2021/01/04 のログ
羅刹 > 落第街の奥深く。
とある店の地下で、その集会は行われる。
浅く広く、この島の暗部を這う『蜥蜴』の集会だ。

集まっている人間は50を超えるが、地下の広さはかなり余裕がある。
そして奇妙なことに、この地下には無数の出入り口がある。
集まった人間が知られ難く集まれるように。
また、どこかから情報が漏れた際に迅速に逃げられるように。

その地下でざわつくこともなく、ただ前を向く集団。
集団が見つめる、一段高くなった壇上に黒い上下のスーツを身に纏った男が登る。

「よォ集まってくれた。すまんな。俺の能力でも、お前らの顔は見れんからの。
顔を見たいと、俺の無理を聞いて集まってくれたお前らは俺の宝じゃ」

ドスの効いた低い声。
マイクなどは使っていないが、場が静まり返っているため良く響く。
そんな声ではあるが、ここに集まってくれたメンバーに対しては深い情が滲み出ていることがわかる声だ。

羅刹 > 「知っての通り、最近は風紀のボケ共も多少大人しい。
油断したらアカンが、組織を広げるチャンスや。
『蜂』、『蟻』、『蜘蛛』は状況見ながら、口広げるぞ」

その男が視線をやった3人の男女が軽く頷く。

「逆に『蛇』には退屈させるかもしれんが、警戒は怠るなよ。
『梟』は、あいつらに動きがあったらすぐ知らせぇ。
あいつらが、油断してるんやったら噛みつかにゃならん」

また2人の男が頷き。そこで、男が一息。

「……休む暇があったら牙を研ぐ。あいつらに傷跡残すための牙をな。
俺の目的は話してる通りや。…裏側と表側を同じにする。そのために、変わらず協力してくれ
死ぬかもしれん、一生牢から出られんかもしれん。それでも、蜥蜴のために」

顔を見たいというボスの一言から始まったこの集会は、それで締められる。
その言葉を聞いた後…

『応!』

一糸乱れぬ声が響いた。
その後は、各々が持っている小さな赤い杯が掲げられ。
くい、とそれが一斉に傾けられる。
中身は、酒だ。血よりも濃く、この組織を繋ぐ盃。

羅刹 > 「お互いに直接無事確認したい相手もおるやろ。
監視も効いとる。仲間の無事を確認してから、仕事を続けようや」

それを聞いた者たちは姿勢を緩くして。
顔なじみの者と直接会話を交わし始める。
それこそ、友人よりも濃く、兄弟のように、姉妹のように。



―――そして、蜥蜴は夜闇に散っていく。

ご案内:「落第街 『蜥蜴』のアジト」から羅刹さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に羅刹さんが現れました。
羅刹 > (ああ、どうした?…いや、それは仕方ない。気にすんな。
シャブやってりゃ潰れる客は出てくる。蟻と梟にもうちょい薄いのを用意してもらわんとな
Spiderは今んとこ、搾り取るには強すぎる。)

落第街大通りを歩く、上下黒スーツの男。
歩き煙草の煙を漂わせながら、異能によって連絡を取り合う。
下部組織を纏めている部下からの連絡を、何も証拠を残さず行えるのは彼の大きな利点である。
はた目から見れば、眼付きの悪い男が歩いているようにしか見えないだろう。

全く、組織を作って動き始めたは良いものの未だ盤石とは言い難い。

(一先ず量調整して、値段を吊り上げろ。中毒性は高いからな。払う奴は払うやろ)

現在、彼は別の下部組織である『蜂』の別店舗に向かっているところだ。
どうにも、奴らに眼を付けられ始めたらしい。
状況を見て、店ごと引き払う必要があるならそうしなければならない。
切り捨てるのは簡単だが、再建しなくていいならその方がコストもかからない。
動きは迅速に。隙を見せず、隙を見つけて食らいつく。
それが今の蜥蜴のスタンス。

ご案内:「落第街大通り」にシャンティ・シンさんが現れました。
シャンティ・シン > 新年早々、『彼』や『彼女』は仕事をしていた。
『彼』などはだいぶ活動が大人しくなっていたが、それでもそれなりの活動をしている。

