2020/09/05 のログ
ご案内:「落第街-施療院」にマルレーネさんが現れました。
マルレーネ > 「ふう。」

襲撃の次の日、もうすっかり元気に仕事に勤しむシスター。
汗を流しながら荷物を運んで、壊れた棚を直して。
勤勉にコツコツと。

ちょっとだけ頭痛が残っているが、それはそれ。
まあ、実際怪我をしたから仕方あるまい。

「………よ、っこら、しょ。」

大きな消毒液の缶を抱えて、施療院の中に運んで。
今日も忙しい。

ご案内:「落第街-施療院」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
貧しい人々の為に清貧に働き続けるシスターの耳に、地鳴りの様な足音と微かな振動。そして、軋む様な金属音が聞こえ始めるだろうか。
その音の正体は探る迄も無い。路面に散らばる瓦礫を踏み潰しながら現れるのは、無数の砲身を生やした巨大な多脚の異形。
そして、ソレらを引き連れた風紀委員会の制服を纏う小柄な少年。

「……御機嫌よう、随分と忙しそうであるが、お邪魔だったかな?」

施療院の周囲を守る様にのしのしと歩いていく異形達と、それらを一瞥した後シスターに歩み寄る少年。
周囲の住民達は、何だ何だと不思議そうに視線を向けているだろうか。

マルレーネ > 「………忙しくないことがあればいいんですけどね。」

地響きと共にやってきた少年に、少しだけ苦笑して。
昨晩角材で思い切り殴られ、大立ち回りの結果被害が増えたことは伏せておく。

「でも、邪魔ではありませんよ。
 今日は何のお話です?」

よいしょ、っとベッドに腰掛ければ、はい、どうぞ、と隣をぽんぽんと叩いて招き入れる。

神代理央 >  
「違いない。シスターが暇になる様に、我々も落第街の警邏を密に出来れば良いのだな」

苦笑いを浮かべる彼女に鷹揚に答える。此処に運び込まれた時の様な弱弱しさは無く、正しく『風紀委員』として立つ姿が其処にはあるだろうか。

「邪魔でなければ何より。…いや、何。急ぎでは無いのだがな。
先日世話になった礼をと思って、少し立ち寄らせて貰ったまで。
此処が丁度、警邏のコースの終点に近い故な」

落第街の警邏任務を終えて、此方に立ち寄ったのだと告げつつ。
ぽんぽんと叩かれる彼女の隣にはちょっとだけ逡巡する様な素振りを見せて――恐る恐る、と言う様に彼女の横に腰掛けた。

マルレーネ > 「………私がここで仕事をしているのは、ここに住んでいる人の怪我や病気に対して、ですから。
 本来なら、風紀委員の方がどうこうされても、忙しさは変わらないんですよ。」

鷹揚に答える相手に、そっと言い含めるように。
風紀委員は力が強いから、何でも自分でやろうとする意志が強いように感じられた。
山本くんも、そして彼も。

「ああ、なるほど。
 では今は風紀委員としてではなく、一人の理央クンとしていらっしゃった、ってことです?」

なんて、にひ、と歯を見せて、隣に座る少年に悪戯に笑って見せた。

神代理央 >  
「…むう。それはまあ、そうかも知れぬが…。犯罪者による抗争が少しでも減れば、シスターも楽にならないかな…と思ったのだが」

少ししゅんとした様子で言葉を紡げば、鷹揚さは鳴りを潜める。
彼女の思う通り、力や武力で解決しようとするのは己の。或いは風紀委員の悪い癖の様なものなのだろうか。

「……まあ、そう言う事になるが……それが、どうかしたのかね?」

確かに、風紀委員としての所用がある訳では無い。
彼女の言う通り、此の場所を訪れたのは『神代理央』個人としてのもの。
とはいえ、基本的にワーカーホリックな少年は、それがどうかしたのかと言わんばかりの公私混同っぷりと共に、彼女に小さく首を傾げるのだろうか。

