2019/04/26 のログ
ドラゴンビー > 「ギチッ…ギチィ…ギチッ…!!」

男たちを殺していくドラゴンビー。
それは非常に効率的で、非常に眷属を増やすのに適したやり方だ。
無駄に手足を損傷させず、パンデミックとして働かせるためにその体を極力綺麗な状態で、
不必要な命を抜き取るように、失血させていくのだから。

次々と屍は這いあがり、真っ赤なそれは銃弾に打たれながらも、進行をやめない。
普通の人間であれば、それで蹴散らすことは出来ただろう。
だが、一度死に、殺戮の操り人形となったパンデミックは銃撃にさらされ、
体に穴を穿たれながらも、這いずるように気味の悪い声で蠢いてくる。

…パンデミックの事を少しでも聞いていれば、
これらを止めるには、粉々にするであったり、どこかに埋めたり、
何かしら"機能停止"に追い込むのが良いと、知っているかもしれない。

「…ギチッ…」

ドラゴンビーは羽を広げて、閃光弾の攻撃を宙へと舞い上がり回避する。
アリス・アンダーソンへと向けられた死体の真っ赤な瞳は、死に切っているようで、殺戮に歓喜しているようでもある。

そうだ、こいつを放っておいたら、もっと人が死ぬ。
一方で、ドラゴンビーは僅かな思考力で、アリス・アンダーソンを目当てに、
このような、実に殺しやすい三下が集まるのだという事を記憶していた。

「アァァァアア…!!」

だから、だろう。
ドラゴンビーは、アリス・アンダーソンとの戦いを拒んで、より高く飛び上がっていく。
代わりに、背を向けた際に末端に生える毒針を弾丸の様に飛ばす。
これには痛みも死もない、しかし、独特の魔力の香りが、発信機の役割をするのだ。
そして、それが命中しようと、しまいと…その意味に気づけるなら。

"また、殺しに来るよ"

そんなメッセージが、読み取れるかもしれない。
追いかけるにも、そこに残ったパンデミックが鬱陶しい。
雑魚ばかりのはずの、人間だった者たち。しかし…
突如として咆哮が上がった。

「ガオオオオオオォオオオーーーッッ…!!」

獣化。
熊のような逞しい両腕を持つ赤色の人型が、彼女の行方を阻んでくる。

アリス >  
「ストッピングパワーが足りてないの!?」

ストッピングパワー。それは銃社会に根付く幻想。
でも、今は。少しでもそれを欲する。

「ジャバウォック……!!」

地面に置かれたフルアーマーの残骸を元手に、接地ガトリング砲を錬成する。
GAU-8 Avenger。
復讐者の名を持つ銃撃は、毎分3,900発の銃弾で全てを粉々にする。

耳栓をついでのように錬成し、ゾンビを撃つ。
それは人の体が粉々になるということで。
見ているだけで精神が削れる。
自分は今、人だったものを破壊しているのだ。

「!!」

続いて、毒針が肩に刺さる。
血が滲むけれど、痛みはない。
空に逃げたドラゴンビーを睨む。

あれは宣戦布告なのだ。
だから死にもしない、痛みもない攻撃をしてきた。
歯噛みをして、ドラゴンビーを見上げる。

「後悔するわよ、羽虫ッ!!」

無針注射器と興奮剤を錬成して首筋に注射。
冷たい薬液が今はただ、感情を鈍らせてくれる。

獣化した“彼ら”に、叫びながら機関砲を撃つ。
これは殺しだ。私は彼らの犠牲を払って生き残る。
その事実を可能な限り考えないようにしながら、彼らを粉々に砕いた。

そのまま火砲をドラゴンビーに向ける。
ドラムマガジンが空になる前に、一撃を浴びせるために。

ドラゴンビー > 真っ赤なゾンビは、
今度はハリボテなどではない、本物のガトリング砲の前に粉々にされていく。
どれほどしぶとい存在であっても、自己再生ができなければ、粉砕された時点で機能停止に追い込まれる。

5人はいただろう男たちだったものは、そこにはもういない。
熊の腕を持つ者も、獅子と化した者も、
獣化の異能者は、その弾丸の嵐になすすべなどあるはずがない。
邪魔はもう、ない。

天高く羽音を轟かせる、真っ赤な虫に向けられる火砲。
それを直に浴びたなら、この虫はひとたまりもなかったかもしれない。
しかし、それは空へと煽られ、その圧倒的な本来の威力を発揮できなかった。

「ガァァギィイィイ……ッ!!」

…そうであってもなお。
あの強靭な体を持つ、ドラゴンの名を冠する巨大な虫の片足を跳ね飛ばし、
後羽一枚をぐしゃぐしゃにし、ふとましい体をへこませた。
この攻撃を貰う事は、まるで予期していなかったかのように、これ以上受けるわけにはいかないと、
その傷ついた羽を大きくはためかせて空へと消える真っ赤な影。

お互いがお互いの体に弾丸を残したまま。
アリス・アンダーソンの受難の一日は、少しの不安を残したまま平穏へと戻っていくか…。

アリス >  
空へと消えていく赤いシルエットに。

「逃げるな!!」

指差して叫ぶ。
彼らの命と私の心を砕いて。
逃げるな、臆病者。

それから、私は風紀委員に保護され。
病院で手当を受けた。
肩の傷は浅かったけど、何らかの探知を受ける可能性がある告知を受けた。

私は。日常に戻った。
それでも……あいつがまた来るのなら、私は。

ご案内:「落第街大通り」からアリスさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」からドラゴンビーさんが去りました。