ああ、本当に
光の方が強い世界だ

それは面白みに欠ける
それは均衡が崩れている

だけれど最近、面白い闇が顔を覗かせ始めている
情報の奔流の中、丁寧に拾い集めた端切れが伝えてくる


「……ふふ……あぁ……闇に、住まう……爬虫類……みつ、かる、と……いい、の……だ、けれ、どぉ……」


一人つぶやき、女は歩く。
その先には、この場に相応しいとも相応しくないともとれる上下黒スーツの男。

羅刹 > (おう。今から行くから、顔出さんと待っとけ。どこであのボケ共が見てるかわからん。
いつもの裏口から入る。後5分で着く。……いや待て、ちょっと遅れるかもしれん。
蛇と梟に連絡繋げとけ。いざとなったら17から21の通路使って逃げろ)

通信を続けつつ、道を歩く蜥蜴の頭。
その目に留まったのは、このまま行けば正面からすれ違うであろう、ゴミ溜めにはふさわしくないと言える美しい銀の光。
特に、下部組織の蜂に必要であるため、少しでも容姿の良いもの、特徴がある者は記録しているはずだ。
しかし、目の前の相手はそのデータには無い。


「…おい。この辺じゃ見ない顔だな。」

通信を終えてから、そう短く、声をかける。
腕章を付けていない風紀、と言う可能性もあり、慎重に。
頭の中ではこれが釣りであるかもしれないと警戒し、逃げ道をいくつかピックアップしながら。

しかし、気だるげであるとはいえ容姿としては美人と言える。
それに、匂いがする。
落第街の匂いではない…表の匂いが微かに。
それが気のせいか、真実かは相手の態度から考えるとしよう。

シャンティ・シン > 『正面から歩いてくる男は不審げに、女に問いかける。「――」』

女は謳うように、今、目の前で起きたことを復唱する。
何処までも透き通った声はこの場に似つかわしくなく、それでいて奇妙に馴染むものでも在った。


「あ、らぁ……そう、かし、らぁ……ふふ。見ない、顔……なん、て……言う、あなた、は――それ、なら……此処の、古株、さん……と、でも、言う……の、かし、らぁ……?」


雰囲気から見てとてる気怠げさに合わせた、気怠げな口調で女は喋る。


「それ、と、もぉ……取り、締り……の、風紀、さん……? ふふ。」


くすり、と女は笑う。まるで、そうではない、と思っているかのように。


「まさ、かぁ……スカウト、マン……なん、て……こと、も……ない、でしょう、けれ、どぉ……?」


重ねて、面白そうに笑う

(面白そうな人、よね……そう、"何かをしていたのになにをしていたのか読めない"相手、だもの)

羅刹 > 「…面倒な喋り方する奴やの。」

三白眼を細め、そう返す。
相手の最初の言葉を聞いての、感想はそれだった。
暴力を交渉手段として使う男にとって戦力、気配の把握は必須だ。

その感覚から言えば…こいつは、風紀とは違う、とは感じるものの。
かといって、表でのうのうと学生をしている者とも言い難い。
どこか達観した…言ってしまえば、ガキ離れした雰囲気だ。

暴力的なものではなく。
例えば、ただ静かに部屋の端でこちらを見ているかのような。

「…………ここで風紀、っちゅうのは冗談にもならんぞ、嬢ちゃん。
どっちも外れや。…それとも、嬢ちゃんは金に困ってその綺麗な髪でも売りに来たんか?」

眼光が更に鋭くなる。
風紀の戦力は未だ不明な部分が多い。
もしかすると、彼の経験から来る観察眼すら凌駕した密偵が居るかもしれない。

ぐ、と近づき、その目を見ようとする男。
わからないのなら、もっと相手から引き出す。
脅威…というものとは違う言葉にできない感覚が、彼に威嚇という選択を選ばせた。

シャンティ・シン > 『「――」男はそう返して、目を細める。「――」疑念を強め、男は観察するように女に近づく。』

恐気もなく、女は謳う。それが当然の儀式であるかのように。


「そぅ、ねぇ……喋り、方、は……癖、だか、ら……ごめん、なさ、い……ねぇ……? これ、でも……一生、懸命……なの、だけ、れ、どぉ……」


鋭い目線を物ともせず……否、見ていないかのように女は返す。
その態度にはなんのゆらぎもない


「お兄、さん……は、私、が……こわ、い……? ふふ。大、丈夫、よぉ…… 私、は……セイギ、の……ミカタ、なん、て……もの、じゃ……ない、もの、ぉ……?」


ふと、人差し指を唇に当て、女は思案げにする


「髪……? あぁ、ふふ……そう、そのつ、もりは、ない、けれ、どぉ……お兄、さん、は……ひょっと、して……商人、かし、らぁ……?」

やや視線を彷徨わせ、虚ろな目が、男を見据える。其の目は、目線が合っているように合っていないようで其処に在るかもわからないものであった。


「それ、にして、も……髪、髪……ね、ぇ……」

くすくす、と笑う

羅刹 > 「―――――はぁ」

しばらく、相手の返答を聞いて睨みつけていたものの。
やがて、息を吐く。
どうにも、暖簾に腕押し、糠に釘。
威圧しても、まるで気にしていないかのように相手は話し続ける。

