2020/12/05 のログ
ご案内:「落第街-北東『円環廃区』」に鞘師華奈さんが現れました。
■鞘師華奈 > 落第街――その北東の一角に当たる通称『円環』地区。
違反部活時代も一度訪れた覚えがあるが、その円を描くような廃墟と瓦礫の連なるような様は数年前と変わっていないようだ。
その割と目立つ外観に反して、この辺りは風紀の姿も比較的見ないという情報も仕入れている。そしてここは不法入島者の隠れ家ともなっている。
「――……さ、て。少し下調べに梃子摺ったけど…一先ずはここで間違いないかな…。」
呟きながら、円環地区の全容を一際高い廃墟から見下ろしていたが、一息零せば纏っていた外套のフードを被る。
それだけで、女の姿は周囲に溶け込むように消えてしまう…魔術と科学技術を組み合わせた新型の特殊迷彩との事だが詳細は知らない。
今回ここを訪れたのは公安としての仕事だが、これは上司から直々に下された【極秘指令】――しかも単独任務だ。
自分以外のメンバーは勿論何も知らないし、当然他言無用の為にこうして密かに動いている。
(――落第街の”土地権利者”の発見及びその身柄の確保…か。ボスも地味に無理難題言ってくれるなぁ)
件の人物は、判明しているだけでもほぼ唯一の落第街の土地権利者だ。無論、その場所が今は”こんなザマ”ではあるが。
(――常坂城一郎、15年前の時点で40歳…まだ生きていたら55歳か)
件の確保対象のパーソナルデータ…名前や顔写真などは全て確認済みだ。
とはいえ、15年前のデータなので人相も変わっているだろうし、偽名を使っている事も普通に有り得る。
そもそも、この円環地区にまだ潜んでいるとは限らない訳だが、ここから探すしかあるまい。
■鞘師華奈 > 外套の迷彩機能で己の姿を消したまま、軽やかに廃墟から飛び降りて円環地区の一角に着地する。
足音一つ立てないのは、昔取った杵柄、とも言えるか。元々、暗殺や隠密行動に向いた技能や魔術を習得しているのもある。
(…わざわざ私が指名されたのは、まぁ適材適所というやつなんだろうね。)
まさか、所属して半年も満たない間に単独の極秘任務を貰うとは思わなかったが。
足音を殺し、匂いを遮断し、気配を消す…ごく自然にそれを行いながら円環地区を歩く。
迷彩機能だけに頼りきりでは、いざという時に即応出来ない。このくらいの用心は当然だろう。
(――さて、一先ずは目ぼしい場所の確認と…後は情報屋からそれとなく仕入れる、か)
こちらが公安、かつ極秘任務中だと悟られるのは極力避けなければいけないが。
懐かしい落第街の空気だが、最近は”色々と”またきな臭い情勢だ…いや、何時もの事か。
■鞘師華奈 > 周囲に気付かれぬままに『円環』をぐるり、とまずは一周する。前に比べてまた違法増築でちょっとした廃墟の迷路のようになっているようだ。
(…ここからピンポイントで探るのは骨が折れそうだね…とはいえ)
そもそも、こういうのは地道にやっていくしかないのであるが。一息と共に今度は内部へと身を滑らせる。
何人か”勘の鋭い”住人がこちらへと気付き掛けるが、それには構わず進み続ける。
ある程度勘付かれるのは織り込み済みだ。自分の技能や魔術とて完璧ではないのだから。
(…多少土地勘があるとはいえ、前より入り組んでるな…相変わらず不法入島者の隠れ家になってるようで)
取り敢えず、事前に仕入れた情報や上司から指令を受けた際に提供されたデータと照らし合わせる。
そうしながら、小一時間ほど幾つかのポイントを探っていくが手がかり一つすら掴めやしない。
(虱潰しに、は流石に時間が掛かり過ぎる…直接ここで情報収集して再度手元のデータと照らし合わせるしかないね。)
■鞘師華奈 > 何せ極秘かつ単独任務だ。同僚や知人友人に協力を頼む、という事は一切出来ない。
独力でやるしかない…最近、誰かと組んでの任務が多かったから、極秘は初としても単独任務は割と久々だ。
(――勘が鈍ってるのかな。昔だったらもっと色々と気付いていたかもしれないんだけどな…。)
矢張り3年のブランクというのは地味に大きいのだなぁ、と今更ながらに痛感する。
とはいえ、嘆いてもしょうがない…与えられた仕事はきっちり完遂しなければ。
「…っつ…!」
不意に視界がぐらついて、手近な壁に片手をついた。…眩暈似た感覚と…。
(……”また”か…どうにも慣れないな、これは…。)
記憶の■■、ノイズ交じりのかつての■■の見た光景。集中力が削がれる。
何度か経験しているので、こういう時はまず動かない。そして深呼吸して思考を一度空っぽにする事。
無防備になるのは出来るだけ避けたいのだが…こうするのが一番治まりやすいのだ。
「―――…よし。…ハァ、やっぱりこれも”一度死んだ”影響なのかな。」
軽く頭を振る。視界がまだ少し不安定だが、徐々に落ち着いてきた。まるで発作か何かみたいだな、と他人事のように思いながら息を零す。
■鞘師華奈 > ■■しているのは記憶だけでなく、その知識やら技術やらもだろう。それは”実体験済み”だ。
とはいえ、それを使いこなせるかどうかはまた別問題だ。そもそも、発作のように唐突に来ても処理しきれるものではない。
(…仕事中なんだから勘弁して欲しいんだけどなぁ…私の体もやっぱりおかしな事になってるのかな。)
眩暈も落ち着いたので、軽く跳躍して廃墟の一つへと飛び乗る…丁度、ここは円環の中心辺りのようだ。
目を細めて周囲を観察する…夜目は利くから然程問題は無い。しばらく睥睨してから軽く目を閉じる。
(……足で稼ぐのも限度はある、か。やっぱり”聞き込み”もしないといけないね)
■鞘師華奈 > 「…さて、じゃあ”昔みたいに”やってみようか。」
脳裏に一瞬、浮かぶはかつての5年間の落第街での生活と、違反部活の仲間たち。
今は記憶の底にあるだけの存在。全てはもう失われて二度と戻る事は無く。
「――そして、落第街ではありふれた悲喜劇の一つに過ぎない、ってね。」
僅かに苦笑じみた笑みを漏らしながら廃墟から飛び降りれば、複雑怪奇な円環の闇へとその姿は消えていく。
ご案内:「落第街-北東『円環廃区』」から鞘師華奈さんが去りました。