2021/10/25 のログ
ご案内:「歓楽街」に黛 薫さんが現れました。
黛 薫 >  
善意というものは時に無責任で残酷。
それでいて悪意がないと分かってしまうから
感情の行き場が無くなってしまうのが厄介だ。

黛薫は違反学生であり、風紀委員及び生活委員
医療部門の要監視対象でもある。つまるところ、
校則違反、犯罪行為への処罰や勧告だけでなく
精神面のケアでも学園の世話になっている。

「……はぁ」

定期検診の帰り、精神面のケアを受けたはずの
黛薫の表情はいつもにも増して暗い。普段なら
事情を把握した精神科医の先生──表向きには
伏せられているが元違反学生で、黛薫の事情を
ある程度汲んでくれる人が診察してくれていた。

しかし先日落第街で発生した大規模な呪的汚染、
大量の精神崩壊者が出た一件以来、精神科医は
彼方此方へ引っ張りだこ。優先順位の低い黛薫は
臨時の医師を充てがわれる運びとなった。

黛 薫 >  
言っちゃ悪いが、恐らく医師としては今回臨時で
担当した人の方が優秀だった。だが問題は黛薫の
抱える精神の歪みは(本人の捻くれた性格もあって)
プロであれ初対面の相手には理解され難いという
点であった。

傷付けるのが不安なら、人から離れて落ち着ける
環境にいると良い。落第街での生活は何かと苦労が
多いだろうから、遠慮なく頼ってくれて構わない。
『異能』で苦労しているのなら、優しい『視線』を
向けてくれる友だちを作ると良い。体質の変化で
危険が多いだろうから、安全な場所にいても誰も
悪くは言わないよ、と……優しい言葉をいくつも
かけてもらった。

その優しさが痛いんだ、苦しいんだ、なんて。
どうして言うことが出来るだろう?

露天で買ったタピオカミルクティーのストローに
口をつける。……味が分からない。

黛 薫 >  
独りでいると考え事がやめられなくて、気付けば
自傷を繰り返している。だったら、痕が残らない
自傷行為──『他者の視線』の方が余計なことを
言われずに済むだろう。

優しくされるほど迷惑をかけている自分が惨めに
思えるから、手酷く扱われた方が分相応に思えて
安心出来てしまう。

どんなに『視線』が気持ち悪くても、見るだけで
咎められるなんて理不尽。不快になるのは自分が
悪いからだ。許してもらうなんて烏滸がましい。

優しくしてもらえるという事実に追い詰められて、
しかし優しさから逃げようとして痛い目に遭えば
余計に心配をかける羽目になる。そんな板挟みに
押し潰されて、悲鳴の上げ方も分からない。

『善意』に反抗するのが怖くて、申し訳なくて、
心の叫びを胸の奥に押し込めた所為で吐きそうだ。

帰りに寄り道でもして、好きな物でも買うと良い。
気分転換は大切だ、なんて気遣ってもらったけど。
何処に行っても苦しいのにどうしたら良いのやら。

好意を無碍にするのも何だか据わりが悪くて、
言われた通りに寄り道をしてみたけれど……
その結果が味も分からないのに好きでもない
飲料を買っただけ、なんて笑える話だ。

ご案内:「歓楽街」に照月奏詩さんが現れました。
黛 薫 >  
『視線』が怖くても安らげる場所はあるだろうか。

心当たりはひとつあったのだけれど、そのお店は
前回寄ってからそう日が経っていない。そもそも
行って何を買おうかすら決めていないのに足繁く
通うのは如何なものか、と心の中で言い訳する。

ストローに口をつけたまま、中身を吸うのを忘れる。
ひとつ思考を手繰ると芋づる式に不安が湧いてきた。

久し振りに見つけた安らげるお店は、風変わりな
サービスをしていた。それが歓楽街の不穏な噂と
親和性があるような気がして。悪い方の可能性を
想定するなら、他者に先んじて『3回』の来店を
しておきたい。

でも、もし杞憂だったら。疑うのも申し訳ないし、
そんな動機で通っていたなんて知られたくないし。
何より、不純な動機では『本当に欲しいもの』を
選べる自信がない。そんなのは不誠実に過ぎる。

ただ『会いたいだけ』で会いに行けたのなら、
どれほど楽だったろう、なんて。

照月奏詩 >  
 手には袋とゴミバサミ。そこに落ちているゴミを拾っていく。ボランティア? 否お仕事である。
 クリーンダスターズ。ここを中心にあちこちに掃除人を派遣するバイト。その仕事で今日は本拠地でもあるここの掃除を担当していたというわけだ。
 だが、ふと見ればよく見知った―といっても、虚無としてだが―相手を見かける。
 こっちの方に出てくることもあるんだな。なんて思いながら手元を見れば減っていないドリンク。少し考えた後。はぁと溜息。
 そっちの方にテクテクと歩いていくと。