大抵は、何かしらの反応はあるものだ。
わずかな…目じりの動きなどの表情の変化、身体のこわばり…
それらから、虚勢なのか…あるいは何かを企んでいるのか…人を見てきた彼はある程度はわかるのだが。

まるで変化がない上に、相手のその目は男と合っているように見えて合っていない。
がしがし、と金髪を掻いてから再び口を開く。

「喋り方はもうええわ。言ってもしゃーない。
…目ぇも見えてないのにようコケへんな。
ただ、だからって会ったばかりの奴にぺらぺら話すほど俺ぁ口軽くない。…けどな」

軽く背を曲げて、じ、と合っていない目を合わせる。
男が視線を動かしても、きっとその目は反応は無いのだろう。
ゴミなどが多いこの場所で盲目であるにも関わらず普通に歩けるのは驚きだ。
ただ、それはそれだ。

「俺の知らん奴…しかも上玉の女がぽ、っとこのゴミ溜めに現れた。
…はいそうですか、と俺ぁ見過ごせねぇ立場だ。
ウリじゃねえなら、嬢ちゃんは何をしに来た?」

探り合いは無駄だと判断する男。
いくら遠回しに探っても、威圧しても…これでは千日手だろう。

髪、という単語を気にしながらくすくす笑う相手に、ストレートに聞く。
正義の味方ではないという言葉を疑い、警戒し…ただ、興味はそそられる。
なら、この相手は誰なんだ、と。

シャンティ・シン > 『男はため息をつく。「――」男は、女に目線を合わせる。「――」』

女は相変わらず、謳うように現実をなぞる。
それは夢見る少女のようであり、妖艶な大人の語り部のようでも在った。


「そう、ねぇ……お互い……お腹、の……探り、合い……は、疲れ、る……し、時間も……勿体、ない、わ……ねぇ……ふふ。えぇ、えぇ……そう、なら……すこ、ぉし……踏み、こんで……オハナシ、しま、しょう、かぁ?」


くすり、とまた女は笑う。


「それ、なら……私、の方、から……ええ、貴方、は……『立場』、が……ある、そう……だ、から。立場、を……なく、した……私、から……言う、のが……筋、だ、わぁ……でも――きっと、疑わ、しい……と。そう、思う……かも、しれな、い……か、ら。そこ、は……勘弁、して……欲し、い……わ、ねぇ。」


女は、面白そうに笑う。


「私、は……ね。むか、ぁし……此処、に……いた、の。結局、居場所、が……なく、なった……か、ら……一回、籠もっ、て……いた、わ……だけ、れど……ある、人に……発破、を……かけ、られ、た……から、ね? 古巣、の……此処、を……盛り、あげ……る、のに……いろぉ、んな……人、を、探し、て……る、の。刺激、的な……こと、して、くれる、人」

じっと、見えない目を三白眼に向ける。見えていないはずの其の目は、確かに男の目を見据えているようにも感じられた。


「私、は……そう、いう……人、を……応援、する、ため……に、此処、に……いる、の、よぉ?」

羅刹 > 「…面倒なのは、話し方だけか。話自体は、わかる奴だな」

ふん、と鼻を鳴らして背を戻す。
それから話を遮ることはせず、その途切れ途切れの言葉を聞く。
笑っている顔からは、それが真実であるかは判別ができない。
ただ、カンが告げていた。
少なくともこいつは、俺らが本格的に動く前から居ることは真実だと。

「ヤケになって刺激を求めてるっつうわけじゃねー、か。」

少なくとも、虚言ではないと判断できる。
召しいで見えないはずの相手の眼が、意思を伝えてくるように感じる。
そこに偽りは…少なくとも彼には感じられない。
更に、意思が弱いというわけでは無いことも確かだ。
感覚として、彼の能力が発動している感覚がない。

「…疑わしいのは変わらん。
お前ほどようわからんのは初めて見た。だが、協力するっつうなら…吐いた唾はもう飲めんぞ。
俺ぁ嘘は嫌いじゃ。けど、付いてくるなら…この街、変えるほどの刺激を見せてやる」

