2022/01/13 のログ
ご案内:「歓楽街 高級寿司屋「寿司惨昧」」にノアさんが現れました。
ご案内:「歓楽街 高級寿司屋「寿司惨昧」」に釜雲 蓮司さんが現れました。
ノア >  
歓楽街 高級寿司屋「寿司惨昧」。
ここは完全個室の防音完備、裏取引から内緒話まで何でもござれの高級寿司屋だ。
座敷に敷かれた座布団に腰を降ろせば掘りごたつが足元から暖めてくれる、
取引用としての実用性もさることながら、作り自体も丁寧な居心地の良さがある。

施錠された部屋に聞こえた電子的な呼び出し音が一つ。
外を伺える電子の窓から来客の姿を認めて迎え入れる。

「久しぶりだな、蓮司」

以前訪れた際からは幾分かメニューも様変わりしているようではあるが、
寿司屋らしいものかららしからぬ物まで、一通り揃った相変わらずのレパートリーではあった。

「無理言って悪かったな、忙しい時期だったろ?
 ま、適当にかけてくれ」

釜雲 蓮司 >  
歓楽街にある高級寿司店 ここは初めての場所
中へと入り 店員へと待ち合わせしていることを伝え
施錠された個室へと 迎え入れてもらったのなら口元に笑みを

「お久しぶりです ノアさん。お元気でした?」

久しぶりに見た親友の顔を眺め そう訪ねたのなら
中へと入り 後で扉が閉まる音を聞きながら
相手の言葉に肩を竦め 

「いえいえ、ノアさんの声がけとあらば喜んで
 それに 仕事も終わらせてきましたし」

忙しいと言ってもワーカーホリック気味に働いているので
仕事はいつも少ないと感じることが多いくらいで 
むしろ 友人に会えるとあれば喜んで時間をあける

よいしょ と座布団に腰を下ろしながら 軽く中を見渡す
居心地の良いスペースは何時までもいたくなるような いい場所だ

「ふぅ ここいい場所ですね
 それで、どうしました? 親友と飲みたくなりました?」

手元のおしぼりで手を拭いた後にいつもの笑みを浮かべながら
少し浮かれ気味にそう話す と、おしぼりで顔を拭き

ノア >  
久しぶりに見る親友の顔に穏やかな笑みをたたえる。
もとよりこの歓楽街の裏側で一緒に仕事をする仲だったが、
彼が表の教師となった今では頻繁に顔を合わせるような事こそなくなったが、
自身にとっては裏の稼業から足を洗って元気にやっている彼の存在は希望のようなものではあった。

「あぁ、見ての通りの元気そのもの」

カラカラと笑って言って見せるが、数日前に病院を脱したばかりではある。
とはいえ、服用した薬のお陰か外傷が酷かったわけでも無い。
弱ったというよりも細ったと言える身体を癒すのが最優先と言ったところ。

「裏の怖いおっさんから教えてもらってな。
 まぁ、一緒に飲みたくなった――そんな所だな」

親友に倣って湯気の上がるおしぼりで手と顔を拭いて。
ややあっておっさんくさいか? と思い至るが目の前の彼以外の視線がある訳でも無い。

「俺の方もケリ付いたからその報告も兼ねて、な」

片が付いたら一番初めに直接伝えておこうと、決めていた。
異能の対価で一週間以上音信普通になったせいでいくらか遅くなってはしまったが。

釜雲 蓮司 >  
忙しいとは言え憧れであった教師になれた
だからこそ夢中になって働いていたのだが
親友はどうしているのかと忙しさが抜けた頃には思い返し心配をしていた。

「よかったです とはいえ、少し痩せました?」

最後に見た姿を思い出しては 今の相手の状態に首を傾げる
何かあったのだろうかと そう考えて問いかけたのだが
相手から放たれた言葉で 嬉しげに

「あはは、怖い人多いですよね 
 そう親友に言ってもらえると嬉しいです
 ……裏は相変わらずですか?」

顔を拭いた後 おっさん臭いなと思ったのだが 
自分の年を思い返しては ため息を吐き しょうがないと自らを慰める
が 耳に入った言葉で 目を開き

「……そうですか それで、どうでしたか」

おそらくは一番初めに伝えてくれたのだろう そう考えては
嬉しくもなったが 相手の胸中を思っては開いていた目を閉じ
どう聞いて良いか 少し悩んだ後に、そう問いかけた。