「よう、なんか暗い顔してるけど。大丈夫かよあんた」

 と声をかける。視線に敏感な彼女からすれば何度か会ったことのある人物と同じような視線を向けてくるのに雰囲気も何もかもが全く別人という少し不思議な感覚かもしれないが。その視線に害意は感じないだろう。
 

黛 薫 >  
声をかけられるより一瞬早く肩が跳ねる。

届いた『視覚』はまるで知り合いに向ける物。
しかし、咄嗟に見返した青年の顔にはまるで
覚えがない。きょとんとした表情でまばたき。

「えぁ……えっと、あの。……いぁ、へーきっす。
 アレっすよ、この……飲み物?買ったんすけぉ、
 ハマって通っちまったら今月危なくなるかな、
 とか考えてただけで……へへ」

最初は無難な言い訳として、買った飲み物が口に
合わなかったことにしようかと考えていたが……
売ってくれたお店が近くにある手前、悪口とも
取れる弁解をするのが躊躇われて軌道修正した。
お陰でかなり無理のある言い訳になってしまった。

作り笑いをしてみたは良いものの、残念ながら
上手に笑えていないのが自覚出来てしまうレベル。
たった1回の返答で2度もボロを出してしまう辺り
疲れてるな、と思いながら着地点を模索する。

照月奏詩 >  
「……なるほどな」

 とその飲み物に目線を移す、そして露店に目を移す。わかる事はそれはほとんど減っていないというわけで。
 その上このわかりやすい作り笑いである。なんとなく意図は理解した。
 少しだけ考えてから。そっちの露店の方に。

「すいません、オレンジジュースひとつ」

 と注文する。そして貰えばオレンジジュースを一口ストローで飲む。そして。

「ん、ホントだな。ここの店結構旨いわ。ほら、お前も飲んでみろよ。代わりにそっちの1口くれ」

 とストローを抜いてオレンジジュースをそっちへと差し出す。
 代わりにタピオカミルクティーをくれと彼女へ。

黛 薫 >  
「そーいう気遣い、あーし以外にやったら
 モテるの思ぃますよ。てかむしろ逆に何で
 あーしにやってんだし」

其方の意図を理解し始めた段階で、交換しても
相手に不快感を与えないように自分のストローを
ティッシュで拭き始めていた少女の所感。

タピオカミルクティを渡し、代わりにオレンジ
ジュースを一口。別の飲料に代えても食(?)が
進んでいないのを見るに味が苦手だったという
単純な事情ではないのかもしれない。その場合、
そもそもどうして飲み物を買っているのかという
新しい疑問が発生するのだが。

「つか仕事中じゃなぃんすか、あーた。
 いぁ、そりゃ水分補給も大丈夫っすけぉ、
 場違いなクレームって結構あるかんな……
 難癖の余地は潰しといてイィと思ぃますよ」

世間話を兼ねつつ、軽く探りを入れてみる。

まず社会奉仕か仕事か。もし前者なら服装自由は
珍しくなく、かつ報酬に固執しなくて良い立場。
つまり正規の学生。自分にそういう知り合いは
少ないので、風紀委員か生活委員の医療部門の
人間である可能性が高い。

後者なら、制服でないから恐らく正社員ではない。
掃除、ゴミ回収の派遣バイトと考えて良いだろう。
確定に至るには材料が少ないが、その手のバイトは
就ける職に乏しい二級学生、違反学生にも優しい。
落第街の知り合いである可能性が出てくる。

照月奏詩 >  
「気遣いって何のことやら。俺は俺が飲みたいのを買っただけだぜ。で、旨いらしいからこっちも一口飲みたくなった。それだけ」

 とミルクティーを受け取る。と片手に飲み物、反対にゴミ袋とハサミをもって歩き始める。
 そうしてそっちを飲み始めるだろう。
 彼女はそれでも進んでいない様子。だがまぁ固形物が入っていないだけまだ少しは飲みやすいだろうか。どちらにしてもこれ以上手助けできる方法は存在しないわけだが。

「難癖なんて言われ慣れてるって。それこそ掃除してる目の前でポイ捨てしてくゴミ以下の野郎もいるわけだし? ま、少し飲み食いした程度じゃ何とも言われないさ」

 掃除にかこつけて神社でお参りしたことあったしさなんて笑う。
 ボランティアだから良いとか言わない辺りで仕事だと当たりを付ける事は容易いだろう。しかし服装や立ち振る舞いなどは完全に表の学生なわけで。

