2019/04/25 のログ
ご案内:「落第街大通り」にアリスさんが現れました。
■アリス >
私、アリス・アンダーソン!
今年の四月から二年生になった常世学園の生徒!
私は今……柄の悪い人たちに追われている。
なんで? こんなことに?
というか、どうにも私が異能をオープンに使いすぎていて、
私が物質創造系の異能っていうことだけを知ったワルイ人たちが『あいつに麻薬作らせようぜ』って流れになったらしく。
街中で追われている。
逃げてる間に落第街くらいの位置に来てしまったし、状況はどんどん悪化している。
慣れた手つきで風紀に通報、でも今いる正確な場所がどうにも伝えられない。
ははは。どうしてこう治安が悪いんだ。世紀末か。
乾いた笑いが顔に張り付いている。
■アリス >
どうにも不運が続くのでこの前、異能の検査をしてもらったけど異常は見つからなかった。
それはそうだよね。
異能と不運の因果関係がさくっと解明できるなら世の中もうちょっと平易に運営できている。
麻薬を作らされるのは御免だ。
多分作れるけど、私の流儀に反する。
それに作らされた後にどうなるかもわかりきっている。
走りながら風紀委員に今いる場所の特定できそうな部分を伝えて携帯デバイスを切った。
後は時間稼ぎ。
私一人で異能犯罪者をまとめてどうにかできるとか全くこれっぽっちも思えない。
というか、周囲の目が怖い。
私の噂を聞いて走る金蔓と思っている勢もいるのカナ?
そう思っているのであればロックな考えは捨てていただきたい。
私は両親と心の平穏を愛しているだけなのに。
あ、嘘。最近ちょっと乙女ゲーも愛してる。
追いかけてくる人たちが見えた。走る。とにかく走らなければならない。
そして曲がり角の向こう側からも何か騒がしい声が聞こえてくる。
あ、詰んだ。挟み撃ちだ。どうする? どう出る?
■アリス >
ええい、やるしかないか!!
奥の手だったんだけどなぁ!!
空論の獣(ジャバウォック)でその場に工事中の立て看板を作る。
周囲に合わせてちょっと汚く作るのがポイント。
そして絶妙に放置されたスコップなんかを錬成。
続いて一人用酸素ボンベと自分の周囲に砂を大量に錬成ッ!
忍法、砂遁の術ッ!!
酸素ボンベの空気を吸いながら外の気配を伺う。
『おい、見つかったか!?』
『あのガキ、すばしっこいぜ』
『逃げられたのか!? クソッ』
わー。ガラわるーい。
とりあえずどっか行ってほしい。
砂の中というのは、それだけで体力が消費されるのだから。
■アリス >
この砂遁の術、結構な確率で追っ手を撒けるんだけど欠点が多い。
砂の中にいる以上、外の様子がわからない。
それと、砂を分解して外に出ても髪や服が砂まみれになる。
あと普通の学生が追っ手を撒く手段を覚えているのが最大の難点。
もうちょっと普通に生活させてほしい。
『まだ遠くには行ってないはずだ、探せ!』
その声を皮切りに走る複数の足音が遠くなっていく。
ジャバウォックで作り出した砂を慎重に分解。
よし、誰もいない……!
「とはいえ」
ここはどこだろう?
走って逃げるというのも方向音痴には辛いものがある。
体の砂をぱたぱたと払って咳払い。
今まで正義のヒーローに何度か助けられたけど。
いつもいるとは限らないのもヒーローの常なわけで。
■アリス >
この永遠のロックランドを抜け出して早めに家に帰りたいところだけど。
とりあえず位置情報を検索しておこう。
『見つけたぞ!!』
げ。見つかるの早くない!?
と、思ったら、声が聞こえてきたのは上からだった。
腕が猛禽の羽のように変化している、異形型異能の犯罪者。
空から私を見つけたというわけかー!
「ああもう!!」
あれがいたら逃げられるものも逃げられない。
できるだけ早く排除しなくちゃ。
電信柱伝いに屋根に登り、屋根の上を走って逃げる。
本当に、とんでもない一日だ。
後ろからは猛禽男が今にも私を捕まえんばかりに迫ってくる。
■アリス >
ひきつけて。
できるだけひきつけて。
私の腕前で出来ることは限られるんだから。
振り返ると、私に迫っていた猛禽男に。
即座に錬成したネットランチャーを撃ち込む。
鳥はこんな方法じゃ捕まえられないけど。
猛禽男はどうかな!?