マルレーネ > 「世の中というのは、とてもよく出来ているようで、上手くいかないものなんです。

 むかしむかし、AとBの争いがありました。
 争いの結果、BがいなくなってAだけになりました。
 それでも、今度はAの中で争いは起こります。

 犯罪者を全て逮捕しても、今度は怖い犯罪者がいなくなったことで、次は私の番だと思った人が新たに動き始めてしまいます。」

穏やかに、語り掛けるように話しかけ。

「大切なお仕事ですけれど、"なくす"ことは無理です。
 それでもやらなければいけないから、治安維持というお仕事は大変なんですよね。」

優しい言葉で、その上で。

「それをしている子が折角来たんですもの。
 お疲れ様、って言ってあげなければいけませんよね。」

なんて、頭をぐしり、っと撫でてあげる。

神代理央 >  
「……そう考えれば、人々が一つに纏まるに必要なのは、強大な共通の敵が現れた時か、強力な指導者に率いられている時だけなのやも知れんな。
その何方も欠いている我々は、いたちごっことも、もぐら叩きとも取れる様な仕事を、延々と続けなければならない訳だが」

ハリウッド映画さながらにエイリアンでも現れるのか。
或いは、マキャベリも両手を上げて歓迎する程の強力なリーダーを得られるのか。
何方も厳しいだろうな、と彼女に向けるのは小さな苦笑い。

「……ね、労ってくれるのは有難いのだが、余り子供扱いをするものではない。仕事なのだから、当然の事をしているだけなのだし…」

頭を撫でられればちょっと気恥ずかしそうに視線を逸らす。
あの夜の様に怪我で意識が朦朧としているわけでもなし。はっきりと理性も自我もあるが故に、先に訪れる気恥ずかしさが少年の感情を揺れ動かすだろうか。

マルレーネ > 「何言ってるんですか。 自分でいたちごっこだと言っているじゃないですか。
 それを「当然」と続けることができるのは………ちゃんとしたねぎらいがあってこそです。」

相手の言葉に微笑みかけながら、首を傾げて。

「ですから、風紀委員として来たのではないか、ちゃんと最初に聞いたじゃないですか。
 違うなら、素直に労われておくことです。」

なんて、そっと頭を撫で続ける。よしよし。

神代理央 >  
「…それは詭弁、じゃないのかな…。それに此れは、労うというより唯甘やかされているだけな気がするんだが…」

よしよし、と撫でられ続けながら、自分よりも少しだけ背の高い彼女を見上げる様に視線を向ける。
向けて直ぐ、おろおろとその視線は彷徨う事になるのだが。

「……そ、それに今日は私がお礼を言いに来たのだし…。私もだし、同僚の山本も完治するまで世話になった」

「…あ、それに。此処に行きたがっているという医者からも、ぜひマリーに言伝をと預かっていたんだ。神名火明、という女性なのだが、マリーの知り合いだろうか?」

甘えてしまいたい感情を押し殺す様に、ぶんぶんと思考を振り払いながら言葉を紡ぐ。
世話になった礼と、表の病院で自分の担当だった女子が此処に来たがっていたとの言伝を告げて。
それでも撫で続けられているし、気付けば彼女の事を以前聞いた愛称で呼んでしまっているあたり、さもありなんといったところではあるのだが。

マルレーネ > 「甘やかしてますからね。」

そのものずばり、言い切った。
にひ、っと少しだけ笑って歯を見せて。

「よかった。
 実際、………私はもうちょっと甘く見ていたところもありましたから。
 あんなに大怪我をしてしまうくらいに激しい戦闘になるとは。
 ……ここで支援をすると決めて、いろいろなことが新しく分かりました。」

お礼には素直に反応をしつつ、真面目なことを口にする。
それなりの覚悟を決めたことを、言外に示しつつ。」

「…………あら、明さんですか?
 もちろん知っていますけれど、こちらに行きたがっている、というと………?」

首を傾げた。

神代理央 >  
「……甘やかされに来た訳じゃないんだぞ、マリー。
私はあくまで、礼を言いに来ただけなんだが…」

どうにも調子が狂う。無制限に甘やかされた経験の少ない己には、彼女の包容力は色々と…その、落ち着かない。

「…本来であれば、そういった戦闘の無い様にするのも我々の仕事なのだがな。だが、私も山本もマリーが居たから大事に至らなかったのは間違いないのだ。
色々と大変だとは思うのだが、それでもマリーには此れからも頑張って貰えれば、と思う。勿論、支援が必要であれば惜しまないし」

