2020/07/27 のログ
ご案内:「落第街 廃ビル屋上」に鞘師華奈さんが現れました。
鞘師華奈 > 「――さて、ここも相変わらず…と。てっきり取り壊されてるかどっかの抗争で破壊されてると思ったけどね…。」

とある廃ビルの屋上。壊れ破けたフェンスをひょいっと身軽に飛び越えて。屋上の端に一人立てば眼下を見下ろす。
点在する灯り、全くの暗闇、それらのコントラストを赤い瞳を細めて見つめつつ。
何時ものように女は懐から煙草を取り出す。吸い始めたのは3年前からだが――今では完全に嗜好品だ。

(――公安の仕事の合間に、やっぱり”あそこ”は調べないと駄目かね)

煙草を1本口の端に咥えながら、とある方角に視線を向ける――その先はスラム――だが、見据えるのは更にその果てだ。――『黄泉の穴』…かつて自分が”一度死んだ”場所に他ならない。

鞘師華奈 > 「――とはいえ、あそこには近付くだけでも一苦労だしねぇ。
…さて、どうしたもんか…無策丸腰で行くわけにもいかないし…。」

紫煙を吐き出しながら考えを巡らせる。別に無理してあそこを調査する事も無い…無いのだが。

(――やっぱり、自分が”何で生きてる”のかはハッキリさせておかないと気持ち悪いし…)

『私の物語』を紡ぐなら避けては通れない道で――過去の清算だ。
煉獄はもう無い――私が終止符を打った。だけど、まだその残滓は”あそこ”にきっと取り残されている。

鞘師華奈 > 「――とはいえ、あまり独断専行するとボスはいいとしてユーリに迷惑掛けるしね…。」

さーて、どうしたものか。元来頭がそんなに回る方ではないのだ。短くなってきた煙草を取り出した携帯灰皿に放り込みつつ思案顔。

「―――あ、いけない。また食材買い込むの忘れた」

思考ベクトルが一気に日常に戻った。…こういう時に頼れる友人はもうあの部屋には居ない。

(まぁ、明日の放課後でもいいか。確か特売セールがあった気がするし)

――落第街の廃ビルの屋上で、何で私は食料品の買出しの事を大真面目に考えてるんだろう?まぁ、いいか。

「――それより、窓は補強しといたほうがいいかな…短期間で2度もダイナミック不法侵入されたし…。」

どっちもまぁ、穏便に終わったのは幸いだが。そのうち窓ガラスをぶち破られないかが心配である。

鞘師華奈 > 「――まったく、あかねが帰って来た時に部屋が無事であるといいんだけどね…。」

苦笑を僅かに浮かべてから――さて、と一息。私は友達を”待つ”と選択した。
――だが、立ち止まっている訳には行かない。待つ事と停滞は全く違うのだから。

「――いい加減、怠惰と傍観からは卒業しないとね――3年分を取り戻さないと。」

笑って呟けば――トンッ!と無造作に屋上の淵を蹴って――女は空へと”跳んだ”。

――星空、廃墟、夜の空気――そして浮遊感と――万有引力の理。

――しかし、投身自殺じみた落下をしつつも、女は顔色一つ変えない。
”昔はよくやっていた”からだ。軽く右腕を一振り――すると、空中に”着地”する。

「――っと!…最近使ってなかったけどまぁ鈍ってはいないようで何より」

何をどうやったのかは企業秘密――種も仕掛けも勿論あるけれど。そのまま、もう一度右腕を振ると再び自由落下。しかし、地面まで数メートルの高さなので――取り敢えず五点着地の真似事をして鮮やかに身を起こす。

「――うん。思ったよりは鈍ってないね…けど、3年前に比べたらまだまだかなぁ」

全盛期には何時戻れるやら、と仄かに苦笑を浮かべてから一息。当面の課題は黄泉の穴。これは確定として。

「――また幾つか厄介な噂とかも聞くし――ボスの事だから首を突っ込んで来い!なんだろうなぁ」

新人にはもっと手加減して欲しいものだ。まぁ、公安ではかなりウチの部署は緩いみたいだが。

鞘師華奈 > 「さて――長居しすぎたかな。そろそろ帰ろう」

再び煙草を取り出して口の端にまた咥えつつ、ライターで火を点けながら歩き出す。

――後に残るは煙草の煙と――微かな”残り火”のみ。

ご案内:「落第街 廃ビル屋上」から鞘師華奈さんが去りました。