ヒット。
ネットに絡まった猛禽男が屋根の上に転がる。
『てめぇ、こんなことして許されると思っ……』
撃ち終わったネットランチャーをスタンロッドに変化させる。
当然だけど、電気を通すように網は金属製にした。
「許されないのは、あんたたちだわ!!」
スタンロッドで異能犯罪者に電流を流す。
気絶した猛禽男を横目で見て、また屋根の上を走り出す。
ここどこだろう。
■アリス >
相当、派手に動いてしまった。
屋根から屋根に跳びながら、追っ手から逃げる。
こんなことならマラソンでも日課にしておくべきだった。
ごめんやっぱり無理。走るの嫌い。
土地勘がない場所を走っていると当然あるのが。
行き止まり。
追い詰められて振り返ると、男たちが武器や異能を構えていた。
『随分とてこずらせてくれたなぁ…』
三下の台詞に荒い呼吸を整える。
「私は…………」
そこまで言ってから両手を開く。
「嫌いなのよ……痛いのとか、血を見るのとか…」
異能犯罪者たちが顔を見合わせて笑う。
『大人しくついてきてくれりゃ、痛い目も血も見ずに済むのによ』
ご案内:「落第街大通り」にドラゴンビーさんが現れました。
■アリス >
「痛い目を見るのも、血を見るのも……あんたたちだけよ」
深呼吸をして、異能を叫ぶ。
「ジャバウォック!!」
両腕の延長にガトリングガンを錬成した。
その圧倒的火砲に三下たちが怖気づく。
『バ、バカかお前ぇ……そんなハッタリにビビるわけ』
私はさらに叫ぶ。
自らに課せられた呪いの名を。
「ジャバウォーック!!」
連装ミサイルや火炎放射器などなど。
腕から繋がる装甲が接地、ロクでもない重火器を満載させた装備に変わる。
フルアーマーアリスだ。
その異様な武器に恐れをなした男たちは。
『ヒィィィィィ!!』
武器をその場に捨てて逃げ去っていった。
「フフフ……」
錬成しておいてなんだけど、こんなの戦闘の役に立つわけがない。
ハイ、完全ハッタリでした。
■ドラゴンビー > 落第街の街並みに、
けたたましく鈍い羽の音がとどろく。
ぶううん、ぶおおおん、と威嚇するかのようなその音は、
誰しも聞いたことがある蜂の羽ばたいた音を何百倍にも重ね合わせたような轟音だった。
その音を奏でる者の名はドラゴンビー…というものだった。
見る者に恐れを抱かせる巨大な虫。…睨むような眼に触覚、ギザギザの脚と、
人間に危機感を与える黄色と黒のふとましいボディ。
…けれど、今は全ての色が真っ赤に染め上げられ、眷属を求めて殺戮を繰り返す、
残虐なパンデミックの手先と化していた!
天高く飛ぶソレは、より高くから猛禽男に狙いを定めて、
そして、複数の生命へとたどり着いたのだ。
アリス・アンダーソンが追い詰められていた袋小路から逃げ去っていく男たちの目の前に、
ズシン…と虫とは思えない重厚な6本脚でコンクリートを抉り、阻む。
「ギチ…ギチ…ギイイイィイィイ…」
このドラゴンビーの持つ武器は、毒と針。
その脚には針地獄かと見まがうほどの棘が付随しており…
逃げ去った男がおびえて、武器を捨ててしまい丸腰だったのを良い事に、
次々とその脚という凶器でズタズタにしていく。
そして、彼らはただ死んで終わる事はなかった。
血塗られて彩られたように、真っ赤なドロドロをその身に纏い、
生前の面影をいくらか残して…凝り固まったインクのような、おぞましいゾンビが這いあがる。
「アァアアァァア…!!見つけ、見つけたっ…ま…薬ぅ…!」
「きへへへへ…っ!!」
「ひゃはははああああ!!!」
彼らの戦闘力は、異能を使わない限りは武器を持たない今は大したことはないはずだ。
しかし、この光景を前に、どれほどまともでいられようか。
這いあがった死体は、生前にアリス・アンダーソンの事を深く意識していた。
それ故に、丸腰だというのに、彼女をこちらに引き込もうと鈍くも襲い掛かり始める。
その一方で、蜂の異形は更なる殺戮に手をかけようとしているではないか。
■アリス >
生理的嫌悪を煽る羽音に気付き、見上げる。
すると、そこにいたのは。
「ひっ………」
巨大なる、蟲。
蜂? いや、違う。こんな巨大な蜂が自然界に存在するわけがない!
でも、現実に目の前にいて……男たちをズタズタに引き裂いて殺してしまった。
「あ、あああ……!」
引き裂かれた男たちが立ち上がる。
そして私に向けて群がるように迫ってくる。
そうか、あれが最近噂になっているゾンビ騒動の。
赤いゾンビは数を増やすという。あの、あの。
「くっ……!」
両手にサブマシンガンを錬成し、銃口をゾンビたちに向ける。
人を撃つ。その心理的抑圧を上回る、目の前の圧倒的害意!!
「うわああああぁぁ!!」
悲鳴のように叫びながら、銃弾の雨でゾンビたちを撃ち倒す。
死んだ? 殺した……? 私が?
その事実に足が竦む。けれど。
「あれを放っておいたら……もっと人が死ぬ!!」
ドラゴンビーに向けて、閃光弾を投げた。
こっちに来い。お前の相手は私だ。