2020/11/06 のログ
神代理央 >  
そうして、暴虐の夜は耽る。
この日、特務広報部が活動した区域での逮捕者は数十人にも及び、その殆どが――落第街に、戻らなかった。

ご案内:「落第街大通り」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」にフードの青年さんが現れました。
フードの青年 >  暴虐の跡を見た。
 もちろん中には殺されても仕方がない人だっていたことだろう。捕まって当然の人間もいただろう。だが全員が全員そうなのだろうか。
 ここにいる人間は外で活動できない理由がある。生まれてから生き方を知らない者がいる。今更表に戻れない重罪を犯してしまい戻れない自身のような存在もいる。外の世界に恐れを持っている者がいる……そこに”体制側”が来れば抵抗するのは必然のはずだ。
 
「特務……広報部」

 ボソとつぶやく。周辺でささやかれていた言葉だ。おそらくそれがこの暴虐をもたらした組織なのだろう。
 そしてその特徴を聞けば……誰かなどわかる。自身も知っている人物なのだから。
 歩き続ける。破壊された跡、銃撃された後にできたであろう血の跡。そして命からがら逃げ伸びた先で絶命したであろう野ざらしの死体。

「今こそが動きべき時じゃないのかよ……!!」

 そんなものを見て思わず声を漏らす。
 裏切りの黒は風紀委員にこちらから仕掛けることはまずない。その理由はなんとなくわかる。
 全面的に敵対するわけにはいかないからだ。だがこの惨状を見れば思ってしまう。
 これこそが”法で裁けぬ悪”だろうと。

フードの青年 >  深く息を吸い込み、吐き出す。
 気を落ち着け、冷静に回りを見る。今は仮面をしているわけではない。聞かれれば厄介な事になる。
 だが聞く余裕のある人間などそうはいないだろう。そんな余裕があれば自身に対して強盗の一つでも仕掛けてくるはずだ。
 携帯を取り出す。まだ招集の連絡はない、最悪自分から幹部に掛け合う事を考えた。そうでもなければ招集はかけられないだろう。

「……色々とやるせないな。ホント」

 フッと携帯の明かりが消える。考えていても仕方がない。今は待つしかないのだから。
 あたりを見ながらゆっくりと歩いていた。

フードの青年 >  
 小さな子供が寄ってくる。孤児だろう。
 今回の騒動では問題なしと判断されたか気が付かれなかったか。
 おびえた様子で遠慮がちにこちらを見てきていた。
 ポケットと触るとあるものを見つけその子に微笑む。

「せめて少しでも旨い物食べな」

 ポイと投げて渡すのは飴玉。キョトンとした顔で受け取った子供を後ろに、闇へと溶けていった。

ご案内:「落第街大通り」からフードの青年さんが去りました。