2021/10/29 のログ
■比良坂 冥 >
「……今度からそうする」
今更照れるような関係でもない──そんな言葉を掛けられて、目を細める
表情こそ笑みではないものの、喜んでいるようだった
少年の手に暖かさを感じて、それも嬉しかったけれど…それを口にするのは気恥ずかしく
促さるまま、テーブル席のソファへとそっと腰をかける
理央が腰を落ち着ければ、間が空いているならすす…と無言で距離を詰めた
「…こういう場所、慣れてるんだね」
こういったところは家で共に過ごすだけではわからない部分
少しだけそれが新鮮に感じて、お店の中へと視線を泳がせていた
まったくといっていいほど、少女がこういう店に縁がないことがわかるかもしれない
■神代理央 >
「…ん。折角近くにいるなら、一緒に過ごしたいしな。
良かったら、そうしてくれたら嬉しいな」
普段は中々口にしない言葉もついスラスラと出てきてしまうのは
先程まで飲んでいた酒の所為…だろうか。
そんなものに頼らないと素直になれない、というのは情けない限り。
「…仕事でもプライベートでも、こういう場所は良く使うからな。
大概一人だけどさ」
少女が距離を詰めれば、その甘い香りが鼻腔を擽る。
間近に映る少女の顔に少しだけ視線を合わせずらそうにしつつも。
その柔らかな掌をそっと撫でつつ、小さく肩を竦めてみせるだろうか。
■比良坂 冥 >
「……ん」
簡素な返事
素直になれないという程でもないが、派手に喜んだりが出来ないところは同じ…かもしれない
「……理央がそういうコト言うの、珍しいね」
お酒で口が軽くなっているのか、
それともその後に零した、一人だという言葉を勘繰るなら…
「……理央も人だから、一人が寂しくないわけないよね」
「…お仕事には一緒にいけないだろうけど……」
プライベートなら、いつでも一緒について歩く、という意思を込め、その手に指を絡める
それは蛇が絡みつくように、あるいは…心地の良い鎖に絡め取るように
■神代理央 >
「…そうかな、いや…そうかも知れないな。
普段は、中々言えない気もする。言いたくない訳じゃないんだけど」
小さな苦笑い。
それは、少女の言葉に同意しつつ。自嘲の意味を込めた様でもあり――
「…どうしたんだ、急に。そりゃあ、私だって人の子だからな。
寂しい時が無い…とは言わないけど…」
「……ありがとう。その気持ちだけでも、とても嬉しいよ」
互いの指が絡み合う。
それは、心身に絡みつく蛇の様な。或いは、堕落さしめる鎖か。
とはいえ…今の少年に、それを振り払うつもりもない。
つもりもない…まで、少女と共に過ごしてしまったから。
少年の瞳は、少女に吸い寄せられる様に――
「………あ…、ほら。飲み物、来たぞ。
外は寒いけど、此処は空調も効いてるから。
喉が乾燥する前に、飲んでおくと良い」
そのタイミングで、店員が静かにテーブルに置くグラスとボトル。
そこで、我に返ったような瞳を少女に向けるだろうか。
グラスの中身は、少年が少女にと注文したオレンジジュース。
ボトルは、少年お気に入りのチョコレートリキュール。
グラスとボトルが、暖色の間接照明に照らされてぼんやりと机の上で輝いていた。
■比良坂 冥 >
「……そうだよ。もっともっと、言って欲しいな…。
理央は、忙しいし、大変だから…きっと寂しさを感じる暇がないだけ」
身近にずっと誰かがいたら、その発露に気づく時も多いのかもしれない
そう思わせるような言葉を小さくもはっきりとした声で、伝えてゆく
──視線と視線が交差し、混じり合う
お酒もせいもあるのか、どうか…少しだけ、顔を寄せるように──
と、注文してあったノナルコールの飲み物がテーブルへと置かれていた
「……───」
寄せていた身を少しだけ離し、テーブルの正面を向くように
少年の瞳は、いつもの彼に戻ってきた。……せっかく寄り添ってくれたのに、と
一瞬だけ、店員の背に向けて禍根の視線を送った
