2021/02/14 のログ
神代理央 >  
「まあ、混ぜてはいるだろう。『蛇』だったか。あの組織の統率力とリーダーへの信頼は相当なものだ。
そのリーダーを裏切る様な真似はするまい。ましてあの捕虜は、私や鈴音を襲撃した際にも用いられた女だ」

「有用な組織の構成員であり、リーダーに忠実。であれば、1から10まで真実等とは思わぬ。逆を言えば…最初から嘘が混じっているのだと思えば、此方も打てる手はある」

「捕虜の情報を元に我々が動く。それに対して、敵の反応がどの様なものだったか。我々が動いた後、どの様な反応を見せるのか。
『嘘が混じった情報』という試金石を、我々は持っている。
そして、組織の大きさという点において、我々は敵に勝っている」

「であれば。時間は敵に有用でもあるが…此方の味方でもある。
敵の当面の目標は、あの捕虜の奪還。しかし、情報に嘘が混じっている捕虜を、何時までも遇しておくわけにはいかん。
――それが敵も分かっているから、君を襲ったのだろう。あの捕虜から、より情報を吐き出させる『時間』を我々に与える為にな」

長々と私見を告げて、再び紫煙を吐き出した。
既に、手元の煙草は半分程灰になっている。

「…ん?ああ、煙草としては高い部類に入るのだろうが…所詮は嗜好品。大した事は無いさ。気に入ってくれたのなら何よりだ」

と、煙草に関する彼の感想を聞けば、少しだけ嬉しそうに笑みを浮かべて。

「……神宮司は兎も角、特別攻撃課とはどう折り合いをつけたものかな。……ん、ああ。鈴音に関してはそう考えている。
正直、期待以上の働きだ。コミュニケーション能力と、危機回避能力については前から目を付けていたが…」

と、特務広報部の人事の話になれば。
嗚呼、と思い出した様な表情。

「…いや、君を正式な隊員に迎えたいのはもう一つ理由がある。
特務広報部は、取り敢えず隊員数は充実してきたが…現場で指揮を執る隊長格の人員育成が追い付いていない。
君は、隊員からの評判も悪くない。報告書の内容を読む限り、現場の指揮能力にも長けている。
出来れば、一つ隊を預けたいと思っているのだが」

流石に、臨時隊員を隊長に任命する訳にも行かず。
どうしたものか悩んでいるのだ、と苦笑いを浮かべるのだろう。

雪景勇成 > 「…まぁ、どちらにしろ長く捕虜にしておく訳にもいかねーのは確かだな。
あっちが何らかの手段で奪還しに来るか、自力で脱出しやがるか…何か”仕込み”でもしておけりゃ万々歳だが。」

一枚岩の組織の団結力というのは厄介だ。特別攻撃課時代も、その手の輩は基本的に総じて”手強かった”。
―過去形なのは、無論、例外なくその全てを殲滅してきたからだが。
風紀の誇る最高戦力の一つとも言われる事もある特別攻撃課だ。その役割は単純明快、完膚なきまでに叩き潰す。

「つまり、与えられた情報を信じた”フリ”してわざとそれに踊らされるように動いて奴さんの出方を見る訳か。
――まぁ、特務広報部単体はアレだが、風紀全体と考えれば質も量もこっちが上だわな。」

とはいえ、相手も抜け目無い連中なら、その質と量を補う手札の一つや二つを今この時も着々と用意している可能性は十分にある。
あまり頭を回すのは得意ではないが――…

「あぁ、俺を襲った男もそういや最初は俺を生け捕りにする目的で来てたな…しかしまぁ。」

紫煙を吐き出しながら、如何にも面倒臭い、とばかりに空を仰いで。

「――こりゃまだまだ長期戦になるのは確定かもな。よほど状況が動かない限りは」

ボスの私見を聞きつつ、こちらも意見を返しながらも最後はそう呟いてうんざりしたように。
元々、面倒臭いのは嫌いなのだが、短期決戦にはどう足掻いてもならない状況なのは明らか。

「――ボス?俺らとアンタの金銭感覚の違いは結構あると俺は思うんだがよ?
その嗜好品レベルも高級品って時点でお察しだろ。」

と、僅かに目を細めてボスを見る。いわゆる半眼というやつだ。まぁ彼らしいが。

「まぁ、神宮司の旦那も抜け目ねーから、俺をこっちに正式に所属させる手札は既にありそうだけどな。
――まぁ、少なくとも指揮能力は正直俺なんかより全然あると思うぜアイツは」

