2020/12/06 のログ
ご案内:「落第街大通り」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
此の場所に足を踏み入れるのも、随分と久し振りだろうか。
といっても、今夜は別に任務がある訳でも無ければ、猟犬達を引き連れている訳でも無い。
まして、己の代名詞たる異形の群れを従えている訳でも無い。
あからさまに敵視されるであろう、皺一つない風紀委員の制服を纏い、落第街に立つ少年委員。

その視線は、落第街の様子を観察する様でもあり、憐れんでいる様でもあり、敵視している様でもあり。
しかし、一番強く垣間見える感情は"安堵"だったのだろうか。

「……まあ、あれくらいでへこたれて貰っては困る。
此の街は、生命力だけは害虫の様に強靭なのだから。
あの程度で、大人しくなられてしまっては、やりがいも無い」

まあ、そんな事は無かったとは思うが。
多少、変化してはいても、基本的に落第街が揺るいだ様子は無い。
つまり、依然として風紀委員会の敵は此処に在り、問題の巣窟は根付いた儘。
取り敢えず、特務広報部の飯の種が無くなる事は無いか、と向けられる敵意と憎悪の視線にも涼しい顔。

ご案内:「落第街大通り」に園刃華霧さんが現れました。
園刃華霧 >  
また少し思うことがあってこの街に舞い戻ってきた
少しだけ空気は落ち着いたものの……やはり何処かぎこちない

今日は完全にプライベートなこともあり、あえて昔に戻ったような姿で
何食わぬ顔で特に目的もなく歩いていた

そんな折、また空気の微妙な揺らぎを感じた
この街の気配には敏感だ
そうでなければ生き残ってはこれない

だから、あえてそちらに向かって進む


「……ああ」

少しだけ予感はあった
彼が此処に戻ってきている
随分と短い休暇だったようだ


「……」

やや顔を隠し気味でゆっくりと近づいていく

神代理央 >  
さて一方。
少年の方は街の観察と考え事に夢中。
敵意の視線が多過ぎて、感覚が少々鈍っているというのもあるだろうが。

「とはいえ、社会理念を一から叩き込まないといけない様な連中だ。無節操な暴力は、連中向けですらあったが…。
まあ、同胞を狩るというのも気苦労が多かっただろうし……」

そうやって思案顔で歩いていれば、落第街に似付かわしくない優等生の如く。
本来であれば、此の街の住民の"良いカモ"になり得る様な姿。
それでも、此方に手を出す様な者が存在しないのは偏に彼等も学習しているから。
小石一つ投げてみれば、周囲を業火に包む少年の異能が火を噴くであろうことを、住民達は身を持って理解していた。

だから、此方に近付く少女に気を留める事も無く。顔を隠して居れば気付く事も無く。
こつりこつり、と足音と共に。少年と少女の距離は縮まっていくのだろう。

園刃華霧 >  
「……」

さて、意外と気を抜いているというか……
きっと自分を害するものなど居ない、と思っているか、
あっても余裕でねじ伏せてみせる、とでも思っているのだろうか

こういうところ、どこか抜けてるっていうか……なあ
などと思案する

さて、どうしたものか


「あの……すみません」


では久しぶりの猫かぶりでいってみようか
涼やかな声で呼びかける

神代理央 >  
投げかけられた声。
流石に、此の街で己に声をかける存在がいれば、僅かに警戒心を含ませた瞳を、少女に向けるのだろうか。
腰の拳銃に手を伸ばす事は無い。しかし、異能と魔術を発動する準備くらいは、何時でも出来る様に。

「……どうしたのかね。私に、何か用事かな?」

まあ、己の名も姿も知らず、風紀委員の腕章を見て何かしら頼ってきた二級学生……という可能性も、無い訳ではない。
取り敢えずは敵意を見せる事無く、呼びかけられた声に立ち止まって、小さく首を傾げて見せるだろう。

未だ、少女の正体に気付いた様子は無い。
とはいえ、距離は縮まった。少女の貌がはっきりと見えれば、直ぐにその正体に気付くだろうが――

園刃華霧 >  
「はい。少し、伺いたいことが――」

此処まで、気づく様子もなし
であれば、まあそれはそれでよしとして言葉を継ぐ
どうせ、言いたいことではあるので構いはしない


「貴方は……此処に、何をしにいらっしゃったのですか?
 見たところ、何も連れず制圧に来た、とも見えませんけれど……
 それでは、なぜ?」

あくまで、涼やかに
声の通りの態度で
問いかける

流石にだいぶ近づいているので顔を隠すのにも限度があるだろうけれど
まあ、バレてもバレなくてもいいや、という気分ではある

神代理央 >  
「何をしに、とな。そうだな…視察の様なものだ。
此の街は、相変わらずだ。何時もと変わらない。
そうして、何時もと変わらない様を――」

と、其処まで言葉にしながら少女の顔に視線を向けて。
驚いた様な表情と共に、言葉はせき止められる事になる。
やがてその表情は、苦々し気なものへと一瞬変化。
そして、深々と溜息を吐き出すと、改めて"彼女"へと向き直る。

