2022/10/02 のログ
■紅龍 >
「貰いに行く、って言い方してもいけません。
まったく――ちゃんとお金もらえる仕事、紹介してやろうか?
あまり『貰いに』行き過ぎて、怖い人に掴まっても知らなねーぞ」
確かにこいつの趣味考えると、それなりに稼がないと懐に余裕はねえだろうなぁ。
うっかり安く使われてたりしねえか、心配になるじゃねえか。
「だーかーらー、可愛くしなくていーっての。
昔やらされて、ちょっとしたトラウマなの!
ったくよ。
どうせなら、嬢ちゃん自身が可愛くなればいいじゃねえか」
他人じゃなくて、自分を着飾る事に興味はないのかねえ。
――いい素材だと思うんだけどな。
■モールディングベア > 「ええー。 お金はあるけど、ないときだってあるよ。
布がほしいときは学園にいくけど、最近は学園のひとたちも生地を
おっきなロッカーにいれてるから、わたしでも開けるのがちょっと大変なんだ。」
度重なる襲撃に業を煮やした服飾関連の部活では、
『登山中に食べ物を捨てない』のと同じトーンで、
『布地を広げて置いておかない』ことが徹底されている。
最近では頑丈なロッカーの他に、周囲に服飾の図鑑などを置いておくことで、
治安部隊到着までの時間を稼ぐ方法も考案されているので、
ベアの襲撃成功率は低下する一方なのである。
「わたし…? わたしは、おっきいし、かわいくないし…。
ホンロンのおじさんも『かわいい女の子が好きなら、自分をかわいい女の子に改造すればいい』って
言われたら…ちがう!ってなるでしょ? そういうことなんだとおもう。」
自分が可愛くなりたいのではない。 かわいいものを愛でたいのだ。
大きな身振りと手振りを交えて、頑張って説明する。
確固たる違いがあるのだと言わんばかりの態度だった。
■紅龍 >
「じゃあ、ないときはちょっと我慢しなさい。
それか、もっとお金稼ぎなさい」
一応、まっとうな事を言っておく。
まあここは大人として、いいよとは言えないわけでな。
「――そうかね?
お前さんも十分、いい素材してると思うけどな。
可愛くなりたければ、してやれると思うが」
とはいえ、嬢ちゃんの言う事も理解はできる。
「たしかになー。
いい女は好きだが、オレが女になりてえわけじゃねえし。
――でもそうか。
それならお前さん、縫製系の部活で働いたらどうだ?
デザイナーとか向いてるんじゃねえの」
一生懸命な熱意は確かに伝わってくる。
しかし、その熱意がただの『やんちゃ』で済んでるうちはいいが。
いつか、誰かに利用されないとも限らない。
そいつは、こんな純粋な面を見ちまうと面白くねえ。
■モールディングベア > 「えー。」
もちろん、彼のいうように”まっとうに”やってればいいのだろうけど、
そうもいかないことはいっぱいある。 例えば、勉強が苦手であるとか、
もらいに行くほうが楽だとか、そういった理屈だ。
相手の説得に眉をしかめて不満を表わし、頬を膨らませた。
「部活は、わたし、あんまり向いていなくて…。
それに、部活のひとたちはモデルさんをかわいいかわいいしたりしないよ。
わたしはするし、したいけど…。」
ちょっとだけ悲しげな顔で相手の言葉に答える。
集団行動があんまり得意ではない上に、さらにモデルさんを愛で倒すとなると、
もはや服飾を主とする部活という話を超えてしまうのだ。
学校にフィットするわけでもなく、さりとて部活でも合わないはぐれものというわけである。
耳が示すように、単独行動を主とする特性か、はたまた本人の人格なのか。
いずれにせよ、然るべき理由があって現在がある、という話なのだった。
■紅龍 >
「むくれないの。
ああでも、そうだな。
知ってる縫製系の部活で、余った布地とかなら融通してやれるかもしれねえな。
話通してやろうか?
端切れなら貰えるだろうし、ちゃんとした生地でも安く買えると思うぜ」
まっとうにやれ、と言った以上、言うだけってのは卑怯だ。
手伝える事があれば手伝ってやるのが筋ってもんだろう。
特に落第街なんて街じゃ――しっかり繋がりを持ってる方がずっと生きやすい。
騙されたり、襲われたり、コネクションや信用があればトラブルは減らせるもんだ。
「あー、なるほどね。
苦労してんのね、お前さんも」
情報は持っていても、話して初めてわかる事もある。
この嬢ちゃんは純粋で、自分の欲求に素直だ。
そのせいで集団に馴染めないから、あの街が居心地いいんだろう。
「――ま、いいんじゃねえの?