「……うん」
すぐに雰囲気はいつものゆったりとしたものに戻り、きれいな光に彩られたグラスを手にする
口に運べば当然、市販のオレンジジュースとはまるで違う上品な酸味と芳醇な柑橘の香りに包まれる
美味しい、と小さく呟きながら、ボトルのほうへも目を向けて
「…まだ飲むの、大丈夫…?」
少年がどれくらいお酒に強いのか、慣れているのかまだ知らない少女は覗き込むようにして、その顔を伺っていた
■神代理央 >
少女の視線に当てられた哀れな店員は、びくりと身を跳ねさせて慌てて立ち去っていく。
そんな店員の姿を、不思議そうに眺めていたのだが――
「今日くらいは…というより、酒を飲むのも何だか久し振りだからな。
偶には、というものさ。明日の仕事に、響かない程度で止めるつもりではあるけど」
濃い琥珀色のボトルから、自分のグラスに酒を注ぐ。
甘ったるいチョコレートの香りがふわり、と漂って。
それを其の侭、味わう様に口元へと。
「…まあ、潰れて冥に醜態を晒す様な事はしないさ。
そんなみっともないところ、冥の前で見せられないだろう?」
と、微笑む少年。その頬は、酒精に染まってほんの少し朱い。
…別に、酒に弱いという訳ではない。
寧ろ、年齢を考慮すれば強い方ではある。
だがそれは、年齢を考慮すれば…という、話。
リキュールの様な度数の高い酒を、半端なロックで傾けていた少年の瞳は、少女を写しながらも僅かにぼんやりとしている…だろうか。
■比良坂 冥 >
お酒を注ぐ様子も、それを飲む様子も
スマートで、女性の視線を集めるだろう大人の仕草…
それをその年齢で身につけているのは、文字通りの…境遇
生まれ、育ち…そういったものの違いから培われたもの──
「……不思議な匂いのお酒…こんなのもあるんだ。
…酔っ払っちゃっても大丈夫だよ。私が丁寧に、面倒見てあげる…」
目を細め、それを想像して微笑む
暗に、自分の前ではどんな姿を晒しても良い…ということを匂わせて
「見てみたい気も、…するし、ね……」
少年のプライドの高さは知りつつ、それを甘噛むような言葉を投げかける
自身の口元にあったグラスを追いて、再び少年へと少しだけ、その身を寄せる
ぼんやりとしたその瞳を、また覗きこむように
■神代理央 >
少女の言葉に、ちょっとだけ驚いた様に瞳を瞬かせた後。
同じ様に、瞳を細める。しかしそれは、少女とは少し違う色合い。
「…へえ?冥は、私が酔い潰れたところ、見てみたいのか。
それは構わないんだが…」
半分程酒が残ったグラスを、ゆっくりと少女の方へ。
二人の間に漂うのは、酒の甘ったるい香りだけ。
「…私は、冥が酔ってしまったところも見てみたいと思っているよ。
お揃いだな。二人して、同じ事考えて」
プライドの高さを擽られた故か。
或いは、少女の色香に当てられたからか。
ちゃぷ、とグラスの中身を揺らしながら、瞳を細めて少年は笑う。
少女の瞳を見返すその色は、珍しく…と表現しても良い程に。
僅かにではあるが、仄かな情欲の色が、灯っていた。
■比良坂 冥 >
「……ん」
ふわりと揺蕩う甘い香り
その匂いだけでも心地よく酔ってしまいそうなのは
心奪われた少年に魅入られているから…というのもあったのかもしれない
「……見せても、いいよ。
…理央相手なら、どんな顔も、どんな姿だって」
薄く笑う唇
顔を寄せ、その肩口にそっと頭を預けるようにしながら視線を見上げるように届け
「……酔わせて欲しいなァ…」
甘い声で囁きながら、グラスを持つ少年の手に自身の手を重ねて
■神代理央 >
こくり、と喉が鳴ったのは。
咥内に残っていた酒を飲み込んだからか。
それとも、少女の甘い声に、香りに、呑み込まれたからか。
仕事と、責務。それに追われる日々に、ほんの少しだけ――逃げ道を、求めてしまったからか。
「…じゃあ、見せて貰おうかな。
なあ、冥。わざわざ家に帰る必要も無いだろう?