彼女に合わせる様に、此方も真面目な表情と共に穏やかな口調で言葉を返そう。
彼女の覚悟を讃えつつ、何か手伝える事があればと言葉を投げかけつつ。

「……今は、学生街の病院で働いているんだがな。色々と思う所があるみたいで、マリーの傍で働きたい、と言っていたんだ。
勿論何時になるかは分からぬし、此れからも病院で働き続けるのかもしれないが、一言言っておいて欲しいと頼まれたんだ」

首を傾げる彼女に、頼まれた言伝を伝えながら。
人気者だな?と言わんばかりにクスリと微笑んだ。

マルレーネ > 「………もちろんです。
 私ができる限りがんばりますよ。」

拳をきゅ、っと握って一つ。
信仰を全うするというただ一つの利己的な目的はあるが。
それでも、相手の言葉に続けよう、という意思が新たになる。

「ぅ、んぅぅ、まあ、そうです、ね。
 助けてもらえるのは嬉しいんですけど。
 お金を他人に出すほど余裕はないんですよね。

 それに、昨日もありましたけど、物取りとかもあるわけですし。

 あんまり、安全ではありませんからね。」

少しばかり渋い顔をしながら。


その間も、ずっと頭を撫でているから、甘やかすことは続行であるが。

神代理央 >  
「ん。でもまあ、無理はせぬ事だ。マリーが倒れてしまっては、元も子もないというか、木乃伊取りが木乃伊になる様なものだからな」

決意を新たにした様な彼女に、クスリと微笑みつつ。
それでも無理はし過ぎない様に、と細やかな忠告を挟んでみたり。

「…ふむ。であればやはり、警邏をもう少し密にしておくべきやも知れんな。流石に、施療院の周辺ばかりという訳にも行かぬから、あくまでなるべく、程度にしかならぬが…」

渋い表情の彼女を見れば、此方が浮かべるのは思案顔。
自分のシフトの時に此の辺りを入念にチェックするくらいなら出来るかもしれないが、他の委員にそれを頼むのは職権乱用が過ぎるだろう。
何か彼女の助けになれば良いが、と考え込んではいる、のだが――


「……ところで、マリー。その、な。余り甘やかされ続けるのはその…鳴れてないというか、落ち着かないというか…」

何かもう、自然に受け入れてしまってはいるし、それを心地良いと感じてしまってもいるのだが。
それを言葉にするのはやはり気恥ずかしいので、おずおず、と言った口調で彼女に告げるだろうか。
此の侭だと、その優しさに甘えてしまいそうになってしまいそうだし。

マルレーネ > 「何言ってるんですか。
 私はこう見えて、頑丈さが売りですからね。
 倒れるなんてこと、それこそこの島がひっくり返るくらいのことが無いとありませんよ。」

ふふん、と笑ってどん、と胸を叩く。
少しおどけたような自信満々の素振り。

「ですから、私は大丈夫ですって。
 それよりも、自分の身を守ることができるかどうか、が大切になってきますからね、ここでは。

 そうではない人を守るように動くことの方が大切ですよ。」

相手の言葉に、あくまでも優先はじぶんではない、と語るが。

「………………。」

少しだけ黙った上で。

「誰も見ていませんから、大丈夫ですよ。
 むしろ、少しばかり………

 そうやって心を緩める時間は、必要だと思いますよ。」

と、両腕を広げて見せる。 はい、どうぞ、と言わんばかり。

神代理央 >  
「…それは心強い。でも、そういう人間に限って無理をし過ぎるというものだ。マリーだって、誰かを頼ったり甘えたりする権利はある。
多くの人を守るマリーだって、我々風紀委員が護るべき者なのだから、もっと頼ってくれても良いんだぞ?」

彼女だって、誰かを頼ったって良い筈。
頼られているばかりいる彼女だって、偶には誰かを頼ったって良いじゃないかと。小さく笑いながら言葉を返す。


そんな偉そうな事を言いながらも、結局現在進行形で甘やかされているので説得力があるかどうかは微妙なところ。
落ち着かない、と言ってみて控えてくれるかと思えば――どうぞ、と言わんばかりに両腕が広げられる。

「……いや、あの。流石に、そこまで甘えるのは、どうかと思うんだけど…」

もう偉そうな口調で取り繕う事も出来ない。
年相応の少年、といった口調で彼女に視線と言葉を向ける。
気恥ずかしさと照れくささと――それでも、休息を欲している様な滲み出る疲労が、綯い交ぜになったかのような表情で。