「あとなぁ、その手の輩ってのは正直何やってても結局因縁吹っ掛けてくるから……何してても同じってのもあるんだよ。休まず動き続けてたらそれはそれでそんなに汚くねぇだろうがって怒り出すし。結構厄介な輩多いんだよな」

 なんて苦笑いをして歩く。それでもゴミを見かければ一応は飲み物をおいてハサミで拾うわけだが。
 強いて二級学生らしいといえばその点だろうか。ゴミを拾いながらの飲食というのを全く意に介していないというのは少し普通の学生らしくないといえばらしくないのかもしれない。

黛 薫 >  
「惜しい、あーしが言ったんは口付けたストロー
 女子に渡さなかったトコなんだな。ってコトは
 そっちも気遣ぃだったワケだ。礼にジュース代
 出すか?……なんて、流石にそんなコトしたら
 カッコつかねーわな、有り難く受け取りますよ」

誘導尋問というほど大層な引っ掛けではないが、
よく回る舌で情報を引き出し、代わりに自分も
聞いた情報分の手札は晒す。黙って握り込めば
バレた後が怖いからだ。

(今んとこ、裏の学生寄りっぽぃ雰囲気だけぉ。
もしそうなら表の街での振る舞ぃに慣れてんな。
正規の学生になりたい意思があるか、それとも
表で活動するスパイ的な側面があったりとか?
全部あーしの深読みでフツーの学生だったら
笑えるな)

「あー、弱ぃ立場の人間とか、はみ出し者とか?
 そーゆー相手にだけ強く出るヤツいるもんな。
 あーしも覚えあるな、素行不良なモンで」

軽く髪を払って左耳のピアスを見せてみる。
仮に二級学生だったとしても、この程度で
身元を明かすとは思っていない。

だが相手はどうも此方のことを知っているらしい。
此方が『気付いている』素振りを見せたら向こうも
隠す気をなくすかもしれない。カマをかけてみる。

照月奏詩 >  
「おっと、よく舌が回る奴だな。まぁそうだな。ここでジュース代とかはカッコ悪すぎるから騙した賞ってことで……まぁというか単価で言えばたぶんこっちのが高いし」

 とタピオカミルクティーを揺らす。値段だけで言えばこっちの方が上だ。まぁ飲みにくい物など1円の価値もない為それでも交換に踏み切ったわけだが。
 相手がそういえば少し笑う。

「そうそう、掃除屋なんて下だーってさ。横柄なやつがいるんだよ」

 というが、それから軽くおどけるようにして肩をすくめる。

「ま、そういうわけだから素行不良の不良少女さん。俺からカツアゲは勘弁な。生憎金に余裕はあんまりない物で」

 なんて冗談をいって返す。
 裏の人間らしいというのは臭わせながらもボロは出さない。それは出してはいけない分野なのだ。完璧に結び付けられるその時まで。

「というか、もしかしてなんだがさっき死にそうな顔してたのそれか? それが原因で絡まれたとか、風紀とかになんかイチャモンつけられて説教されたとか。時期的に留年が決まりました。とか?」

黛 薫 >  
匂わせつつもボロは出さない。
『勘繰られても良いが自分の口からは言えない』
という意思表示だろうか。であればこれ以上の
詮索はお互いの利にならない。追求を打ち切る。

「はっ、不良ったって善良な学生からカネを
 巻き上げるヤツばっかじゃねーのでご安心を。
 仮にそうだったとしても、あーしは年上の男
 相手に独力で強盗とか出来ねーですし?」

身元を明かさない男性と雑談に興じるのは少し
不思議な気分だ。何せ普段ならそういう異性の
目的は決まりきっている。悪意も裏も何もない
視覚/触覚に返って違和感を覚えるくらい。

「あー、いぁ?むしろその逆……っすかね。
 こんな不良学生に構ってもしょうがねーってか、
 んなコトしてるヒマあんなら、真面目に頑張る
 学生のために働いた方がイィのに、みたいな?
 そーゆー、無駄に時間使ってくれてるヤツらの
 世話んなってんすよね、あーし。

 手ぇ煩わせてる手前、あーしが文句言うなんて
 筋違いだし。あーしなんかに構ってくれる人は
 決まってイィ人なもんで、余計なコト口走って
 傷付けたくねーし……」

がじがじとストローを噛みながら愚痴る。