2022/08/20 のログ
ご案内:「歓楽街奥地」にパラドックスさんが現れました。
ご案内:「歓楽街奥地」に川添 春香さんが現れました。
■川添 春香 >
歓楽街で起きるはずだった事件を一つ、未然に阻止した。
最近は自分の意思があるのか、未来の携帯デバイスに操作されているのか。
時々わからなくなる。
ただ、死ぬはずだった、大怪我をするはずだった誰かは。
私が介入しなければもっとサイテーな気分だっただろう。
そう思って行動をしている。
ダメだな……パパだったら。
もっと割り切って人助けしてるはずなのに。
思えば、普段はあまり来ない歓楽街の深いところにいる。
周りを見渡して、何気なく匂いを嗅いだ。
■パラドックス >
恐怖という名の隣人。
その言葉に偽りなく、それはいつの間にか傍にいる。
不意に携帯デバイスがけたたましく鳴り響いた。
無数のエラー音と共に、少女の"景色"が歪む。
迸るエネルギーの本流、稲妻のように辺りを焦がし、歪の如く"門(アナ)"が開けられた。
悠然とそこに現れた男は、懐かしむように周囲を見渡した。
「……此れがこの時代の常世学園か。おかしいな、本来の座標とズレているが……」
胡乱な瞳に移る、鮮やかな少女。
"門"が閉じると同時に、男は合点が言ったと言わんばかりに頷いた。
「成る程な。"お仲間"に惹かれたという訳か……。
そこのお前、一つ聞きたい。お前はこの学園の生徒か?」
予想だにしない事故だ。
まったく、これだから連中の作った装備は当てにならない。
とは言え、問題なく到達は出来た。
事情などお構いなし、問いかけと共に白い人差し指が少女を指す。
■川添 春香 >
突如、周囲の空間が歪んでいく。
エラー音、イオン臭、エネルギーと静かなる空間の境界。
……言いしれない不吉に心がざわめく。
そして、出現する門。
人のいる空間に門が出現するなんて。
そこから現れた男性は平然としている。
スキンヘッド、見上げるような長身、そして虚空を映すかのような瞳。
「………!?」
人工的に“門”が操作できるわけがない。
それは現代科学では……私の時代であっても同じ。
「お仲間……?」
人差し指を向けられると、たじろぎながらその男に答える。
「は、はい。私は常世学園の生徒ですが…あなたは?」
ストレンジャーに問われ、私は一つ答えて一つ問う。
■パラドックス >
微動だにせず、身じろぎもせず、機械のように冷たい眼差し。
何者だ。その問いに対し、男の腰にデジタル時計を模した"ベルト"が装着される。
<クォンタムドライバー……!>
無機質な電子音性が、辺りに響いた。
「……私の名はパラドックス」
両腕をクロスし、手首を捻る。
男の周囲に現れたるは無数の数字。
それは、在りし日の日付、時間。
ホログラムのように浮かび上がるそれには、砂嵐に塗れた何処かの光景が映っている。
「……この時代を"破壊する"者だ」
「─────変身」
<クォンタムタイム!>
そして、浮かび上がる時間軸が砂となり零れ落ち、男の体を包んだ。
周囲に迸るエネルギーが突風となり建物に叩きつけられ、ゴミを巻き上げる小竜巻。
それを振り払うように現れたのは、全身黒いケーブルを巻き付けたかのような
無数のデジタル時計を身に着けた"人型の怪人"と呼ぶに相応しい風貌。
顔と思わしき「0:0」の赤い数値が、瞳のように点滅する。
<クォンタムウィズパラドクス……!>
「……フン!」
アスファルトを削り、怪人が踏み込む。
突風を巻き上げる踏み込み。有無を言わさず、その鉄拳が胸部目掛けて飛んでいく。
■川添 春香 >
「な………!?」
巻き上がる旋風、そして現れる異形。
装甲を身につけた!?
未来の技術………未来の戦士ッ!!
襲いかかってくるッ!!
身構えない、力を抜く。
超軟体を使って上半身を極限まで柔らかくして衝撃を受け流……
受け流せず、吹き飛んで背中から壁に叩きつけられる。
「かは………ッ」
血を吐いてその場に蹲る。
パラパラと背後で散るコンクリート片。
騒ぎを聞きつけた住民に声を張る。
「来ないでくださいッ! 早く風紀委員を呼んで!!」
混乱する思考、超軟体の上から衝撃を通す威力の拳。
まずは仕掛ける!!