此処は、この街は――"そういう場所"が、沢山あるものな」
グラスを、一度見せつける様に少女に掲げた後。
ソレを自分の唇に近付けて。濃厚なチョコレートとアルコールの入り混じったリキュールを、口に含んで。
少女の頭に手を添えると、其の侭ゆっくりと
互いの唇を重ねて、唯々甘ったるいだけの酒精を、少女の咥内に含ませようと――
■比良坂 冥 >
「…たまには、いいよね」
帰らずとも良い
その言葉に同意するように、重ねた手がするりとグラスを少年の口元へと寄せる
これ迄何度重ねただろう、柔らかな唇同士の触れ合う感触
今日のそれは今までのよりよりも遥かに甘く、濃厚な液体の交換
細い喉を小さく鳴らし、飲み込む
どこか少女とは掛け離れた妖艶な吐息と共に、甘ったるい香りが互いの間に広がった
「……もっと」
強請るように、再び少女のほうから唇を寄せる
喉奥を過ぎて胸の奥を熱くするソレに融かされるように
心地よい触れ合いを求めることを我慢できないように、求める
少年の心の隙間に入り込み、満たそうとする…あるいは、それ以上は別の場所で…と諭されるのか
■神代理央 >
重なる唇と、僅かに響く水音。
粘着質な音が、席を覆う様に設けられたパーテーションに反響して、更に、響く。
より深く求めるのは、少年も同じ。寧ろ、求めれば求める程に渇いてしまうのは雄としての性か。それとも――
…しかし、どんなに価格相応の場所…とは言っても。
此処は"そういう場所"ではない。
熱に浮かされ、甘さに溺れ、少女に堕ちても尚。
辛うじて一度少女と離れることが出来たのは、強靭な理性を我ながら褒め称えたいものだと、少年は内心自画自賛。
「……ん、っはぁ……。
…場所を、変えよう、か。ここは、酒と雰囲気を楽しむ場所でしか、ない。
"二人で"愉しむなら…もっと、違う場所の方が、良いだろう?」
二人の唇を繋いでいた甘ったるい銀色の糸が、一度切れる。
それをぼんやりと眺めていた視線は、静かに少女へと落ちて…堕ちてくる。
尋ねる様な言葉ではあるが、その声色は少女の拒絶を認めない様な。そんな、仄暗い熱が籠っている、だろうか。
少女がどう答えたのか。
そして二人が、この後何処へ向かったのか。
それを知るのは二人だけ。他に知る必要がある者は、誰もいないのだから。
歓楽街の夜は深い。しかしその闇が――今は、少年には心地良いものだった。
■比良坂 冥 >
ぷつりと切れた銀の糸を白く細い指がぽとりと受け止め、ぺろりと赤い舌がそれを舐め取る
紅潮した頬、艶めかしい舌…"この先"を否応なく想像させる仕草を見せながら、少女は笑う
落ちてきた、自分のところまで
じゃあ、抱きとめて、抱きしめて…もう離さないようにしないといけない──
「……ん。二人で……──」
耳元で熱っぽく囁かれた言葉
楽しく、愉しく過ごそう
常世の闇に包まれながら、昏く心地の良い夜へと二人は姿を暗ますのだろう
ご案内:「歓楽街」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」から比良坂 冥さんが去りました。