。最も、最も、彼女を染めたあの臭い。汚らわしく染まりきった赤く醜い鉄の臭い


「やだやだやだ」

どうして良い香りは塗りつぶしてくれないの。やっと、私は『調香師』という本来のお仕事で人の為に働けてるのに。数年経っても、人の為であった、『出来るようになってしまったお仕事』の記録が薄まってくれないの


「......、、、   」

いつの間にか、体を支える機能すら狂ってしまったらしい
力なく地にへたり込んだ彼女は。逃避するように、その意識を暗闇へと落とした


再びお店を開くために動き出すまで、あと数時間...

ご案内:「歓楽街」から『調香師』さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
歓楽街の一角。
金さえ払えば、落ち着いた空間と美味い飲み物を
"安全"に提供してくれる店。
落第街に程近い此の街で思案に耽る場所として
個人的にお気に入りの店の一つ。

「……さて、どうしたものか。
少しばかり被害が大き過ぎたな。自分が暴れている分には
気にならぬものだが…。
俯瞰してみると、こうも事後処理が面倒なものだったとはな」

過剰に落第街に刺激を与えたい訳でもない。
勢力は削ぎたいが、壊滅させたい訳でもない。
より厳密に言えば『落第街に畏怖を与えるのは風紀委員会である』
方が、好ましいのだ。

「………この件で余り頭を悩ませたい訳でもなし。
もう少し住民の保護に、動くべきかな」

アンティーク調の薄暗い店内。
その奥に構えられたテーブル席で、タブレットを眺めながら
思案顔。テーブルに置かれた果実水の氷が、カラン、と音を
立ててグラスの中で揺れる。

神代理央 >  
「…余り大人しくなられても困るが、暴れられても困る。
かといって、手を打たぬ訳にもいかない。
私が暴れた方が、まだ御互いに手を打ちようがあるのかも知れぬが…」

堂々と風紀委員の制服を着て煙草に火をつけても、咎める者は
いない。ここはそういう店で、その為に金を払っている。
静かな店内に、レコードの音が流れる。
ジャズだろうか。曲名までは分からない。

「余り落第街に肩入れしたい訳では無いんだがな…。
どうしたものか。支援物資を配るにも懐柔し過ぎる訳にもいかん。
飴だけを与えていて増長させるのもな…」

どれだけ落第街に"手心"を加えるべきだろうか。
強硬派のイメージを損なわず、相応に今回の被害を
癒す程に。となれば、自分が前に出るのは控えた方がいいだろうか。

「……こういう時、頼りになるのが伊都波先輩だったんだがな…」

からん、と。また氷の音がする。

神代理央 > 「……行ってみるしかないか。深淵へ。
私自身の目で、一度見ておくべきだろう」

彼女が攫われたと思しき場所。
警戒と、自身の感情を制御する為に足を向けるのは控えていたが…。

「風紀委員…いや、強硬派としてのアクションも、一つは必要だろうしな」

まあ、動きを見せる…訪れるだけでは姿を見せるだけかも知れないが。
兎も角、再び一手、敵に判断材料を与える事も必要だろう。
穴倉に籠っていては、情報の鮮度も落ちる。

「少しずつ、互いの手札を晒さなければ、な」

神代理央 >  
「…と、なれば」

かたり、と立ち上がる。
方針が決まったのなら、考える時間は終わりだ。

「……身体を動かす事は、余り得意では無いんだがな…」

ぽつりと零した独り言は、静かな店内に吸い込まれて消えていく。
空になったグラスだけを置いて、少年は店を後にするのだろう。

ご案内:「歓楽街」から神代理央さんが去りました。