悩みもあれば聞きたい そんな心持で

ノア >  
「ははっ、お互い様って感じだな。
 そっちもちっとやつれたんじゃねぇか?」

表に行ってから危険こそ減ったはずなのだが、
表には表の気苦労があるという事だろう。

「おっかねぇ連中ばっかで相変わらず。
 大層な全面抗争なんかは減ったけど死神騒ぎなんぞも
 出てきてっし いつも通りの血生臭いまま」

穏やかな日など訪れるはずもなく。
違反部活が絶え間なく騒動を起こし、風紀が解決に動く。
あるいは違反部活同士で潰しあい、無関係な者でも巻き込まれていく。
そういう、いつも通りの日々。

「――思ってたより、ずっと空虚だった。
 凄ぇ身体中熱かったはずなのに、引き金引いて全部終わって。
 そんで目ぇ覚ましてみたら冷え切って何も残ってねぇ」

痛みだけが、ふわふわとした現実感の無さを打ち消してこの世に引き留めていた程に。
復讐心を糧に生きて来たせいで、それを無くせば残る物は極わずかだった。

「だからだろうな、アンタに会いたくなったのも。
 表で上手い事やってっかが気になっておちおち死んでもいられねぇ」

――無性に顔を見たくなった。そんな言葉は飲み込んで。
元気にしてんならそんだけで良かったんだけどな。

言いつつ電子端末を操作して、日本酒と徳利二つを頼む。
じきに小窓から提供されるだろう。

釜雲 蓮司 >  
「ふふ、ばれましたか でも楽しいですよ?」

生徒にどう接するべきか 教師としてどうあるべきか
そんな事を考えて 仕事をしていたら、食べる機会も減ってしまって
いつの間にやら体重が落ちてしまった それでも 楽しいから辞められるはずもなく。

「おっかないひとばかりですか あはは、相変わらずですね
 ノアさんですから 上手く立ち回れているのでしょう」

相手の気苦労は此方も随分と味わってきたつもりだ
だから心中を察することもできるつもりだ
だが 気をつけてほしいというのは 変わらずに心の中にあり

「……分かる なんてことは言いませんが
 私も復讐に生きてきた身ですので、少しは理解できるつもりです」

終わってみたら何も残っていない その言葉が胸に響く
此方は復讐を途中で投げた身なれど 空虚な気持ちというのは
何度か味わっていたことだった。

「嬉しい言葉です ありがとうございます
 ノアさんがいなかったら表に行けませんでしたし 
 愚痴る相手もいなくなってしまいます。
 だから、いなくならないでくださいね」

今日別れたら いなくなってしまうような気がして
失敗続きで愚痴溜まってます と強く言い放った後は
相談もありますし と指折り数え話したいことを数える。

「私、ノアさんがいないと駄目なんですからね?」

頼んでもらった日本酒と徳利が小窓から差し出され
それをまとめて持ったのなら、徳利を一つ渡し日本酒をつぐだろう

ノア >  
「楽しい、か。
 なった甲斐もあったってもんか? 教師って奴」

目の前の男の人を見る目の精確さと、目的に向けて動くプランの正しさは知っている。
そんな男がこうもやられる辺り、常世学園ってのはとんでも無い所らしい。
が、それでも吊り上がった頬の端を見れば本意でその苦労を背負っている事は分かる。
作り笑顔を絶やさなかった男の心からの笑顔は、やはり己を安心させてくれた。

「おっかねぇ奴ばっかりだけど、まぁなんとかな。
 上手く、な。最近危ないもんにばっか首突っ込んでっけど、
 まぁ死なない程度にやっていくさ」

この街で、その裏で生きていく者に安全は無い。
だからこそ、親友の心配という物も感じ取る事はできる。
その心配を無用な物にしたいとは思うが、無茶をしないとは言い切らない。
多少の無茶で変えられる物があるなら、やはりそこは性分。
手傷を負う程度は覚悟の上だ。

「大事なモンってのが、知らねぇ内にすり替わってたって気づかされたよ。
 復讐してぇんじゃなくて、ただ許せなかっただけ。
 ――ただ、辛かっただけ。
 蹲ったままの自分の背中を蹴りだすのに手っ取り早く手に取ったのがそれだっただけで」

少しずつ、取り戻していこう。
置き去りにしたままの青かった日々の心根を。
目の前の親友がそうしたように、捨て置いたはずの夢でも追いかけて。
そんな事を思っていれば、表情は自然と和らぐ。

