2021/12/24 のログ
ご案内:「歓楽街 高級寿司屋「寿司惨昧」」に紅龍さんが現れました。
紅龍 >  
【前回までの紅龍おじさん!】

 違反部活『蟠桃会』の用心棒、元軍人の紅龍は。
 『斬奪怪盗ダスクスレイ』の情報を集めるために探偵の『ノア』に仕事を依頼する。
 そんな探偵からの情報を得て、『怪盗』との遭遇に備えるため、風紀委員『芥子風菖蒲』が行った戦闘を分析していた。
 そうした日々の中、懐かしさを覚える少女、『マヤ』と知り合う。

 探偵に『マヤ』の調査を依頼する傍ら、目撃された『ガスマスク』の情報を集めに向かう龍。
 しかし、そこで出会ったのは『ガスマスク』本人だった。
 彼の言動に危うさを感じた龍は、お節介と理解しつつも余計なお世話を口にしてしまう。

 ――お前はいつだって『人殺し』になれる。

 そう、異能や魔術を操る少年少女たち。
 彼らはその気になれば、いつ、どこででも『人殺し』に成れてしまうのだ。
 それを龍はよく知っている。
 なぜならそんな『人殺し』を、幾人も『狩って』来たのだから。
 

ご案内:「歓楽街 高級寿司屋「寿司惨昧」」にノアさんが現れました。
紅龍 >  
 高級寿司屋『寿司惨昧』。
 この島に来てから度々利用している、完全個室の寿司屋だ。

 探偵が何か掴んだって言うもんだから、わざわざここで待ち合わせた。
 なにせ、ここは完全防音、完全個室。
 やべえ取引にも利用されているような店だ。
 内緒話をするには、持ってこいの場所と言える。

「ま、座れよ。
 メニューは好きに頼んでいいぞ、オレの奢りだ」

 座敷の座布団に腰を下ろし、掘られた床に足を降ろす。
 暖房は足元から利いていて、寒空の下を歩かされた体が休まった。

「しっかし、すっかりクリスマスだぁな。
 道理で冷え込むわけだ。
 くっそ、もうちっと厚着してくんだった」

 普段は特殊スーツを着込んでる分、さして気にならないが。
 いつもは耳が痛いだけで済むところ、今日は全身が冷えて仕方なかった。
 

ノア >  
個室に通され、まず気づくのは異常なまでの防音性。
表の作りは真っ当な寿司屋然とした拵えの店舗に見えたが、
中に入ってみれば抜け道裏口完備の接待用の作り。

「そうか? そんじゃ、遠慮なく」

妙に張りの強い座布団に腰を降ろしつつ、
痺れるような足先からじんわりと染み入る温もりを感じる。
金はあるから、と言いかけたが奢るという紅龍の気回しを無下にする物では無いか。

席の端に置かれたタッチパネルを操作しては
ドリンクのメニューを開いて紅龍の方にも向ける。
クリスマス限定メニューなんてのもあるらしい。

「今更クリスマスなんて気にするタチかよ。
 良い子ん所にしかプレゼントなんざ届かねぇっての。
 
 なんなら似合いのイヤーマフラーでも見繕うか?」

端末に目をやれば熱燗2合の欄にチェックが1つ。
注文履歴のボタンを押せば先に頼んだ物も分かるだろう。

『きつねうどん』や『茶碗蒸し』といった物を、
細身の姿に似合わぬ品数で頼んでいる。

……いや、寿司を食え。

紅龍 >  
 頼んだメニューも、扉に付いた小窓から差し入れられる。
 店員と顔を合わせる必要すらないこの場所は、身分が定かじゃねえ落第街の連中もそこそこ利用するって話だ。
 オレも『個人的』な取引のほとんどはここを使ってる。
 なにせ街の方じゃ、どこまで雇い主に筒抜けか、わかったもんじゃねえからな。

「なんだよ、クリスマスに馴染みがねえ寂しいやつか?
 イヤーマフラーなぁ――丁度いいのがねえんだよなぁ。

 っても、オレらはもらう側じゃなくてやる側だろ。
 そういや、プレゼントを配って歩いた事もあったっけねえ」

 端末を眺めながら注文をみりゃあ、うどんに茶碗蒸し。
 おいおい、寿司を食べろよ寿司を。

 酒は――やめとくか。
 『当日加工農業区の飲むヨーグルト1000ml』に『クリスマスチキンパーティープレートデラックス』、『クリームたっぷり苺のケーキ4号』――っと。

 注文を入力して、送信。
 ここは注文を受けてからの対応も早い。
 注文が入ってから調理しているが、大抵のものは十分と待たされずに届けられる。
 厨房がどんな仕組みになってんのか、一度覗いてみてえもんだ。
 

ノア >  
存在する事自体は知っていたが、殆どが個人取引メインの自分は
かしこまって個室を用意するような事も無かった。
雑踏の中で請け負い、雑踏の中で報告をこなす。
そのせいか、どうにも落ち着かない。

「相手がいたらイブの真昼間におっさんと寿司食いに来ねぇっての。
 まぁ、ガタイ良いと合うもん探すのも一苦労ってか。
 羨ましい悩みなもんだ……

 ま、それもそうか。
 そんなおっさんに俺からプレゼント」

言いつつゴトリと机の横に引っ張り出すのは少女からの口封じのおまけ。
3本のアンプルが収められた黒いケース。

警告音のような音が鳴り、暫くあって小窓から湯気の立ち昇るきつねうどんと茶碗蒸しが届く。
徳利の乗った盆の上には一緒に飲むヨーグルト。
奥に見えんのはなんだ、チキンプレートとケーキか?
寿司屋だぞ、寿司食えよおっさん。

「まぁ、色々と分かった事ぁあるんだけど。
 どっから話すかね」

 切り出すのは『フジシロマヤ』のお話。
 落第街を訪れたあのセーラー服の少女についての調査報告。

紅龍 >  
「んだよ、相手いねえのか?
 若いくせに寂しいねえ」

 からかってやりながら、出してきた物々しいケース。
 とりあえず受け取って、隣に引っ張ってきたが。
 さて、オレが頼んだのは情報だったはずだが、付属品か?

「別にどっからでも構わねえぞ。
 今日は一応、夜中までは予定ねえし、だらだらしたってかまわん」

 テーブルの1/4を占領するデカいプレートを置いて、ふんだんに生クリームと苺が盛られたケーキを並べる。
 さて食うか――という前に、懐からピルケースを取り出して、デカい錠剤をテーブルの上に転がした。
 あー、今日はあとどれ飲めばいいんだったか――メモは、と。