「……随分と行儀よく喋るものだから、一体誰かと思ったよ。
久しいな、園刃。息災そうで何より」

本音を言えば、余り会いたくは無かった。
彼女から託された物を考えれば――会う資格等、ある訳も無し。
されど、出会ってしまった。まあ、同じ風紀委員なのだから出会わずに済む訳も無いのだが。
兎も角、彼女の正体に気付いてしまったからには、同僚としての顔に切り替わって、言葉を紡ぐだろうか。

園刃華霧 >  
「いつもと変わらない様を……なんですか?」

相手は気づいた
気づいたけれど、まずは相手の言葉をとらえて変わらぬ口調で促す
表情も純真な少女のような顔にして


そして一転


「りおちーもナ。入院したッテ聞イてたケど。
 だいぶ元気ソーじゃナい?」

いつもの表情に戻って応える


「で。
 実際のとこ、ドーなのサ。 何しに来タの。
 視察? 何を見に?」


周りを見回す
崩れた建物が手つかずで残っている場所も見える
ある意味、いつもどおりではある光景


「街? 人? それとも?」


へらっとした笑いを浮かべて畳み掛ける

神代理央 >  
無垢な少女から"園刃華霧"へと変貌した彼女。
己の言葉尻を捉えて、無垢な儘言葉を返す彼女に一瞬向けるのは、僅かな苦悩だっただろうか。
尤も、直ぐにその表情は何時もの様な。"風紀委員の同僚"として、尊大な態度を見せるのだろう。

「まあ、入院など慣れたものだ。余り慣れたくはない事ではあるが。私が入院するなど、お前も聞き慣れたことだろう?」

と、冗談めかして言葉を返しながら。
続く彼女の言葉には、ふむ、と思案顔。

「いや、視察は本当だ。暫く落第街を訪れていなかったし、報告書では見えないものもある。というか最近は、大した報告書も上がっていないしな。
だから――」

其処で、周囲を見渡す少女に釣られる様に、己も視線を巡らせる。
破壊された儘の建物。此方を睨んだり、怯えた視線を向けながら足早に通り過ぎていく住民達。
全て、何時も通り。

「……そうだな。全部、全部だ。街も、人も、此の街の生活の全て。全てを、見に来た」

笑みを浮かべる彼女に、小さく肩を竦めて答えようか。

園刃華霧 >  
「ふーん?」

一瞬の苦悩の後、すぐに風紀委員の顔を取り戻す相手
それを見落とすほど鈍ってはいない

いや、少し前であれば危うかったかも知れない
しかし、今は、感覚が戻っている

さて、どこからいったもんか

「ンー……じゃアまァ、それデいいヤ。
 全部、ネぇ……りおちー、今まで何度も来てルじゃン。」

今更、なにを見るのか
今まで、なにを見ていたのか
詰問するでもなく、ただただ当たり前のように口にして


「んデ。なにカ、つかメた?」


その言葉で締める
知りたいのは、奥の奥
彼の考えだ

今は、はぐらかされているようにしかみえない

神代理央 >  
「まあ、風紀委員の中でも訪れている回数が多い自負はある。
それでも、暫く離れていたのだから、直接目にしておきたいと思うのは当然だろう?」

謂わば風紀委員としての模範的な答。
風紀委員として、というよりは『落第街に厳しい態度の風紀委員』としての答えだろうが。
どちらにせよ、模範解答の域を出ないだろう。
そうやって、質問の本質から遠ざかる様に。

「…此の街は相変わらずだ。どれだけ叩いても、どれだけ刈取っても、それでも逞しく生きている。
雑草魂逞しい、とでも言えば良いのかな。或る意味、表には無い生命力だろう」

それは、本音でもあり押し隠した答えでもある。
此の街に抱いた感想は、正直なところである。
逞しい生命力に満ちた街というか、強かさを感じているのは事実。

彼女に隠したのは『だからどうするのか』という部分だけ。
此の街は、どれだけ風紀委員に荒らされても強く生きている。
だから――それ以上は、言葉にしない。

園刃華霧 >  
「ァ―……」

なるほど、そうくるのね
そういう模範的回答で
りおちーのそういうところ、嫌いじゃないけどさ


「そリゃ、アタシの育った街ダしナー。
 しぶトいシ、しツこいシ、まー……生き汚イよ」

へらっと笑う
そう、こういう生き物が生まれ育つ
そういう場所だ


「……デ。
 そういウ建前地味た話、どーデもいイんだケどなー」

ぎらりと
鋭い目を一瞬だけ向ける
そしてまたへらっとした顔に戻る

「りおちーさ。
 マジなとこさ、なに考えてるの?
 この間もだいぶ無茶苦茶やったみたいだし」

足を踏み込む

「アジコンのヘッポコザムライまでしゃしゃり出るようなことまでして。
 どうしたのさ。」

責めるでもない
ただ、純粋なる問いかけ

神代理央 >  
何を考えているのか。
それは、単純ではあるが重い問い掛けだった。
此れ迄も、そう問いかけて来る者はいた。
しかし彼女は、此の街で育った"同僚"だ。
思う所があるのかないのか。憤っているのかいないのか。
彼女の笑みから、それを伺い知ることは出来ない。