できるかどうかは考えない。
ただその目的に向かって蜥蜴は進む。
盲目に向かって、暗い意志の火を返していこう。
光を侵食しようとする、暗い闇の火を。

「じゃが、教育しても無能じゃ追い出すかもしれん。ネタはあるんじゃろうな。お前は、何ができる?」

後は、能力を聞ければ役立つかどうか判断ができる。
もし役立たない場合には…それはそれで使い道を考えるが。
少なくとも、この暗部の事を知っているような態度を見せた時点で、利用価値はありそうだ。

シャンティ・シン > 「……」

女は、謳わなかった。女は三白眼を見据えたままじっと話を聞いている。


「そう、ねぇ……た、だ……私、は……協力、する、けれ、どぉ……自由、に……動く、わ、よぉ……だって、私、は……生き、た……死人、です、も、の……ふふ」


くすくす、と笑う嗤う。
自分は舞台装置、自分は道具。しかし、だからこそ。誰のものでもなく。ただ、この街を、この島を、揺り動かすためだけに。ありとあらゆる悪徳を、ありとあらゆる美徳を、行うだけである。


「あ、らぁ……私、の、ぉ……? ふふ。いい、わぁ……じゃ、あ……特、別。売り込み、なら……すこ、ぉし、は……"見せ"、が、ない、と……ね、ぇ。」


気づけば、女の手には本がもう一冊、増えていた。それもまた、奇妙に煤けた表紙の本。


「ん……至れ、至れ。是なるは悪徳の街、荒廃の街、悲哀の街。巣食うは悪に善に、有力なるもの無力なるもの、悪意の街善意の街……現れ、出づるは、狂気の刃」

謳うように女が唱えると、地面から"ナニカ"が生えてくる。それは、一振りの刀であった。


「……名刺、代わ、り……だ、から、ぁ……まず、は……この、程度……だけ、れ、ど……ふふ。私、の……役立、ちそう、な……力、は……こ、れ。『創造』、の……法。私、は……『舞台を整える』、のが……特技、なの、よ?いかが?」


表に立つものではない、ただ場を創るだけの者
盤面に出ず、ただただ裏方に徹するもの
女はそう語る


「け、れ、どぉ……逆、にぃ……貴方、は……ふふ。いい、えぇ……貴方、たち、は……活かせ、る、の……かし、らぁ……?」


教育するのは、試すのは自分だ、とでも言わんばかりに女は嗤う

羅刹 > 「ハ…、大層な条件突きつけてくる。
協力はするが、自由にさせろ、か。…………ほう」

その条件を呑めば、協力はするものの敵となる可能性も生まれるということ。
協力者を得るメリットと、敵となるデメリットを考えるが。
相手の売り込みに、声をあげる。

淀んだ街に現れたのは、一振りの刀。
純粋な、人を傷つけるための武器。

…しかも、これが能力の全容では無さそうだ。
創造、舞台を整える…というのなら。
これ以外にも『造れる』のだろうことはわかる。

不可思議な相手ではあるが、やはり嘘は吐いていないように感じる。
協力するということも、自由に動くということも。
相手は、確実に果たすのだろう。

「ったく。こんな嬢ちゃんがそんな能力持ってるなんてよ。カミサマって奴は不平等だな」

そう、独り言を言ってから。
貴方たち、という言葉に呆れ顔を見せる。

「……ち。俺らのことわかってんじゃねぇか。さては、最初から組織じゃなく、俺に眼ぇ付けてたか?
いいぜ。好きにしろ。お前が整えた舞台で、俺らが暴れてやるよ。そういうことだろ」

まんまと嵌められた、ということだろうか。

ただ…盲目とはいえ、ドスの効いた声、言葉に怯まず。
自分に意見を通そうとし、更にこちらを試すような言動。
その胆力と…何かを造れる能力に更に関心が深まる。
そして男の声音が少し変わる。
威圧する声音から、多少の…青年のような柔らかさを含んだものへ。

密偵の疑いは未だ薄く残ってはいるが、監視を付け、もし妙な動きをするようならその時は対処するだけだ。

「…これも、ビジネスパートナーって奴か?、俺の能力も明かすのが筋だろうが…今ここじゃ見せられん。
その機会は作るが…まずは一つ、『信頼関係』のために、ある隠蔽に協力しな。なぁに、動くのは俺らだ」

そう言って。
まずは目を付けられている店への監視を外すため…彼女に協力を依頼する。
だが、あくまで彼女が作った武器や情報を使って、だ。
彼女を矢面に立たせることは約束通りに、ない。

そして…その後。
いくつかある『蜥蜴』の小さなダミーアジトにて。
彼の異能である『盃』についても、また教えるだろう。
それを見て、彼女が何を思うかは、男にはわからないが。