マルレーネ > 「ですから信仰というものがあるんです。
 私はそれに、ずっと縋りっぱなしですよ。 ですから、その分少しずつ皆さんにお返ししないといけませんからね。」

ウィンクをぱちり。
本音はまた別。 でも、それはないしょ。

「………ああ、なるほど。
 では、ちょっと待っててくださいね。」

よいしょ、っと立ち上がって。
窓をぱたん、と閉じて。
何かあればノックをしてください、の札を掲げたうえで扉を閉めて。
よし、準備万端。

「………はい、どうぞ。」

隣に座り直して、よいしょ、と手を広げる。これで安全ですよ、なんて。

神代理央 >  
「信仰、か。私は神を信じない性質故、その言葉に同意は決して出来ない。けれど、否定もしない。それで救われる者も居る事は分かっているからな」

茶目っ気たっぷりのウインクを見せる彼女に、ちょっとだけ苦笑い。
神を信じない己が、神の信徒である彼女に頼っている事への、自嘲めいた笑みでもあるのだが。

「…待て。なるほど、って一体何をどう理解して――」

窓が閉じられる。
扉が閉められる。
はて、彼女は一体己の言葉の何を理解したのだろうか。
準備出来ました、と言わんばかりの表情で腰掛けた彼女に、怪訝そうな視線を向けていたのだが。
再び広げられた彼女の両腕に、今度は絶句する。此処迄密室にされて、こういうシチュエーションになれば、普通の男子であれば流石に色々と考えてしまう。

とはいえ、それが彼女の気遣いである事は流石に理解出来る。
クスリ、と小さく笑みを浮かべると、降参だと言わんばかりに緩く首を振って。

「……全く。マリーには敵わないよ、本当に」

ぽすり、と。倒れ込む様に彼女に身を預けるだろうか。
仕事続きで疲労の溜まった身体が、彼女の柔らかな身体に倒れ込むのだろうか。

マルレーネ > 「何をどう、って。
 風紀のお仲間とかに見られたら困るとか、そういうことじゃないんですか?

 私とて、様々な場所を旅してきましたからね。
 それこそ、見ただけで相手を威圧することができるような人ならまだしも。そうではないなら、メンツが大切だということは分かってます分かってます。」

明らかにちょっとズレたことを言いながらも、分かってるオーラを出すシスター。
えへん。

「………そうでしょう。
 なーに、ちょっとだけです。
 見回りをした上で、お礼まで言いに来てくれたんですからね。」

よいしょ、と受け止めながら頭を撫でる。
まあ、ある意味、男として見られていない、とも取れなくはないが。誰に対してもこんな感じのシスター。

神代理央 >  
「………そう言う事じゃ…いや、まあ、それもあるんだけどさ…」

まあ、彼女の言う事が全て間違っている訳では無い。無いのだが。
一番重要なのは、年頃の男子である己の色々な精神面である事に御理解を頂きたかった。
山本も言っていたが、彼女は女性として十分魅力的である事だし。


「……お礼を言いに来たのだから、それに返されてはまた此方も礼を言わなければならないじゃないか。全く、マリーは人が悪い」

受け止められ、素直にその身を彼女に預けて。
その顔を彼女の肩に乗せた儘、静かに呟いた。
きっと弟か何かに見られているんだろうな、とは思う。此方も、彼女を例えるならそう――

「……何というか、姉というのはマリーの様な人を言うのだろうな」

――姉、と言うべきなのだろうか。

マルレーネ > 他です? なんてとぼけたことを言いながら、はて、と首を傾げる。
そのまま、そっと抱き寄せたまま。

「………きっとあなたは、何も言わずとも見回りを続けて。
 頼まずとも、戦いを続けるのでしょう。
 私が知らないところでも、ずっと。」

「そしてそれを貴方は覚えていない。
 いや、………覚えていたとしても、話してはくれないでしょう。
 ですから。」

「……姉、と呼んでくれるのならば。
 こんなことしかできない姉ですけど、それらしく振舞わせてくださいな。」

耳元での穏やかな声。

神代理央 >  
「……知った様な事を言うものだ。しかし、マリーの言う通りさ。
私は戦い続ける。私は神を信じない。神に縋らない。私が信じるのは、私自身の選択だけだ。何処に居ようと、何があろうと、信じるのは己と、己の選択だけ。他には、何も無い」