「……私が考えているのは、何時だって学園の風紀を維持する事だ。それ以上も、それ以下も無い」

嘘と、真実を織り交ぜる。
或いは、複数の真実の内、話しても良い事だけを語る。
それは己の常套手段。即ち、学園の風紀を維持する為という事も、事実ではある。
それ以外の事。今回の発端。特務広報部に己が求めた役割。
街とヒトを焼き払う事の意味。それらを、伏せているだけ。

「……紫陽花が…いや、公安が出張って来たのは予想していたが、あそこ迄急激な介入に出る事は予想外だった。
ただまあ"やり過ぎていた"という自覚はある。けれどあれは、必要なことだった。それだけだ」

一歩此方へ踏み込む少女を、じっと見据えながら訥々と言葉を連ねる。
淀みなく。言葉に詰まる事も無く。
彼女の純粋なる問い掛けに、事務的に返す答。

園刃華霧 >  
「……」

鉄火の支配者たる、目の前の男は
ただただ通り一遍の答えを返してくる

多少の予想はあった
だが……
 
「そっか。アタシには言えないってか?
 まあ、確かにアタシは此処の出で、
 まあ多少は此処に同情的な部分はあるな」

ふむふむ、と一つひとつ、あえて言葉にする


「だけどさー、理央
 それでなんか隠すのはやめてほしいなあ
 いくらアタシだって……いや、アタシだからこそ
 違反部活のアレっぷりはよくわかってるし、
 連中をぶっ飛ばすことの意義くらいわかるよ」

其処まで言いつつも、おそらく引っかかっているのは違うところだろう、とは想像つく
けれど、これには段階が必要だ


「別に、アタシは怒っちゃいない。
 きっと理央にとって意味も理由もあったことだろう。
 そんくらいのことはわかるさ」

何しろクソ真面目の塊だ
……ちょっと思い込み、というか頑固さがひどいところもあるが
そこはそこで好ましくもあるし、まあ疎ましいこともあるのも確かだ
けど、人間なんてそんなもんだろう?

「でーもさ。
 なら、もうちょっと、なんか説明、というかそういうのあってもよくない?
 こちとら、理央に街の人間を頼まれた方なんだけど?」

じっと
ただじっと見つめる

神代理央 >  
 
『街の人間を頼まれた方なんだけど?』


その言葉に、思わず表情を暗くする。
そう。結局のところ、彼女と顔を合わせ辛いと感じていたのは、この一点に限る。
嘗て己は、眼前の少女に二級学生達の保護を依頼した。
行き場のない者達が、表で生活出来る様に。保護を求めてきたのなら、それを受け入れて欲しいと。
落第街に比較的受け入れられやすい彼女なら、と。頼み込んだのは、己の方なのだ。
――それを、踏み躙る様な形で裏切ったのも己だ。


「……それは…ああ、そうだな。そうだ。
園刃には、話さないと、いけない…のかも、しれないな」

何処迄話せるかは分からない。
何処迄話して良いのかも分からない。
それでも、彼女には、話さなければならないのだろう。

「……それで、何を聞きたい。いや、何を話せばいいのかな。
何でもとは言わないが、話せる事は話そう」

何を聞きたいのか。何を話せば良いのか、とは、中々難しい質問かもしれない。
それでも、彼女が何を聞きたいのかだけは、聞いておこうかと思ったから。

園刃華霧 >  
「そんな暗い顔すんなって。
 まるでアタシが理央をいじめてるみたいじゃんかさ。」

まあ見ようによってはいじめているのかも知れない
なにしろ言いたくないことを
秘していることを言わせようというのだ

けれど、だからといって手を抜くわけには行かない


「で。
 んんー……だいぶ意地の悪い聞き返し方だな。
 仕返しか? ま、そっちもそっちで喋りにくいんだろうけど」


冗談めかして返してから、しばし悩む
なにが聞きたい……か
なにもかも、ではあるのだが……

うん

「基本的には、最初と変わらないよ。
 理央が、なに考えているか。
 あとは……そうだな」

ふむ、と考える


「理央は、まー、あのデブの下でだいぶアレな仕事してたけどさ。
 今までだってかなり派手に無茶苦茶やってはいたけどさ。
 一線は守ってたと思ってるんだ。
 けど、今回はなんか違った。
 ……どうしたんだよ」

それこそが、たぶん言いたくないこと、だろうという予想はあった
だけれど避けては通れない
だから、あえて口にする


「まあ、結局最後は、なに考えてそうなったのか。
 で、今なに考えてるのか
 その辺、かな」

終着は……そして執着は、そこなのだろうと、まとめる