「お、悪ぃ。ありがとな」

注がれた猪口をテーブルに置き、変わって相手の猪口に酒を注ぐ。
そんな強くないってのは知ってっけど、最初の一杯くらいは付き合ってくれ。

「――乾杯」

何に対して、というでもなく。
復讐心を無くした男二人の表情は、裏を歩いていた日々のそれより
幾分か穏やかなものだった。

釜雲 蓮司 >  
「ええ、なった甲斐がありますよ本当に
 頼りになる同僚に個性的な生徒…それと私の失敗と…たはは
 毎日が楽しくてしょうがないです」

毎日プランを練って、生徒一人ひとりを目にかけて
大変ではないと言えば嘘になるが それでも楽しい
昔の 毎日が苛立ちに満ちていた時とは違う

「ははは、私だったら巣にこもってますね
 そうやって首を突っ込むの、私はノアさんらしくていいと思いますよ
 ただまぁ ええ、死なない程度にお願いします
 あれでしたら雲雀を頼ってくださいね。タカハシはノアさんを高く買ってますから」

裏で生きていたからこそ分かるものの 毎日が死と隣り合わせ
そんな感覚に陥るところが裏の怖いところ
それに、相手の優しさと懐の広さ 立ち回りの上手さはよく分かっている
けれど 心配はしてしまうものでついついと 余計なおせっかいを

「復讐心ってのは怖いですよね 目的と手段が入れ替わってしまう
 ……お疲れさまでした 本当に」

此方のように、途中でやめたわけではなく 完遂しての言葉
それは此方と違って重みが違うけれど
失って蹲って 何かを手に取る時は手近なものに縋ってしまうのはよく分かるはずで
これから相手が何か新しいものを追いかけてくれたら親友としてこれほど嬉しいものもない。

「いえいえ おっと、此方こそありがとうございます」

酒を注いでくれたのなら、嬉しそうにしながら猪口を持ち
ゆっくりと掲げよう 今日は、新しい門出に何杯でも付き合うつもりで

「乾杯」

ぐいっと、一気に飲み干した そうすれば、日本酒を注ぎ
穏やかな心持ちと面持ちで 相手を見据え

「今やりたいこととか あるんですか?」

端末を取り寄せ 厚焼き玉子 それに炙りサーモンをたっぷりと注文し
相手の注文も聞きながら注文を終えつつ 聞いて。

ノア >  
「どっちが学んでんだか分かんねぇな……
 良い顔しやがって。
 んで、どうだ? お相手さんは見つかりそうか」

自分が学生だった頃など、あまりにも昔の事のように感じる。
そんな学舎の中で、何を教え何を学んでいるのだろうか。

「まぁ、巣籠りしながらでも食っていける方法はあんだけど、
 結局自分で駆けずり回ってる方が性に合ってんだから、しょうがないわな。
 ま、当面はそうそう死にかけるようなこたないだろうさ。
 今抱えてんのも人探し一件って体たらくだしな」

一線を越えれば、容易く刈り取られる。
そんな一線がそこら中に張り巡らされたのが、この街。
そんな街で、気まぐれに人助けをするために生きている。

「あぁ……」

お疲れ様でした、その言葉がこんなにも染みる。
自分の手を汚したのは、初めてだった。
落第街のごろつき相手に喧嘩紛いの事をして血を吐きあった事もあるが、
手にかけた事は、決してなかった。

「……」

決定的に、何かが変わってしまった実感があるとすればその点だった。
親友と共にこうして酒を呷る事すら、許されないのではないかという、罪悪感のような物。
それを拭い去るように、一息に猪口を傾ける。

「やりたい事?」

寝耳に水、とでも言いたげに。
死の間際に思い返したのは、なんだっただろうか。
親友の近況を憂いて、籠の中の少女を思い、黒き少女の幸せを願った。

「……人助け、とか?」

恥ずかしさ紛れにカレーとステーキを注文しながら、
視線をそっぽに向けて泳がせる。

釜雲 蓮司 >  
「いやはや本当に……初日なんて生徒に教えてもらいましたよ?
 ふふふ、毎日が楽しいです あー……それ聞いちゃいます? 
 綺麗な人や可愛い人はいっぱいいるんですけど……へたれなのか中々声をかけられず…!
 はぁ……そういうノアさんはどうなんですか」