「うわあああああぁぁ!!」
腕を振り上げて殴りかかる。
ただの女の細腕じゃない、鎧通しの拳……川添孝一直伝“浸透打”。
腕の骨を変異させ、衝撃を中に通してダメージを与える!!
■パラドックス >
妙な手ごたえだ。
肉事砕いたつもりだが、思ったよりダメージが入っていない。
成る程、これは……。
『"異能者"か……』
忌々しげに、電光の奥で吐き捨てた。
自然と握る拳に力が入り、電光の奥に見える住民の姿。
元々の転送先は確か荒野、人気のない場所であったはずだ。
だからこそ、こればかりは"僥倖"と電光の奥でほくそ笑む。
『むっ……!?』
だからこそ、一瞬でも少女から気が逸れたのが慢心。
振り上がる拳を直に受け、強い衝撃が鎧から火花を散らし
地に足をつけたまま大きく後ずさりすることになった。
『……ぬぅぅ……ハァッ!!』
<ショット!>
超技術の防御装甲を貫いて、直に生身へと響くダメージ。
全身の肉が軋むような感覚に、一瞬身じろぎするがそれらを振り払うように一喝!
即座にベルトの側面に触れれば、その右手にはケーブルをむき出しにした歪なライフルが握られていた。
黒光りする銃口に青白いエネルギーが収束し─────。
放たれた先は、"背を向け逃げている住民にだ"。
荒唐無稽な宣言ではあったものの、男の言葉に嘘偽りはない。
この時代の"破壊"。そこに住む住民を脅かす"恐怖"。
そう、だからこそ"人のいる付近に飛ばされたのが幸運でしかなかった"のだ。
放たれた青白の一矢。今まさに貫かんとするそれをどうする……!
■川添 春香 >
「お前の相手は、私だ!!」
人々を睥睨した異形の装甲へ叫んで拳を向ける。
当たれば相手は怯む、しかし……硬い!!
なんて硬度、普通に戦えばダメージが通らないかも知れない。
だったら相手が倒れるまで何度でも浸透打を浴びせるまで。
その時。
思考が乱れた。
相手が逃げる住民に、ライフルのようなものを向けたからだ。
異能も魔導書も間に合わない。
だったら私が見せられる女伊達は、これしかない。
飛び込んで背中で青白いエネルギー弾を受ける。
全身がバラバラになりそうなほどの痛みと衝撃が体を貫いた。
「う………あ…ッ」
伝播ソリトン? イオン砲?
わからない、人を破壊して余りある威力のそれに地面を転がる。
「卑怯者………!!」
「逃げる一般人に銃を向けるなんて……!」
呼吸を整えろ、川添春香! 次の一手を考えろ!!
お前は……愛してくれた両親に顔向けができる生き方をするんだ…!!
■パラドックス >
クォンタムシューター。
エネルギー粒子の塊を撃ちだす要するに超熱線砲とも言うべき代物だ。
この時代の破壊を遂行する男にとって、当然引き金に慈悲はない。
目の前の景色があの時の同じように焼けるだけのはずだった。
『……ほう』
これは予想外。いや、少しは予測していた。
目の前の少女がその身を挺して庇って見せたのだ。
弾けるエネルギー。文字通り身を焼く痛みのはずだが、それでも吠えて見せた。
見た目の可憐さとは裏腹に、張り上げる声には確かな意思を感じる。
電光の奥、男は興味深そうに目を細める。
『何故庇った?知り合いか?だが、解せんな。
少しでも生存率を伸ばすのであれば、見捨てるべきだ』
<スラッシュ!>
ベルトの音声と同時に、ライフルの銃身が青白の電光に包まれた。
超エネルギーの刃。有体の言ってしまえば、熱し焼き切る"ビームサーベル"だ。
『それとも学園の生徒は命を賭して"助け合い"を教えられたか?』
『──────美しいが、無意味な行いだ……!』
何一つ状況の解決へと繋がる事はない。
それほどまでして他者を助ける"美学"のつもりであるならば
その美しさのまま散らせてやる。何処までも冷酷な光を振り上げ
怪人は砂埃を巻き上げ駆け出し、少女目掛けて斬りかかる!