「その選択を『正しく』する為に戦い続ける。時には、マリーが助けるべき者達も。弱き者達も踏み躙って戦って、立ち続ける。
私が戦うという事は、そう言う事だ」

耳元で紡がれる穏やかな声。
ゆっくりと顔を上げて、彼女の瞳を静かに見つめれば。

「……そんな私を、弟の様に扱うのか?姉の様に、その慈悲で包むのか?なあ、マリー。異世界から訪れた修道女。
お前は、自分とは違う世界の者にすら、その慈悲を与え続ける。お前が信じる神とやらは、そんなお前に応えてくれたのか?」

「………血に濡れた私を、姉の様な慈悲で包めば。神の御心とやらも離れてしまうかも知れないぞ」

静かに微笑んで、そっと彼女から離れようと。
彼女の包容力に無意識に甘えていたからこそ。その包容力に包まれてしまっていたからこそ。
彼女から告げられた言葉に、『甘え』を覚えていた事を自覚して、自嘲する様な溜息を吐き出すのだろう。そんな資格が、己には無いと言わんばかりに。

マルレーネ > 「私の世界では戦うことは常でした。
 治安を守る騎士。 傭兵。 そして自ら弓を取る村の人、町の人。
 それらすべてが、きっとあなたと同じ選択をする。

 そう思っただけですよ。」

「ですから。
 貴方の選択は特別ではありません。
 自分が正しいとも思えないなら、それはもはやただの力の濫用です。」

「貴方の存在は特別ではありません。
 他の人と同じように愛されて、愛する権利があるのです。」

ゆっくりと穏やかに、噛むような速度で言葉を伝えて。

マルレーネ > 「私の神は、もう私の声にこたえてはくれません。
 神話も経典も、もう記憶の中でもかすれていくのが分かります。
 ですから、私は私が"正しい"と思うことしか、してません。」

そうすることでしか、自分の中の信仰を保てないから。 それは口にせずに、離さないようにきゅ、っと掴んで。

「……嘘をついていました。
 もう既に、私の手には血の匂いが強くついています。
 もう、血を見ても何とも思わないくらいには。」

「そんな私でも、人を救える、助けることができる。 その方法がどこかにあると、信じています。」

「………。」

マルレーネ > 「………ダメでした?」

しょんぼりと、てへ、と舌を出して笑った。

神代理央 >  
「……愛されて、愛する権利、か。良い言葉、だな。……ああ、本当に良い言葉だ」

ぼんやりした様な声色で、口調で、彼女の言葉を繰り返して。

「……それでは、お前はもう神の信徒では無い、のではないか。
信じる神も、伝える経典も、語り継ぐべき神も。お前の記憶にすら残り得ないというのなら――それは最早、神の死、とでも言うべきではないのか」

「……じゃあ、御揃いだな。お前の手も、私の手も、血で染まってしまっている。だけど、お前はこうやって人を救っている。助けている。手を差し伸べている。その努力と行動は、俺には決して出来ないものだ。だから、それはきっと、お前が誇るべきものだ」


そして、てへ、と可愛らしく笑う彼女を見れば。
クス、と微笑んで。緩く首を振って。

「駄目じゃ無いさ。駄目じゃないから――やっぱり、お前に甘える事にする」

彼女が拒まなければ、ぽふ、と彼女の膝に寝転がる様に倒れ込もうとするだろうか。

マルレーネ > 「分かっています。
 でも、その言葉はもう少し、待って。
 私はきっと、その事実に耐えられないんです。」

誇りなんて、と首を緩く横に振る。
消えていく自分をただ必死に埋めているだけ。
自己満足の極み。 それが分かっているからこそ、誇り高い行為だとは思えなかった。

それでも。


「姉だとか言われちゃうと、もうちょっとだけがんばろっかなって思えるんですよ。
 だって、お姉さんですし。」

受け止めながら、くす、くすと笑って膝枕。

「それはきっと、私の支えでもあるんです。」

ですから。

「もっと甘えたっていいんですよ?」

なんて、ウィンクをしてやるのだ。

神代理央 >  
「………すまない。言い過ぎたし、配慮が足りなかった。
お前の依るべき場所を否定する言葉を、私が言うべきでは無かった。ただ、それでも私は、お前の行動も思いも、正しいものだと信じている。……神を信じない私が、信徒であるお前を信じるというのはおかしな話かもしれないが」