自分がヘタレなのは重々承知していたが ここまでとは思っていなかった
忙しい毎日でも楽しくても そこだけはネックであり 悩みだ

「もう、ノアさんのことだからしょうがないですけど
 お人好しも大概にしないと足元掬われますからね?
 じゃあ追加の依頼で、私のお嫁さん探しも追加で…!」

裏は本当に怖い所で 道を一本違えただけで死につながる
そんな中で生き残っているのだ 自分が信頼しなくてどうするのだと
そう思いながらも ついお節介な言葉をかけてしまう
そうして、それを紛らわすように 冗談交じりの言葉を吐いた

「……」

なにか、雰囲気が違うのには気づいていた
それでも言わなかったのは気遣っていたから
だけれど 少し迷った上で 口を開こう

「手を汚しましたか?」

新兵が人殺しの処女を切ったときのような 
そんな雰囲気を感じ取って それだけ聞いた
聞いてはいけないことだったのかもしれないが 直接聞いておきたかった。 

そうして 問いにキョトンとした顔を見せるので
くすくす 軽く笑ったけれど 相手から聞こえる言葉 それに
目を輝かせ ぐいっと猪口を呷った後に ニィ 口角を引き上げ

「良いじゃないですか ノアさんにぴったりですよ
 優しくて気が利いて 助けられた人は惚れそうですね」

優しくて困った人を放っておけない相手らしい いい夢だと頷いた

ノア >  
「まぁ、真っ当に勉学を教えるなんざ素人だしな。
 金融界隈じゃ敵無しだった雲雀の元頭取さんも
 色恋沙汰にはとんと疎いってわけだ」

ヘタレと来たかとケラケラと笑い、話を振られれば苦笑い。
仕事柄、年齢問わず人に会う事や話す事は多いが
それでも恋愛感情という物を自覚するような事は無い。
それこそ学生時代を最後に心を向ける事など無くなってしまった。
残された唯一の家族を上回る親愛を誰かに向ける事も無く。

「足元掬われて転ぶような歩き方は、もうしねぇって。
 いや、俺のは失せ物向けの探索異能だぞ……?」

娼館の女性を紹介するわけにもいかないだろう? と笑いあう。
信頼と信用、それが今の自分を生かしている。
お節介といえばそうだが、ありがたい限りだった。

「まぁ、な」

自分でやらなければ、意味の無い事だったから。
捨て置いたとて勝手に死んでいったであろう相手であっても、
それを見届けるだけで、自分の気が紛れる訳もなく。

「たぶん、こっから先俺は躊躇えない」

引き金の重さと命の重さ。
マキャヴェリズムというでも無いが、非道徳的な事だとしても
それを背負う事をできるようになってしまった。

だからこそ、正しさを持っていたいと願う。
正しくありたいと。その実行方法が正しく無くとも。

「自分と同じような物をさ、誰かが背負うのもう見たくねぇんだ」

猪口を傾けるスピードは増していく。
防げる悲劇があるのなら、無くせる無為な死があるのなら。
起こった事しか知る事のできぬ己の異能と真逆の願いに、ため息ひとつをつきながら。

釜雲 蓮司 >  
「そうですとも! 生徒が出来るだけ面白く感じるような授業を…!
 まぁ、その通りですね。はぁ、自分が情けない」

ケラケラと笑ってくれる親友のありがたさが身にしみる
話を振ったら苦笑いされたので、これ以上は言わないでおこう
だけど 何時の日か向けられるような相手が見つかればいいと
心の底から思う だが、これはどうなるかわからないから、願うだけ。

「ならいいのですけど……歳ですかね、お節介が多くって
 恋の失せ物とか……いや、意味わかりませんね」

続いた言葉 それに笑い合い
信頼と信用は、昔からある男で だからこそ
親友にもなれた だからついついお節介を焼いてしまうのにため息を吐いて

「……そうですか」

咎めるようなことなんてしないし できない
此方もさんざん手を汚してきたのだから

「躊躇えない、ですか」

なんとなく分かってしまうのは 
自分も同じ様な経験があるからだろうか
それでも、相手の考えは此方のよりもっと崇高なもの

殺してしまった、殺すのに慣れてしまった だから問題ない
そう思っていた自分とは正反対の、素晴らしい考え。

「だから躊躇いなく、ですか
 ふふ、貴方は本当にいい人だ」

傾けるスピードが上がっていくのをただ眺める
相手と違うのは 止める側ではなく引き起こす側だったこと
もっといい方法もあったろうにと 昔のことを今でも考える事がある

「今日は、夜明けまで語り合いましょうか」

今日くらいは、互いに酔いつぶれてしまおう
人目も気にしない場所だ、酔いつぶれて嫌なことは忘れてしまおう。
そうして 起きたら互いに能天気に笑えればいい