触れれば両断、縦に真っ二つにしてやろう─────!
■川添 春香 >
「人の命は大事なものなんだ!!」
「一人分の悪意でそれを簡単に奪おうというのなら……くっ」
這いつくばりながら手で上体を起こす。
「私が相手だ!!」
ライフルの銃身が破滅の光に包まれる。
こいつ……トドメを刺しにくる!!
腕をバネのようにして弾かれるように後方に飛ぶ。
狭い場所で私と戦う不利を教えてやる!!
「受けろ、私の結界を!!」
髪の毛を伸ばし、周囲に伸ばしながら蜘蛛の巣状に編んで相手に飛ばす。
私の髪の毛は全力が出せるコンディションなら一本で2トンを支える。
斬撃の結界……こいつに通じなかったとしても。
腕の一本だけでも捕らえれば!!
■パラドックス >
『それが遺言か……!!』
青白の軌跡。
それに対抗して放つ蜘蛛の巣状の何か。
先の一撃の手応え。身体系の異能と見たかが何かあるのか?
……否、ただの悪あがきだ!
『……無駄だ!』
悪あがきと吐き捨て、それ事両断する青白の電光。
空を焦がす火花と共に、その髪の毛を焼き切った。
───────はずだった。
『何……!?』
確かに焼け焦げているものの、"想定と違う"。
ライフルごと髪の毛が執念の如く絡みつき
装甲に、ケーブルに浸食するように締め上げてくる。
バチ、バチ、と断続的にエネルギーが漏れるように火花を散らした。
明らかに怪人の動きが鈍くなった。
『身体強化だけの異能ではない……!?この髪の毛の性質は……!』
その未来の技術は確かに強力であった。
男は異能者でなくとも、それに迫る超技術。
未来から現れた視角は確かな力を以て過去を粉砕しにきたが
"驕り"があった。技術力の過信。そして、対象の能力の軽視。
踏み躙ろうと、足元を見なかった結果"掬われた"のだ。
それでも確かなパワーがある。
無防備を晒し、ギチギチと髪の毛を軋ませながらベルトへと手を伸ばすが────…。
■川添 春香 >
短時間に力を使いすぎた。
だけど、絶対に引けない。
ここで引いたらこいつは人を殺す!!
「正体不明のストレンジャーよ──────」
魔導書『非時香菓考』を取り出す。
ひとりでにページがめくられ、最後のページが光りだす。
「あなたに是非は問わない」
こいつの何もかもを氷に鎖してやる!!
「あなたはここで冷凍刑だッ!!」
ありったけの魔力を込めろ!!
最終詠唱でこいつを氷棺に封印するんだ!!
「最後の記憶!!」
「船に載せられた狂女が船上で一言、『雪が見たい』と呟いた」
「ひとひらの雪が彼女の眼の下につき、溶けて流れた」
「導きの終焉(ブックエンド)────!!」
大規模凍結を引き起こすこの魔導書、最大最強の魔術。
冷気が周囲に満ちる。
「私からも言わせてもらう……無駄だッ!!」
■パラドックス >
『何……!?』
周囲の空気が、強化装甲が冷たくなっていく。
何かの魔術か。あの本から放たれたものか。
少なくとも、自分の時代には知らないものだ。
動きが鈍く、なっていく。装甲を貫通し、肉が、冷気が、何もかも奪っていく。
凍り付いていく怪人の体。全身のデジタル時計が出鱈目な数字を点滅させている。
『────無駄、だと……?』
確かに少女の意地が、力が生んだ優勢だ。
しかし、厄介かな。男も無作為の破壊者ではなかった。
『お前如きに終わらせられるモノかァッ!!』
<クォンタムバースト!フィニッシュブレイク!!>
絶叫。それは確かに、"譲れないものがある"事を込めた咆哮だ。
片腕をベルトに叩きつけると同時に、怪人の全身が青白く迸る。
全身のエネルギーがオーバーフローし、冷気を打ち消す熱光。
全てのデジタル時計が「0」を示し、脚部にその光を一点集中。
『ハァァァァァァッ!!』
アスファルトを蹴散らし、怪人が宙を舞う。
少女の目前、ホログラムのように現在時刻が表示される。
それはまるで、彼女のあり方を示すような時間だった。
滅光の光がそれを鏡のように砕き、絶対の破壊力を持った浴びせ蹴りが襲い掛かる─────!