首を振る彼女に、眉尻を下げて彼女を見上げる。
彼女の在るべき場所を否定する言葉は、今は己に告げる資格は無い。
それでも、彼女の行いと想いは誇るべきものだと、強い口調で告げるだろうか。
だから、彼女の膝に頭を預けてしまうのは。彼女の事を信じているが故の『甘え』だろうか。


「……人に頼られる事が、お前の支えなのか?それはまた…本当に姉気質なのだな。世話焼きというか」

「なら、思う存分甘えさせて貰おうか。何なら、マリーお姉――……いや、何でもない」

それはちょっと恥ずかし過ぎた。
いや、言ってしまいたいなとは思うのだが。

マルレーネ > 「いいんですよ。」

そうとだけ言った。事実だもの、仕方あるまい。
相手が自分の行動を信じてくれていることだけが、ちょっとした救いだ。


「そういう状況こそ、自分が必要とされている、って思えますからね。」
「………。」

言いかけてやめたから、膝枕をぐらりと揺らした。

「………。」

もう一回、と指を一本立てて、にっこりと微笑みながら見下ろしている。
ガッチリつかんで離さないゾ。

神代理央 >  
ぐら、と揺れる視界。
揺れる視界が彼女に掴まれて固定される。
ぱちくりと見上げる視線の先には、彼女の豊かな女性を象徴する部分と、そこから覗き込む彼女の笑顔。
ちょっとだけ、迫力を感じる様な微笑み。

「……あの、マリー…さん…?」

何事か、と恐る恐る声をかけてみれば、一本立てられた指。
彼女が何を言いたいのか理解してしまえば、ちょっとだけ頬を染めて、もごもごと言葉を口の中で転がして――


「……ま、マリー……おねえ…ちゃん…?」

彼女を静かに見上げて、羞恥に頬を染めて。
囁く様な小さな声で、呟いてみる。

マルレーネ > 「…………よろしーい。」

ふふーん、と満足げに笑う自己満足シスター。
とても満足げに、そっとその額に手を添えて。

「しばらく、お昼寝でもします?
 それとも、流石にそこまでのお時間は取れないかな。」

膝の上の弟分に囁きを落としながら。

神代理央 >  
「……すっごい恥ずかしい。すっごい恥ずかしい……!」

大事な事なので二回言った。しかも、一度言ってしまったから二回目は抵抗心が薄くなってしまうのが尚怖い。

「………仕事は、今日は終わりだから。ちょっとだけ。ちょっとだけ、甘えても…良いかな…マリー…」

柔らかな彼女の膝上で、何処かふわふわとした言葉になりつつあるのは。その居心地の良さと彼女の包容力に、溜まった疲労が意識を引き摺り落とそうとしてしているからだろうか。

無意識に、彷徨う様に伸ばした手は、何かに縋る様にふらふらと。
微睡み始めた視界と共に、言葉を紡ぐだろうか。

マルレーネ > 「いいですよ。
 では、もうちょっとだけ、一緒にいましょうね。
 あ、でも、折角ならもう一度くらい呼んでくれてもいいんですけど。」

んふふ、と笑って見せながらも、そっとその手で視界を塞いで。
ゆったりと微睡に誘い込むかのように、頭を撫でてあげるでしょうか。


それが偽りのものであっても。
私はそれにしか全力を注げないのです。

神代理央 >  
「……ありがとう。それじゃあ、少し、だけ…」

ぼんやりとした声色。少年の意識が急速に睡魔に飲み込まれ始めている様が、彼女にはありありと見て取れるだろうか。
瞼に感じる柔らかな掌の感触に、擽ったそうに笑いながら、頭を撫でる手を受け入れて。

そんな状態だから、彼女から告げられた言葉に羞恥を感じる理性も無く。唯素直な感情の儘に、唇を開いて。

「………おやすみ、マリーおねえちゃん」

偽りと本物の違いがあっても、其処に注ぐ全力の想いに真偽は無い。
少なくとも少年は、彼女に注がれる慈愛に、縋っているのだから――

ご案内:「落第街-施療院」からマルレーネさんが去りました。
ご案内:「落第街-施療院」から神代理央さんが去りました。