2020/11/28 のログ
ご案内:「落第街 スラムビル」に虚無さんが現れました。
虚無 >  
 スラムビルの屋上。彼が隠れ家のひとつに使うビルのひとつ。その屋上で眼下に広がる街を眺めていた。
 あの騒動から少し。街は何事もなかったかのように動き始める。当然だ元々何もなかった場所、今更一部に何もなくなったからといって何が変わるというものでもない。
 しかし、懸念していたことはあり。そしてそれはやはりと言うべきか、的中する。

「……またやりあいか」

 先の騒動によって起きた空白地帯。そこをめぐって違反組織同士がぶつかるという事態をよく耳にするようになった。
 眼下の街でも今まさに殺し合いが始まっている。
 それに関しては介入するつもりはないし、どちらかに肩入れして助けるつもりもない。お互いが好きにやっている事だ。好きにさせておけばいいの考えである。

虚無 >  
 だが、それがあまりに長期化、大規模化するのなら話は別だ。外まで巻き込む事になってしまえばここは崩壊するし。外を巻き込まずとも落第街の大組織同士がぶつかり合うような大規模な戦争となればやはり街の秩序が崩れ去る。

「だからといって戦いを止める……というのは不可能か。面倒な事態だな」

 皮肉な物だろう。風紀という敵が居なくなった途端にこの様だ。
 あの状態が正しいとは言えない。だが今の状態で秩序が保たれているかと言えば……間違いなく否だろう。
 だからといってそれを止められる方法があるかと言われても否である。
 結局後に残るのはここのビルに住んでいるような身寄りのない弱者が貪られる世界。
 その景色から目を離すとそのまま屋上の適当な石に腰を下ろす。

虚無 >  
 これを解決するには力だけではおそらく解決はできないだろう。しかし自身たちが”力”しかない組織故にどうにもならない。
 とすると自身に切れるカードは。

「……こればっかりは奏詩の仕事か」

 そう、この問題を解決するのは奏詩の仕事なのだ。
 これを解決するには風紀や公安といった言うならば体制側を巻き込む必要がある。そのためには黒側である虚無ではなく白側の奏詩でなければ彼らは動かせない。
 そして彼らを動かし違反部活と風紀委員がぶつかり合い、削りあい、そしてその間に空白地帯が埋まる。そんな流れを作り出せれば……元のこの街に戻るというものだろう。

「……無謀がすぎるな」

 どう考えてもできる事ではない。頭をゆるゆると振るった。

虚無 >  
 そもそもどちらにしてもそれは個人単位で動いていい世界の話ではなくなってくる。
 動くとしても組織に話を通してからだろう。

「何はともあれ……今は見守るしかないか」

 立ち上がり。戦いの現場をもう一度見る。戦いは終わり血にまみれた宴と言ったところだろうか。
 はぁと溜息を吐き出すと屋上から文字通り飛ぶ。甲高い金属音が街に鳴り響き。彼は空の彼方へと。

ご案内:「落第街 スラムビル」から虚無さんが去りました。