ボスの負担を減らす、という意味では書類仕事は袈裟山の旦那に任せるとして、現場は多少楽になるだろうか。
と、そんな事を考えていた所で彼からの続く言葉に煙草を吸う手を止めて。

「……いや、正気か?俺が一つの隊を指揮とか悪手でしかねーだろ。
俺は単独任務を希望する程度には集団行動や連携はあまり得意じゃねーんだぞ。
それに、俺の戦い方だと他の連中を巻き込みやすい。まぁ加減はしてるがよ。

…つーか、あいつらなんて報告してやがんだ。俺は別に指揮能力高くねーのによ…。」

ボスもハバキリも居ないから、臨時で指示を出しただけなのだけども。
そういえば、あの襲撃してきた男も俺の事を兵団長とか言ってやがったし。

「――ったく、味方の命を預かる重荷は御免なんだがなぁ。」

まさかボスからさらりと面倒な事を提案されるとは思わなかった。
少なくとも、男は自分の指揮能力を高いなどとは全くこれっぽっちも考えてなかったのだ。

神代理央 >  
「特務広報部は謂わば『猟犬』だ。ヘルデンヤークトの別名の通り、我々は狩りの先鋒を司るだけの部隊に過ぎない。
しかして、風紀委員会には違いない。我々は、例え風紀委員会という巨大な組織が望まざるとも、彼等の猟犬であり、秩序を乱す者への刃。……そして、鉄砲玉だ」

「確かに、現場の隊員達は元違反部活生が多くを占める。彼等は、仮の風紀委員という立場でしかない。…しかし、君や私を含めて少なくない数の正規委員も存在する公式な風紀委員会の下部組織だ。
そんな我々が手痛い損害を負う事になれば、風紀委員会そのものを動かす理由になる」

「……だからまあ、我々は『やられ役』をせざるを得ない場面もある。しかし、唯でやられてやる訳にはいかない。
訓練を施し、指揮系統を確立し、風紀委員会随一の『組織化された武装集団』としての立ち位置を確立する。
個人の力に頼らない。組織そのものが、一つの戦力として数えられる様にな」

「…今回の件も。風紀委員の伊都波凛霞襲撃の事件も。
全て、その為に我々が利用してやれば良いだけの事。
長期戦になろうが、裏をかかれようが構わない。
『我々がターゲットになった』時点で、既に目的の半分程は達成しているのだからな。
君にも、その認識を持って動いて貰えれば助かるよ」

謂わば、組織を確立させる為の行動。
未だ荒くれ者の集団に過ぎない特務広報部を『軍隊』へ変える為に。
己の目的の一端を語り終えた後、燃え尽きた吸い殻をポケットの携帯灰皿へ綺麗にしまい込む。

「……良く言われる事だが、其処まで金銭感覚が他者と剥離している自覚は無いんだがな…。そんなにかな…」

と、此処迄散々偉そうに喋っておいて。
金銭感覚を問われれば、ちょっと自信無さげに視線を彷徨わせる。
その姿は――特務広報部部長、ではなく、年相応の少年の様なものなのだろうか。

「君自身はそう思っているかもしれないが、私は報告書を読んだ限り、指揮能力については申し分ないと思っているよ。
自身の能力を理解し、他者を巻き込む可能性を考慮し、必要に応じて撤退と追撃の指示を出せる。少なくとも、それだけで十分だ。
鈴音もその類だな。アイツの場合は『生き残らせる』事の才能が突出している。二人とも、私にとっては得難い部下だ」

「味方の命を預かるのは重荷、か。
だが君は、そうあれと命じればきっとそうする。その為に全力を尽くす。そうだろう?
……何だか君は、私と似ているからな。きっと、任せた事は必ずやり遂げられると信じているよ」

「まあ、すぐすぐとは言わない。まだ君は出向の身。弐足の草鞋を履いた者に、隊を預けるのは色々と問題があるからな。
そういう風に私が思っている、とだけ覚えておいてくれれば良い」