殺したり監禁したり、そこまではやってねえだろ。
可愛くして可愛がって、満足したら元に戻してやるってんなら。
さっきも話した通り、やり過ぎなけりゃな」
それも、裏でやってる分には、自己責任だ。
そこまでとやかく言うつもりも、取り締まるつもりもねえ。
ただなぁ。
オレにその熱意が向かなければいいんだけどなぁ。
■モールディングベア > 「ありがとう!布地はいくらあってもたしないから、嬉しい。
安いともっと嬉しい! すごい!」
相手の思わぬ提言に、瞳を輝かせる。 普段のお金でたくさん布地が買えるということだ。
喜びにぴょこぴょこと跳ねると、背丈に見合ったサイズの胸が柔らかく揺れた。
「あのね、じゃあこれ、これねっ」
ローブからくしゃくしゃのメモを取り出して、相手に握らせる。
真っ黒に見えるぐらいみっちりと書かれたメモは、
ほしい生地を記録し、今まで溜め込んでいたリストだった。
「うん。 かわいいかわいいしてー、満足したら解放するよ。
もとに戻るのは…うーん……すこし時間が経てば直るよ。
うまくやらないと時間がかかるけど…。」
自分の異能…体内のパルスを歪ませ、相手の肉体を歪める力。
もとに戻るには、他人のパルスを使って歪みを矯正する必要があるのだ。
つまり、変化させられた人が誰かと振れたりすることがない場合、
パルスを矯正することができず、すなわち元に戻るのは難しい。
相手の言葉に真面目に答えてから、ちょっと考える。
もとに戻れるからやり過ぎじゃない。たぶん。
■紅龍 >
「ああ、お前さんがわざと戻らないようにしてるんじゃなきゃいいんだよ。
最悪、シスターさんがやってる施療院になり転がりこみゃぁいいんだからな」
そういう所にも駆け込めないヤツは、後ろめたいような連中だ。
そんなやつらが多少痛い目を見たところで、構いやしない。
やっぱり、ちょっとやんちゃなだけのお嬢さんだな。
これくらいなら、ああ、随分と可愛いもんだ。
「はいはい、おじさん、いい女には甘くなっちゃうからね。
はは、コイツはたくさんため込んだな。
ああでも――うん、これなら希少品があるでもなし、なんとかなるだろ」
表も裏も問わず、縫製系、服飾系の部活動は需要が高く、数も多い。
これだけの量を欲しがってるとなれば、大口顧客として優待させる事も出来なくはないだろう。
取引してくれそうな部活は幾つか目星がつく。
ウチとも取引がある所ならより話は通しやすい。
「あー、嬢ちゃん、連絡先とかあるか?
オレが仲介してやってもいいけどよ、直接取引できる方がいいだろ。
ちゃんと話は通しておいてやるからさ」
手製のほしい物リストに一通り目を通して、嬢ちゃんの手に戻す。
これは嬢ちゃんの熱意が詰まった大切なもんだ。
こんなおじさんが預かるには勿体ない。
■モールディングベア > 「うん。」
大人しくうなずく。 自分の異能を使ったところで大騒ぎにならないのはそのためだ。
良くも悪くも長期的な影響がでないという点で見逃されている可能性は十分ある。
性癖に深刻なダメージを受ける可能性はあるかもしれないが、それはそれだ。
「いっぱいメモあるよ! まだまだいっぱいあるし…」
ポケットから、次から次へとメモが出てくる。
チラシであったり、ティッシュであったり、ダンボールのかけらであったり、
それらすべてがみっちりと黒いインクに覆われていた。
「連絡先……。 これでいい?」
旧式の携帯端末をそっと相手に差し出す。
最低限の連絡はできる代物だ。
受け取ったメモをフローブの中に戻してから、
ものすごく嬉しそうな顔で相手をみやった。
「ありがとうねえ、いっぱい生地が買えるといいな~」
嬉しい!というオーラをみなぎらせながら、満足げにうなずく。
何を作るか…計画が頭の中で急速に動きはじめていた。
■紅龍 >
「ああ、ああ、わかったわかった、大事にしまっとけ」
嬉しそうな様子でメモを持ち出すあたりで、苦笑い。
それだけの熱意を持てるのは良い事だ。
やってる事はんまあ、ともかくだが。
「おう、連絡さえとれりゃあ大丈夫だよ。
ちっと見せてもらうぞ」
携帯端末を見て、連絡先を記録する。
で、ついでにささっと、取引のある部活に一通連絡を入れておく。
これで嬢ちゃんの方に直接連絡が届くだろう、
「どういたしまして。
良いもんが出来るよう、応援してるよ」
まあ、オレがターゲットになったら全力で逃げるけどな。
「――さて、それじゃあ観察の邪魔したな。
おじさんはこの辺で、おいとまするよ」
ひらひらと手を振って背中を向け――
「ああ、そうだ」
念のために伝えておいた方がいいな。
「今、『パラドックス』とか言う物騒な奴がうろついてっから。
あんまり目立たないように気をつけろよ。
――んじゃ、再見」
背中を向けたまま手を振って、歓楽街を後にする。
オレの端末には、早速、いくつかの部活から返事がきていた。
どれも色よい返事だ。
きっと嬢ちゃんにも、いい連絡が届く事だろう。
■モールディングベア > 「うん。」
言われて素直に全部ローブにしまう。
図体がでかいのでローブもでかく、必然的に格納スペースも多い。
「大丈夫? 端末わかる?
わたし、あんまり難しいのがわからなくて…」
旧型端末とはいえ、あくまでも”普通の”サイズであり、
自分のような大型の存在が使うようには出来てはいない。
さくさくと連絡先のチェックなどをやってくれる相手を、
心配半分、尊敬半分の顔で眺めていた。
「うん、いっぱい作るよ!いっぱいつくっていっぱい可愛くするよ!」
高らかに宣言する。 その声に、小さくビクリと反応した人が往来の中で
見受けられたが、それはきっと”犠牲者”だ。
「ありがとー! お…どうしたの?
パラドックス……うん、わかった!」
警告にも元気よく答える。 多分名前からしてちょっと怖目の人なのかもしれない。
何重ものレースとフリルで包み込んで、お人形みたいに”可愛く”仕立て上げたら、
きっと素敵そう、そんな雰囲気がする。
去っていくおじさんに元気よく手を振り、人混みにその姿が消えるのを見送ってから、
自分もアジトに戻ることにした。
もちろん、その後各部活からの交渉案件に狂喜乱舞したのは言うまでもない。
ご案内:「歓楽街」から紅龍さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」からモールディングベアさんが去りました。