■川添 春香 >
相手の叫び。
それは冷気の向こうから放たれる災禍の絶叫。
まずい、決めきれなかった!
防御をしないと……防御………を…
力の消耗と負傷で遠のく意識を必死に奮い立たせる。
あまりにもダメージを受けすぎた。
再生能力が間に合わない……!
「216番目の記憶!!」
「その樵が一本、木を切り倒すたびに!!」
「それらの樹木は死別した妻の声で断末魔を上げる!!」
「ゴーストウォール!!」
防御フィールドを三枚、展開する魔術。
喉を変質させて高速詠唱したけど、十分な防御効果を持つはず。
だけど。
「!!」
相手の蹴りは全ての防御壁を砕いて、
私に惨劇そのものの威力を秘めたキックを浴びせる。
「うわあああああああぁ!!」
吹き飛ばされて倒れ伏す。
意識も朦朧、防御壁がなかったら即死だったその破壊力。
戦闘不能……再生能力に全パワーを集中しても立ち上がれない。
「どう……して…」
■パラドックス >
<終刻────!>
無慈悲に告げられる電子音声。
着地すると同時にバチバチのエネルギーの本流が迸る。
少女の体には痛みと共に残ったエネルギーの残留が、バチバチと迸っているだろう。
『フゥゥゥゥ……!!』
全身のコードが跳ね上がり、白い煙が排熱される。
クォンタムシステムによる文字通りの"必殺技"。
確実に殺したと思ったが、直前で防御したか。
一筋縄でいくとは思っていなかったが、たかが"生徒一人"に手古摺るのは予想外だ。
『このレベルの連中がいるとなれば、作戦を考える必要があるな……』
此処が巨大な学園都市ということは知っている。
差はあれど、戦える生徒がここまで手傷を負わせて来るのであれば、力押しは通じまい。
侮れまい、常世学園。だが、既に侵略の一手は始まっている。
『……愚かな女だ。お前はもう何も知ることはない』
<ショット!>
無慈悲な銃口が、倒れ伏す少女の体に向けられる。
電光数字の奥の表情でさえ冷酷に、無機質に。
キルマシーンとも言うべき狂女よりも冷たき視線が向けられていた。
『お前は第一の"見せしめ"だ。お前を期に、学園の全てを滅ぼしてやる』
『────お前の名は、歴史から永久に消える』
人差し指がトリガーに掛けられた刹那、まばゆいライトが怪人を照らした。
それに怯んだ刹那、多数の発砲音と共に装甲が火花を散らせ、その体を後ずさりさせた。
『……時間を掛けすぎたか』
その向こう側に見えるのは複数の生徒。
この学園の秩序を担う双翼の片割れだ。
彼女が身を挺して救った命が呼び寄せてくれた。
風紀委員の到着が間に合った瞬間だ。
『……命は預けておく。だが、私の名を忘れるな』
『この時代は、何れ私に吞まれるのだ』
<ファースト!>
多勢に無勢。
幾らシステムが優れていようと手負いであり、少女と同格、それ以上の連中を相手にするつもりはない。
朦朧とする意識に刻むように指を指し、ベルトを触れば怪人の姿はぼやけた。
加速による高速移動だ。未来から現れた脅威は、少女の尽力によって一時的に退いた。
しかし、驚異の芽は何時でも潜んでいる。
それが芽吹く日は─────────。
■川添 春香 >
死ぬ。私はここで。
その事実をどこか私は俯瞰してみていた。
まるで現実感がない。
これが終わりなの……?
「この街の………正義は…」
手元の砂を掻くように僅かに力を込める。
「負けない…………っ」
これが私の最後の言葉。
なんて陳腐で、安易な……
それでも、この街にある正義を信じた言葉。
次の瞬間、風紀委員の射撃が入る。
去っていく私にかけられる言葉。
時代が呑まれる………?
思考が言葉を噛み砕き、嚥下するより先に。
私は意識を手放した。
それから私は風紀委員に救助され。
正体不明の敵について語ることになる。
戦いは。ここから始まったのかも知れない。
ご案内:「歓楽街奥地」からパラドックスさんが去りました。
ご案内:「歓楽街奥地」から川添 春香さんが去りました。