ふわり、と彼に微笑む。
彼への評価と期待が、少年にとって随分と高い物である事を伝える様な、穏やかでいて何処か重い、そんな笑み。

「……長話が過ぎたな。そろそろ戻ろうか。
此処の連中も、我々が何時までも此処で立ち話をしていては、安眠出来ぬだろうしな」

と、言いたい事だけ言って、彼に背を向けて歩き出した時には、何時もの様に尊大で傲慢な風紀委員へと姿を戻しているのだろう。

「帰り道くらい、送ってやろう。可憐な女子でなくてすまないな」

とだけ、小さく笑いながら声を投げかけた後――少年は、異形の群れを引き連れて落第街の出口へと。
彼が共に帰路につくのなら、その間変わらず仕事についての話や――バレンタインを控えて、彼に意中の相手はいないのか、なんて。
取り留めのない会話を続けたりしたのかもしれない。

雪景勇成 > 「――鉄砲玉、ね、まぁ正直、出向の身分だし俺自身の性格もあるんで、ボスの考えや理念に諸手を挙げて賛同はしねーが…”分かり易い”のは歓迎だ。」

鉄砲玉、先陣を努めるとあらば話は早い。結局シンプルなのが自分の好みなのだろう。
憎まれようが蔑まされようが、畏怖されようがどうという事は無い。
やられ役?それも上等だ。”最後に勝てばそれでいい”。

「――成程、特別攻撃課とはまた別系統の強固な戦力の集団を確立しようって事か。

――そうなると、俺が襲われたのも結果的には”好都合”ではあるな。」

襲われるこちらとしては、ああいう厄介な手札を多く持つ相手とやりあうのは気が滅入るが。
まぁ、臨時隊員とはいえ、俺も広報部の端くれだからな。ボスの意向には出来るだけ従うさ。」

本音を言えば、彼の語るあれこれは男にはいまいちピンと来ていない部分も多い。
だが、やるからにはそれこそ”嵐の如く”立ち回るとしよう。
それが『白き暴嵐』であり、己への指令(オーダー)でもある。

「ボス?自分で思っているのと周囲から見た印象は割と齟齬がある場合も多いからな?
まぁ、別に庶民の感覚を持て、とは言わねーがよ。つーか、そんなつまらん説教する気もねーし。」

元・二級学生の自分が金銭感覚をどうこう、と言うのも何だかシュールでしかないし。
しかし、まぁこれが鉄火の支配者の年齢相応の素顔なのだとしたら…。

(強いが”脆い”。…成程、こりゃ危なっかしいな色んな意味で。)

特別攻撃課の上司がそんな事を言っていたのを思い出す。
あの親父、わざと俺をこっちに寄越しやがったのか?とも思う。

「ハバキリが『生存能力』っつーならさしずめ俺は…あー何だ…『状況把握能力』、でいいのかねぇ。

何か、えらく買われてる気がするが…さて、どうだろうな。
それが”仕事”なら非道外道も込みで俺は勿論やるだろうけどな。
正直面倒臭いが、それが仕事なら――誰が相手だろうと”必ずやる”さ。」

公私を、敵味方をきっちり線引きしているからこそ、それが仕事の領分ならきっちりやる事はやる。
殺し、壊し、殲滅する。そこに情も遠慮も一切無い。
――何故なら、嵐という自然災害に感情なんて無いのだから。

「へいへい、高く買ってもらえて何よりだよ。
まぁ、他所からの出向組が隊を指揮するのもどうかと思うしな。
――どちらにしろ、ボスの構想も俺が正規隊員になった場合の話だ。」

こちらも煙草を吸い終えれば、携帯灰皿を取り出して吸殻を押し込む。しかし、自分が一つの隊を指揮、ねぇ?

(他の連中を退避させて俺が単独で暴れる図しか浮かばないんだが。もしくは俺が殿を努めるか)

矢張りそういう立場になった事が無いからどうにもピンと来ない。そういう意味ではハバキリはよくやっていると思う。

「へいへい、お言葉に甘えるとするさ、また豪勢な送迎ではあるがよ。」

あと、可憐な女子とか俺にゃそもそも縁がねーよ、と肩を竦めて軽口を叩く程度の冗談は示し。
ともあれ、彼と異形の兵団に同行して帰路に就こうとするだろう。
ちなみに、ボスからの話のネタ振りには面倒臭そうに、

「いや、意中の相手なんていねーし、バレンタインのチョコ貰うアテもねーよ。」

と、零していただろう。むしろボスのほうがチョコくっそ多く貰いそうじゃねーか、とか返しながら物騒ながら穏やかな足音と金属音がその場を去るだろう。

ご案内:「落第街大通り」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から雪景勇成さんが去りました。